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フォラードの光  ― 星の記憶者 ―  作者: あけの星
第三章

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41/44

絵の中の使い魔⑷


 二人がエランの部屋に着地したとき、エランは机の上に広げられた地図を見ているところだった。


「いったい何があったのかな?」

 エランは地図から目を上げてたずねた。

「さあ、そこにかけて。突然来たわけを話してもらおうか」


 エランの言葉に、二人は応接の椅子に腰を下ろして、彼に向き合った。

「ごめんなさい、急に来てしまって。でも、どうしても助けなくてはならない人がいるのです」

 ウタハは緊張した面持ちでエランを見た。

 一瞬、彼は愛しさのこもった眼差しを投げかけたが、すぐ真顔になった。

「それは、どういうことなのか、聞かせてくれないか」

「エラン、先月の山崩れの事故を覚えているだろう? あれに巻き込まれて、意識不明になった魔法士がいたのを知っているよな?」

 マロウズが口をはさんだ。

「ああ、覚えているとも。私たちが駆けつけたときは、下敷きになった者たちが運び出されて行くところだったね」

「そう、その中の一人、今まだ意識を取り戻せていない男が、ウタハの助けたい人らしい。兄のような人だって」

「なんだって、兄?! もしかして・・・マロは、もう思い出したか? 私たちの関係を」

「ほぼな」

「私たちの同志は、もう一人いるのだ。彼女の兄だよ」

「あっ」

 マロウズは、はっと気づいた声を上げた。

「なかなか出会わないので、どこにいるのかと思っていたのだが、こんな近くにいたとは・・・わかった、急ごう、彼の元へ行くのだ」

「じゃあ、おれは先に行って、医師におまえたちが来ることを知らせておくよ」

「場所は?」

「救護所の一番奥の部屋だ」

「わかった。だが、できるだけ内密にしてくれるかい?」

「了解」

 マロウズはうなずくと、すぐ移動魔法で姿を消した。


 ウタハは、二人の会話が、何を言っているのかよくわからなかった。

(兄? 幼馴染で兄みたいだけど、本当の兄ではないし・・・もう一人の同志って?)


「まだ、きみはよくわかってないって顔をしてるね。そのうちわかるよ、さあ、私たちも行こう」

エランは立ち上がって、ウタハの前に両手を広げた。

 彼のそばへ来たウタハを、エランは胸に引き寄せて抱きしめた。

 熱いものが二人を包む。

「会いたかった・・・きみは?」

 エランは囁いた。

 ウタハも、こくんとうなずく。こうして自然にうなずけるのが自分でも不思議だった。つかの間の抱擁であったが、ウタハはエランの胸の中で、先ほどまでの動揺と不安が和らぐのを感じた。

 「安心して。私が助けるから」

 彼はそう言ってウタハの頭を撫でた。

 それから二人は移動魔法で城の救護所へ向かった。


 *


 ウタハたちが、救護所のアイジェルの部屋に着いたときは、マロウズが一人、ベッドのそばでアイジェルを見つめていた。


「アイジェル!」

 ウタハは駆け寄った。

 ベッドの上のアイジェルは、蒼白な顔をして、ほとんど息もしていないように見えた。

「しっかりして! わたしよ、ウタハよ、目を覚まして!」

 ウタハはアイジェルの腕を軽くゆさぶった。

「さっき、息が止まっていたらしい。おれが少しヒールをかけたら、いくらか息をするようになったが・・・エラン、やってみてくれるか?」

 マロウズが神妙な口調で言う。

「わかった、やってみよう」

 エランは、アイジェルの顔をのぞき込んだ。それから彼の額に向けて手をかざし、呪文を唱える。彼の手から白い光がアイジェルの額に吸い込まれていく。やがてその光はアイジェルの頭の周りから次第に全身を包む。白い光の繭にも見えるその光は、しばらくそのままとどまっていた。

 ――と、白い光は、徐々に薄くなり、すうっと消えた。

 アイジェルは、穏やかな息をしていた。顔色も少しよくなったかに見えた。

「一度では無理かもしれないね、しばらく毎日、私がヒールをしに来るよ」

 エランがそう言ったとき、部屋の入口から声がした。

「もう、よろしいでしょうか? 容体を見たいのですが」

 救護所の医師である魔法師だった。

 マロウズは、エランの顔を見た。

 彼がうなずくのを見て、マロウズが返事をした。

「お入りください。だいぶん落ち着きましたよ」


 青年の医師は部屋に入ってきた。エランの姿を見ると、上位の魔法師に対する礼をとった。

「明日から、毎日ヒールをしたいが、よいかな?」

「もちろんでございます! お待ちしております。ああ、大分呼吸が楽になってきているようでございますな。ありがとうございます」 

 

 エランは、ウタハとマロウズをうながして、彼の部屋を出た。

 入れ違いに魔法士らしい少女が部屋に入って行くのが見えた。

 





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