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フォラードの光  ― 星の記憶者 ―  作者: あけの星
第三章

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年越しの舞踏会⑵


 館長の屋敷は、王城の西側にある立派な門構えの建物だった。


 城下の石畳を通って馬車は門の前に着いた。

 門には左右に梟を模した石の彫刻があり、それが頑丈そうな鉄の扉を守っている。

 

 馬車の音を聞いたのだろう、家令らしい男が、扉を開けてウタハを出迎えた。

「ようこそ、お出でくださいました、私は家令のポーサと申します。どうぞ中へ」

 門を入ると前庭に石畳の細い道が屋敷の入口まで続いている。

 先ほどから降り出した雪が庭の木々や、植え込みに白く積もり始めていた。


 屋敷内に入ると、家令はメイドを呼んで彼女を紹介した。

「これは、あなた様がご滞在の間、お世話をするフローリと申します。何かあれば、お申しつけください。フローリ、離れへご案内を」

 家令はウタハに魔法師の礼をとった。

 ウタハは、自分が弟子の長着を着ているのを見て、そうしたのだろうと思った。もしかすると、彼は魔法のたしなみがあるのかもしれない。


 二十歳過ぎと思われるメイドは、ウタハの荷物を受け取ると、離れへと案内した。

 屋敷内の大広間を抜けて、奥の廊下をしばらく行くと木の扉に行き着く。扉を開くと東屋のある小さな庭があった。その少し右手に薄く雪の積もった小径が続いている。その先に木に囲まれた離れの建物があった。 


 二階建てのこじんまりした建物は、中に入ると、暖炉に火が入っていて、暖かかった。壁には館と同じように魔法の火が灯されて、ところどころに掛けられた絵画を照らしていた。

 一階はダイニングキッチンと、応接のテーブルと椅子があるのが見えた。床には落ち着いた茶色の絨毯が敷かれている。左手の窓からは庭が見えた。二階にも案内された。客用の部屋なのだろう、寝室が二つあった。


 フローリは、ウタハにどちらの部屋を使いたいかたずねた。

 東側の部屋にしたいというと、ウタハの荷物を東側の部屋に置いた。

「今、暖かいお茶をお持ちしますね、どうぞ下でお休みになってください」

 ウタハが一階の応接用のソファに腰を下ろしたのを見届けると、奥のキッチンへ入って行った。

 

 まもなく、メイドは香りのよい紅茶とクッキーを持ってきて、ウタハの前のテーブルに置いた。

「夕食まで、どうぞごゆっくり。用意が出来ましたら、呼びにまいります。奥様方とご挨拶がございますものね。御用がありましたら、呼び鈴の紐を引いてくださいませ。これでございますよ」

 そう言って、入口の横の壁に吊り下げられた紐のところまで行って紐を軽く持ってみせた。この紐が本邸の呼び鈴に繋がっているのだという。

「ありがとうございます。それに、いろいろ教えてくださって」

 ウタハが頭を下げると、フローリはあわてた顔で言う。

「そんな、お気になさらず。わからないことがあれば、おっしゃってくださいね」

 彼女も魔法師の礼をして出て行った。

 フローリも、魔法師の経験があるのかしら・・・考えてみれば、古の魔法師である館長の家で働いているのだ、そうであっても、何ら不思議はなかった。


 ウタハが窓の外を眺めながらお茶を味わっていると、ふっと目の前に黒と金色の毛玉が現れた――それは、くるりと一回転してウタハの向かいの椅子に着地した。

「わぁ、びっくりしたわ、アルじゃない。呼んでないのになぜ?」

「そんなに驚くにゃ~、向こうからにゃ、返事がにゃ~ぁったときにはにゃ、出てこれるんにゃ~」

「あら、そうだったのね」

「マスターのくせに知らにゃいのかにゃ~」

「知らない」

「うんにゃ~、開き直るにゃ~」

「で、エランには会えたのね、伝言を聞かせて」

「『こ、こほん』にゃ~」

「なあに、それは?」

「エランの咳払いにゃ~」

 ウタハは笑いをかみ殺した。

「『――わかった、私も明日には戻れると思う。また連絡する』以上にゃ~」

 意外にも伝言の内容には鳴き声がついてないので安心した。

「ありがとう、お使いごくろうさま」

「疲れたにゃ~、もみもみしてくれにゃ~」

 アルはひゅんと飛び上がってウタハの膝に乗ると丸まった。




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