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【二章完】トライあんどエラーを拳で!?  作者:
第二章 弱小聖女編
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二章閑話 我無バブみ幼稚園、開園

 朝、目を覚ましたクノスは、この前のことを思い出しながらストレッチをしていた。


「私なりに……頑張った……よな」


 復讐、一つの組織の壊滅、そして聖女の門出。


 あの男が目覚めたら伝えなければいけないことがたくさんある。


(そろそろ起きたころか)


 クノスは部屋から廊下へと出た。


「ばっぶ!!」


 すると、そこには一人の乳児がいた。


 乳児、と聞いて頭に思い浮かぶ四足歩行のあの生物だ。


 かわいらしくよだれを垂らしながら家の中を跋扈し、無条件で愛を受け取ることができる生物。


 が、そこにいたその生物には決定的な違和感があった。


「え? え? あぇ?」


 クノスの頭の中は真っ白になった。


「ばぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶー!!」


 暴走機関車は廊下をハイハイで進む。


「は? え? ……が、がむぅぅぅーーーッ!?」


 そう。


 彼女の目の前で四足歩行していた生き物は、乳児ではなく我無だったのだ。


「お、お前……本当に我無……なのか?」


「ばぶ!」


 我無ではなく『ばぶ!』と答えたこの生物。


 本作の主人公である。


「フォルナ―!! こ、これは一体どういうことだ!?」


「もお、朝っぱらからうるさいわよ」


 フォルナは部屋から出てきた。


「こ、これは、どどどどど!?」


「あー、多分昨日張り切りすぎたせいで、脳みそが溶けちゃったのね」


 そう悪魔は語った。


 淡々と。


「なに!?」


「ほら、私の支援魔法のリミットブレイクは脳の制限を外してるから、あんまり頑張りすぎちゃうとこうなるのよ。頭がパカになって幼児退行したのね」


『ばぶぶぶぶぶぶうぅー!!』と声をあげながら廊下を一直線にハイハイで進みだした我無をクノスは必死で追いかけた。



 ———



「そ、それで……一体どうすれば我無はもとに戻るんだ……」


 二人と幼児退行は食堂で朝ご飯を食べていた。


 もちろん赤ちゃんになった我無に自力で飯を食べるなどそんな能力はない。


 机の横の床下に犬のように這いつくばってスタンバイしている我無に、二人が餌をやっているのだ。


「ばぶばぶぃー!!」


「もうこうなったらリセットしかないわね」


「リセット!?」


「そうよ。首から上をチョンパして蘇生よ」


「そ、そんなことできるか!!」


「でもそうしないと一生この間抜けずらのままよ。前のもひどかったけど、今の方がもっとひどいわね」


 二人から与えられたご飯の残りを我無は床を皿にして食べる。


 ———こ れ は ひ ど い。


 クノスは苦悩した。


「ほら、クノスの剣の腕前ならできるでしょう? ちゃっちゃとやっちゃいなさい」


「そんなことできるわけないだろ!!」


「みんなおはようございます!」


 そこにやってきたのはまのっぺ。


 カオスな状況にカオスの権化が混ざる。


「あれ? ボスー、そんなところでご飯食べてどうしたんですか?」


「ばっぶ!!」


「なるほど。初心を思い出しているのですね。『しょしかんてつ』。スタート地点に戻るのも時には必要ってことですね!」


 ばぶばぶ言ってる我無のすぐ隣でノートに教えを書き出すまのっぺ。


 言葉がなくても通じ合える師弟愛を見せた。


「おい! どう見ても初心に戻るってレベルじゃないだろうこれは!!」


「え?ボスのことです。きっとどこまでも徹底的にやるべきだと判断したに違いありません!! しっかりかんてつしたその姿、かんぷくです!」


 そう言ったまのっぺは、そんなボスの四足歩行の背中に飛び乗りパンをかじった。


『ばぶばぶぃー』と弟子を背に乗せたボスはハイハイでぐるぐると回る。


「まのっぺ、我無は昨日の夜張り切りすぎて赤ちゃんになったまま戻ってこなくなったのよ」


「い、言い方……そんな言い方……」


「え? そうだったんですか。ま、もともとボスは欲望に忠実な赤ちゃんみたいなものでしたし、私は別にこれでも問題ないです。ね? ボス!」


 そう言ってまのっぺは椅子にしたボスの頭をなでた。


『ばぶぃ』と現代日本であれば絶対的に犯罪な絵面が完成する。


「問題大ありだろう!!」


「とにかく、我無を直すにはさっきの方法しかないのよ。やるしかないわ」


「う、うぅぅ。だ、だれがやるんだ……」


「私は無理よ。そんな力ないし」


 とフォルナ。


「私はこのままでいいです! なんだかボスとの距離が縮まったみたいでうれしいです!」


 とまのっぺ。


 果たしてそれは目線の問題か、知能の問題か……。


「う、うぅぅ。な、なんで……どうしてこんなことに……昨日の我無はどこへ……」


 クノスがそっとしゃがみこむと、溢れ出る母性にひきつけられた我無にぎゅっと抱きしめられた。


「わ、私には無理だ……何か……別の方法を探そう……」


 しれっとクノスの胸に顔をうずめる主人公。


 だが、仕方がない。


 仕方がないのだ。


 だって赤ちゃんにはおっぱいが必要だから。



 ———



 そうして、フォルナ、まのっぺ、我無というIQが幼稚園児以下の三人はなにかいい処刑道具がないかサークルの工房区に向かうことになった。


 引率はクノス。


 我無バブみ幼稚園の完成だ。


 セエレがいない今、サークルまでは街の転移神殿を使わなければいけない。


 しかし、幼児退行した成人に近い男性を外に連れ出すなんて犯罪級の絵面になってしまう。


 通報されたら大変だ。


 そこで、それを少しでも緩和するため我無にはサングラスと口にガムテープが装備された。


 そんなこんなで引率教員と幼稚園児たちはサークルになんとか到着した。


「二人とも我無を見ててくれ。私はなにか……いい道具がないか探してくる」


 クノスは苦い顔で武器屋へと消えた。


『ばっぶぶぶぁ!!』


「なんだかボスが訴えています。えーなになになんですかー?」


『ばばばばばっばー』


「わかりました。しょうわる悪魔、私は少し冷たい飲み物を買ってくるのでここでボスを見ててください」


 ガムテープごしでも伝わる気持ち。


 流石の師弟である。


「我無……あなたの残念な頭がもっと残念になったわね……」


『ぶぶぶぶぶぶー!!』


「みなまで言わなくてもいいのよ。私も自分の力を改めて認識したわ。やっぱり私の高位悪魔の力はまさに悪魔級……この力を受け止められるのは我無……あなただけよ!」


『ばぶ?』


「あっ、そうだわ! 悪魔級と言えば、私の下僕であるサリナスが私の下僕になったとき———」


 そうして始まった赤ん坊には耐え難い高位悪魔の自慢タイム。


 完全に自分の世界に入り込んだフォルナの隙を見て、我無は逃げ出した。



 ———



 超速ハイハイで移動した我無。


 そんな彼の逃げ出した先にいたのは……。


「ん? 地面に這いつくばって何してるのよ?」


『赤弐剣』と呼ばれるクノスと同じ流派の剣士、レナだった。


 二刀流の赤髪剣士だ。


「ちょっとあなた大丈夫? クスリでもやってるの?」


 リナはしゃがみ込み我無のガムテープを剥がした。


 すると……。


「ばっぶー!!」


 我無は本能に従い、レナの胸へとダイブした。


「……ばぶぅ? あーなるほど。クノスとそういうことしてるってこと……」


 周囲の空気がゴゴゴゴゴっと振動をはじめ、鞘からは剣が抜かれ始める。


「私言ったわよね。クノスを堕落させたらあなたを叩き切るって……」


 しかし、その声は我無には届かない。


 今彼の頭はおっぱいでいっぱいだった。


 今の彼は我無ではなく、ばぶなのだ。


「これは正当防衛でもあるから。悪いとは思わないわ……地獄に落ちろ。この腑抜

 獣がああああっ!!」


「ばっ! ばぶ!? ———ばびゃあああああああああ!!!!」


 グシャグシャグシャッ! グシャラララーッ!!!


 その日、ギルドへと一通の討伐報告がなされた。


 性獣グラサンバブミウス。


『赤弐剣』があげたこの報告だったが、その新種のモンスターの死体を確認できた者はいない。


 赤ちゃんが泣き叫ぶような声を聞いたという者は何人かいたが、その真相は闇の中である。

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