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フォラードの光  ― 星の記憶者 ―  作者: あけの星
第二章

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魔法仲間⑵


 あっという間に一ケ月が過ぎようとしていた。


 ウタハは、マリエヌとともにリモーネにしごかれて、少しずつ行儀作法を覚えていった。

朝、教室にくると、まず瞑想が始まる。その後、マナーの時間。終了少し前に体力強化の運動。トレーニングは、四階までの階段を往復十回とストレッチだった。最初は悲鳴を上げていたが、今ではさほどに苦にならなくなってきた。リモーネは、その様子を見て、今度は走り込みを追加するつもりらしかった。

 

 先生の魔法師は、五号室――教室の奥に個室をそれぞれ持っていて、魔法の研究や、持ち込まれた新たな魔法の検証をしている。それの手助けや、材料調達、他の魔法師たちへの伝達、お茶や食事の世話などが弟子の仕事である。その合間に魔法の訓練をする。たいてい出された課題をこなしてゆくことが多い。

 

  弟子見習いの仕事は、弟子の仕事を補助するのが主だったので、エリクルが教えながら、一緒に作業してくれた。ときどき、アルダーが顔を出して、きちんとできているかチェックがはいる。

 あと一、二ケ月もすれば、正式に弟子見習いになれそうであった。


 ウタハ は初日の朝の集会で起きた出来事を、リモーネにたずねたが、彼女は「図書室には、古い記録や歴史の書物があります。そこから何かわかることがあるかもしれませんね」とだけ言って、それ以上語ろうとはしなかった。


 他の魔法師も、弟子や見習いたちも、まるであの出来事を忘れたかのようであった。

 

 魔法師は仕事を始めるのが、ほぼ午後からで、夜中まで続くことがあたりまえになっていた。弟子は、必要に応じて助手を務める。ライティアル先生は、ほぼ毎日いるが、ノクイーズ先生は、ほとんど不在で、たまに帰ってきても、部屋にこもりっきりで研究に没頭している。彼には、お茶と食事を運ぶだけだった――正確に言えば、見習いが食堂から持ってきたものをアルダーは届けるだけだったが。


 そんなわけで、弟子は午前中が自由時間。見習いたちは午前中と夕食後である。しかしウタハたちは午前中、行儀作法で時間が終わってしまうので、図書室へ行くのは夕食後しかなかった。さいわい図書室は、夜中まで開いている。魔法師が必要な書物を取りに行けるように。


 *


 ウタハは、夕食後、リモーネの言った言葉をたよりに、何か解ることはないかと図書室へ通うようになった。

 かなり膨大な書物の中から、どうやって見つければいいのか・・・ウタハは、悩みながらも、持ち前の忍耐力と好奇心で一冊ずつ読み込んでいた。


 図書室には意外に人がいる。魔法自体はおのずからできても、それの理論や体系などは書物から学ぶ。親切な先生は、大筋を教えてくれるものの、細密なところは自身の研鑽だけだ。そのためにも、本を読むことは必須であった。


 広い図書室は、火の使い手たちが灯した火が、あちらこちらの壁でゆらめいている。窓からは、さっきまで見えていた夕焼けの名残もすっかり消えて、夕闇に取って代わったのが見えていた。


 ウタハは窓際の席に座って、古い歴史の本を開いていた。

 そのとき、ウタハの斜め向かいの席に、ひとりの少年が座った。金茶色の髪の少年で、藍色のフード付きの長着を着ている。見習いらしい。

 彼はちらっとウタハを見た。ちょっと驚いたらしく、彼の緑の瞳が大きくなった。

 ウタハも、つられたかのように少年を見た。

 

 少年は、無遠慮にウタハの向かいの席に移動して、じっと見た。

「もしかして、おまえ、ウタハか?」

 突然、自分の名を言われて、びくりとした。

「あ、あの、そうですが・・・あなたは?」

「あはは、やっぱりそうか、おれはマロウズだ。おまえのことは、タージェルンから聞いているよ」

「えー、マロウズ・・・さん?」

「マロウズだけでいいよ。知ってるだろ、ここでは気にするな」


 マリエヌが朝の集会の時、いつもそわそわして彼の方を見て、「すてきでしょ」と頬を染めていたけれど、ウタハは、あまり興味もないので、よく見ようともしなかったのだ。


 しかし、こうして近くで見ると、整った顔に緑の瞳、金茶色の髪。たしかに、マリエヌや他の女の子たちに騒がれてもおかしくない容貌だった。ウタハは、アイジェルを思い出した。どこか似たところがある。


「えっと、なにか御用でしょうか?」

 ウタハは授業の効果を発揮して、ていねいに言う。

 マロウズは、ぷっと吹き出した。

「なんだか、おかしい」

「えー?」

「いや、失礼。なんでもない。しかし、聞いた通りきれいな髪だな」

 ウタハの銀色の髪を一筋手に取って、じっとまた見つめた。

(あれっ、なんともないのかしら?)

 ウタハは、数日前、アルダーが同じようにウタハの髪に触れたとき、声を上げて飛びのいたのを思い出した。突然痛みが走ったという。以来、アルダーはあまりウタハに近づかない。マリエヌがそれを聞いて、触ったのだが、『指先にビリビリした痛みがくる~っ』と驚いていた。


 しかし、突然、触るなんて、ほんと失礼なやつ!と内心思ったけれど、口にはださなかった。

「もういいでしょ、何なの?」

 ウタハはイラっとして、髪を引き戻して立ち上がり、本を戻しに本棚へ向かった。

 本を棚に戻したとき、マロウズが後ろに来ていた。いつのまに? 気配がしなかった。

 彼はウタハの耳に顔を寄せて囁いた。

「この間のこと、知りたいんだろう? おれの知ってること教えてやるから、聞きたかったら、明日ここにこいよ」

 それだけ言うと背を向けて図書室から出て行った。




今週も読んでくださって、ありがとうございました!(^^)

毎週金曜日に掲載更新しています☆

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