020 会心
――アルバニスタ王都武闘大会二回戦。
一回戦から二十四チームが退場し、残り八チーム。
第一チーム、《剣聖》ロンド・ミラー
第八チーム、《幸運の申し子》シャルド・ラドクリフ
第十二チーム、《無名の新星》ハル
第十四チーム、《蒼き光芒》デリア=フォン=リュード
第十九チーム、《人形劇》ソナタ
第二十三チーム、《廻る円環》コルヌ・ハーヴ
第二十六チーム、《紅き暁光》ロティル・ギルベルト
第三十二チーム、《死神》ザウス=ヴァン=レングランド
以上が、二回戦に出場するチームのそれぞれのリーダーだった。
開会式でクロエが見かけたという二つ名持ちの選手のうち、デリアとコルヌが確認できる。よほど強いのだろう、クロエは強く唇を噛み冷や汗を流していた。
「ロティルは運だけで登ってきた。でも、他は違う。一筋縄じゃいかない強者ばっかり」
「この剣聖ってのが一番ヤバそうなんだけど……」
「全員ヤバい」
その後、それぞれの選手について軽くクロエから教えてもらった。
《剣聖》ロンドは、世界最強の剣士と名高い英雄。過去何度も魔王軍と戦ってきた猛者で、人類の要だ。
《幸運の申し子》シャルドは、今までその類稀なる強運で世界を渡り歩いてきたと言っても過言ではないほどに、運が強い。たかが運だと侮るなかれ、だそうだ。
《蒼き光芒》デリアは、まるで光そのもののような素早い剣技が特徴的な剣士。蒼き閃光が見えたその時には、必ず誰かが倒れる。
《人形劇》ソナタに至っては、クロエもよくわからないそうだ。取り巻きが強いらしく、本人の強さはわからない。
《廻る円環》コルヌは主に精神攻撃をメインとしてくる。だが接近戦も遠距離戦も得意分野であり、とにかく小賢しい。
《死神》ザウスは、まさにその二つ名に相応しい大きな鎌を振り回し、決闘と称して殺害した英傑も数知れず。うちに秘めたる狂気は、相手の命を奪いかねない。
「……全員ヤバいね。この中からランダムで相手チームが決まるわけなんだけど」
「大丈夫。一騎討ちなら得意」
「ほんと? 無理しないでよ」
――そして、運命の抽選が行われ、僕らの相手チームが決まった。
「さあ始まりました、二回戦第二ブロック。先日の第三ブロックでその強さの一片を見せつけた第十二チームのハル選手とクロエ選手が、今フィールドに入場しました」
「今回のフィールドは一回戦とは異なり、野外の森を模したフィールドとなっております。主力は速さを持ち味としていますから、障害物の多いこの局面でどう動くか、大変見ものですね」
「さあ、どうやら相手チームも入場してきたようです。《蒼き光芒》デリア選手率いる第十四チームですっ!!」
相手は、その速さが特徴のデリア。ある意味では一番相性が悪く、ある意味では相性が良い。それなりに好カードなのではないか。
安堵する暇は無いけれど、隠れ場所があるのは助かる。クロエに迷惑をかけることはないのだから。
「さあ、両者揃いました。それでは第二ブロック、これより開始です!」
実況のコールと同時に鳴り響くゴングの大きな音。
「じゃ、行ってくる」
「頑張って、クロエ」
クロエは悠々とした態度で森へと入っていった。
僕はクロエの背中を見届けて、近くの茂みに隠れてやり過ごすことにした。
❖ ❖ ❖ ❖ ❖
「相手は初心者? どうせ一回戦運で勝ったクチだろ。たまにいるんだよ」
「しかもチームは二人だって。噂によればそのうち一人は逃げ回ってる支援職らしいしさ、案外今回は簡単に行けそうじゃない?」
「んん、よゆーよゆー。うちら、しょーみさいきょーじゃん? あのネコミミも、デリアたんが出なくってもうちらで一瞬ってもんよ」
二メートルはあろうかという巨大な棍棒を肩に担いだ青年と、白いフード付きの上着を羽織った身長の低い女性、ヘソと肩を露出させた胸部アーマーと短パンを着用した桃色髪の女性。その一番後ろを歩くのは、綿製の青いシャツと灰色の長ズボンを着た青年、デリア。
「ねーねー、デリアたん。どした、そんなにきんちょーしたような表情しちゃってさ。あ、もしかして――ッ!?」
デリアの目の前でふざけた態度で歩いていた女性は、言葉半ばで沈黙した。というよりかは、その場から忽然と消え失せた。目撃したデリアの視界に映ったのは、左方向へと弾き飛ぶ、痛みに顔を歪ませた女性の顔と、黒い何かの残像。
「全員戦闘準備。敵は視認できない程に素早いぞ、警戒を怠るな」
「わ、わかった! 索敵はしてたつもりだったけど……」
「何が起こったんだ? 警戒は解いてないってのに、どうやって認知をかい――ぐっ!?」
男性の断末魔。振り向いたデリアと女性が見ると、防御の為に身体の前で構えた棍棒を破壊し貫く拳が、的確に男性の鳩尾にめり込んでいた。
「ガハッ……」
白目を剥いて気絶し、力が抜けた男性はなすすべも無く崩れ落ちた。
「お、お前は一体なんなんだ……」
デリアの疑問に応えるように、黒髪の人物は視線を二人へと向けた。
「ただの黒猫、だけど」




