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【二章完】トライあんどエラーを拳で!?  作者:
第三章 魂ブレスレット編
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第43話 人生って知らないうちに流されてるよね

 《ちょっと! ねえ!》


 うーん。なんだ?


 《いつまで寝てるのよ! 早く起きなさい!》


 うるさい。


 静かにしてくれ。


 《ねえ。早く起きろこの変態》


「はッ! へ、変態!? ……は俺か……」


 テナーデンからの呼びかけに俺は目を覚ました。


 服はびしょ濡れ。


 頭もびしょびしょ。


 股間もびしょびしょだった。


「けほっ、けほっ」


 立ち上がると思わず咳き込んでしまった。


 《谷の下に川があって助かったわね》


 その声に周囲を見渡すと、そびえ立つ崖の先には微かな光が差し込み、右手には大きな川が流れていた。


 渓谷に落っこちたようだ。


「あ、他のみんなは?」


 俺は慌てて聞く。


 《他三人もあなたと同じように落ちてたけど、クノスが流されながらも泳いで二人を回収してたから多分無事よ》


 よ、よかったぁ。


 あいつらも生きてるみたいだ。


「で、今はどこに?」


 《クノスがあなたも回収しようと頑張ってたけど、気を失ったあなたは何回か大きな岩にぶつかってクルクルと方向転換して、川が分岐するところで他三人とはぐれたわ》


 いたいたしっ。


 言われて触ってみれば、確かに後頭部にコブのようなものができていた。


 状況は飲み込めた。


 とりあえず整理してみよう。


 小龍(無計画で短絡的なスピードアップ作戦)のせいで俺たちは奈落の底に落っこちた。


 全員が落ちたわけだが、クノスのお陰もあり他三人は合流済み。


 ただ運悪く俺だけは岩にぶつかって他三人とは違う川に流されることになってしまったと。


「ってことはこの崖の先にもう一つ谷があって、そこに流れている川に他三人は流されたってことか?」


 《そうなるわね》


 ってことは合流するには川を逆登りするか、このバカ高い崖を登るしかないってことか。


 しかも登ったら登ったであいつらを助けにまた降りなきゃ行けないわけで……。


「……絶望的だな」


 《他の人間の助けも期待できないし本当に絶望的ね》


 やはり龍封の地。


 一筋縄では行かない場所だった。


 え?


 そんなの全く関係なく全部自分たちのせいだろって?


 そうかもしれないが、そうじゃないことにしておこう。


 じゃないとメンタルが持たない。


 とりあえず装備を確認してみた。


 俺が持っているのは展開式の円盾(魔法発動に必要)と、ブレスレット(お喋りで高圧的でうるさい)だけだった。


 おー、一気に身軽になったわ。


 って、


 食料もなんもかんもねえぞ!


 荷物が全部流されてる。


 どーすんのこれ?


「何かいい案あります?」


 川の流れが渓谷に響く中、俺はブレスレットに向かって話しかけた。


 はたからみたら頭がおかしくなったやつに見えるに違いない。


 《そうね。……目的地が同じならそこに向かっていけばなんとか合流できるんじゃないかしら? 無闇に探し回るのは得策とは言えないわ》


 確かに、目的地は同じだ。


 あっちはフォルナが地図を持っているはずだし、あとは俺がその場所まで行ければ……、


 でも、


「それが一番良さそうなアイデアだけど、俺方向わからないぞ?」


 問題は俺が地図を持ってなくて、ここからじゃ目印の山も見えないということだ。


 《安心して。落下してからずっと方角は覚えてるから。結構頭回ったけれど、きっとあっているはずよ!》


「おぉーそりゃ助かる」


 《もっと感謝しなさいよ! 私がいなかったら今頃あなたはここで野垂れ死によ!》


 そもそもお前がいなきゃこんなクエスト発生してない……という思いは飲み込んだ。


 ブレスレットを外して小さな岩の上に祭壇のようにして置く。


 俺はそれに向かって頭を下げた。


 これもはたから見たらかなりイっちゃってる光景だ。


「ははぁ〜感謝します〜」


 《よろしい!》


 テキトーに満足感を与えた俺はブレスレットを再び腕に戻す。


「じゃ、とりあえず方角教えてもらえます?」


 《川の下流よ!》


「りょーかい。あ、その前に服脱ご」


 《ひゃっ!? ちょ、ちょっと! なんで急に脱ぎ出すのよ!!》


 俺は上半身に来ていた服を脱いだ。


 だって風にあたって濡れてるところが余計冷えるんだもん。


「ちょっと目瞑ってろよ。すぐ絞るから」


 言った俺は川の上で濡れている装備を絞る。


 まあ、パンツは許してやるか。


 《ねえ、あなたにはデリカシーってものがないの?》


 絞り終わった服を着るとテナーデンにそんなことを言われた。


 この状況でデリカシーって……。


「俺たちは今、生命の危機に瀕してるってことをお忘れですか? あなたは俺の腕に引っ付いてるだけだからいいかもしれませんけど」


 俺は軽くストレッチをして身体に異常がないことを確認しながら言った。


 《引っ付いてるわけじゃないわよ!》


「とにかく極限状態になったら俺は急に全裸になるかもしれないので、その辺りは理解していてくださいね」


 《極限状態言い訳にして飛んだ変態プレイしようとしてるんじゃないわよ!! あらかじめ言っておけばなんでも許されるわけじゃないのよ!?》


 よし。


 テナーデンも気力は十分に残っているようだ。


 これだけツッコミができるなら大丈夫だろ。


 そんな感じで軽くウォーミングアップした俺たちは川に沿って下流へと進む。


 しばらく歩いているとテナーデンから話しかけてきた。


 《あなたみたいな変態と沈黙になるのは嫌だから話を振るけど、あなたみたいな人間がどうして瞬眼のセエレの部下になってるの?》


 どうやらこのツンデレ魂は俺が今こんなことをしているその経緯が知りたいみたいだ。


 でもこれは話していい内容なのか?


 一応テナーデンの親父さんは俺たちの実験のパトロンになるわけだから別にいいのか?


 うーん。


 ま、いっか。


 そもそも生きて帰るかも分からないしな。


 黙ってればバレないバレない。


「実は俺は転生者? ってやつなんだよ。あの高位悪魔がいただろ? あいつと一緒にセエレに召喚されたんだよ」


 《転生者? ……それなら前の世界では死んだってこと?》


 そうそう、前の世界で死んで…、


 ん?


 いや死んでないぞ。


「いや死んでは……ないと思うんだけど……」


 思い出そうと記憶を探ってみるがなんだか酷く曖昧だった。


 ここ数ヶ月の出来事が濃過ぎて俺の記憶が塗りつぶされてるのか?


 《死んでないなら転生じゃなくて、転移じゃない》


「確かに……まあ、別にどっちだっていいよ」


 どっちだっていいよな。


 転生だろうが転移だろうがやることはかわらないんだし。


 それにもう戻れないしな。


 《……ねえ。元の世界に戻りたいって思ったことって……》


 テナーデンが小さな声で言った直後、


 俺は円盾をシャキーンと展開した。


「おい。お喋りはここまでみたいだぞ。あのモンスター知ってるか?」


 目の前には群れてるモンスターが数匹。


 四足歩行のオオカミみたいな奴らだ。


 《えっ? ああ、そうね……知ってるわ。あのモンスターはウルファーズよ。群れで活動しててあの額の赤い石で意思疎通を図るの》


 確かに額に石がついてる。


 集団戦が得意ってことか。


「戦闘する上で気をつけることは?」


 岩陰に隠れた俺は川の水を飲んだりしているウルファーズを観察していた。


 鋭い牙に鋭い爪、陽炎のように揺らめいている毛? は暗い銀色だった。


 当たり前だけど強そう。


 《さっきも言った通り彼らは意思疎通をあの石で図ることができるわ。だから、視界や嗅覚も共有できるの...…》


 ってことは一体に対して不意打ちができたとしても他の個体がそれを確認してたら意味がないってことか。


「お前モンスターとかに詳しんだな、助かるよ」


 《え? ま、まあね...…。お父様がコレクターしてたから……》


 うーん、どうするか。


 できることなら避けて通りたいけど、それは無理そう。


 完全に道を塞いでる。


「よし。正面突破する」


 俺は覚悟を決めた。


 こんなところで足踏みしてる暇はない。


 早くあいつらと合流しないと。


 クノスなんて血をみたら失神するのに。


 大丈夫かなぁ、あいつら..….。


 《それはいいけどあなた武器は? 丸腰でどうやって戦うのよ。まさかその円盾で戦うんじゃないでしょうね》


「あるだろ武器なら。これが」


 俺は拳をギュッと握りしめた。


 《薄々思ってたんだけど、あなたってもしかして脳筋なの?》


 俺が脳筋?


 んなわけないだろ。


 元引きこもりの俺が剣なんて使うことはできないし?


 なんかグリムスによれば魔炉の影響とかで俺は遠距離攻撃に関する伸びしろも無いし?


 仕方なく消去法でこの戦闘スタイルを選んでるだけだ。


「俺だって剣とか魔法で戦いたい。でも俺にできるのはこれくらいだからな」


 シンプルイズベストっていうくらいだし、しばらくはこの戦闘スタイルで行こうと思ってる。


 《えぇ..….。でも、待って。ウルファーズはかなり強いモンスターで、内地ではA級モンスターに指定されて———ってちょっと! 話聞きなさいよ!!》


 突撃!


 ウルファーズについての説明を始めようとしていたテナーデンを無視して、俺はその群れへと全力ウィンドで突撃をかました。


 どうせ戦うことになるのだ。


 こいつらがどれくらい強いだとかそんなこと知ってもどうにもならない。


 むしろ精神に悪影響を与えるだけだ。


 それなら当たって砕けろの精神でやってやる。


「うおおおおお!! 『ホロ―ガウジ』!!」


 地面ギリギリを滑空しながら俺はそのスキルを発動した。


 すると地面に散らばる石や岩石なんかがその形を変えて俺の腕に引き寄せられる。


 その鋭石を集めて作られた掘削拳を振りかぶると、俺は一番近くにいたウルファーズを殴った。


「喰らえ!!」


「ワフッ!」


 が、


 他の個体が視界の端でその光景を捉えていたのか、やはり完全な不意打ちであったにもかかわらず俺の攻撃は避けられる。


 《いくらなんでも考えなさすぎでしょ! どうするのよ! まんまと群れに囲まれたわよ!!》


 彼女の言う通り攻撃を外した俺は群れの真ん中に立ち尽くす結果となった。


 が、


 別に考えがないというわけではなかった。


 何度も死んでは復活死んでは復活を強制的に繰り返していた俺。


 これだけ繰り返していれば流石に馬鹿な俺でも敵の強さくらいそれなりに見極められるようにはなっていた。


 こいつらはおそらく単体としてはケルベロスより遥かに弱い。


 ウルファーズの強みは情報の共有とそれによる集団行動だ。


 個としての強さでなく組織の強さ。


 となると、敵の隙をついた急所攻撃を得意としているはず。


 視界を共有しているということはそれだけ敵を観察できるってことだからな。


 戦闘ってのは突き詰めれば隙の探り合いだ。


 ってことは..….。


「逆に隙を与えまくったら。こいつら一体どーする?」


 隙を探るのが得意ならばその仕事を奪ってやる。


 相手のペースに中途半端に飲まれるくらいだったらこちらから与えてやるのだ。


 俺を囲んでいる数体のウルファーズ。


 俺はその中の一体だけの眼を瞬きもせずにじっと見つめていた。


 すると、


「グガアアア!!」


 俺のぴったり真後ろにいたウルファーズが地面を蹴って突っ込んできた。


 それを音で感知した俺は、そのままそいつに一撃をいれる。


「おら!」


 グシャッとウルファーズの頭部が俺の拳によって弾け、血が飛び散った。


 その結果に一瞬のひるみが生き残りに伝播する。


 《ど、どういうこと? なんでぴったり真後ろから攻撃してきたの?》


 それに対する正確な答えは俺も持ち合わせてはいない。


 ただ、情報共有による集団行動を狩りの基本としてきたモンスターと、他のモンスターには決定的な違いがあるはずだ。


 他のモンスターが野生の勘で戦闘を行うのに対し、こいつらには群れの中での決まったルールが存在しているはず。


 情報を共有しているならば円滑に狩りを行うためになおさらルールは必須だ。


 じゃなきゃ共有した情報も意味をなさなくなるからな。


 組織で行動するってことは規則に従うってことだ。


 そのルールはたとえば、敵と眼を合わせた個体の正面にいる個体が攻撃を行う...とかな。


 完璧に背後を取れる以上、これが一番合理的なルールになるだろう。


 ただ、モンスター相手ならそれでいいが、人間様相手にするのにそれじゃちょっと足りないよな。


「こいつらにはルールがあるみたいだ。今ので確信した」


 《ルール..….》


 俺は次の個体に眼を合わせる。


 しかし、その個体は威嚇をするだけで襲ってこようとはしなかった。


 代わりにまた、後ろで石が飛び散る音がする。


「読めてんだよ!」


 俺が襲ってきたやつを殴ると、そいつは殴った部分が弾けて死んだ。


 乱戦状態だったら、リアルタイムで情報を共有できる群れはかなり強力だろう。


 だが、今俺はその群れの中心にいて、かつ一歩も動いてない。


 これではそのアドバンテージも利用できまい。


「どうした? もう襲ってこないのか?」


 ジリジリと円を描くように俺が眼を合わせている個体は移動している。


 しかし、俺の背後には動きがない。


 どうやら二体殺られたところで従来の方法では倒せないと悟ったようだ。


 だがもう遅い。


 そもそもモンスターなんて知能が低い野生動物がスペアプランなんて持っているはずがない。


 こういう危機的状況に陥ったときにする行動は人間もモンスターも大体同じだ。


 《全方位から一気に来るわよ!!》


 全方位から遅いかかってきた生き残りウルファーズたち。


「ウィンド!」


 それを読んでいた俺は両手からのウィンドで飛び上がるように真上に飛んでそれを回避した。


 すると、俺がいた場所、真下の部分ではウルファーズが団子状態になっており...、


「ヘルファイアフィスト!!」


 そこに向かって空中から会心の一撃を落とした。


 ドッガーン! という衝撃と共に、恐ろしほどの熱気がウルファーズに波及した。


 拳を地面についた俺が顔をあげると、熱気と共に風に吹かれる火の粉だけが周囲に漂っていた。


「ふぅ、なんとかなったな」


 群れの生き残りがいないことを確認すると、俺は膝についた砂をはらう。


 ちょっと肉が焦げたみたいな匂いがする。


 焦げ臭い。


 《なんとかなったな、じゃないわよ! 一体あんた何者なの?》


「まあ、結構賭けの部分が多かったけどな。戦いなんてそんなもんでしょ。生き残ってるし結果オーライだ」


 素人だけど、ここまで戦闘してきてなんとなくわかってきたことがある。


 それは実践において大事なのは技術よりも思い切りの良さだということだ。


 思いついた作戦を瞬時に実行する度胸...みたいな?


 《そ、そうかもしれないけど。普通は思いついてもあんな戦い方できないわよ。見てて思ったけれど、あなたは戦闘IQがとてつもなく高いか、それとも単に頭のネジが外れた馬鹿かのどちらかね...…》


 呆れた様子でそんなことを言われてしまった。


 戦闘IQが高いか、それとも馬鹿か.…..。


 どちらだろう。


 個人的にはIQが高いほうがいいなあ~。


 だってなんかIQが高いのって賢そうじゃん?


 まあ、俺IQがなんなのかすらいまいち知らないけど。


 なんだっけ?


 インテリジェンス...…クオ......あーもういいや。





 その後もできる限り早足で川を下っていると、やけに不気味な場所までやってきた。


 俺はその気配に思わず足を止める。


「なんか変な感じしないか?」


 《あなたなんてどうせ、一年中変なんじゃないの? どうしたの? 鏡でも見たの?》


「おい、今のは結構傷ついたんだが? いや、そうじゃなくて……なんて言うか……見られているというか…」


 《見られてる?》


 もしかしたら魂だけだとその辺の感覚が鈍くなっているのかもしれない。


 そう考えた俺は立ち止まってその場にしゃがみ込んだ。


 五感をフル活用する勢いで気配を探る。


 明らかにこの不気味な視線は聳り立つ崖から向けられているみたいだ。


 しばらくその状態のまま待機していると、日が沈み始めたのかこの渓谷にも漆黒の影がそのカーテンを下ろし始めた。


 《暗くなってきたわよ。そろそろ移動しないと……》


 その意見はごもっともだが、この違和感の正体を探るまでは前身することができない。


 なぜなら俺たちが進もうとしている方向から強烈に視線を感じるからだ。


 でもその視線はいまいちまとまりがないというか、いろんな場所から向けられているというか……。


 そんなことを思いながらこの際思い切って走り抜けてしまおうかと考えていると、ブレスレットがブルブルと小刻みに震え始めた。


「ん? どうした? 暗くなってきたのが怖いのはわかる。だから今から全力でここを走り抜けようと思ってたんだけど」


 《みみみみ……見て、うえ。う、うえよ……》


 彼女のその声に俺はそっと顔を上げた。


 そこで俺はようやく違和感の正体に気がつく。


 俺の目に映ったのは崖にびっしりと張り付いた翼竜たちだった。


 その鱗は保護色で崖の色と一体化している。昼間に見たとしても発見することはできなかっただろう。


 しかし、今の時間帯は夜。


 日が沈み暗くなった渓谷。


 そこでは、谷にこびりつく発光する苔のようなものが翼竜の鱗を照らし影を作っていた。


 そして、星のように光る赤い無数の目。


 俺はそれを見て呟いた。


「...…夜行性なのかな?」


 《現実逃避してるんじゃないわよ! どーするの? すごいこっち見てるわよ!》


 テナーデンは小声で必死に訴えた。


 そんなことを言われてもこの数を相手にしたことなんてないしなあ。


 どーするの?


 俺が聞きたい。


「あのモンスターは? 知ってるか?」


 今にも襲いかかってきそうな翼竜達を見て俺は呟いた。


 先程から視線を感じていたということは、その時から俺たちのことをロックオンしていたわけで...。


「多分...プテラ―だとは思うけれど...…それにしては個体の大きさが私が知ってるプテラ―よりも1.5倍はあるわ」


 恐らく内地と龍封の地では生態環境の違いからそういった違いも出てくるのだろう。


 どうしたものか…...。


 戦うにしてもあの高さまで俺の攻撃は届かない。


 それに空を飛べる敵との長期戦は避けたいしなぁ。


 そんな事を考えているとぽつりぽつりと額に冷たいものが落ちてくる。


「雨か.…..」


 この状況にプラスして雨。


 近くには川もあり氾濫の可能性もある。


 《どうするのよ。逃げる? 戻って時間が経つのを待つのもアリだと思うけど..….》


「それもいいけどさ。こっちは生きてるから腹が減るし、そんな悠長にやってる暇はないんだよ」


 《...…そうだったわね》


 これだけの数のモンスターを一網打尽する方法…...。


 何かないか…...。


 ゴロゴロゴロゴロ。


 俺が悩んでいると、雲行きはどんどん怪しくなり厚い雲の中からは雷鳴が轟き…...、


 ん?


 雷鳴?


 .…..雷?電気?


 感電……!?


「これだああああああ!!」


 《わっ! びっくりさせないでよ! 急になんなの?》


 できるかはわからない。


 だがやるしかないだろう。


 今までだってイメージした技を具現化することはできた。


 それなら今回だってできるはずだ。


 原理はわからないが、とにかくイメージだ。


 世界からスキルを呼び出す。


(ビリビリ来い! ビリビリ来い! ビリビリ来い! ビリビリ来い!!)


 拳を握った俺はとにかく雷?っぽいものをイメージした。


 すると、


「お、おぉ」


 俺の右腕にはビリッとした感覚とともに明らかに雷属性な力が宿っていた。


 《あなた凄いじゃない!! それであのモンスターたちを感電させて一網打尽にするってわけね!》


「ああ。...…行くぞ!!」


 意気揚々と俺は一歩を踏み出した。



 ———



 雨の中走り始めた俺は、右腕を傘のように頭の上にかざしていた。


「ウギャ!?」


「ウギギ!?」


 俺が一人聖電リレーをしていると勝手によってきた翼竜達が俺の右腕に触れて、感電していく。


 近づいては感電、近づいては感電を繰り返し、うっとうしいハエを電気ハエたたきで叩いてるような気分だった。


 《ちょっと...…てっきりあなたのことだから殴りにいくのかと思ったけど…...この光景はなんなの.…..》


 その光景を間近で見ていたテナーデンはそんな言葉をこぼした。


「あのなぁ、さっきも言ったけど俺は別に脳筋じゃないんだよ。これでもできることなら一生部屋の中に引きこもってたいと思う怠惰な人間だぞ俺は。そんな俺は省エネなの。ほら、こうすれば必要最低限の殺生で目的地まで走っていけるだろ? 仏様もニッコリってわけよ」


 《仏様って誰よ..….》


 そもそも飛んで逃げられる相手に本気で噛みつこうとは思わない。


 そもそもこいつら集団だしな。


 一匹一匹の相手をしてたら切りがない。


 だから、こうして電気ハエたたき作戦で俺に近寄ってくるやつだけを感電させているのだ。


「ギャワ!?」


「ウギギッ!!」


 そんなこんなでなんとか翼竜プテラ―の縄張りを抜けることができた。


 次は雨風をしのげる場所を探さないと。

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