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フォラードの光  ― 星の記憶者 ―  作者: あけの星
第三章

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絵の中の使い魔⑶


 ウタハは先ほどからずっと黒猫の絵とにらめっこしていた。


 古い木の蔦模様の彫られた額縁の中に、その猫は、もの言いたげにこちらを見つめている。

 長く黒い毛はふさふさしているが、毛の端が金色で不思議な雰囲気を醸し出していた。こちらを見つめる目は濃い碧色で、まるで碧いクリスタルが入っているかに見えた。


 ウタハは猫に声をかける。

「こんにちは、わたしはウタハ。あなたを出してあげたいの。出てきてくれる?」

 しかし、反応はない。絵の中からじっと碧い目がこちらをみているだけだった。

「うーん、声かけだけじゃだめみたいね・・・」

 ウタハはノクィース先生から教わった簡単な魔法の呪文をあれこれ唱えてみたが、さっぱりだった。どうしたらいいんだろう・・・

 ウタハは頭を抱えた。

 夕食の合図の鐘が鳴っても、しばらくは向き合っていたが、さすがに疲れてきた。それで休憩を兼ねて食事に行くことにした。


 四階の離れの建物から食堂に行く通路は、三階と同じく花壇が通路に沿って作られている。今は冬なので、花はないが、葉を落とした低木が枯れた葉の間に立っていた。空はもうすっかり暮れてちらほら星が輝き始めている。夏ならまだ明るい時間だ。


 ウタハが冷たい風をよけるためにフードを被りなおした時だった、花壇の向こうに人影があった。いぶかし気にその方へ目を凝らした。それは人の姿だが、薄く青白い光を発していた。しかしウタハは、懐かしい思いが湧き上がった。見覚えがあった。

 ウタハはその人影に近寄った。

「アイジェル!」

 ウタハは思わず叫んでいた。

 青白いその影はウタハをじっと見つめると、ふっと辺りに青い白い光をまき散らして消えた。

「あっ」

 ウタハは息を呑んだ。

「まさか・・・アイジェルに何か・・・あったんだろうか?」

 人影があった場所を見回した。誰もいなかった。

 どうすればいいの? アイジェルのことを知るためには・・・

 学んだ魔法をいくつか思い浮かべた。

「そうだわ!」

 ウタハは急いで自室に駆け戻った。


 ミルルはいなかった。ワードローブに置いてある荷物の箱の中から、アイジェルからの手紙と、トイサから出るときにもらったペンダントを取り出すと、またノクィース教室へ戻った。


 ここなら誰も来ない。ウタハはテーブルの上にアイジェルの手紙とペンダントを置いて、椅子に座り、呼吸を整えた。

 それから手紙とペンダントの上に手をかざす。

 アイジェルを思い浮かべて、教わった透視魔法の呪文を唱える。

 ふわっと目の前が開いて人の姿らしきものが見えた。はっきり見えるまで呪文を続ける。やがて、頭に包帯を巻いたアイジェルがベッドに横たわっているのが見えた。ベッドのそばには、長着を着た少女と青年が立って彼を見つめていた。

 そこで目の前の映像は消えた。


 やはり、アイジェルに何かあったことは間違いない。どうしたらいいのだろう?

 館を抜け出して会いに行くのも難しい・・・

 自分にも移動魔法が使えるといいのだけれど、まだそこまで教えられていない。

 やっぱり、ここはマロウズに頼むしかないかしら・・・

 今、忙しいところだったら、申しわけないけど、アイジェルの命にかかわることだもの・・・

 ウタハは、大きく息を吐いて、椅子に深く座りなおすと、マロウズの顔を思い浮かべて名前を呼んだ。

「マロウズ・・・」

 さらに強く呼びかけたとき、あたりの空気が揺れた。と――

 そこに渦巻く空気を伴ってマロウズが立っていた。


 彼は膝をついて礼をすると、恭しく言った。

「マイ・レイディ ご用命は?」

「マロウズ、来てくれてありがとう。忙しかったのでは?」

「ご心配なく。お呼びとあれば、いつでも参上いたします」

 そう言ってにこりと笑った。

 しかし、少しやつれているふうにも見えた。

 ウタハは立ち上がって、向かいの椅子に座るよう勧めた。

 マロウズは、素直に椅子に座る。


 ウタハは、先ほど通路で見たアイジェルのこと、透視魔法で見たベッドで眠っている彼のことを話した。

「アイジェルは幼馴染だけれど、わたしにとっては兄のように大切な人なの。なんとか、居場所がわからないかしら? 王都で魔法士を目指していたの」


 王直属の魔法士団で学ぶ者は、古の魔法師の館で魔法だけを学ぶ者たちとは少し違って、魔法と剣の両方を学ぶのだ。地方からも推薦された者たちが入団していた。


 マロウズはそれを聞いて、思い当たることがあったらしい。

「わかるかもしれない、先月、小さな山崩れがあってね、魔法士の調査隊が巻き込まれたんだ。全員救出されたのだけど、意識不明の者が数人いてね、いまだに回復していない者が一人いると聞いているよ。もしかしたら、その人かもしれない」

「そうなの?! お願い、連れて行ってくれないかしら? そこへ」

 マロウズはちょっと考え込んだ。

「とりあえず、エランのところに行こう。おまえはこれから出かけても大丈夫なのかい?」

「ええ。大丈夫よ。ノクィース先生は、お出かけなの。しばらく戻って来られないと言われてるわ」

「そうか、それなら大丈夫だね」

 マロウズは使い魔の妖精を呼び出して、緊急事態だから、これからそちらへ行く、とエランに伝えるよう言った。妖精はそれを聞くとすぐ姿を消した。


「じゃあ、こちらに来て」

 マロウズはテーブルの横に移動するとウタハを呼んだ。

「エランじゃなくて、悪いけどね」

 いつものように、ふざけて片目をつぶって見せる。

 マロウズは、ウタハを自分の長着にくるんで抱えると移動の呪文を唱えた。 

 

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