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【二章完】トライあんどエラーを拳で!?  作者:
第三章 魂ブレスレット編
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第38話 クソみたいなじゃんけんするな

 俺たちの住む世界最大国家ナムカ。


 その首都サナリア。


 そこにある今では閉鎖されてしまった古びた教会前まで俺たちは瞬間移動……したわけではなかった。


 てっきり教会まで直通かと思ったが、セエレによって設置された裏路地の転移魔法陣に転移していた。


「あれ? 教会までじゃないんですか?」


 すっかりセエレ秒速便に慣れてしまった俺は歩くのめんどくさーと思いながら聞いた。


 こうやって人はどんどん退化していくのだろうか。


「万が一古の転移魔法陣の存在がバレる可能性もある。その場合、周辺捜査とかで私の魔法陣が見つかったら厄介だから。物的証拠は残したくない。人的証拠は消せるから大丈夫だけど……」


 さらっととんでもなく恐ろしいことを口にしたマッドでヤクザなロリ研究者。


 回避できるリスクは少しでも回避したいってことらしい。


 そうか、セエレだけならまだしも俺たちを正確にかつ直距離に転移させるとなると魔法陣が必要になるんだった。


 ってことはさっきのエイデンの屋敷近くにも魔法陣が刻んであったということだろうか。


 そこに刻むのはいいのか?


「二号達は先に教会まで行ってて、私は食料とか冒険に必要な物資を運んでくるから」


「了解です。それは教会前まで直通ですか?」


「そうだよ」


 そう言ってセエレはどこかに消えてしまった。


 本当にあのスキルは便利だなー、と思う。


 回数制限はあるのだろうか?


 魔力量とか何かしらの制限はありそうだが、彼女が転移するのを渋った姿はまだ一度も見ていない。


 膨大な魔力量も戦略級の所以なのか?


 っていうか戦略級ってなんだ?


 と思った俺は、教会までの道を歩きながら質問してみた。


 解説はフォルナ。


「hey フォルナ。戦略級」


「急になによ」


 流石に無理か。


「なあフォルナ。セエレは戦略級なんちゃらなんだよな。その戦略級ってのはなんなんだ?」


「戦略級っていうのは、国に数人しかいないレベルでとてつもなく強力な戦闘能力を持つ人間のことを指すわ。その能力は様々だけれど、戦略級になるための基準みたいなものは存在するのよ」


 あんな人がこの国に数人いるのか?


 戦略級の中でも戦闘力に個人差はあると思うけど……。


 流石異世界って感じ。


「戦略級になればいるだけで国から資金が配給されたり、色々な優遇処置があったりするからな。なるために一生を捧げる人間も少なくはない」


 クノスがそう捕捉してくれた。


 つまり国家錬◯術士……みたいな感じなのか?


 いるだけで国益だからお金とその他資金を無償で配給されるみたいな?


「で、その基準ってのはなんなの?」


「主には魔炉強度、それと一回の攻撃の規模ね」


「規模?」


 魔炉強度は貯められる魔力の量を指す。


 もちろん強い方がいいに決まっているだろうけど、規模ってのはどういうことだ?


 攻撃力じゃないのか?


「今の時代では戦争なんてそんなに起きていないけれど、龍と盟約を結ぶ前までは結構頻繁に起こってたのよ。そこで重宝されてたのが、圧倒的攻撃範囲を持つ戦略級達だったの。戦時下でどれだけ強力な攻撃手段があったとしてもそれが単体相手のものだったら意味がないでしょう? 国家規模の戦いなんだから。だから、規模が大事なのよ。強力かつ広範囲。これが戦略級になるための条件よ。そのためか、戦略級に剣士はほとんどいないわね」


 俺はない頭を絞って考えた。


 つまり戦略級ってのは言い換えるなら俺たちの世界での核兵器みたいな扱いってことになるのかもしれない。


 誰も使わないけど存在するだけで抑止力になる。


 各国にもセエレみたいな奴らが何人かいるわけだ。


 それで戦略級の人数とか、その力によって各国のパワーバランスが生まれてたりするわけ?


 なんかちょっとかっこいいな、そういうの。


 存在するだけで抑止力……うちのボスやっぱやべぇわ。


「ボス! 勇者と戦略級はどっちが強いと思いますか?」


 隣を歩いていたらまのっぺに聞かれた。


 うーん。


 勇者が確か紅龍に認められた人間で、戦略級は国に認められた人間なんだろ?


 ってことは単純に考えたら勇者なんじゃないか?


「勇者?」


「正解です! さすがですボス! ということは私が勇者になることができればあのセエレですら倒せるようになるというわけです! いつかくつじょくをはらしてみせます!!」


「うんそうだ……ってあれ?」


(強いものが勇者になるわけで勇者だから強いというわけでは……いやでも強ければ勇者になれるわけだから……それでいいのか?)


 まのっぺによって鶏が先か卵が先かみたいな思考に陥った俺。


 実際、どれくらい強ければ勇者になれるんだろうな。


 そんな会話をしているうちに教会まで来た。


 そこにはすでにセエレが先回りして待っており、


 その傍らには大きな荷物が置かれていた。


「一応食料とか水とかロープとか、魔道具、マジックアイテム、冒険に必要なものはひとしきりこの中に入れておいたから」


 セエレは荷物が入ったバッグをぽんぽんと叩いた。


 用意周到だ。


「で、この大きな荷物は誰が背負うんだ」


 俺はギュウギュウに詰められたリュックを見て呟いた。


 明らかに重そう。


 肩にきそう。


 背負った瞬間はじけそう。


「私はいやよ。絶対に嫌。高位悪魔の私がすることじゃないわ」


 とフォルナ。


「私は魔剣士だから……身軽な方が……」


 とクノス。


「いやです」


 とまのっぺ。


 こいつら正直過ぎるだろ。


 ちょっとは誠意みたいなものをみせろよ。


 とは思いつつも、俺も本音と建前を使い分けるのは苦手な人間なわけで……。


「よし。こうなったら公平にじゃんけんだな」


 じゃんけんで決めることにした!


「「「「じゃんけーんーぽん!!」」」」


 結果。


 俺、グー。

 フォルナ、パー。

 クノス、パー。

 まのっぺ、グー。


 俺とまのっぺが残った。


「……くっそ。おい! お前らなんかしただろ! 四人のじゃんけん一回目ですんなり勝ちと負けが決まるなんておかしいぞ!」


 確率なんて知らないが、普通数回はあいこになるもんだろ。


「我無あなたねえ。自分から言い出しといて負けたらズルしただろなんてカッコ悪いにもほどがあるわよ。この人間の最底辺悪魔男!」


「そ、そうだぞ……ぷっ、我無。不正なんてないぞ。あったとしても結果が出た以上……ぷっ、ノーカウントにはならない」


 二人は顔を見合わせてなにやらクスクスと笑っている。


 おい、絶対なんかあるだろ。


「クソ。わかったよ。お前らは勝ち抜けでいいから、タネ教えろよ。どうやって勝ったんだ?」


「いいわ! 教えてあげる。実はね。私は自分にリミットブレイクの支援魔法を掛けて動体視力を極限まで高めたのよ。どぉ? すごいでしょう? あなたがグーを出すのがスローで見えてたってわけよ。あなたは負けるとも知らず……ぷぷっ……まったく滑稽だったわ! これが悪魔式じゃんけん必勝法よ!!」


 この悪魔……当たり前のように不正しやがって。


 悪魔だから当たり前だけども!


「クノスは?」


「私は目がいいだけだ」


 この人力チートがっ!!


「ねぇ。はやくしてくれない?」


 荷物の上につまらなそうに座るセエレに急かされて、俺は悔しい気持ちをぐっと飲み込んだ。


 そうだ。


 最終的に負けなければいいのだ。


 眼の前にいる魔族っ子バーサーカーにさえ勝てればそれでいい。


「まのっぺ。お前がいくら小さくても俺は容赦しないぞ。本気で行く」


 小さな身体をしたまのっぺを見て俺は言った。


 大人げない?


 そんなの関係ないね。


 現にもっと大人げない奴らが二人もいるんだから。


「望むところですボス!! こちらもボスの本気が引きだせるよう、全力でいきます!」


 意気込んだまのっぺ。


 絶対勝ってやる。


 師弟じゃんけんが始まった。



「「じゃんけーん、ぽんっ!」」



 刹那。


 俺は二本の指を突き立ててチョキをだした。


 対するまのっぺはパー。


 勝ったな。


 それを見て俺はニヤリ。


 と、次の瞬間。


 スローモーション映像が俺の頭の中に流れ始めた。


 なんと、俺の二本の指がまのっぺのパーの手によって握り潰され、俺の掌の中へと押し戻されていく。


「い゛い゛い゛だいだいだい!! い゛い゛い゛い゛ィィッ!?」


 こいつ握る力くそつえええ。


「はっ! はっ! はっ! 私の勝ちですボス!! ボスのチョキは私のパーによってぎょされたのです!」


「んなの認められるかああーーっい゛い゛い゛だいだいだい!! ちょっ、一旦握るのやめろ!! やめてくださいいい!!」


 小さい手ながら巨人のような握力で俺の拳を潰しにかかるまのっぺ。


 あまりの圧縮力に俺は膝をついてしまった。


 な、情けない。


 絵面的に情けないことになってる。


 これが力なのか……。


「もう二号が負けでいいよ。ほんと早くして」


 ジャッジによって判決がなされ、俺は理不尽な負けを食らってしまった。


 こんなのひどいわ!


 弱肉強食すぎる!


 俺が女の子だったら泣いてるところよ!


 しくしくと重い荷物を背負った俺は、身軽な格好で教会の中へと入っていく三人を脳内で呪い殺した。




 ———




 教会の中へと入った。


 ローじいさんは隅っこで見学している。


 これから行われるのは龍の盟約違反行為。


 龍封の地へと俺たちは足を踏み入れるのだ。


 俺はあんまり知りすぎないほうがいいんじゃないだろうかと老骨を心配した。


 俺たち四人が真ん中に立つと早速セエレが魔法陣を起動させ、魔法陣は紫色の光を放ち始める。


「あの、この魔法陣の行き先ってどこなんですか?」


 俺はセエレに質問した。


「大まかな座標とダンジョンまでの地図は荷物の中に入れといたからそれを確認してみて。実測値じゃないからそこまで正確じゃないことに気を付けて。地形が変わってないといいけど」


 地形が変わるって……いや。


 考えるのはやめよう。


 将来を不安になってもしょうがない。


 ロケット発射のカウントダウンはもうされたのだ。


 あとはシートにベルトをして神に祈るだけ。


「あ、そういえばセエレは行かないんですか? セエレがいれば俺たちも心強いんですけど」


 戦略級様がいれば百人力だろ。


 一緒に来てくださいよボスー。


「上の人間には上の人間のやるべきことがあるの。現場は下に任せるよ」


 セエレは髪をくるくるしている。


 この人普通に行きたくないだけだろ。


 ああー、危険だから俺たちを実験台にしようとしてるんだー。


 ああーそうだったー。


 俺たち元々実験台だったー。


「それじゃなんとか戻ってきてね。健闘を祈るよ」


 全然健闘を祈ってるようには思えない声のトーンと表情でセエレが言った。


 俺はそれを見てちょっと癪にきた。


 だから、久しぶりにアレをやろうと思う。


 みんなも大好きなアレ……だ。


 当分帰ってこないし、帰ってきた頃には怒りもどこかに消えていることだろう。


 そう思った俺は全神経を集中させる。


 ルーレットの目押しと同じ。


 タイミングが重要だ。


 俺ならできる。俺ならできる。


 セエレが手をかざすと魔法陣の光はその輝きを一層強めて、今にも転移が始まりそうな雰囲気になった。


 その光が最高潮に達したと思ったその時!


 俺は魔法を発動した。


「ウィンド」


 ひらっ。


 見えたッ!


 少し大人びた水玉模様の黒色パンツ!


「!? ……にっ、にごおおっ!」


「なっなんですとおお!!」


 セエレとローじいさん。


 叫ぶ二人を光の向こう側に残し、俺たち四人は龍封の地へと転移するのだった。


 ミッションこんぷりーつ。


 ちょっと大人っぽくなってたな。

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