表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フォラードの光  ― 星の記憶者 ―  作者: あけの星
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/65

星の記憶⑶


「やあ、頑張ったね」

 ノクィース先生は、そう言ってアルを抱き上げ、ウタハに近づいてきた。


 ウタハにアルを手渡してくれたが、アルはウタハの腕の中で、やけに大人しくしていた。

「もう、帰られていたのですね?」

 ウタハは彼を見上げた。背は高いほうだ。エランと同じくらいだろうか。

「いや、忘れ物をしてね、取りに帰っただけなのだ。またすぐに出かけなければならないのだよ。帰るのは年明けになるかもしれない」

「そうでしたか・・・」

「これから館も年末で帰省する者が増えるだろう。きみのことは、館長に話しておいたから、良い話があるかもしれないね。課題は、もう解いてしまったのだから後は自由にしなさい。昇級試験合格だ。新しい長着も届くだろう」

「ありがとうございます!」

 アルを抱えたまま頭を下げると、ノクィース先生は移動魔法で姿を消した。

 

 ウタハはアルを下におろして階段を上がって行った。

 五階は、資料室と聞いていた。今まで上がったことはなかったので、ちらっと見てみたくなった。


 廊下を挟んで、二つ部屋の扉があった。

 これが資料室かしらね・・・?

 その突き当りに、上に続くらしい階段が見えた。

 まだ、上があるなんて、知らなかったわ。

 壁の小さな明り取りの窓から、こぼれる日の光以外ない薄暗い廊下を、ウタハは通って階段の前まで行った。

 しかし、上を見上げると階段の一つ目の踊り場には扉があった。とりあえず、扉の前まで上がり、試しに扉を開けてみようとしたが、びくともしなかった。結界が張られているらしかった。

 ウタハはあきらめてノクィース教室に戻った。



 *


 夕食後、ウタハはアルに消えるよう命令すると、しぶしぶアルは姿を消した。

 昼食のときは、彼女が食堂に行っている間も、ずっとノクィース教室で、テーブルでなく椅子の上に丸くなっていた。


 ウタハがどこへも行かないなら、出しておいてもいいのだが、出かけるとなるとちょっとまずい。だから心を鬼にして言ったのだった。

 まあ、一応マスターは自分なので、使い魔のアルは命令を聞かざるを得ない。魔力の契約で縛られているのだ。


 夕食を終えて戻ってきたとき、ノクィース教室のテーブルの上には、新しい淡い水色の長着が置いてあった。誰かが届けておいてくれたものらしい。それは弟子が着る色だった。

 

 ウタハはそれに着替えて教室を出た。

 人のいないのを確かめてから、エランが教えてくれた次元の入口まで来ると、壁に手を当て、この前おそわった通りに念じた。すると、またいきなり次元の入口が開いて、ぐっと引き込まれる――そして、ぽんと吐き出されたウタハの身体を、エランが受け止めてくれたのが分かった。


「待っていたよ」

 エランの部屋の次元の入口で彼は微笑んだ。

「弟子になったのかい?」

 彼はウタハを抱きしめながら言った。

「そうみたい。課題の使い魔を絵から出せたので」

「ふうん、面白い課題だね。それ、猫だった?」

「ええ。あ、ごめんなさい、うちの猫があなたの使い魔を驚かせちゃって」

「なるほど、それで私の鷹がおびえていたのか。どんな子? 出してみて」


 ウタハはうなずいてアルを呼び出した。


 ふわっと、丸まった金色っぽい黒い毛皮が目の前の床に着地した――と、それはいつものアルの姿になった。

「ウタハにゃ~、呼んだかにゃ~?」

 アルは碧いクリスタルの目をまぶしそうに細めた。


「うん? そちらの兄ちゃんは誰だにゃ~? ウタハを狙う悪者は許さないにゃ~」

「こら、そんなふうに、失礼なこと言わないの。こちらはエラン、今日あなたが脅かしてしまった鷹のマスターよ。ご挨拶して。ちゃんと謝るのよ」

「にゃぁ~にゃぁ~」突然、猫になった(もとから猫だが・・・)声で、エランの足元に身体をすりつける。

 エランが吹き出した。

「うふっ、面白い猫だね。本当にしゃべるのだね」

「どちらが、使い魔かわからないくらいよ」

 ウタハは肩をすくめる。

「おいで」

 エランが手をアルに差し出すと、頭をすりすりさせて、可愛らしさをアピールした。そして、ひょいと肩に飛び乗った。

「あ、こら、そんなことしたらダメよ」

 ウタハが止めにかかったとき、エランは自分でアルを捕まえると抱きかかえた。

 アルはなぜか大人しい。ふにゃふにゃの猫になっている。

「アルったら、どうしちゃったのかしら?」

 エランが笑いながら言った。

「気に入られちゃったみたいだね。さあ、もうきみのマスターのところへ戻りなさい。ちゃんと命令に従うんだよ」

 抱いていたアルをウタハに渡した。

 ふとウタハは、さっきのノクィース先生を思い出した。アルはあのときもやけに大人しかった。なぜだろうと思ったが、アルを受け取ると、ふわふわしたアルの心地よさでその思いを忘れてしまった。

 ウタハはアルを抱いたまま少し撫でてから、消えなさいと命令した。すると、素直にパッと消えた。

 「めずらしいこともあるわね」と、つぶやきながら消えた腕の中を見つめた。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ