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フォラードの光  ― 星の記憶者 ―  作者: あけの星
第三章

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46/65

星の記憶⑷


 エランとともに救護所のアイジェルの部屋へ着いたときには、マロウズがもう彼のそばにいて、二人ともベッドに腰を下ろして話をしていた。


 入ってきたウタハとエランを見て、アイジェルは立ち上がった。

 近づいてきたエランと懐かしげに肩を叩き合い、握手をした。そしてエランの後ろにいたウタハの方を見た。

 ウタハがアイジェルに駆け寄ると、彼はしっかりとウタハを抱きしめた。

「よかった・・・元気になってくれたのね」

「ああ、お前たちのおかげだよ。二人の癒しの光を感じたんだ」

 ウタハは、懐かしい、温かな胸のぬくもりを彼から感じたとき、ふと、幻影が浮かんだ。一人ではない、三人の人影――が、自分に何か言っていた。誰? 何を言ってるの?

 そのとき、エランの咳払いが聞こえた。

 はっとしてエランを見ると、抱擁が長すぎだと言いたげな顔でウタハを見ていた。

(うっ――)

 ウタハは、アイジェルの腕から少し離れて言った。

「今、幻影を見たの」

「何を見たんだい?」

 アイジェルがウタハの目をのぞきこんだ。

「誰かの人影が・・・男の人みたいだった・・・三人いて、わたしに何か言ってた。でも、よく聞こえなかったの」

「――たぶん、それは・・・おれを含めたおまえの兄たちだ。向こうの世界では、おまえは、おれの妹なんだよ」

 ウタハが不思議そうにアイジェルを見る。

「向こうの世界? 妹?」

「まだ本当に何も思い出せないのか?」

「――ときどき、断片みたいに 浮かぶものはあるのだけど、それが何を意味するものか、わからないのよ」

 ウタハは悲しげに首を振る。


「もしかすると・・・」

 エランが口を挟んだ。

「ウタハには、古い保護結界がかけられているのだよ。知っていたかい? それが記憶の回復を遅らせているのではないか、と思えるのだが、どうかな?」

「ああ、そう言われれば、以前トイサの親父から聞いたことがある。保護結界がかけられていると。それは解除できないのかな?」

「残念ながら今の私には、まだ無理のようだ・・・」

「エランは、古の魔法師の称号を得ているんだよ。それでもできないということになると・・・もっと上位の魔法師ということになるね、結界をかけたのは」

 それまで黙って聞いていたマロウズが言った。


「魔法師長くらいかな?」

 アイジェルは、マロウズの顔を見た。

「いや、もしかすると、もっと上だ」

「それなら、後は総長しかいないぞ」

「総長は、ほとんどこちらには、おられないからなあ」

「まて、結界をかけたのは、向こうの星の誰かではないだろうか?」

 エランが言った。

 二人は、びくりとしてエランを見た。

「まさか、赤の魔女・・・?」

 アイジェルがつぶやく。

「あり得るな。しかし、そうだとすると何のためだ?」

 マロウズが首をかしげた。

「やはり、時間の調節かもしれないね」

「エランは、まだ始まっていないというのかい? あれだけのことが、起こっているのに。アイジェルだって、こんなめに・・・」

 マロウズは不満げに言った。

「そうだ。まだ館長たちが動いていないのだから、そうなんだろう」

 考え込みながらエランが言ったとき、入り口の天幕の向こうから声がして、年配の女性が顔を出した。救護所の救護士長だった。病人の処置や世話、管理を引き受けているのだ。


「失礼いたします、そろそろ皆様、お時間です。お引きとりいただけないでしょうか、患者様がお疲れになってしまいますので」 

 有無を言わさぬ声と態度だった。

「おれは、まだ疲れてないし、大丈夫だよ」

 アイジェルが言った。

「いいえ」すかさず、救護士長は言う。「起きられるようになったばかりです。まだお身体は完全に回復しておりませんわ。一ケ月も寝ておられたのですよ。少しずつ慣らしていくことが大事です。お医者様から、そう言われておりますの。もう今日は少しお休みください」

 彼女はアイジェルの背を押してベッドへ向かわせた。


 それを見て、エランもマロウズも逆らわず、ウタハをうながした。

「じゃあ、またな、アイジェル」

 マロウズが声をかける。

 ウタハもエランとともに手を振る。

 「ああ、みんなに会えてよかったよ、またな」

 返事をするアイジェルは、思いのほか疲れていたのか、少し顔色が冴えなかった。

 ウタハは、救護士長が来てくれてよかった、と内心思いながら部屋を後にした。





今回も、読んでいただき、ありがとうございます!

 ☆・.m(__)m.・☆


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