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フォラードの光  ― 星の記憶者 ―  作者: あけの星
第三章

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年越しの舞踏会⑸


 馬車は、王城までの道のりをゆっくり進んだ。


 夫人は、用意していた仮面を取り出して、ウタハとフィデリスに渡した。ウタハには紺色を、赤をフィデリスに。夫人は緑の仮面だった。


「今日はね、仮面舞踏会でもあるのです。年の最後は楽しくはしゃぎましょう、ということね。仮面をつけることで、普段、お話しできないような身分の方ともおしゃべり出来るのですよ。たいていは仮面をつけていても、どなたかはわかるのですが、わかっていても、知らないふり。大人の、『知らないふりごっこ』の遊びかもしれませんわね」


 夫人は二人をうながした。羽の眼鏡を思わせる仮面を耳にかける。

「毎年、こうして馬車の中でつけるのが、わが家の習慣になってしまいましたわ。

 最初は、屋敷に残るフレシアを羨ましがらせないため、だったのですけどね」

 それから夫人は、今夜の舞踏会について、注意するべきことなども話した。

「鐘が鳴り始めたら、バルコニーに出てみるとよろしいわ。鳴り終わると同時に火の魔法師の花火が始まりますから。それまでは、踊ったり、おしゃべりしたり、食べても飲んでてもいいのです。お好きになさってね。ただ、その前に私の従兄弟のところへご挨拶に一緒に参りましょうね」

「わかりました」

 ウタハはうなずく。

 向かいに座っているフィデリスは、何も言わずにじっと母親を見ていた。




  *




 暖炉の火のはぜる音が、静かな部屋に響いた。

 四方の壁には魔法の火が、美しい陶器の皿の上で踊っている。

 その明かりは、暖炉の前の椅子に座った男の、白髪に変わりつつある金髪にいくらか赤味を映していた。

 彼の後ろには、古書の詰まった天井まである棚が、いくつも並んでいる。ここは王の居室の隣にある王の図書室。男はエル・フォラードの王、ケルータル・クレデォ・フォラードであった。


 王のそばに侍従が頭を垂れて来客を告げた。

 王はうなずく。

 侍従は扉を開けて中へ客を促した。


 赤い髪を美しく結い上げた女性と若い女性が入ってきた。

 一人は従妹の館長夫人だった。連れているのは、今、渦中にある娘のはずだった。二人は仮面を外して、淑女の礼をした。

「久しいな、従妹殿」

「ご無沙汰いたしております、陛下。本日は、夫が調査のため参れませんので、代わりに私が連れて参りましたの」

「ああ、大事ない。館長には任務があるのは知っておる。その(ほう)がウタハと申すか?」

 王はウタハへ視線を向けた。

「はい、王様」

 ウタハは軽く淑女の礼をする。

「そうか」

 王は侍従に目で合図した。侍従は、館長夫人に外の控えの間で待つように言いながら、彼女を連れて部屋の外へ出て行った。


「まだ、すべてを思い出していないそうだな」

 ウタハは驚いた顔で王を見た。

「はい。いまだ・・・」

 王はこの若い娘が、予言の娘であることを聞いていた。たしかに不思議な魔力を宿している。彼女を包むオーラの光を彼は見抜いていた。

「エランの言う通りのようだな・・・では聞くが、そなたは、我が息子のことは、どう思うておる?」

「どうと、申しますと・・・?」

 ウタハは、エランの面影を感じる顔に、強い光を宿す灰青色の瞳をいぶかしげに見返した。

「エランは、そなたと婚約を望んでおる」

 ウタハは突然の王の言葉に、顔を赤らめて下を向いた。

「わたしは・・・まだ、自分が何者であり、何のためにここにいるのか、わからないのです。お慕いは・・・していますが・・・そのためにご迷惑を及ぼすようなことになっては、なりませんし・・・」

「あれは、かまわぬと言うだろうよ」

 王は呼び鈴を鳴らした。

 図書室の奥の扉が開いて、見慣れた金髪の若者が姿を現した。

「エラン!」

 ウタハは驚いて声を上げた。

 エランは、いつもと違うウタハの姿を見て目を大きく見開いた。彼もまた驚いていた。

 エランがウタハのそばに来ると王は言った。

「お前たちの婚約を許す。しかるべき儀は後ほど侍従から知らせる。さあ、行きなさい、舞踏会はもう始まっておる」

「ありがとうございます! 父上」

 エランは魔法師の礼をした。そして声も出せないほど呆然としているウタハを促して淑女の礼をさせると、彼女を支えながら図書室を出て行った。


 二人の後ろ姿が見えなくなると、王は低い声でつぶやいた。

「見たかな?」


 すると、本棚の間の薄闇から影が現れ、人の形をとった。


「しかと()ましてございます」


 その声とともに、人影は長身で中年の魔法師になった。

 男は、この国の権威ある古の魔法師の一人、王の参謀であり、影でもあるヴィデールであった。

 彼は、膝をついて礼をする。

「王は、どうご覧になられましたか」

「不思議な光を発しておる。やはり予言の娘なのであろうな」

「左様でございますな。私の眼にも光は見えております。内にもまだ隠された輝きらしいものが渦巻いておるようでございます」

「この国一番の透視力の、そなたが言うのだから間違いはあるまい」

「婚約をお許しになられたので?」

「うむ。やはり何があるかわからぬ。早めに我らが内に入れておいた方が安心であろう」

「御意。しかし、どうも館長の動きがこのところ読めませぬ。何か画策しているのではと思い、調べていたのですが、いまだ・・・」

「引き続き調べよ」

「はっ」

 ヴィデールは礼をして、ふっと姿を消した。




今回も読んでくださって、ありがとうございます!m(__)m☆


ブックマーク、評価もいただいていて、びっくり。

ありがとうございました☆

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