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046 血戦

 真っ暗で、星空が広がっていた。一寸先が見えない闇というわけではなさそうで、まるで夜の様だった。半球状に広がった、外とは異なる空間。その境目では昼と夜が共存し、法則が希釈されている。

 ハル一行は闇の境界へと踏み込んだ。ハル、クロエ、ティナ、フィス、メイズ、コルヌ、リゼの七人は、衝撃の光景を目撃することになる。

 ボロボロになりながらも剣を振り、目に留まらない程の速さで交戦を続けるロンド。対して、漆黒の剣を振ってロンドの攻撃を受け流す女性。

 ひと目で判断出来た。七日間の間被害が食い止められているのは、ロンドの貢献によるものだと。そして、桁外れの力を誇るロンドと互角に相対しているのは、件の魔王だと。


「がっ、はぁ……はぁ……」

「生身の人間が、これ程までに私と戦えるとは」


 ロンドは崩れ落ちた。疲労と怪我で一ミリも動くことが出来ず、魔王はつまらなそうに脇腹を蹴り飛ばした。僅かなうめき声と共にロンドの身体は大きく飛ばされて、地面を転がる。

 魔王の視線はハルへと向いた。大きく目を見開き、息を呑む。


「……魔王ミッドナイト。もう侵略はさせないよ、この勇者ハルの名の下に」


 覚悟を決めたような表情で、いつにも増して緊張感を含む口調で、ハルはそう宣言した。

 と同時に、控えていたクロエたちが構える。クロエは殺気立った目で魔王を見つめ、血管が浮き出るほどに拳を握りしめて。ティナは自由自在なスライムの触手を、コルヌは腰の鞘からレイピアを抜き、リゼは空中から生成した大きな魔法の杖を掲げ。フィスはナイフ、メイズは真紅の二股槍を手に。


「魔王として、勇者の挑戦を受ける。何処からでも、かかってこい」


 そうして、戦いの火蓋が切って落とされた。

 先制攻撃を放ったのはクロエ。音速に近い速度で急接近し、強烈な右上段回し蹴りを叩き込んだ。それを剣で受け止めようとした隙をついたのがコルヌ。レイピアの目にも留まらぬ刺突。

 全て当たりこそしなかったものの、剣聖との戦闘で疲弊しているであろう魔王には有効手。


 それからも、一斉攻撃が続いた。

 クロエの連続蹴りとコルヌのレイピア、フィスとメイズで魔王を追い詰める。攻撃はかする程度で大きなダメージは与えられていないが、その後のティナが広範囲にスライム体を展開し吸収しようと試みたり、リゼの魔法の掃射も試してみたが、全て目に見えたダメージには達せず。


「『黒刺叫乱』――」


 上空に向けて掲げられたミッドナイトの手のひらに、青白い炎が浮かぶ。それが視認できた直後――大気のエネルギーが暴発し、圧倒的な瞬間的熱エネルギーが辺りを襲った。

 同時に襲い来る、黒い茨。有刺鉄線をはるかに超える殺傷度の、鋼にも思える硬い茨は隙なく張り巡らされ、熱で露出し焼け爛れた肌に追い打ちをかけ、悶絶するほどの痛みを与えた。


「――ッ゙!?」


 ドロドロに熱した鉄を常に押し付けられているような、拷問。茨から離れることが出来たハルは回復出来たが、小柄でダメージが少なかったフィスとメイズを除き、その場にいたほぼ全員が致命的なダメージを負っていた。


「クロエ、大丈夫!?」

「うっ……ぐぅ……」


 ハルは真っ先にクロエに駆け寄った。患部が広すぎるが、問題なく治療が可能だった。

 ただ、問題はそこじゃなかった。

 魔王は無傷。高い瞬発性と運動能力で、まるでクロエのような動きをしてみせた。痛みに悶えるコルヌの眼前に現れ、鳩尾に痛烈なアッパーを叩き込む。肺から空気が無理やりに押し出されて、コルヌは身体をくの字に折って地面に倒れた。

 彼女は、あまりの痛みと一瞬の出来事に反応出来ず、意識こそ保てたものの瀕死の重傷だった。


 ――コルヌを回復させなければ。


 クロエの治療を荒方終えたハルの意識は、倒れ伏せたコルヌに向いていた。そのせいだろうか、意識が散漫になっていたのだ。

 魔王の攻撃は留まる事を知らなかった。リゼが辛うじて杖で受け止めたのは、ミッドナイトが放った拳。数秒もせずに杖は打ち砕かれ、木っ端微塵になってしまう。

 すかさずリゼは水を生成。操って、ミッドナイトを水の中に閉じ込めた。さながら、ガラスの無い水槽。果たしてミッドナイトに酸素が必要なのかは疑問だが、動きを止める有効打なのは間違いない。


「魔王、ミッドナイト……。いつからそんなに凶暴になったの……? 思い出して、あの頃を」


 痛みに耐えながら、リゼは語りかける。水中のミッドナイトの口からは気泡が溢れ、返答は耳に届かない。

 ――次の瞬間だった。ミッドナイトの手中に漆黒の剣が現れたかと思いきや、水の牢獄は四方八方不規則な斬撃によって切り刻まれ、大量の水が洪水のように溢れ出す。

 そして、青い水に紛れて真っ赤な鮮血が舞い散った。


「ぁっ……、どう、して……」


 脱出出来たことに対してか、語りかけが意味を成さなかったことに対してか、それが信じられないかのように目を丸くするリゼ。

 胸元には斜めに深い傷が刻まれ、力が抜けて彼女は倒れた。

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