第32話 聖戦
世界の頂上……というか旧王城のてっぺんまで転移した俺たち。
その空間には天井がなかった。
見上げれば青い空、そして誰も座っていない空席の玉座が奥に見える。
「船が来たね」
空を浮遊しながらこちらに近づく巨大な龍天宮を見て王様が呟いた。
こちらにゆっくりと近づいてきている。
「今回の会議には四龍のうち蒼龍が出席するらしい」
「そうですか」
相変わらずの淡白な返事をセエレは返す。
「本当に君は興味がないんだね。まあ、戦略級はいるだけで国の抑止力になるからそれ以上は臨んでいないが、少し寂しいね。それじゃあここから話すことは独り言だ」
そう言って近づいてくる龍天宮をじっと見つめながら王様は話し始めた。
セエレはそんな話し聞きたくないというオーラを放っているが、流石に一国の王の独り言を遮ることは誰にもできない。
「今日で龍族と盟約が結ばれてからおよそ1000年が経つ。人類の代表として私の祖先が結んだ盟約だったが、その期限が実は今年で終わりなんだ」
セエレは一瞬ピクリと動いた。
盟約の期限が終わるってことは……一体どういうことだ?
っていうか盟約の内容って何?
「驚いただろう。これは誰にも話してないからね。混乱は招きたくない。まあ、とにかく。期限が切れるということは次の代表、つまり盟約締結者を決めなければいけないわけで……」
「私はお断りですよ」
そこまで王様が話すとセエレは食い気味に言った。
なんだかピリついた重苦しい空気になってきたので俺が目を逸らすと、まのっぺが空の玉座に座ってた。
足をぷらぷらしてる。
あいつの自由奔放さが羨ましい。
「やはりそうか。私としては君を推薦しようかと思っていたのだがね。実力も知名度も申し分ないだろう?」
「あなたが存続すればそれで終わる話では?」
「そうもいかない。決めるのは四龍たちだ。彼らによって代表は決まるのだから正直人類の誰がなってもおかしくはない。だが、私としてはやはり実力と名声とそして知性がある者になってほしいのだよ。無法者、ましてやモンスターの血が流れる半人半魔などが人間の上に立つ資格はないからね」
「それで私を推薦するために今回要請したというわけですか」
なるほどね。
この王様は次の代表にはセエレになってほしくてここに呼んだってわけか。
付き人として呼んだ理由は多分このことが世間にバレると厄介なことになるからだろうな。
体のいい理由付けってわけだ。
こういう世間を騒がせるニュースは事後報告の方が都合がいいこともある。
大衆のパニックも防げるし。
「そうだったんだが。君にやる気がないなら無理強いはしない。ただ、今回の会議には各国のリーダーや戦略級達が集まっている。龍族だって人類全員を選別対象にしているわけではない。目に入る近い人物たちから選ぶことになるだろう?」
流石の龍族でも全人類を観察とかはできないよな。
神でもあるまいし。
「他国の代表が選ばれると困るというわけですか?」
「そうだ。龍封の地との境界線も盟約締結とともに更新される。となると代表によって各国のパワーバランスが大きく変わることになる。それによって———」
「そういう込み入った話は中でしましょう。聞いているだけで眠くなってしまいそうなので。どこか座れる場所で」
龍天宮が旧王城に停泊したことを確認したセエレはそう言って話を遮った。
ここまでの会話でなんとなーく今回の会議がヤバいくらい重要な会議だってことは俺でも理解できた。
でも、俺にできることって別になんもないしなー。
王様は俺たちの実験のことを疑っていたわけではないみたいだし、もう俺たちここにいる意味なくない?
もう帰っていいかな?
「セエレ、俺たちもう帰っていいすか? なんだかとんでもなく重要な会議みたいですし、俺たちがいても邪魔なだけですよ」
龍天宮に向かってあるき出したセエレに向かって俺は言った。
「そうだね。もう帰っても———」
「おや? 本当にここで帰ってもいいのかい? 龍天宮に入るなんて一介の冒険者にはまたとない機会なのだよ?」
と、今度は王様がセエレを遮ってそんなことを言ってきた。
そんなこと言われても、またとない機会とか期間限定って謳い文句には俺はまったく惹かれないタイプの人間だからなあ。
その珍しい機会とやらと俺の欲求が満たされるのとはまったく別の話だし。
「その龍天宮? には美味しい食べものがあるんですか?」
いつの間にやら俺の隣に来ていたまのっぺが王様に向かって質問した。
「もちろん。しかも、タダで食べられる」
「ボス!! これは行くしかありませんよ!!」
キラーンとまのっぺの瞳は輝き出した。
「うーん」
俺は悩んだ。
このまま帰ってもまのっぺのフラストレーションが溜まってそれはそれで危険だ。
かといって万が一問題を起こしたら国際問題に発展しそうな気がしないでもない。
が、
(まあ、いっか)
なんとかなるだろう。
今回は楽観的思考に従って龍天宮に乗り込むことにしてみた。
ちょっと空飛ぶ宮殿に乗ってみたいというわくわく感が俺にもあったからだ。
「じゃあ、俺たちもいきます。その会議? とやらには出席しないで大人しくしてますよ」
「そう」
セエレはどちらでもいいようだった。
まあ、彼女の力があれば万が一何かあっても屋敷まで飛ばせるしな。
「元々君たちには会議に出席する権利はないから安心したまえ。食事をするならラウンジにでも行くといいよ」
王様はそう言って龍天宮に乗り込んだ。
俺たちもそれに続いた。
———
「わあ、すっご」
俺の口から漏れた貧困なボキャブラリーの通り、龍天宮の中はさながら王宮だった。
豪華絢爛という言葉から生まれたような調度品達がそこかしこに配置されてる。
ピカピカキラキラなのだが、庶民感覚の俺からするとゴゴゴゴゴという音が聞こえて来るような気がする。
多分値段がついてないくらい高いんだろうなあ。
「会議室はこっちだから。セエレ君と私はもう行くよ」
「二号、面倒事はなるべく起こさないように。終わったらここに戻ってくるから」
「了解です」
王様とセエレと別れた俺たちは宮内マップの前で立ち尽くしていた。
マップを見るだけでもかなり広い構造になっていることがわかる。
おそらく中央にある一番大きな空間が会議室なのだろう。
「ボス! まずは探検しましょう!」
まのっぺはそのマップを背伸びして見ながらうずうずしていた。
「クノスはどうしたい?」
「私は別にどこに行ってもいいが……しかしこうも高級品に囲まれているとなんだか肩身が狭くなったような気がして落ち着かないな」
「フォルナは?」
『ワインよ! 私はワインが飲みたいわ!!』
口の動きから俺はそう読み取った。
相変わらず意見がバラバラだなあと思いながら俺は行き先を決める
「クノス、これはなんて書いてある?」
「待合室って書いてあるな。食事もできるみたいだ」
「それじゃとりあえずそこに行って腹を満たすか。王様がここでの食事はタダだって行ってたし、探検はその後でもいいだろ?」
「いいです! 文句なしです!!」
行き先が決まると俺たち四人はそこに向かってあるき始めた。
赤い絨毯の上を数分歩くと、豪華な扉と仮面をした執事服の男が俺たちを待っていた。
男の後ろには鱗のある尻尾が生えている。
「誰のお連れで、何名様ですか?」
なんだか高級料理店にはいるみたいで緊張する。
今の俺達はスーツを着てはいるが、なんだか場違い感が半端ない。
いつもとのギャップからそう感じるのだろうか。
「セエレの連れで、四名様です?」
ぎこちない感じで俺は答えた。
こんな経験初めてだったし仕方ない。
いつか彼女ができた時に役立つだろうか。
男は扉を開き俺たちを中に招き入れた。
中に入ると俺たちと同じように正装した人達が飲み食いをしていた。
その内装は冒険者ギルドの食事場にオーケストラの曲を流してみました……みたいな感じ。
落ち着きがあるようなんだけど少しギスギスした牽制?のような視線が飛び交っている。
「とりあえず空いてる机に……」
と思って辺りを見回してみたがどの席も空いていなかった。
カウンター席がまばらに空いているのでそこに向かう。
「やっぱり場違いだったな」
俺は呟いた。
冒険者ギルドだったら適当な机に座って適当な料理を頼んで適当な会話を楽しめるのだが、なんだかここは息苦しい。
ファーストなフードが恋しいよ。
「……そうだな。適当なものを頼んで少ししたら出よう。ここは嫌な視線が多すぎる」
隣を歩くクノスが言った。
セエレの連れである俺たちがここにいるということは、おそらく他の人達も各国のリーダーの側近かなにかなのだろう。
各国同士、いがみ合いの視線をぶつけ合っているのかもしれない。
あーやだやだ。
面倒事はごめんですよ。
俺たちはカウンター席に四人横並びに座った。
「えーっと、俺はとりあえずオススメをお願いします」
当然のようにメニュー表など出てこなかったので俺はカウンター内にいる仮面を被った男にそう言った。
「私も同じのを頼む」
「ボス! タダなんですよね? どれだけ頼んでもいいんですよね?」
左隣に座ったまのっぺが聞いてきた。
いや、まあどれだけ頼んでもいいんだろうけどさ。
空気的にねぇ、うーん。
「まあ、好きにすれば?」
「やった!! それじゃあ、ここからここまでぜーんぶください!!」
(お前は大物ユーチューバーか)
空気ガン無視でまのっぺが大きな声でカウンター上に取り付けられたメニュー表を指していった。
あ、そこにメニュー表あったのか。
緊張しすぎて見落としてた。
やっぱ調子狂うな。
「あ、そっか。フォルナはどうする?」
彼女に袖を引かれた俺は聞いてみる。
『ワインよ! 全種類!』
「あの、適当なワイン一瓶お願いします」
『なんでなのよー!!』
「かしこまりました」
男は注文を受け付けると奥の厨房へと入っていった。
なにを話すでもなく気まずい感じで料理を待っていると、後ろの方からこんな声が聞こえてくる。
『ねぇ、あの卑しい冒険者たちは誰の連れなの?』
『さーな。でもいくら外見を装っても隠しきれないな品性というものは……』
『しかも適当なものって……選ぶことすらできないのか?』
単純に悪口でした。
いや、まあ確かにね?
ここからここまでぜーんぶくださいなんてのは金持ちユーチューバーくらいしかしないちょっと卑しい行為ではありますよ?
しかも、タダだからね。
より一層卑しく感じるけどさ。
でも、陰口言うなら聞こえないように言ってくれよー。
やっぱり乗るべきじゃなかったなーなんて思いながら、俺はサリナス様日記を取り出した。
ポケットの中に暇つぶし用に入れておいたのだ。
こういう時は心の平穏が一番。
住む世界が違う人間の意見に心踊らされるなんてナンセンスだからな。
日記を開こうとすると突然、一人の男が俺とまのっぺの間にズカズカと入り込んできた。
「よー、どうもー。色男さん? こんな美女二人も連れて、まともに注文もできないのかぁ?」
煽ってる。
どー考えてもこれは俺を煽っている。
顔を見なくてもこいつの表情が俺にはわかる。
余裕をとってつけたような薄ら笑みを浮かべているのだろう。
(無視……だな)
俺は至極冷静に対処した。
煽りの目的は相手を怒らせること。
そういう輩への一番の対処方法は無視を決め込むことだ。
人間話し合えば絶対わかり合えるなんてことを言う人もいるが、俺から言わせてもらえばそんなこと絶対ありえない。
煽りの目的だって相手によって千差万別。
話すだけ時間の無駄だ。
が、それは俺の考えであって、まのっぺは違ったようだ。
「むっ!! なんですか貴様! ボスと私の間に急に入り込んで……何様ですか!」
カウンターの上にひょいと飛び乗ったまのっぺは煽り男を見下ろしてそう言った。
「なんだお前? って魔族か……なんだぁ? こんなガキ奴隷にしてボス気取りか?」
「まのっぺ、机の上に座っちゃだめ。降りなさい」
「はーい」
まのっぺを下ろした俺は日記に目を落とした。
隣でクノスが睨み殺せそうな視線を放っているのを感じるが、彼女が実害を出すことはないだろう。
「おい! てめえ、さっきから無視決め込みやがって……男のくせになにか言うことはねえのかよ」
煩わしくテンプレートのような反応をみせた男に俺は無視を断行する。
そんな状況下で、俺の脳内ではゲームが起動されていた。
どちらが先に折れるかでしょうゲームだ。
この煽り男がどこかに行けば俺の勝ち、これ以上俺の仲間が侮辱されて温厚な俺が我慢の限界でプッチン切れればコイツの勝ちだ。
ゲームスタート。
「おまたせいたしました。本日のオススメメニューでございます」
まずマスターが料理を持ってきた。
俺はその料理に手をつけようとフォークに手を延ばすと、
ガシャーン!!
「あ、わりい、わりい、手が滑ったわ」
俺の目の前にあった料理は煽り男によって俺にぶちまけられた。
割れた皿が地面に散らばり、クノスは激高した表情で立ち上がり、まのっぺは男を睨んでいた。
「ボス、今すぐこいつぶち殺していいですか」
「我無、流石に私にも我慢の限界というものがあるぞ」
『あら、これなかなかいいワインじゃない』
俺は素直に感心していた。
何もしていない人間に対してここまですることができるのかと。
これは最早煽り職人と呼んでいいだろう仕事っぷりだ。
ここまでされて怒らない男はそうそういないだろう。
だが俺はそんじょそこらの男とは違う。
現代のネット社会で数多のチャットレスバトルを見てきた男だ。
何が最善なのかはわかっている。
「二人共落ち着きなさい。別に誰かが怪我を負ったわけでもないでしょうに。むしろ食べられなくなった料理を悲しむべきですよ。あーなんてもったいないことをしてしまったのでしょう」
俺はまるで聖人のように芝居かかったセリフを吐いた。
「ボスがいいなら私はいいですけど……ボスは懐が広すぎますよ」
「私は……私は、いや……そうだな」
剣に触れていたクノスはそれから手を離し、座った。
「なんだお前気持ち悪いなあ、女とガキに擁護されてそれでも戦わねえとか玉ちゃんとついてるのか?」
俺は冷静になって考えてみた。
どうしてこの男がここまで俺に突っかかってくるのかを。
ここまでするのにはなにか理由があるはずだ。
(ここには各国の代表が集まって会議をしているわけだから、ここにいるのもその関係者だよな。ってことはここで問題が起こるとどうなる? ……国際問題に発展させられなくもない? ってことはこの男の狙いはそれか?)
ここまで考えるとスーッと怒りが消えた。
この男の狙いが国際問題を起こすことで、その引き金を俺に引かせようとしているならばこの行動にも納得がつく。
自分の国が貧乏なのかそれとも他国に虐げられているのかしらないが、難癖つけて俺たちの国に有利な交渉を仕掛けようとでもしているのかもしれない。
一応俺たちのいる国は世界最大の国家らしいからな。
「お待たせいたしました。各種ドリンクです」
俺が怒りを収めたところでまのっぺの前に沢山の飲み物が運ばれてきた。
煽り男の目にそれが映ると、男は順番にそのドリンクぶちまけた。
俺の顔に。
「おらおらおらおらおらおらよっと、手が滑った、手が滑ったー。わりぃ大丈夫かぁ? 聖人さんよ」
「……ゲホッ」
俺は思わず咳き込んだ。
マシンガンのように連続発射されたドリンクのせいで俺はびしょ濡れになっていた。
なんとかサリナス様日記は避難させられたが。
うーんなるほど。
こいつなかなかやりよる。
思わずゲームリモコンを机に叩きつけそうになってしまった。
「我無! 私はもう限界だ!」
立ち上がったクノスを俺は制止した。
「待てクノス。ここでキレたらこいつの思うツボだ。俺なら大丈夫。なーに、ちょっと味の付いた水をかけられただけだよ」
心の中の赤髪、アンタが必要だ、俺を助けてくれ。
「だ、だが、これではあまりにも不憫だ……」
「それにな? セエレに迷惑かけるわけにもいかないだろ? ここで問題起こしたら国際問題に発展しかねないし、セエレをキレさせた方がヤバい」
「そ、それはそうだが……」
「そのとおりだ。聖人君。ここで俺を殴ってみろ? 大変な事態になるぞ?」
未だに煽り口調のまま、男はカウンターの下にある大きな酒瓶を取り出した。
それを飲みながら俺の方をじっと見ている。
「俺は人を煽ることに関しては定評があってね。お前がどこまで耐えられるか試してやるよ」
なるほど、これからこの男の煽り百本ノックが始まるらしい。
だがそれでもおれは気にしない。
なぜなら俺には心の拠り所があるからだ。
これさえあれば俺はどんな逆境にも立ち向かえるんだ。
俺はサリナス様日記を取り出して、それに目を落とした。
あー、どんどん心が浄化されるー。
隣でぶつくさ言いながら俺の椅子を蹴っている男がどこかへ消えていくようだー。
そうだよな。
こんなしょうもない男のために国際問題を起こすなんて馬鹿がすることだ。
俺は馬鹿じゃない。
サリナス様の従順な下僕だ。
やっぱ世の中ラブアンドピースだぜ。
「……ん? さっきからなんだよその本、ちょっと俺に貸してみろよ」
煽り男がサリナス様日記に触れた。
「あ。ボスのそれに触れるのはやばいですよ」
「終わったな」
『やったわね』
「ーは?お前ら何言って———ってぐへッ!?!?」
拳が飛んだ。
俺の腕から。
男はマッハの拳で殴り飛ばされた。
三回転して後ろに倒れる。
「は? え? お前急に……な、なにを?」
後ろにふっ飛ばされた男が尻もちをつきながら間抜けズラでそんな言葉をこぼしている。
どうやら状況が理解できていないようだ。
ゲームはお前の勝ちだ。
「何をって、殴り飛ばしたんだが?」
俺は握った拳を見せながら男の前に立った。
「な、殴った……って、あ、あれ? あ、そうか……はっ! お前俺を殴ったな!! これは大問題だぞ!! 龍前会議が行われているこの場所で! 暴力沙汰なんて大問題だ!! これは国と国との戦争になっても———」
プッチーン。
「ごちゃごちゃごちゃごちゃうるせぇーんだよてめえ!! 国と国との戦争だぁ? 勝手に主語デカくしてんじゃねえよ!! これは俺とお前、二人だけの聖戦だからなぁ!!」
「え? せ、聖戦?」
「ああそうだ。聖戦だよ?ってことはさぁ? どちらかが死ぬまで終わらないってことだよなぁ?」
「え? 死ぬまで?」
「ボケっと突っ立ってんじゃねぇぞ!! もう戦いは始まってんだからなあああああ!!!!」
俺はいつものパターンで全力ウィンドで男にタックルをかました。
「ぐへらっ!?」
ガコンガコンガコンガコンガコーン!! と何枚もの壁を突き破る。
さながらアクション映画のワンシーンだ。
総製作費百億級のアクションムービーだ。
だって値段がついているかすらもわからないような調度品たちが無惨に散ったんだもん。
無我夢中で男を押し出しているといつの間にやら広い部屋に出た。
『なっ、何事だ!!』
『一体なんなの?』
『襲撃か!?』
そこでは大きな机を偉そうな大人たちが囲んでおり、奥にいる巨大な青い龍がつまらなそうに片目でこちらを覗いていた。
そして、見覚えのある人間が二人ほど。
「に、二号、これは……」
「すいませんセエレ様!! 先に謝っておきます!!」
国際問題? 大事な会議中?
んなこと知ったことか。
こいつは触れちゃいけないものに触れた。
今から俺が制裁を、天罰を与えてやる。
「こ、公開処刑……? だ、っだれかっ! この頭のネジが飛んでる男をどうにかしてくれえええええええええええ!!」
そんな煽り男の声が会議室に響いた。




