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フォラードの光  ― 星の記憶者 ―  作者: あけの星
第三章

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星の記憶⑵

 

 さきほどからウタハは、ノクィース教室のテーブルの上に、ごろんと寝そべっている猫を撫でていた。


 毛が長いのでモフモフしているのはいいのだが、黒い毛に金色がちりばめられているのが、なんとも落ち着かない。まるで、昇級試験のときに現れた黒い光を見ている気がした。

 しかも、碧いクリスタルの目はこの猫が普通の猫ではないことを現していた。


 絵から出て――今日はもう三日ほど経っていた――出てくると、すぐにウタハに向かってしゃべったのだ! 言葉を話す猫だったのだ。ウタハは、驚いて少しの間、動けなかった。

 しかし猫は勝手にぺらぺらしゃべった。


「出してくれて、助かった~にゃぁ、出してくれたやつが、僕にゃあ~のマスターになるのだにゃ~それは決められたことなのだにゃ~」

 鳴き声はついていたけれど、まともに話は通じるようだった。しかも、どちらがマスターかもわからない傍若無人ぶりだ。


「使い魔になってやるにゃから、まずは水を飲ませてくれにゃ~」、「顎を撫でてくれにゃ~」、「そんなに強くこするにゃ~」と注文がうるさいのだった。

 内心、ウタハは、やれやれと思いながら注文を聞いてやり、ついでに名前の取り決めをした。

「あなたはね、アウルムだけど、本当の名は隠しておいた方がいいの。だから、アルと呼ぶわね。わたしのことは・・・」 

「わかってるにゃ~ウタハだにゃ~」

「ちょっと、マスターだってあなた言ってたでしょ、それらしく言ったら?」

「なんて言えばいいにゃ~」

 ウタハは、マロウズが呼んでいた言葉を思い浮かべた。

「マイ・レイディと呼んで」

「マイ・レイディにゃ、わかったにゃ~」

 

 しかし、アルは、それを忘れたかのように、いつも「ウタハにゃ~」と

呼ぶ。何度も言いなおすのが面倒になってきて、そのままにした。

 

 使い魔として用を頼んでみると、それはまともにちゃんとできる。ただ、消えなさい、と言わない限り出たままなのだった。

「なんで、アルは消えないの?」

 ウタハは不思議に思ってたずねてみた。

「空間は、もうこりごりだからにゃ~」 

 どうやら、絵の中に入っていたのが、かなりトラウマになっているらしかった。


 そのとき、白い鷹がふいにウタハの前に現れた。エランの使い魔だ。口に手紙をくわえている。

 それを見たアルは、鷹に飛びかかろうとした。

「だめっ、やめなさい! エランの使い魔よ」

 すんでのところで、ウタハはアルの胴を捕まえ、やめさせた。


「大事な連絡なの。覚えてちょうだいね」

 アルは不満げに鼻を鳴らしたが、がっちりウタハに捕まえられていて、しぶしぶ

「わかったにゃ~」と言った。

「おとなしく、ここに座ってて」


 ウタハはアルから手を放し、驚いて部屋の中を飛び回っている鷹の方へ歩いて行った。

「ごめんなさいね、慣れてないのよ。もう大丈夫、お手紙渡してくれる?」

 優しく声をかけ、腕を曲げて前に出した。

 鷹は少しびくびくした目でアルの方を見たが、おとなしく座っているのを見て、ウタハの差し出した腕にとまった。それから、ウタハが手紙を受け取ると、声をかける前に消えた。よほど驚かせてしまったらしい。


 エランからの手紙には、アイジェルが起きられるようになったので、夕食後にこちらへ来てほしいと書いてあった。

 アイジェルが良くなって、ほんとによかったわ・・・胸が温かくなる。

 あの次元の空間で見たアイジェルの姿が浮かんだ。

 久しぶりに彼に会うことを考えると嬉しい気持ちが湧いてくる。彼女の内ではまだ、懐かしい幼馴染だった。過去の記憶はいまだ発現していない。

 

 ウタハは、さきほど昼食をとったばかりだった。

 約束の夕食後までは時間がある。

 そこで以前ノクィース先生から出されていた課題の本が残っているのを思い出し、それを読み始めた。

 

 使い魔のアルは、テーブルの上で丸くなって寝ていた――と、思ったら、急に耳をそばだてて立ち上がった。

「あら、どうしたの? アル?」

 アルはパッとテーブルから飛び降りると、入口の扉の前に座った。

 ウタハが見ていると、扉をガリガリ搔き始めた。

「開けてくれにゃ~」

 ウタハが扉を開ける。すると、さっと部屋の外へ飛び出し、上の階に続く階段を走って登って行った。

「あ、まって、どうしたの? そちらへ行っちゃあダメよ」

 追いかけて階段を少し上がったとき、アルが上の階で誰かの肩に飛び乗ったのを見た。

「アル・・・」

 声をかけようとして、思わず口を押えた。 

 その人はノクィース先生だった。

 ノクィース先生は、アルを抱き上げた。

「おや、もう解放されたのかい」

 軽く撫でて下におろした。そして、ふっとこちらを見た。

「ノクィース先生!」

 一瞬、彼の顔が別人に見えた――どこかで見たような――顔がすぐ光に揺らめいて、いつものノクィース先生になった。

 ほんの一瞬だったので、見間違いかもしれないと、ウタハは自分に言い聞かせた。



今回も読んでくださって、ありがとうございました!

                   m(__)m☆

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