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044 再会

 僕たちは、ブーゲンビリアを旅立つ。約二週間滞在し、短い間とは言え勇者として多数の依頼をこなして、やっと馴染めてきた頃。

 剣聖ロンドからの手紙をきっかけに、その翌日に出発することを決意した。


「……少し、名残惜しいのはわかるけどね。僕は勇者、君たちは勇者パーティの一員なんだ。魔王が動き出したと聞いて、黙っているわけにはいかない。たくさんの人が、今も最前線で食い止めてくれているだろうから。僕たちはその恩に報いるために、行かなきゃいけないんだよ」


 まるでアートのようにレンガが敷き詰められ、統一された風情のある美しい街並み。いつもサービスしてくれる大衆食堂のおばさんに、美味しい紅茶を割引してくれるカフェの寡黙な店主さん。

 お世話になった人には、昨日のうちに全員にお礼を言った。全員、僕の旅立ちの――魔王討伐の夢の、背中を思い切り押してくれた。


「お魚、美味しかった。終わったら、また食べに来よ」

「温泉、気持ちよかったね……。またハルちゃんと入りたいな」

「ハルおねぇちゃん、やさしい。どこまでもついてく」

「くふふふっ、メイズちゃんはぁ、別にこの街に未練なんかないしぃ?」


 反応は多種多様、四者四様だった。クロエとティナは若干惜しいところはあるみたいだけど、それも僕らが無事に帰還すれば達成出来る。

 ……あれ、今もしかしてフラグ立てた?

 いや、気にしないことにしよう。そんなのいちいち気にしてたら心が持たない。


「じゃあみんな、そろそろ出発しようか」


 そうして、僕たちはブーゲンビリアに別れを告げ、更に北へと進んでいくことになった。


 木製の質素な馬車。道はある程度形成されているが当然舗装なんてものはなくて、赤土が露出している。道端に落ちている拳大の石を車輪が踏んでガタンと車体が揺れることもあって、到底気が休まるものではなかった。

 ただ、やはり馬車に乗っている期間が長かったのでどうしても慣れてきてしまっていた。


 恐らくは初めて経験するであろうフィスは、揺れが怖いのか僕の腕にひっしとしがみついていた。その姿はとても可愛かったので、寧ろ支えてあげていたほどだ。

 メイズは結構余裕そうな態度だったものの、最初だけだった。僕の腕につかまって、結局小柄二人組は僕の腕を支えにする結果となったのだ。


 ――そして、馬車に揺られること五時間ほど。


 最北の地――すなわち魔王軍との境界線に位置する、小国コペル。その城塞都市に、やっとの思いで辿り着いた。


「ここが、魔王軍戦闘最前線の地、かぁ」


 目指すは北門、そこから先は魔境に入る。

 僕たちは一刻も早く合流を果たさないといけないため、早歩きで北門へと向かった。


 横目に映る、漆喰と木造の中世ヨーロッパ風の建物たち。市民も普通に生活しているが、なんだか鎧を来た兵士や剣を携えた剣士たちが多い気がした。

 これも、魔王が動き出した影響なのだろうか。


「なんだか物騒な……」


 クロエとティナは非常に頼もしい。が、フィスとメイズは小柄なため、僕が手を引いていた。ぶつかったり変なやつに目をつけられたりしたら面倒なのが、今からでも目に見えるから。


「……久しいな、勇者殿」


 突如として、意識の外からそんな声が聞こえてきた。何処かで聞いたことがある声色、口調。

 そんな折に目の前に現れたのは――一人の女性だ。白黒の二色が混在しているショートヘアに、純白のマント、そして腰に差されたレイピア。嫌でも覚えている。


「お久しぶりです」


 その人物の陰に隠れるようにしていたがひょこっと出てきたのは、青いロングヘアのおっとりとした女性。


「コルヌさん、それにリゼさんも!」

「そろそろ来るのではないかと首を長くして待機していた。全く、測ったように丁度良い時間で来るのだな」

「勇者になられたと言う話は、剣聖様から聴きました。ご立派になられて」


 武闘大会で知り合った二人がまさかここにいようなんて予想できないだろう。クロエに至ってはコルヌとリゼに抱き着いて、旧交を温めていた。


「何か私たちにも出来ることはないかと思い立ち、赴いた次第です」

「単刀直入に噛み砕いて言うなれば、私たちも君たちのパーティに加入したいと思っているのだが」


 ……ということらしい。別に僕としては何ら問題はないし、心強い味方は何人いても足りない。両手両足の指で数え切れないほどいても、充分過ぎるということはない。

 肝心なのは、四人のことだけど。と目配せをしてみたら、全員特に不快そうな反応は見せていない。


「……じゃあ、その厚意に甘えて」

「決まり、というわけだな。これからよろしく、勇者殿」

「何卒、よろしくお願い致しますね」


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