【1】七宝行者
“トラップに嵌り過去へトリップし、トラベルをすればトラブルに見舞われトラウマになる!?”
過去未来へ転移する方法には、様々なパターンがある。
①タイムワープ(時間移動)
超光速時空転移装置や時空連結移動装置のある原動機装備の乗り物を使い、過去未来へ瞬間移動をする。
転移先で、乗り物を利用して移動が出来る為、未開地での探索に適している。
②タイムゲート(時間門)
時空転移門とも言われ、超光速時空転移装置や時空連結移動装置を装備して過去未来へ瞬間移動するが、装置を転移門の出入口に設置する必要がある。
決まった場所にしか移動出来ないデメリットがあるが、転移する物(乗り物・人)には装置を付ける必要がないので安全面・軽量化・コストにメリットがある。
③タイムトラベル(時間長期旅行)
時空転移機を使い、過去未来へ移動をして長期間の旅行を可能にする。
➍タイムトリップ(時間短期旅行)
装置・機械・能力により、過去未来へ移動をして短期間の旅行を可能にする。
タイムワープとほぼ同じで大きな違いは方法と期間のみだが、条件付きで一時的な移動になる場合もある。
⑤タイムリープ(時間跳躍)
特殊能力(超能力・神通力)や装置を使用し、転移する人物の意識のみが時間跳躍をして過去へ移動する為、転移する人物が生存した時代にしか移動出来ない。
⑥タイムスリップ(時間滑落)
手段不明の偶発的な状態で、時空の歪みに滑り落ちた超自然現象で、過去未来へ瞬間移動する。
転移方法が正確に判明していない為、片道切符の可能性がある。
タイムクエイク(時震)もあるが、震動に特化したモノでタイムスリップの一種。
可能であれば、アナタならドレを選択する?
そして、一人の怪僧が目の前に現れ、いきなり過去の時代へ飛ばされたら…
アナタはドウする!?
この物語は、異世界‥戦国時代へ人外を超えた力によって飛ばされた女の物語。
「オーバーローカス」ではなく、
「無極転生~戦国行ったら本性だす~」でもなく、
「この素晴らしい戦国に眼福を!」手当り次第になって来たので、
「転生したらサムライだった件」出鱈目過ぎて、転生ではなく転移だった為、
「戦国食堂」…
「とんでもスキップで戦国乱世放心メシ」…
「天然ですが、なにか?」てんで駄目なので、
とりあえず、タイトルは『戦国トリップ‐AYAKASI‐』にしておく事にした。
戦国乱世に、果心居士という幻術師(ソーサラー)が居た。
七宝行者(しちほうぎょうじゃ)とも呼ばれ、時の権力者である織田信長・明智光秀・豊臣秀吉・徳川家康の前に現れて幻術を披露したと伝わる。
七宝行者の謂れは、七種類の幻術を扱うという言い伝えから【七宝】と呼ばれたが、果心居士が得意とした幻術は幻覚・幻聴・変身の三種類だった。
または、七種の宝物(仏具)を持っていたという説や、七人の凄腕の行者(弟子)を育てたという説も有る。
法華経で七つの宝(七宝)とは、聞・信・戒・定・進・捨・慙の事で、七聖財とも云われる。
七つの宝(七宝)は頭上の七穴の事とも云い、二つの目・二つの耳・二つの鼻の孔あな・一つの口を意味する。
しかし、この七宝行者は天台宗や法華宗(日蓮宗)の行者では無く、元は法相宗の出なので直接の関係はない。
但し、日本最古の修験道である葛城二十八宿は法華経信仰であり、(えんのおづぬ)像が右手に持っているのは法華経である為、密教や修験道を取り入れた七宝行者も全く無縁ではない。
七宝と七曜行者(弟子)は以下の通り。
【七宝】
①黒檀蒔絵の玄武如意=僧侶が読経の際に持つ孫の手。
②白銀の白虎燭台=仏壇に灯明を供える蝋燭台(火立)。
③朱塗竹・桃色珊瑚の朱雀中啓=僧侶が儀式等に使う扇(浮折)。
④紅縞瑪瑙(サードニクス)の鳳凰香炉=香や線香を焚く器。
⑤金属製(金・銀・銅・錫)の麒麟長柄錫杖=遊行僧や修験者(山伏)が使う音の鳴る杖。
⑥深緑翡翠の数珠=読経をする際に、その回数を数える念珠。
⑦地獄変相図の掛軸=小栗宗湛・作の地獄絵図。
【七曜行者】
➊日輪行者(日輪坊)=暁 ※硨磲貝・金緑石(クリソベリル)の応竜払子
➋月華行者(月華坊)=朧 ※銅・瑠璃(ラピスラズリ) の金剛宝珠鈴
➌火影行者(火影坊)=焔 ※硨磲貝・赤水磨礫金工象嵌の赤竜刀子
➍水雲行者(水雲坊)=潮 ※蓮台座の水晶玉
➎木魂行者(木魂坊)=榊 ※琥珀の首掛長数珠
➏金剛行者(金剛坊)=鐵 ※銅・鉄・檜の大日如来金剛独鈷杵
➐土門行者(土門坊)=堤 ※歌口漆塗欅霊亀の法螺貝笛と貝の赤緒
この他に、果心居士が作らせたという法具があると云われる。
様々な伝説を残した得体の知れない怪僧が、七宝行者こと果心居士という実在の人物である。
歴史的な怪僧と知られる日本の道鏡やロシアのラスプーチンにも引けを取らない存在感があるが、前者2名と異なるのは…果心居士は立身出世をする事が出来ずに、権力の座には縁が無かった。
その果心居士が現世に姿を現す。
この小説は、2018年に書いた『果心居士幻術奇譚』・『鬼一法眼』から派生した作品です。
以前の作品の物語や設定を利用して、2024年に新たに書いた作品です。
作者の好きな作品である『伊賀忍法帖』と『時の行者』を一部オマージュしています。
○参考史料
・『玉箒子』全6巻(第3巻「果心幻術」)林義端・著(1696年=元禄9年)
・『醍醐随筆』全2巻(上下巻)中山三柳・著(1670年=寛文10年)
・『古老茶話』柏崎永以・著(江戸時代中期=1741年頃)
○参考資料
・『七宝外法帖』果心居士・作(1584年)
・『伊賀忍法帖』山田風太郎・著(1964年:実業之日本社)
・『時の行者』横山光輝・作(1976年:講談社・1993年:リイド社)
・『池坊(IKENOBO)』HP
・『文化庁重要文化指定目録』