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【二章完】トライあんどエラーを拳で!?  作者:
第一章 でこぼこチーム編
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第5話 新しい仲間はイケそうでイケない

 セエレロリガキ認定事件から数日。


 俺たちは何度もケルベロスに挑んだ。


 が、駄目だった。


 確かに成長している実感はある。


 だがそれは戦いの中でというよりも戦いが始まるまでだ。


 激強ラスボスにターン制バトルで先制攻撃を放つだけ。


 次のターンには死ぬ。


 そんな感じだ。


 そもそも、俺が弱すぎて戦いにならない。


 これじゃいくらトライアンドエラーを繰り返しても勝てっこない。


 ってことで、そのことをセエレに伝えた。


「ふーん。難易度が高すぎってこと? でも、あのケルベロスそんなに強くなくない?」


「お前っ、このロリ———」


「ん?」


「いえ、失礼しました。ですが、このままでは埒が明きませんよ。もう少しモンスターを弱くするか、そうですね。もう少し戦闘を長引かせるための仲間が必要です」


 そうだ。


 異世界と言ったらパーティーだろ。


 セエレはお金たくさん持ってるだろうし、そのへんの冒険者を雇って、支援してもらえばいい。


「冒険者雇うのは無し」


「なんでだよ!それじゃあ……」


 クソッ。


 なんで駄目なんだ!


 じゃあ、他に人間は……。


「そうか。それなら俺とフォルナが最初にいた牢屋に居た銀白色の子は? 彼女ならいいのでは?」


 俺がいた地下には、対面の牢屋に銀白色の娘、隣の牢に魔族っ子がいた。


 だが、俺のセンサーがあの魔族っ子はまずいとそう告げている。


 だから銀白色の子を選択した。


「ああ、あの元名家の…………うーん……」


 セエレはその体をリクライニングチェアにすっぽり埋まらせ、回転している。


 大人の椅子とそれに似合わないその肢体との対比が、よりいっそうロリ感を醸し出していた。


 今はサングラスはしていない。


 あのサングラスに意味はあるのか。


「ふーむ、まあいいか。うんいいよ。じゃあ、彼女にそう伝えておく」


 よっしゃー!! 的が増えれば時間は稼げる。


 たとえその名家のお嬢様が使えなくても問題はないぜ。


「ありがとうございます!!」


 俺は一礼して、書斎を後にした。



 ———



 その夜。


 無事転送された俺たちはそこで、銀白色の子と再会した。


「今日はよろしくおねがいします。俺は我無、こっちにいるのはフォルナです」


「私は高位悪魔フォルナよ。よろしくお願いするわ」


 なんだか今日のフォルナは気合入ってる。


 飼い犬が新しくやってきた犬に格付けするような、そんな気概がある。


「私はクノスだ。……よろしく」


 蒼の瞳に銀白色のクラウンハーフアップの長髪を垂らす。


 白を基調としたシンプルなデザインのコートを着用しており、影の指す美貌はまるで月を反射する湖だ。


 うん。


 牢屋で会った時と変わらない。


 唯一の変化はその腰に真白い鞘の剣をぶら下げていることだ。


 剣士なのだろう。


「今日はよろしくお願いします」


「あ、うん。よろしく」


 一通り挨拶を済ませた俺たちは獣道を進んだ。


 目を点灯させたマークが前を進む。


 今日はケルベロスまで結構時間がかかるらしい。


「それで、クノスさんは剣士なんですか?」


「ああ。まあ、魔剣士だが」


 おおー魔剣士!


 って剣士と何が違うんだ?


 一般的に言えば剣も魔法も使えるってことになるが。


 だとすれば、これは想像以上のサポーターじゃないか!


「それじゃあ、魔剣士っていうのは———」


「びゃああああああああ!!」


「ぐふぁっ!?」


 俺が魔剣士について質問しようとすると、前を進んでいたクノスから急に抱きつかれた。


 コートではわかりにくい柔らかいなにかが顔面に押し付けられる。


「ど、どうしたんですか、きゅ、急に……」


「なにごとですか!」


 マークがこちらを照らすとそこには大きな蜘蛛の巣があった。


「蜘蛛の巣ね。スパイダー。あなた、なかなかにかっこいい巣を作るじゃないの。悪魔ポイント10ポイントよ! ふふふ」


 フォルナは蜘蛛にポイントを贈呈した。


 一体何がこの悪魔様の琴線に触れたのか。


 が、クノスはそうではなかったようで。


「む、むりむりむりむりむりっ!!」


「ちょちょっと、クノスさん。もしかして、虫苦手なんですか?」


 クノスを身体から引きはがすと俺は質問した。


「虫は無理なんだ。す、すまない」


「いや、別に謝ることじゃないですよ。誰にだって苦手なものはありますからね」


「……う、うむ?」


 そう言うと俺は道を進み始めた。



 ———



 しばらく進むとマークが止まった。


「足跡です」


 そこには子犬の足跡があった。


 やつだ。あの犬公ケルベロス。


 普段はこうしてちっちゃくなって活動してやがる。


 おそらく獲物の油断を誘っているのだろう。


 憎たらしーやつだ。


「子犬なのか?」


 クノスが質問した。


「いや、あいつは戦闘態勢に入ると巨大化するんですよ。とんでもなく怖いですよー。顔が3つもあって、地獄の番犬ですからね」


「地獄の番犬と言えば、私は高位の悪魔だけど地獄には行ったことないわね。たまに、堕天使のサリナスが聞いてくるのよ。地獄ってどんな場所ですかって。でもそんなの知るはずないじゃない?私は高位の悪魔なんだもの。だから言ってあげるのよ。噂に聞いた話をね。地獄ではね———」


「あわわわわー、やめ、やめてくれ。頼む」


「え?どうして? これからかっこいい話が始まるのよ。地獄の救世主チョリソーと地獄の悪魔たちの血を血で洗い、内蔵が飛び散り、腸を紐のように扱う醜いバトルが———」


「ううううううううもう無理、むりむりむりだ」


「おいフォルナ。怖がってるからもうやめてやれ」


 他にもたくさんあるのよ? というフォルナを止めた。


 どうやらクノスは怖いものも苦手らしい。


 まあ、誰にでも苦手なもの、怖いものはある。


 仕方がないことだ。


「クノス。大丈夫ですか?」


「うっ、うん。すまない。取り乱してしまって。情けないだろう。剣士なのに虫と怖いものが苦手だなんて、はは」


「いや、別に苦手なものなんて誰にでもありますよ? なにも問題じゃないです」


「そ、そう……か?」


 ちなみに俺はゴーヤが苦手だ。



 ———



「とうとう見つけましたよ。あそこです」


 マークが指差す先にはやつがいた。


 いつも通り小型化してやがる。


 そんなやつを狙うのは大型のスライムだ。


 今回はスライムが奴の捕食ターゲットのようだ。


 それにしてもあの犬公なんでも食うのな。


 しばらく茂みの中で観察していると、スライムが跳ね上がった。


 よくゲームで目にするジャンプ攻撃。


 だが目の前にいるスライムはかなりでかい。


 そのジャンプで人間五人は一気に吸収できるだろう。


 いつも通り、トイプードルのようなケルベロスは吸い込まれた。


「今回はどんなふうに捕食するのかしら? 我無、賭けをするわよ。私はあのケルベロスきっと中から巨大化して、全部飲み込むと思うわ」


 するとフォルナが賭けの提案をしてきた。


 ケルベロスと遭遇すると、なぜかいつも捕食前なのでこうやって最近は賭けをする。


「そうだなー。俺は多分、あの大きさのまま、ちっちゃいまま食べ始めると思うぞ。そのほうが腹も満たせるんじゃないか? 勝った方は食費の配分券な」


「のったわ」


 ちなみに、俺たちはセエレから食費を貰ってる立場なのだが、セエレは俺たち二人をセットで一人だと思っているらしい。


 つまり、食費を貰ったらそこで食費配分バトルが始まるわけだ。


 いつもは仲良く半分こしてるが、このメニューだけは絶対食べたい!


 でも、半分こした食費じゃ足りない!


 ってなることもある。


 そこでフォルナと俺が考えたのが食費配分券だ。作成はフォルナ。


 食堂に好きなメニューが出て、片方の食費を削ってでも絶対食べたい!


 そんな時、この食費配分券によって食事配分権が行使されるのだ。


 と、説明はこのくらいにして戦況に目を戻す。


 目の前には半透明巨大スライムの中に、取り込まれたケルベロスが見える。


 やつはその中で巨大化を始めていた。


『くそっ』『やったわ、私の勝ちよ』


 俺たちはそれを見て反応を口にする。


 が、ケルベロスは途中で巨大化をやめた。


 今の大きさはシベリアンハスキー二匹分くらい。


 すると驚いたことに、やつはスライムの中で炎玉を溜め始めた。


 俺のファイアボールを飲み込んだやつだ。


 相変わらず静の状態を保つのがうまい。


 その炎玉がぐつぐつと大きくなるに連れ、不思議とスライムの身体が小さくなっていくように感じた。


「おい、あれスライムちっちゃくなってないか?」


「たぶん、あの炎玉に中から蒸発させられてるじゃないかしら? よくわからないけど」


 一分もしないうちにスライムは炎玉に吸い込まれてしまった。


 その炎玉をパクっと口にいれたケルベロスはぺろっと満足気だ。


(あのやろう。食物連鎖の頂点気取りやがってぇ)


 と思っていたら、ケルベロスは急に巨大化。


 マッスルフォームになると、間髪入れずこちらにブレスを吐いた。


(は?)


 あまりにも唐突な出来事に俺は思考を停止する。


 いつもだったら、マークかフォルナがなんかやらかして気が付かれるのに。


 今回は何もしてないぞ。


 俺の前にクノスが躍り出た。


「おいクノス! 危ない!!」


 そんな彼女の後ろ姿を見る。


 彼女の白い鞘から抜かれた剣には刀身がなかった。


 白いつばの先にはあるはずのものがない。


 が、彼女がそれを抜き去っていくごとに青白い光がその刀身を形創った。


「おおお! これはまさかっ!?」


 男なら聞いて興奮しない者はいない。


 そう、魔剣士クノスはライトセイバー使いだったのだ。


 俺たちのスカイ◯ォーカーはここに居たのだ。


「全員下がっていろ」


 そう言ったクノスはその光の剣を中段に構えた。


 そして、


「白滅流、一矢」


 彼女が横に剣を薙ぎ払うと、刀身から斬撃が放たれた。


 その斬撃は一瞬でブレスをかき消す。


(かっ、かっこいい! かっこよすぎる!!)


 流石のケルベロスも技をかき消され警戒、間合いを取る。


 直後、3つの頭から同時にブレスを放った。


 迫りくる3つの炎玉、しかしクノスは一人。


 もちろん俺はあんなの止められない。


「白滅流、三矢」


 下段で溜めた彼女は一瞬剣を抜き去り、鞘に戻した。


 一瞬の居合切りだった。


 え?どうして俺がそんな一瞬の剣筋を見られたのかって?


 今は夜、そしてライトセイバーだぞ。


 光の線が残るんだよ! 宙空に!!


 剣からいつの間にか放たれた3つの斬撃が、すべてのブレスをかき消した。


「おいおいおいおい! これなら今日俺たち勝てるんじゃないか! よしクノス! 俺も戦闘に参加する! クノスもケルベロスにダメージ与えていいからな! 実験だとかもうこの際関係ない! なんなら討伐してくれたって構わない!!」


「あ、ああ。うん……」


 茂みから嬉々として飛び出した俺はクノスにそう言った。


 俺はかなりの興奮状態だった。


 これを見られただけで異世界に来た甲斐があるってもんよ!


 よし、こうなれば俺も最近習得した土魔法で!


「サンドウェーブ!!」


 地面に触れた俺はその性質を変化させた。


 地面がうねるイメージで編み出したこの技は相手の動きを鈍らせる。


 相手の動きを止めるのは戦闘の基本だ。


「がんばりさなーい、がむぅー」


 茂みからの黄色い声に答えるように俺は次の技を繰り出した。


「ファイアボール改!!」


 ファイアボール+ウィンド。


 攻+攻。


 この順番で繰り出すことでファイアボールの威力を高めるのだ。


 静の状態がうまく保てない俺が編み出した混合技だ。


 魔法をほぼ同時に使っているせいか集中力をかなり消耗するが……。


 イメージとしてはファイアボールを後ろからウィンドで推し進める感じだ。


 それをもろに食らったケルベロスに隙ができる。


「いまだ、クノス!! 攻撃してくれ!!」


「………………」


「あれ? クノスー?」


「………………」


 回復したケルベロスは俺のことなんてお構いなしに、クノスにブレスを放った。


 先程よりも巨大。


 だがクノスは先程の斬撃攻撃でそれを打ち消す。


(まさかクノスは俺に遠慮してるのか? 確かに、これは俺の戦闘データを集めるための実験。ケルベロスを倒すことが目的じゃない。それでもダメージを与えてくれたっていいはずだ)


 そんなことを考えていると、やつの頭の一つが小突くような感じでブレスをこちらに放った。


 俺はそれに対しウィンドで体勢移動して回避。


 足りなかった部分を右腕の円盾でガキンッとガードしてなんとかしのいだ。


【スキルナンバー0030】


「ロックガン!!」


 俺は今とっさに腕を地面についたときに考えた技を放った。


 土属性の攻+風属性の攻。


 地面の土をウィンドで高速回転させ、打ち上げられるロケットのように削る。


 回転を早めその威力を高めたら、射出だ。


 溜められないならウィンドを出し続けて強化すればいいのだ。


 ガキンッという音が響くと、やつの身体から血が流れるのが見えた。


「よっしゃ!!」


 初めてだ!ケルベロスにダメージを与えられたのは。


 その傷はかすり傷程度だったがそれでも快挙だ。


 よし。


 今日は行ける気がする。


「クノス! 攻撃を頼む!」


「………………」


「あれ? クノスさーん?」


「………………」


 返事がない。


 戦闘に集中していた俺はどうしたのかとそちらに目をやると、


 バタンッと彼女は倒れていた。


 というよりも、地面に突っ伏していた。


 顔面から。


「え? あれ? なんでぇぁ?」


 標的が一体消えたケルベロス。


 戦闘可能なのは俺一人。


 その目標は俺に向くわけで……。


「ちょっ、ちょっとまってくださいよ! 今日はいい線いったじゃないすか!! ほんと許してくださいよ!! その傷、犬みたいに舐めますから、舐めますからあああああああああああああ!!!!」

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