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フォラードの光  ― 星の記憶者 ―  作者: あけの星
第三章

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年越しの舞踏会⑶


 ウタハは、メイドの悲鳴で目を覚ました。

  

 ソファで、アルを撫でている間に、うとうとしていたらしかった。

 声の方を見ると、フローリが、真っ青な顔をして立ちつくしている。

「どうしたの?」

 ウタハは不思議そうに彼女を見た。

「あ、あの、猫…が、しゃべった――」

 震えながらウタハに助けを求めて駆け寄った。ウタハの背の方に回り込む。

「大丈夫よ、わたしの使い魔の猫だから。悪さはしないわ」

「そうにゃ、そうにゃ~、挨拶しただけにゃのに、怖がるにゃんて、失礼にゃ~」

「わぁ、またしゃべった――」

 フローリは、ウタハの背中の陰からこわごわアルを見た。

 ウタハはアルを呼んで抱き上げた。

「ほらね、大人しいでしょ、普通の猫と変わらないわよ」(ほんとは、変わるけど・・・)

 アルを撫でながら、メイドに笑いかける。

 フローリは、大人しく撫でられているアルを見て、少し落ち着いたらしかった。

「使い魔って色々あるんですね・・・」

「そうよ。しゃべらないのも、しゃべるのもいるわよ」

「旦那様の使い魔は、話しませんです。なので、ちょっと、びっくりしました・・・」

「館長様の使い魔は、梟だったわよね」

「はい。以前はよく見かけました。最近はお忙しいようで、こちらの屋敷にもなかなかお帰りになれないのですわ。ご長男のフィデリス様は、ご自分の使い魔を、わたくしどもにはお見せにならないので・・・」

「あら、フィデリス様も、魔法師なのですか?」

「いえ、魔法士の方でございますよ。王立の魔法士団で、ご活躍されています」

「そうだったのですか、では、夫人も魔法を?」

「少しは。古の魔法師の館にしばらく行っておいでだったとか。そこで旦那様とお会いになられて、弟子になる前に辞めてご結婚されたそうです・・・あら、いけない、よけいなおしゃべりをしてしまいました」

 フローリは、姿勢を直した。

「ご夕食の準備が整いました。食堂の方へどうぞ」


 本邸の食堂はこじんまりとして清潔だった。

 来客用にいくつか椅子が並べられていた。白いテーブル掛けをかけられた食卓には、冬に咲く赤い花と温室咲きと思われるピンクと薄紫の花を盛った籠、中央にはキャンドルが灯されている。


 奥の主の席には館長はいなかった。その手前の席に、美しい赤い髪を結い上げた館長夫人、向かいに自分とさほど変わらぬ年頃の赤い髪の少年と、十二、三歳ばかりの金茶色の髪をした少女が座っていた。ウタハは夫人の右側の椅子をすすめられた。

 ウタハは、自己紹介をして魔法師の礼をした。

「ようこそ、主人からあなたのお話はうかがっておりますわ。ゆっくりなさってね。向かいにいるのが長男のフィデリス、その隣が下の娘のフレシアよ。上の娘は結婚してコンジー領へ行ってしまいましたけれどね」


 ウタハが席に着くと、料理が運ばれてきた。

 前菜の甘く煮た果物、果実水、生地に包んで焼いた兎肉のパイ。茸と肉の煮込み、そして、その汁に浸して食べる薄く切った固いパンなどが食卓に並べられた。


 食事が始まると、さっきから聞きたくて、うずうずしていたらしいフレシアが、目をキラキラさせて口を切った。

「ねえ、ウタハさんって、お父様の弟子なの?」

「館長様の弟子ではありませんが、他の古の魔法師様の弟子なんです」

 どことなくマリエヌに似てる、と思いながら答えた。

「お得意な魔法は何? 火かしら、それとも風?」

「わたしは、一応、光なんですよ」

 ウタハはにっこり笑って少女を見つめた。

「まあ、一度それを見せてもらいたいわ。光の魔法は、わたし、まだ見たことないんですもの」

「これ、ご無理を言うのではありませんよ」

 夫人が口を挟む。

「だって・・・」

「かまいませんよ、でも、お食事が終わってからにしてくださいね」

「わあ、楽しみ。はやく食べちゃおっと」

「ウタハさんは逃げませんから、ゆっくり食べなさい」

 夫人がたしなめると、フレシアは小さく舌を出して「はーい」と言った。

 ウタハはフレシアが可愛らしくて、思わず口の端を上げた。


 食事が終わって、リビングの方へ移動した。

 夫人とフレシア、そして、ずっと、むっつり黙っていたフィデリスもいた。それぞれソファに腰を下ろし、ウタハに注目している。

 

 ウタハは最初に、胸の前で簡単な光の多角形を作って見せた。そしてそれを上に放つ。キラキラと光の多角形が崩れ、光の粉になってリビングを一瞬覆った。

「わぁ、すてき!」

 フレシアが、感嘆の声を上げた。

 光が消えたとき、フィデリスがぼそっと言った。

「それが、()()()()()になったんだね」

「まあ、そうですね、ようやく光の強さを調節できるようになりました。でも、知っておられたんですね」

「ああ、知ってる。ハーズの沼の戦いに僕も参加したからね。まだ後方支援だったけど」

「そうでしたか、ありがとうございます!」

 ウタハは当時を思い出して、少し胸が痛んだ。同時に自分のために危険をかえりみず戦ってくれた人々がいたことに、申しわけなく、ありがたく思った。

「フィデリスは、魔法士として国のために頑張っているのですよ」

 夫人が、目を細めて息子を見た。

「さあ、もう今日はお疲れでしょう、ゆっくりお休みなさいね。あなたたちも、もう休みなさい」

 そう言って夫人は立ち上がった。

 ウタハも礼を言って離れへ戻ろうとしたとき、夫人が思い出したように声をかけた。


「あ、そうそう、明後日の夜、お城で年越しの舞踏会がありますのよ。舞踏会の終りに年越しの鐘が鳴るのをみんなで聞くのです。火の魔法もある素敵な催しなので、ご一緒しましょう」

ウタハが、とまどっているとフレシアが言った。

「素敵! うらやましいわ。わたしはまだ十二歳だから行けないの。十四歳までお預けなんですって」

「十五歳ですよ」

 夫人が言いなおす。

 フレシアは肩をすくめた。

「上の娘は、いつも楽しみにしていましたの。あ、そうだわ、娘のドレスが残っているの。それを着てお行きなさいな。明日にでも見立てて上げましょう。うふふ、なんだか私も楽しみなってきましたよ。上の娘とよくドレスを選び合ったものですから」

 夫人は以前を思い出したらしく、楽しそうな顔になった。

「いいな、いいな」

 フレシアがちょこっと、ふくれっ面をして母親にぼやく。

「あなたが、十五になったら、素敵なドレスを作ってあげるわ。それまで楽しみにしていなさいね」

 しぶしぶうなずいて、夫人に淑女の挨拶をして見せると、兄を引っ張ってリビングから出て行った。

 ウタハも迎えに来たメイドに連れられて離れへ戻った。





今回も読んでいただき、ありがとうございました!m(__)m☆

なんだか火曜日も定期更新のようになってしまっております(汗)

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