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006 遭遇

 清々しい目覚め――とは言い難い。

 吐き気がする程不快で、目眩がする程に体調不良で。再生力(チカラ)を沢山使ったせいか、気分が悪い。


 どうやら、ここは村の一角。病院のような場所らしい。ベッドの上に横にされ、気休め程度の布団を掛けられていた。

 ……嫌な記憶が思い出される。前世の、死の間際の苦痛が。


「あ、ハルくん起きた?」


 ガチャッと音を立てて、扉が開く。部屋に入ってきたのはレイアさん。手拭いが掛けられた木桶を持っていた。


「ハルくん、逃げる途中で気絶しちゃってさ。怪我とかもあるだろうから、ここに運び込んできたの」

「あの人形たちは……」

「全部倒したよ。ひとまずは安心だね」


 曰く、あの人形たちは『傀儡(くぐつ)の魔物』と言うらしい。最近になってこの周辺に現れるようになり、単体の攻撃力はさほどでもないけれど、数が膨大なのでかなり手を焼いていたそうだ。

 それでも、あんな群を成して襲ってきた事はないらしい。

 まあ、その素体はどうやら武具の素材に活用されるらしいから、結果的にいい……のかな?

 怪我人は十数人居て、全員この建物の中で療養を受けている。幸いながら死者は無く、人の被害は小さかった。

 でも、村の被害は甚大だ。大群により蹂躙され、幾つかの家が倒壊。畑もほとんど踏み荒らされたらしい。


「ハルくんさ、あれってどういうことなの?」


 ……どう説明したものか。ほぼ確実に、あの件。それだけは分かる。


「なんか、僕には再生能力があるみたいです。それで……」

「ふーん……分かった。何かしらの役には立ちそうだけどさ、それがあるからって無理しないでよ?」

「は、はい」


 この能力は、大幅に体力を持っていかれる。連発し過ぎると気を失い、最悪本当に死んでしまうこともあるかもしれない。だから、あくまで最終手段。諸刃の剣であり、自衛の要。多用すれば危険なのは、僕が一番分かっている。


「僕、冒険者さんたちにお礼を言いに行きたいです」

「もう動けるならいいけど……」


 僕はベッドから降りる。多少倦怠感が残っているものの、問題はない。


「ご飯用意しとくね。無理しないこと!」

「わかりました」


 部屋を出て、建物を出て、荒れた道を歩く。損傷が酷い家が並んでいる。遠くの畑も、荒れているように見えた。村人たちは全員が瓦礫を片付け、復興を素早く進めていた。


「ゼノンさんたちー!」

「お、ハル! 無事だったかお前!」


 門の近くにそびえ立つ、赤と薄橙色の山。それが人形の死体の山だということは、近寄らないと分からなかった。四肢はバラバラ。胴体は破損。破片と微かな赤の名残だけが、そこに積み上がっていた。

 人形たちが持っていた武器は地面に無数に突き刺さっている。その前では、見覚えのある三人組。


「槍とか何とかで斬られてたが……あんな怪我で大丈夫なのか?」

「なんか、回復の能力があったみたいで。だから大丈夫でした」

「出会った時から不思議だったが、まさかそんな能力(スキル)を持っていたとは……摩訶不思議に満ちたような存在だな」

「やっぱやべぇな、ハルは」

「え、えへへ……」


 なんかすごく褒められた。前世では滅多にそんなこと無かったから、嬉しい。思わず素で照れてしまった。


「そ、それより。皆さん、ありがとうございます」

「何がだ?」

「戦ってくれたことです。命をかけて、僕たちを守ってくれた」

「そりゃ、冒険者だからな。この村でお世話になってる以上、ある種の使命みたいなもんだ。それに、ハルの足止めのお陰で犠牲者も出ずに一掃できたんだ。むしろこっちが感謝したいくらいだよ」


 思いもよらぬ感謝の反撃。あまりの嬉しさに顔がにやけてしまう。


「あ、ありがとうございます!!」


 踵を返して、逃げるように走り去った。これ以上いたら嬉しさのあまり変な反応になってしまう。

 そんな危機感を持ち、僕は村の奥へと戻っていった。


 ――と、ふと僕はとある音を聞いた。

 ガサガサ。ガサガサ。木の葉が擦れる音。その音は、近くの茂みから聞こえてくる。

 僕は興味本位に、その茂みの奥を覗き込んでみた。

 すると


「だ、大丈夫……?」


 茂みの奥にいたのは、黒猫だった。ただの黒猫じゃない。見た限り、何があったのかボロボロだ。

 黒い毛並みは荒れ、所々の皮膚が裂けて血が流れているようにも見える。しかも前脚を怪我しているようだ。

 僕に向かって、フシャーと威嚇している。

 警戒心は凄まじく、僕は手を伸ばしたが前足でそれもはたき落とされた。その際鋭く伸びた爪で手のひらを引っ掻かれ、皮膚に血がにじむ。すぐに再生したけれど、少し痛かった。


 僕は黒猫の身体を掴んだ。本来ストレスとかも考えると駄目だろうけど、怪我が心配だったから。

 黒猫は暴れに暴れる。ジタバタと。でも段々とその動きは弱々しくなっていって、終いにはぐったりとしてしまった。

 脈拍が弱い。呼吸もたどたどしい。

 僕はすぐに分かった。この黒猫の命は、もう長くないのだろうと。

 このまま放置していたら、確実に死んでしまう。


「なんとか癒やさないと……」

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