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【二章完】トライあんどエラーを拳で!?  作者:
第三章 魂ブレスレット編
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第46話 売り言葉に買い言葉で重大な選択はしないほうがいい

「じゃあ読むわよ」


 攻略本を開いたフォルナはその記述を読み上げ始めた。


 崩壊の魔女の記録が明らかになる。


 ———魔女カノン———


 あたしがこのダンジョンに潜って一体何日が経っただろう。


 最強なあたしが数日経ってもこのダンジョンから出られないのには理由があった。


 その理由は、核を破壊しなければ無限に湧いてくるモンスター達だ。


 切っても投げても無限に沸いてくるモンスターたち。


 あたしはそいつらを、新しい攻撃魔法の実験体にしていた!


 だって、ここならわざわざ実験体を探さなくても向こうからこっちにやってくるし、めちゃくちゃ楽なんだもん。


 あははー!


 とは言ってもいい加減飽きてきたので、核はもう破壊した。


 すると奥にあった扉が開いた。


 そう!


 このダンジョンには回生の石が眠っているのだ!


 最強なこのあたしが戦闘で死ぬことはまずないが、病気にかかる可能性はある。


 ガミガミうるさい弟子にそのことを指摘されてしょうがなく回収しに来たってわけ。


 扉から奥に入るとなんか石でできた箱みたいなやつの中にごろごろいっぱい緑色に輝く石ころが入ってた。


『これが回生の石ってやつー?』


 それを一つ掴んだあたしは適当にポケットに入れた。


 するとあたしが本に刻んだ転移魔法陣から弟子の一人が急に出てきた。


 そして『これがあれば病で死ぬことはなくなります。これだけの数があればどんな権力者も魔女様の言うことを聞くはずです』なんてことを言う。


 だからあたしはその弟子を拳でぶっ飛ばして言ってやった。


『真理の探究に必要なのは欲望ではなく好奇心だバカヤロー!』ってね。


 でも弟子は聞いてなかった。


 強く殴りすぎて気絶してた。


 あちゃー。


 またやり過ぎた。


 そんな弟子が起き上がるまでの間あたしは考えてみた。


 ふむ。


 確かに弟子が言うことも一理ある。


 他の魔女がこのダンジョンをクリアしてあたしが残した回生の石を独占..….。


 そしてしたり顔で『崩壊の魔女カノンさんは物の有用性というものをご存じでないのかしら? だからみんなからあなたは、頭の中身が崩壊してる魔女だー、なんて言われるんですのよ?』とか言うのだ。


 それはそれでなんかムカつく。


 ということでもう一人の弟子を転移魔法陣で呼び出した。


 そして近々あたしの頭の中身を馬鹿にした他の魔女共にけしかけてやろうと二人で考案した兵器のプロトタイプをここに置いていく事にした。


 そうすればあいつらもダンジョンはクリアできても回生の石は回収できないでしょ?


 回生の石も守れて、なんなら憎たらしい魔女共もぶっ殺せて、一石二鳥ってわけ。


 あははー!


 やっぱりあたしって超天才だわ!


 回生の石が眠る部屋を空間から隔離した私は、その場所へと繋がる転移魔法陣だけを核があった部屋に残した。


『フハハハハー! 馬鹿な魔女共め! この転移魔法陣を踏んでようやく回生の石がある部屋に踏み込んだ時、その時が貴様らの最後だー!!』なーんて高笑いしていたら気絶していた弟子が起きたので今日はこれで撤収とする。


 魔女共が悲鳴を上げて逃げ惑う姿が今にも目に浮かんでよだれが止まらない。


 あははははー!!



 ———



「って書いてあるわ」


 俺たちはそれを終始無言で聞いていた。


 なんて言うか……うん。


 これは頭の中身が崩壊してると言われても仕方がないのではないだろうか。


 この人なら魔神を復活させて世界を崩壊に導いてても無理ないなと再び思った。


「ってことは、どっかこの辺に回生の石が眠る場所に繋がる転移魔法陣があるってことか」


 俺たちは手分けして魔女が残した転移魔法陣を探してみた。


 しばらく探していると、


 《我無、この辺りの床から何か感じるわ》


 とテナーデンが報告してくれた。


 俺は彼女が指摘した場所の床の埃を手ではらった。


 するとそこには薄くはなっているが、確かに魔法陣のようなものが刻まれていた。


「みんなここにあったぞー!」


 俺はみんなが集まってくる間、ごくりと唾を飲んだ。


「とても微弱な魔力だ。テナーデンがいなければ見つからなかったかもな……」


 最初にやってきたクノスがポツリと呟く。


 ここからが本番だ。


 この先には崩壊の魔女の兵器が眠る。


 全員が集まると早速作戦会議を始めた。


「まず一番の問題はこの転移魔法陣を使って飛んだ後に、ここに戻って来ることはできるのかってことだな」


「一方通行かどうかということか」


 クノスに確認され俺は頷いた。


 俺が今まで見てきたセエレの転移魔法陣は相互通行ができるものだった。


 行くことができるなら帰ってくることもできる。


 その法則に則るならば、この転移魔法陣だって行ったら戻ってくることはできるのだろう。


 しかし、忘れちゃいけないのはさっきの記述から分かるようにこの先にあるのは魔女による魔女を嵌めるための罠だということ。


 ということは親切に相互通行可能にしてくれているとは考えにくい。


 だって罠だからな。


「それなら試しに我無が行ってくればいいんじゃないかしら? 何かあったら復活させるわよ?」


 フォルナはしゃがみこんで魔法陣を眺めている。


 俺が生贄になれとそう言っているのだ。


「この悪魔。仮に一歩通行だったら俺の死体がこっちに戻らなきゃ復活だってさせられないだろ」


「確かに……」


 このポンコツぅ。


「となるとやはり一発勝負しかなさそうだな」


 クノスは剣の柄を握りその感触を確かめている。


「やっぱそうなるよなー」


 俺は床にへたり込んだ。


「ボス! 私が行って見てくるというのはどうでしょうか?」


 先陣隊長(まのっぺは)勇気だけはあった。


 だからね?


「ああいいよ。見てきても。でもさっきから行っている通り一方通行だとお前はどうやって中の状態を俺たちに伝えるんだ?」


「むっ……それではこういうのはどうでしょうか! 10秒経って私が戻ってこなかったら一方通行、10秒以内に返ってこられたらそうではなかったと判定するのは?」


 なるほど、それならこの転移魔法陣が一方通行かどうか判定できるかもしれない。


 というか現状それしか方法はない……。


 が、


「却下だ。もし中にある兵器が初見殺しもので、お前が一瞬で死んだらどうするんだよ。貴重な戦力を無駄使いすることになる」


「そうですね。確かに私は貴重な戦力です!」


 別に褒めてないのだが喜んでいるまのっぺ。


 それを見ながら『やはりやるしかないか』と立ちあがろうとすると、


 《ねえ。もう帰らない……?》


 俺の腕に付いたテナーデンがそう呟いた。


 《ここまで来てもらって悪いんだけど、やっぱり気が変わったわ。もう帰って頂戴。報酬なら私から父上になんとか言っておくから》


 腕につけたブレスレットはブルブルと震えた。


 彼女は二度目の死が怖くて震えているのかと思った。


 でもその震えは、何か違う震えのようにも思えて……。


「復活しないってことか? お前さっきやり残したことたくさんあるとかなんとか言ってたじゃん」


 洞窟の中でのあの言葉はなんだった?


 やりたいことがまだたくさんあるんじゃないのか?


 《別にいいのよ。そんなこと。どうせ一度終わった命なんだし、魂だけになってまで未練がましい女にはなりたくないのよ。だから早く……帰って頂戴……》


 …….。


 なんだそれ。



「おい! 俺たちはここまで命張ってお前を連れてきてやったんだぞ! それなのになんだ? 『気が変わったから早く帰って頂戴』だぁ? ふっざけんのも大概にしろよ!」


 俺は自分の腕に向かって叫ぶ。


 《……だから。悪かったって言ってるじゃない。報酬もちゃんと渡すように説得するから……》


「報酬? そもそもな! 今回の報酬だってセエレの実験代に使われるのであって、俺たちには一ドラも入ってこねえんだよ!!」


「あ、確かに」

「そうでした」

「そういえばそうね」


 クノス、まのっぺ、フォルナ。


 頷く面々にテナーデンの声量も上がる。


 《じゃあ! もう早くここから帰ればいいじゃない! 私だって帰って欲しいし、あなたたちだって帰りたいんでしょう? それなら早く帰りなさいよ! 私を連れて帰りなさいよ!!》


「は? 今お前、『私だって帰って欲しい』って言ったな?」


 《え、いやそれは……だって……》


「見え透いてんだよお前の安い同情が!! なんだ? 俺たちはそんなに頼りなく見えたってのか?」


 俺の煽りにテナーデンは反論を棚上げしていく。


 それに対して各々が反応を見せた。


 《…くっ。そ、そうよ! あなたたちが頼りに見えるわけがないでしょう! 一人はどうしようもない変態だし、あっちの悪魔は頭が弱いし》


「あ、頭が弱いですって!?」


 フォルナは驚きの声を上げ、


 《できそうな雰囲気の魔剣士はとんでもないビビりだし》


「び、ビビりじゃないが……!?」


 クノスは額に汗を垂らし、


 《そっちの魔族の子はもうなんて言ったらいいかわからないくらいモンスターだし……》


「これって褒め言葉ですか?」


 まのっぺは言葉の趣旨が読み取れなかったのか眉を寄せて俺の顔を覗いた。


 《とにかく! あなたたちには実力がないってそう言ってるのよ! ここまで来れたのだってまぐれもいいところよ! 実力がないから帰りなさいって言ってるの!!》


「……」


 その言葉に全員が黙り込んだ。


 数秒した後、


 俺は口を開き、


「おいみんな。このお嬢様は実力があれば問題ないんだと」


 立ち上がった。


「それなら問題ないな」


 言ってクノスは剣を握り。


「勇者志望ですから、問題ありません!」


 まのっぺはニヤリと笑い。


「私は高位の悪魔なのよ? それを忘れてるんじゃないかしら? その娘」


 フォルナは髪をバサッとした。


「そういうことだ」


 俺は少し間を置いて言った。


 《そういうことだ、じゃないわよ! 実力がないから実力がないって言ってるのよ! 今まで見てきたからそう言って——》


「ごちゃごちゃごちゃごちゃうるせーな。実力があるかどうかなんて、戦ってみなきゃわからねーだろうが」


 吹っ切れた俺は魔法陣の上にのる。


 みんなもそれに続くようにのった。


 《ちょっと待ちなさいよ! この先にいるのがどんなやつなのかも——》


「あーもう! うるさいうるさいうるさーい! 俺は問題には直面しなきゃ対処しないタイプの人間なんだよ! それ以上口を開いてみろ。俺はお前をここに置いていくからな」


 《な!?》


「よし。クノス。魔法陣を起動してくれ」


「わかった」


 クノスが魔力を注ぐと魔法陣が起動する。


 怪しい紫色の光が部屋を照らし始めた。


 《一つだけ、一つだけ確認。帰りは? 帰りはどうするの?》


 小声で聞いてきたテナーデンに対し、俺はフォルナにあることを確認した。


 帰りの方法に関することについてだ。


『あ! たしかにそうね……』とフォルナが反応し、それが存在することを確認し終わると、光に包まれる。


 俺たちは裏ボスの部屋へと転移するのだった。


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