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フォラードの光  ― 星の記憶者 ―  作者: あけの星
第二章

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20/44

夏光祭⑴

 

 翌日、朝の集会が終わり、ミルルと食堂へ向かう途中で、マリエヌがウタハに駆け寄ってきた。

「ウタハ、聞いて、びっくり情報よ」

「え?」

 一瞬どきりとする。まさか昨夜のことがばれたのかしらと。しかし、そうでないことがすぐに分かった。

「この間からわたし、ときどき火の魔法師の教室にお使いに行かされてたでしょ。そこでね、仲良くなった人からマロウズのこと聞いちゃったの。彼ね、天才魔法師見習いって言われてるんだって。それに彼は館長のところで、見習いをしてるらしいわ。すごい人だったのねー」

 ウタハは、ほっとした。

「それでね、それでね」

 マリエヌは、ウタハのチュニックを引っ張って、ミルルから少し離れると声を少し落として恥ずかしそうに言った。

「教えてくれた人に、今度の夏光祭に一緒に行こうって、誘われちゃったんだけど、どうしたらいい?」

「えー!? でも夏光祭?」

「そうそう、来月ね、近くの村であるんだって。この館でも催しがあるらしいわよ」

「自由に外に出てもいいの?」

「年に何度かお祭りのときは、許可がでるみたい」

「おお、なんか楽しみになってきたわ」


 夏光祭は、一年の中で一番、昼間の長い日、太陽の光が満ちる日に、王国中で行われる祭りである。トイサの村でも、毎年この日には、広場に村人たちが集まって、食べたり飲んだり夜通し踊ったりの、にぎやかで楽しい祭りだった。

 この祭りには若い娘たちは花を編んで花冠や首飾り、腕輪などにして恋の成就を願ったりもする。子どもたちは早々に寝かされはしたが、ベッドの中で遅くまで起きていた。

 また光の満ちるこの日には、人と人でないものとの境目が薄くなるという。にぎやかさに引かれた精霊や妖精たちが、人に紛れて現れるともいわれていた。


「だから、ね、誘われたの、どうしよう?」

「いい人なら、いいんじゃない? でもあなた、マロウズが良かったんじゃないの?」

「そうなんだけどね・・・噂を聞いたら、なんとなく手の届かない人みたいな気がしてきて。憧れと現実は違うわよね?」

「そうなの? よくわからないわ・・・」

 ウタハは首をかしげる。

「マロウズと比べたら、もう普通。でも、わりと可愛いし、親切だし・・・どうしよっかな。そうだ、    ウタハも一緒にきてくれる? それなら行っても安心だし」

「ええっ、わたしも?」

「うん、お願い!」

 マリエヌは両手を祈る形に組んで、必死の顔で見上げる。

 ウタハは、どうしたものかと迷ったが、彼女が一生懸命なのを見て、しぶしぶ、うなずいた。

「しかたないわね、あなたには、負けるわ」

「わぁ、よかった! ほんとに約束よ」

 マリエヌは、笑顔でそう言うと、「じゃあ、また後でね」手を振って食堂の方へ急ぎ足で行ってしまった。

 ウタハはそれを見送りながら、軽いため息をついた。

 そして、ミルルを思い出した。いつも朝の集会の後は、彼女と食事に行くのが、習慣みたいになっていたのだ。さっきまで並んで歩いていたのだが、すでにミルルの姿は見えなかった。先に行ってしまったのだろう。食堂へ向かう見習いたちの姿も、ほとんど見えなくなっていた。

 

 大変、早く行かないと食べ損ねそう。そう思ったとき、聞き覚えのある声がした。

「おはよう」

 振り返ると、マロウズが立っていた。

(いつも気配なく現れるわね)そう思いながらウタハは、挨拶を返す。

「昨日は悪かったね」

「大丈夫。おかげで、解ったことがたくさんあったわ」

 ウタハは、にっこり笑った。 

 それを見た彼は、少し落ち着かなさげに言った。

「あれから、収穫があったんだね」

「ええ。夕食後、図書館へ来る?」

 マロウズはうなずく

「じゃあ、そのときに」

 歩きながら言う。

 彼もあっさり、「じゃぁね」と背を向けた。

「あら、食堂へ行かないの?」

「もう食べた」ちらっと振り返って言うと、片手を上げ、ふっと姿を消した。

 ウタハは。驚きの目でそれを見ていたが、もう移動の魔法ができるようになったのかと、彼の能力の高さに感心していた。


 午前中の授業が始まってすぐ、来月の夏光祭についての話があった。


「もう、館中(やかたじゅう)で夏光祭のことが持ちきりになっているようなので、お話しておきますね。当日は、館内で昇級試験があります。それぞれの弟子や見習いの者たちは結果によって進むべき道が変わります。

 弟子見習いの見習いさんたちは、魔力の精度と、各自に合う性質の魔法を検証して、次から学ぶ教室を決めることになります。ですから、あなたたちは、特に何もすることはありません。

 ですが、昇級試験は、それぞれの魔力の技を見れる場でもあるのですよ。中庭で行われますが、先輩たちの技をよく見て、今後の自分の魔法に生かしてくださいね。その後は、祭りの行われる近くの村に行くことを許可します。節度を保って楽しむように」

 

 ウタハとマリエヌは、ワクワクする気持ちを隠さず返事をしたのだった。


 午前中の授業が終わり、リモーネ先生が教室を出て行くのと入れ違いにアルダーが入ってきた。いつもより少し早かった。ウタハは、彼にノクィース先生が来ているかと尋ねた。

「いや、今日は調査でお出かけの日だよ。何か用があったのかい?」

 ウタハは首を横に振った。

「昨日、図書室でお見かけした気がしたので・・・」

 余計なことは、あまり言いたくなかったのだ。

「夜に一度戻られたのかもしれないね、忙しい方だから」

「何の調査されてるんでしょうね?」

「さあね、ああ、でも何か言ってたな・・・この間・・・そうだ、古いものを見つけたとか、なんとか――まあ、いつものことだからね。さ、食事の時間だよ」

 アルダーは、そこで話を打ち切った。

 ウタハも、それ以上はあきらめて教室を出たのだった。

 結局ノクィース先生に、きちんとしたお礼が言えなかった。会える確率は少ないので、あきらめることにした。もしかしたら夏光祭には、戻ってきているかもしれないけれど。チャンスがあれば、その時に言えばいい。








 







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