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フォラードの光  ― 星の記憶者 ―  作者: あけの星
第二章

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夏光祭⑵






「え、貸し出し中ですか?!」

 

 ウタハは図書室の貸し出し窓口で、思わず聞き返した。

 昨日調べていた故事書の上古編が、上下巻見つからなかったので、係りの女性魔法師に尋ねたところだった。

「あれって、貸し出しできないのでは?」

 古い貴重本は貸し出しできないことになっていたはずだった。

「ええ。でも、先生以上の魔法師であれば、研究のためということで可能です」

「そうなんですか、残念です・・・どなたが借りられたのでしょう?」

「そういうことは、お教えできないことになっていますの」

「それでは、毎日、戻っているかどうか、本棚を確認するしかないのですね」

 落胆の声で言う。

「そうですね・・・ああ、もしよろしければ、返却されたとき、お知らせしましょうか?」

「はい、ぜひ!」

 ウタハは、係りが出してくれた予約連絡の票を書いて渡した。

  

 なんだか、少し気が抜けてしまった。もう一度あの預言詩を読んでみたかったのだ。だが、本音を言えば少し不安もあった。あれを読んだ後は気を失うほどだった・・・それほど魔力を必要としたのだろうか・・・?

 詩の深い内容は解らなかった。ただ目に焼き付けただけだった。だから、マロウズと一緒に検証したかったのだが、しばらくは無理のようだ。本が返ってくるまで。

  

 ウタハは、ふと思いついて、辺りを見まわした。今日はいつもより人が少なかった。入口に近い席でひとりふたり座って本を開いている。本棚の列には誰も姿が見えなかった。ウタハは本棚の最奥の突き当りへ向かった。あの場所を確かめてみたい衝動にかられたのだった。

 濃茶色の布のかかった壁の前で止まると、用心深くまた辺りをうかがう。誰も見ていないのを確認すると、そっと布をかき分けた。

「あれっ」小さく声をもらした。そこにあるはずの扉がなかったのだ。

 いや、よく見ると魔法に隠されて見えなくなっていると言ったほうがよかった。扉の辺りに手を伸ばすと、かなり強固な弾力が手を押し返した。おそらく誰か魔法師が結界をかけたに違いなかった。(いったいどういうこと?)

 ウタハは、静かに布を下ろして、昨日座った席に向かった。そしてマロウズを待つことにした。

 

 ウタハがいつも読んでいた歴史書を本棚から取り、席に戻ったときだった、突然、チュニックの胸元に軽い重みを感じた。

「ん?」

 チュニックに目を落とすと、襟元から小さな妖精が顔をのぞかせた。

 きょろきょろと辺りを見回して、ウタハと目が合うと言った。

「マスターからの伝言です」

 さやさやと木々の葉を揺らす風音にも似た声だった。

 ウタハは思わず上げそうになった声を、口を押えてかろうじて止めた。

 マロウズの使い魔の妖精だ。なんで、こんなところに入ってるのぉ・・・

 妖精はウタハの思いなどかまわず伝言を口にする。

「――館長のお供で王城へ行かねばならなくなった。図書室には行けないので、よろしくな。何かあったら、光を使う前におれを呼べ――とのこと。以上です」

「わかりました、と伝えて」

 囁き声で言う。妖精にはちゃんと聞こえたらしい。

「諒解しました」

 ウタハの胸を、軽い豆粒みたいな小さな足が蹴ったと思うと、チュニックから飛び出してふっと消えた。

「もう・・・なんなのぉ」驚きと、不思議な生き物の感覚で、ぼやきしか出なかった。

 あわてて周囲を見回す。よかった、だれも見ていないようだった。

 もう本を読む気になれなかったので、部屋に戻ることにした。


 部屋に戻ると、机に向かっていたミルルが振り向いて「あら、今日は早かったわね」と言ってニヤッと笑った。

「なんか、今日は疲れちゃって」

 なんだろう、ちょっと気になる笑いだと思った。ミルルは何か知っているのだろうか?

「ウタハ――」

 ミルルが声をかけてくる。

 内心びくりとしたが、ウタハは、できるだけ平静な顔をして「なあに」と返事をする。

「あなた、マロウズと何かやらかしたの?」

(うっ)声にはださず吞み込んだ。 

 ウタハが、昨夜のことを話してもいいものかどうか迷って、黙っているとミルルが続ける。

「館長とマロウズが王城に呼ばれたらしいわ。昨夜、あなたがマロウズと図書室にいるのを見た人がいてね、何かあったのかな・・・と思ったんだけどね」

「――え、そんな・・・同じ領なので挨拶してました・・・」

よほど、話してしまおうかと思ったが、やはり彼の意見を聞いてから話した方がいいのではないか、と思い直した。

「ほんとう?」 疑わしそうな声だった。

 ウタハはこっくりうなずく。(ごめん、マロウズに聞くまで待って・・・)心の中でつぶやきながら。

 ミルルはウタハを見下ろして――ウタハより頭一つ背が高いのだった――言った。

「まあ、いいわ、話せるようになったら聞かせてね」

(やっぱり、ばれてるのかな・・・)うなずきながら、これ以上突っ込まれないことにほっとした。

「あ、わたしお風呂に行ってきますねー」

 時間もさほど、遅くなかったし、いまミルルと一緒にいるのも気まずかったので、急いで着替えを丸めて持つと、後ろも見ずに部屋を飛び出した。

(ああ、びっくりした。ミルルが気づいているなんて・・・でも館長とマロウズが王城へ行ったのは、昨日のことと関係があるのかもしれないってことよね・・・帰ってきたら聞いてみなくては・・・)

 







今週も読んでくださって、ありがとうございました!m(__)m(^^)/

毎週金曜日に掲載更新しています☆


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