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フォラードの光  ― 星の記憶者 ―  作者: あけの星
第三章

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約束の行方⑵


 侍女は二着のチュニックドレスを見せた。


「素敵に仕上がっていますわ。残りの依頼分は、来週にはできると申しておりましたよ。さ、今日はどちらになさいます?」

 薄いバラ色と、深い緑のドレスはどちらも美しい布で仕立てられていた。

 ウタハは、深い緑のドレスを選んだ。チュニック風に仕立てられているので、舞踏会に着るドレスとは違い、一人でも十分着られるものだったが、侍女はそれでも手伝いたがった。


 鏡の前に立つ自分の姿を見て、少し意外な気がした。背がいくらか伸びたらしい。身体も少しふくよかになった気がする。チュニックはゆとりがあるが、それでも以前のようではなく、採寸して仕立ててもらったせいだろう、ぴったりと身に合っている。

 肌も以前よりさらに白くなった気がした。


 ウタハは、髪は自分で梳かすと言って譲らなかった。

「結い上げなければならなくなった時には、よろしくね」

 侍女はあきらめたらしかった。

「長いまま、垂らしておいでになるのも素敵ですわね。この緑のドレスに合いますわ。では、私はお食事をお持ちしてまいりますね」

 侍女は礼をして部屋から出て行った。


 ウタハは窓を開けて外を見た。

 前方に見える塔の三階はエランの部屋だ。向こうの窓から、この中二階の窓も見える位置にあった。彼は、昨日からマロウズのところへ応援に行っているはずだ。何かあったのかもしれない。北の国の状況は、エランから聞いていた。ウタハは窓を閉めた。やはり開けているには、まだ寒い。


 朝食の後、ウタハは中二階を見て回ろうと決めた。部屋に籠っているのもつまらない。来週には帰郷した者たちも戻ってきて、古の魔法師の館も通常通りになるだろう。ウタハはノクィース教室にも行きたくなった。


 ウタハは、アルを呼び出した。

「待ちくたびれたにゃ~ようやく出してくれたにゃ~」

 そういえば、あの日以来、出していなかったことに気づいた。もう四日も経っている。

「あは、ごめんねぇ・・・わすれ・・・じゃない、忙しかったのよ」

「ほんとかにゃ~?」

 疑わしそうな目で見るアルを撫でながら言う。

「ほんとよ~、ほらカキカキしてあげるから、いい子にして」

 アルはウタハの膝に乗っかると目を閉じた。

「それでね、アルに聞きたいんだけど、この部屋か、中二階に次元の入口はないかしら? わかる?」

 アルは、耳をピンと立てたが、すぐにいつもの形になった。

「うんにゃ、なくはないにゃ~」

「なくはない? ってどういうこと?」

「開かれてにゃいにゃ~、閉じてるにゃ」

「どこなの、その場所は?」

「この部屋のにゃ、隣の部屋にゃ~」

「中二階に他の部屋があるの?」

「あるにゃ~」

「わかった、ありがとう、後で行って見るわ」


 アルは撫でられて気持ちよさそうに喉をゴロゴロ鳴らした。

(こういうところは、普通の猫みたいだけどね・・・)

 ウタハは変身したアルの姿を一瞬、思い浮かべた。

 同時にルシクリオンの顔も。あれは・・・

「ねえ、アル、ノクィース先生と、ルシクリオンは関係あるの?」

 アルはびくっとして身体を起こした。四つ足立ちになった。毛が逆立っている。

 ウタハはいぶかし気にアルを見た。

「どうしたの、急に。ね、教えてくれる?」

「ルシクリオン・・・様はにゃ・・・ノ・・・にゃ、・・・にゃ~」

「え、何言ってるの? わからないわよ、ちゃんと言って」

 しかしなぜか、アルは突然普通の猫になってしまったみたいに、にゃ~にゃ~しかしゃべらなくなった。何か言っているのだが、猫の鳴き声なのだ。

「どうしちゃったの~? アル、しっかりして」

 しばらく抱えて撫でていたが、あきらめた。

「ああ、もういいわ、いったん戻って。帰りなさい」

 アルは、姿を消した。


 いったい、どういうことかしら? しばらく考え込んでいたが、いつもの弟子の長着を羽織ると侍女を呼んだ。

「お部屋にじっとしていると、気分が良くないの。散歩してくるわね」

「外は寒うございますよ」

「大丈夫、外には出ませんから。この部屋の周りを少し歩いてくるわ。何かめずらしい部屋とかあるかしら? 図書室でもあるといいのだけど」

「この中二階には、後二つお部屋がございますよ。ただ、両方とも今は倉庫になってしまっておりますけれど・・・ああ、図書室ではありませんが、退屈しのぎなら、書物庫にしている部屋がございますよ。お好きな本をお読みになるのもいいかもしれませんわね」

「行ってみたいわ。本は大好きなの」

「では、鍵をお持ちしますね、少々お待ちを」


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