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フォラードの光  ― 星の記憶者 ―  作者: あけの星
第三章

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星の記憶⑴ アイジェルside


 優しい白い光と温かな光が身体を包んでいるのを感じて、アイジェルは目を覚ました。

 どのくらい眠っていたのだろう・・・不思議な気がした。

 誰かが自分の手を温かな手でくるんでいる。

 彼はその手の方へ顔を動かした。


 そこには、白っぽい金髪を一つにまとめた少女が、紺色の瞳で自分を見つめていた。目には涙がたまっている。だが、嬉しそうにアイジェルを見ているのだった。

「サフィリエル・・・なぜ、ここに?」

「覚えてないの? あなたはわたしを、かばって・・・山崩れのとき・・・」

 ああ、そういえば、おれは調査団の後方を手伝うように言われれて、ずっと調査団と行動を共にしていったっけ・・・

 ぼんやりと、状況が呑み込めてくる。

 彼女は魔法士の同期で、ときどき話をする間柄になっていた少女だった。


 初めて知り合ったのは、魔法士の練習試合だ。

 練習とはいえ、かなり実践に近いものだった。使う剣は本物ではないが、それに魔法を乗せて戦うのだ。

 相手が女の子だと思うと、つい手心を加えてしまった。それを見透かしたのか、おれの方が追い詰められてしまい、あわや・・・というときに本気になって体勢を立て直した。その後、かろうじておれが勝ったのだが、ほぼ互角の力だった。

 それに・・・むきになってかかってくるところは、どこかウタハを思い起こさせた。白っぽい金髪が、一瞬ウタハの銀髪に見えた。


 そうだ・・・あのとき――山崩れの予兆を感じて、引き上げる合図があった。みんなと逃げようとしたが、逃げ遅れたサィフリエルに気がついて、おれは引き返した。


 彼女の姿を見つけて声をかけたとき、山崩れが始まった。おれは彼女をかばって結界をかけたが、遅かった――のかもしれない。いや、こうして彼女がいるということは、一応助かったのだな・・・

 アイジェルは安堵のため息をもらした。


「そうだったな・・・無事でよかった・・・」

「あなたは無事じゃなかったわ――もう一ケ月も目を覚まさなかったのよ。なぜ?! わたしなんかをかばって・・・でも・・・本当によかった、こうして生きていてくれて――」

 サフィリエルの目から大粒の涙が流れる。

 アイジェルは、それを見て胸が熱くなった。今まで感じたことのなかった強い光が彼女と自分の中の何かに繋がった気がした。

 つと彼女の手を握り返した。

「うん、よかった、きみが無事で。こうしておれのそばにいてくれて」

 彼女を見て微笑んだ。

「お医者様に知らせてくるわ、あなたが目を覚ましたって」

 彼の視線に少し顔を赤らめ、サフィリエルは握っていた彼の手を放して立ち上がった。


 彼女が病室から出て行く足音を聞きながら、アイジェルは目を閉じて不思議な感覚を思い起こしていた。

 今、サフィリエルに感じた熱とはまた違う、さきほどの、あの心地よい光は何だったのだろう・・・あれは癒しの光だ・・・そうだ、おれは・・・幻影がフラッシュバックする。

 彼は片手で頭を押さえた。そこには包帯が巻かれていたが、痛みはなかった。

 

 あれは――懐かしい者たちの光だった。ウタハの気配も感じた。ウタハ――そう、思い出した、おれはすっかり思い出したのだ。

 なぜおれが、ここにいるのか、何をしようとしているのかを・・・

 そして、あんなに愛しいと思うウタハのことも思い出した。あいつは・・・おれの妹だ・・・

 

 この国ではない・・・懐かしい故郷、おれたちの国、魔法と科学が混在し、発展していた豊かな星の・・・


 幼いころは、ウタハが――あのときは名前は違っていたが――遅く生まれたせいか、両親も二人の兄たちも、とても可愛がっていた。おれも同じだった。大人になったら結婚したい、できると思っていた。しかし、いくらか常識を知る歳になって、彼女が妹で、結ばれることは叶わないと知ったときは、さすがにへこんだ。ショックだった。


 しかし、向こうにいたウタハは今と少し違う。あの頃は、身体の内側から湧いて出てくる光の揺らぎがあった。それが不思議でもあったが・・・両親は心配して、めったに表に出さなかったな・・・おれたち兄弟も彼女を世間の目から守ろうとしていた気がする・・・

 

 それでも大切な妹だというのは変わらない。


 だから――赤の魔女の要請を受けて、この次元のこの国へウタハが行くことを決めたとき、おれも行くと決めたのだ。

 あいつの婚約者と、ウタハに杖を捧げた魔法使いとともに・・・

 アイジェルの脳裏には、もう鮮明に当時の映像が流れていた。


 あの赤の魔女は、魔法使いでありながら、国の科学院の、トップスリーの位置にいる科学者でもあった。彼女は、すべて設定済みだと言った。彼女の頭の中は絶えず壮大な実験と計算式で占められているのだ。


 魔法と科学は非常に重なることの多い学問だ。

 まだおれたちの国の科学は、魔法のすべてを解き明かしていなかったし、魔法を使うことの便利さを人々は知っていた。だから当分、人々の間から魔法が消えることはなさそうだった。国はそれを暗黙に認めていた。


 だが、星間移動や次元移動に関わる、周波数や振動数の研究解明は進んでいた。


 おれたちの星に生きる者たちは、それらを調整することで、重い振動数や、周波数の星にも、物質のさまざまな形態をとって、旅することが可能になっていたのだった。自由に星々の間や、多次元の世界を。いまだ実証実験中のものもあったけれど・・・


 赤の魔女――彼女はいつも赤いローブを着ているのでそう呼ばれていた――は、自信ありげに話した。おれたちの行先のサーチも済ませており、おれたちを受け入れてくれる母になる存在ともコンタクトとっていると。


 ――そして、おれはこの星に生まれ、今ここにいる。

 まもなく仲間たちがくるだろう・・・


 アイジェルは、頭を覆っていた包帯を取った。




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