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【二章完】トライあんどエラーを拳で!?  作者:
第二章 弱小聖女編
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第18話 報酬は夕ご飯

 適当に集会所で食事を済ませた俺たちはそろそろ時間ということで、首都サナリアに戻ってきていた。


「なあ、この世界の学園では何を学ぶんだ?」


 ぶらぶらとミナが通う学園に向かいながら俺は聞いた。


「さあな。私は修練場でひたすら剣の修業をしていたからよく知らん」


 とクノスが答える。


 やっぱりクノス程の剣の腕前になるには青春のすべてを捧げなければいけないのだろうか。


 でも、それで出来上がったのがこんなむっつり魔剣士なんだから親御さんは今どんな気持ちなんだろうな。


「まのっぺは……行ってるはずないよな」


「な! 今、ボスは私のことをバカにしましたね? 学校に行かなくても生きていけますよ。ほら、現に私生きてるじゃないですか! これってすごくありません?」


 まのっぺはトコトコと俺の前に出てくると首をかしげながらそう言った。


 お前の場合運がいいってとこも結構あると思うけど。


「いや別に馬鹿にしてないよ。俺もまともに行ってないしな」


 捧げるものも捧げる青春もなかった俺は一人ごちた。


 あれ?


 でも、なんで俺は学校に行かなくなったんだっけ?


 ……。


 まあ、どうせ俺のことだ。


 一回休んだらそのままズルズルって感じだろうな。


「ち な み に、高位悪魔である私は学校なんていかなくても最初から完成されているから問題ないわ。私に教えようなんて不届き者がいたら地獄に強制送還よ!」


 未だにずーっとサングラスをつけてるフォルナはそう言った。


 その頭で完成されてるなら泣きたくなってしまうよ。


 っていうかもう外もかなり暗くなって前がまともに見えてないだろ。


 つまずくぞ。


「あわっ!」


 ほら。


「我無、時間が結構押してる。走っていくぞ」


 腕時計を見てクノスが走り出したので、俺たちもその後を追うように走った。



 ———



「ぎりぎり間に合ったか?」


 俺とフォルナとまのっぺは息をぜぇぜぇ切らしながら校門の前まで走った。


「ぴったりですね。お願いします」


 見上げると朝見送ったときと同じようにカバンを体の前で持ったミナがそこに立っていた。


「まっ、まかせろぉ」


 俺は息を絶え絶えにそう答えた。




 護衛中。


「で、帰りもこの陣形で帰るんですね」


 俺たちは朝と同じようにミナの四方を囲んで護衛をしている。


 ちなみに、フォルナのサングラスは足元が危ないので俺が強制的に外した。


「まあ、あのふざけたサングラスしてないだけましですが」


 中心にいるミナは俺の後ろでそう呟いた。


「なあ、これからは契約が切れるまでこうして護衛するんだ。仲良くやろうぜ」


 クノスによれば、今回のクエストの契約期間は一学期が終わるまで。


 つまり約四ヶ月といったところか。


 そしてクエスト表に書いてあった報酬金額は一週間の報酬だったらしい。


 それにしたって少なすぎだが。


「仲良くしたいですよ。私だって。でも初対面の女性にあんな事する男と仲良くできるわけないじゃないですか。このゴミ」


 く―強烈ぅー。


 そしてぐうの音もでない。


 いや、ほんとおっしゃるとおりですよ。


「それなら私と仲良くしましょう? 私の名前はフォルナよ。よろしくね。ミナ」


 俺が会話に詰まっていると後方にいるフォルナがサポートを入れた。


 そうだ、俺たちのパーティーは俺以外女性。


 まともな感性を持ち合わせた思春期の女子と会話の合う女性かと聞かれたら難しいところだが、それでも俺よりはマシだろう。


 頼んだぞポンコツ悪魔!


「フォルナ、ですか。お仕事は何を?」


「もちろん! 高位悪魔よ!!」


 おい!


 いきなり秘密バラしてるんじゃねえ!


 そんな、スラッと当たり前のように告白されたら止めようがねえじゃん。


 これ俺悪くないぞ。


「高位悪魔……ですか。ふふっ。面白い冗談ですね。私は聖女です。敵同士、よろしくお願いします」


 おっとー?


 意外と好感触?


 そっか、自分から高位悪魔なんて名乗る馬鹿な高位悪魔なんて普通いるわけないよな。


 はっ、まさか!?


 これを見越してこの悪魔は……。


「いや、冗談じゃなくて……むぐっ!?」


 そんなことなかった。


 どうやら本気だったらしい。


 そうですよね。


 この悪魔にそんな知性あるはず無いですよね。


 クノスに口を塞がれた悪魔はそこで黙った。


「私はクノスだ。よろしく頼む」


「クノスのお仕事は?」


「えーっと、そうだな職業は魔剣士だ」


「え! 魔剣士なんですか! 凄い!」


 クノスの言葉にミナは驚きの声を上げた。


 俺はちらっと右後方を見ると、満更でもなさそうな顔のクノスが流魔剣の柄の先を指先でくるくるしていた。


(クノスもこうやって褒められるの久しぶりだろうし、もっと褒めてやってくれ)


 なんてその顔をみて思ってしまう。


「流派は? クノスの流派はどこなんですか!?」


 え、流派って何?


 俺それクノスから聞いてないんですけど。


 気になった俺も会話に耳を傾けた。


「流派は白滅流……だが……」


「えっ!? あの白滅流ですか! 四大流派の中でも特に優秀な剣士が多いと噂の!? すごいじゃないですかクノス!」


「そ、そうか?」


 四大流派ってなんですかー?


 と聞きたかったが女子トークに割り込むほど俺の肝は座っていないのでじっと前を向きながら歩く。


「それなら今晩夕飯のときに、クノスの冒険譚を聞かせてください! 今までどんなモンスターを倒したとか、冒険の中のロマンスとか!」


『ギクッ』そんな効果音がクノスから聞こえたような気がした。


 おそらくクノスは今俺に助けを求めているのだろう。


 ヒシヒシとその視線を感じる。


 だがすまない。


 女子トークには割り込めない。


 自力でなんとかしてくれ。


「そ、そ、そうだな。うん。たくさんありすぎて何を話せばいいのやら……あはは、は」


 乾いた笑い。


「やっぱり。クノス程の美人ならたくさんありますよね」


「あぁ、うん。そ、そうだぞ?」


 クノスさーん。


 墓穴掘りましたね。


 こういうのは最初から正直になっといた方がいいんすよ。


 まあ、褒められてちょっと調子にのっちゃったんだろうな。


 あとで、助け舟出してやるか。


「私は? 私にも質問してください!」


 おーっと、俺の中でレッドアラート発令。


 核爆弾発射のボタンに手がかけられたァ!


 このとんでもバーサーカーの一挙手一投足によっては、今までのすべてが灰燼に帰す可能性がある。


 だが。


 それでも俺は入り込めない。


 なぜなら女子トーク中だからだ。


「えーっと、お名前は?」


「まのっぺです!」


「それって、本名ですか?」


「本名はマンドラ・ノルガール・ペゴアです!」


 わー久しぶりにこいつのフルネーム聞いた。


 っていうか二回くらいしか聞いたことないな。


 あれはいつだっけ?


 遠い昔のように感じる。


「それでまのっぺってことですか。なんだかかわいいですね。私はミナです。よろしくお願いします。まのっぺ」


『かわいい』?


 この単語によってコイツが一体どんな反応をするのか。


 俺は今まで一度もこの奇天烈怪奇な生き物のことを可愛いと思ったことも、言ったこともない。


 むしろ恐ろしいと思ったことはあるが、しかしてその反応は……。


「かわいい……ですか。この私が……?」


 あーこれまずいやつかも。


「はい。名前だけじゃなくて、見た目も可愛いですし、きっと私のクラスに来たらたちまち大人気になれますよ。人気者です」


「人気者……?それは、誰かに何もしてないのに褒めてもらったり、好きなときにお菓子をもらえたり……する感じですか……?」


「うーん。そうじゃないですかね?」


「ミナは私の友達です。今度そのクラスに連れて行ってください!」


 よかったー、ギリギリセーフ。


 途中危ないところがあったが、なんとか軌道修正がされた。


 聖女に感謝だ。


「はい。今度先生に聞いてみますね。ところでまのっぺさんは仕事は何を? 魔族ですよね」


「はい! 私は魔族で、ボスの従順な下僕です。いじょうっ!」


 お前ぇぇぇ、ちょっと油断した隙にこれかよ!


 もう背中からヒリヒリするくらいゴミを睨む目線を感じるんですけど。


 俺はロリコンじゃないから!


 ロリコンじゃないからな!!


「我無、あなたはつくづく、つくづく人として終わってます。一体どうしてこんなに魅力ある人たちがあなたと同じパーティーにいるのか私にはわかりません」


「俺も不思議に思っているよ。本当に」


 クソッ!


 俺の好感度は依然マイナス、昨日よりもマイナスになったぞ。


 でも、他のみんなの好感度がプラスになったなら全体で見ればプラスのほうが多いだろ。


 多いよね?


「おしゃべりしているうちにつきました。みなさん、夕飯は食べていきますよね?」


 話しているうちにいつの間にやら教会まで来てしまっていたようだ。


 ぼろい教会が目に入った。


「夕飯、俺ももらっていいのか……?」


 その『みなさん』の中に俺が含まれているのか不安だった俺は恐る恐る質問した。


「私は嫌ですけど、クエスト報酬なので仕方ないですね。どうぞ」


「感謝します。聖女様」


「ふざけるのやめてください」


 冷たい目線で相変わらずの塩対応を受けた俺は教会の隣にある小さなこじんまりとした家の中へと入った。



 ———



 ボロ屋敷と言えるかいえないかといった外装だった。


 玄関を通り家の中に入ると、庶民的な家具の中に小さな机があった。


 俺たちも含め六人でギリギリ使えるかといった大きさ。


 しかし、そこに備えられた椅子の数は……。


(1,2,3,4,5, ……あれ?)


「あのぉ、これだと俺が座る椅子がないんですけど……」


 俺以外の全員が席につくともう椅子は埋まってしまっていた。


 一席空いているが、それは今料理をもってきてくれているロー爺さんのものだ。


 なんだか取り残されちゃったみたい。


「あ、ほんとですね」


 ミナは俺の顔すら見ずにそう呟いた。


 こうなったら立って食うしかねえ。


 あんなことしてしまったんだ。


 夕飯をタダでもらえるだけありがたいと思うべきだろう。


 俺が机の近くに手持ち無沙汰に立っていると、クノスがチラチラとこっちを見てきているのに気がついた。


「どうしたクノス? 俺のことは気にしなくていいぞ。こういう扱い馴れてるから」


「そ、そんな悲しいこと言うな。ほら、私が詰めればギリギリこの椅子の半分に座れるぞ。私は体幹が強いからな、気にするな」


 クノスは一人用の席から半分身体を出して、俺のことを誘ってくれた。


 そこには俺のお尻が半分入りそうなスペースができる。


「お、お前……」


 俺は目から涙をぽろぽろと流した。


 こんな、こんなにも温かい光が世の中にあったなんて……。


「ボス! ちょっと待ってください。そういえばボスには流通区で出してもらったお金の借りを返していませんでした。私の膝の上に座ってください!!」


 まのっぺは膝をポンポンと叩くと俺を誘った。


「ごめんなまのっぺ。その気持ちだけ受け取っておくよ。お前の膝の上に俺が乗るといろいろと絵面がえぐいことになるからな」


「むっ。そうですか」


 なんだ。


 みんなやけに俺にやさしいじゃないか。


「が、我無? 私も、私もその、食べ終わった後に貸してあげてもいいわよ。早く食べるからちょっと待ってなさい」


「無理に張り合おうとするな。ありがとな」


 フォルナの要求をやんわりと断ると、俺はクノスの席へと向かって歩く。


 すると、


「その必要はありませんよ。我無殿」


 料理を並べ終えたロー爺さんが口を開いた。


「ちょっとした意趣返しだったのですが、あなた方パーティーが良好な関係であることがよくわかりました。さあ、私の椅子を使ってください」


 ロー爺さんは席から立つとその椅子を俺に渡した。


「ローさん……でもそれじゃ、あなたはどうするんですか」


「気にしなさるな。私には可愛い孫がいますから。さあ、ミナ。じいちゃんと一緒にその椅子を半分こしよう」


「するわけないでしょ」


「なぬっ?」


 即答された爺さんが思わずガクッとその場に倒れそうになる。


 俺はそんな彼の肩を支えた。


「ローさん。一緒に椅子を半分こしましょう」


「癪ですが。他に選択肢はないようです。そうしましょう」


 そうして俺とローさんは男二人で一人分の椅子を半分こした。


 ちょっとだけ、クノスがむくれた顔をしていたような気がしないでもなかった。


「それではいただきましょうか。どうぞ召し上がれ」


 ローさんが言うと、俺以外の全員が一斉に料理に手を付け始める。


「あの、食べる前にお祈りとかってしなくていいんですか?」


 俺はすぐ隣にいるローさんに、とりあえず食事に手を付ける前に聞いてみた。


 俺ですら毎食いただきますとご馳走様をしているのだ。


 聖職者なら尚更していそうなものだが。


「ほぉー、我無殿は変なところで律儀なのですね。確かに戒律の厳しいところでは食事の前に数分祈りを捧げるところもあります。しかし、うちは見ての通り貧乏ですので。祈りを捧げているうちにまずい料理がより一層まずくなってしまいます。ので、お祈りは省略です」


 そう言ったロー爺は食事に手を手を付け始めた。


 確かに、お祈りしてるうちに食事が冷めたら嫌だもんな。


 俺もちゃっちゃと食べよう。


「いただきます!」


 手を合わせると俺も食事を開始した。



 ———



 数分後。


「あぁ~、とっても美味しかったです! ご馳走様でした」


 両手を合わせると俺は言った。


 食事の量が少なかったのですぐに食べ終わってしまった。


 大半はまのっぺが食べていたが、彼女の食事スピードを考慮したとしてもかなり早く食べ終わったと思う。


「はぁ、クノスの冒険のお話聞けませんでした。大勢で食べるとこんなにもはやく食事が終わってしまうなんて、思いもしませんでした」


 ミナは残念そうにナプキンで口を拭いている。


「ま、まぁ、明日の送りか帰りにでも話してやろう。うん。そうしよう」


 ほっと安堵していたクノスは、またできない約束をした。


 こうやって、人はずるずる嘘を引きずるんだろうな。


「それじゃ、ほんとご馳走になりました」


「ええ、我無殿。また明日も頼みますよ」


「はい」


 食事を終え、食器を片づけた俺たちはミナの家を出た。


 屋敷へ続く転移魔法陣まで薄暗い路地を歩く。


「なぁ、フォルナ。お前ワインをせびらなかったな」


 机から見えた棚の中にワインがあったのだが、フォルナはそれが見えていたのにも関わらず黙って食事をしていた。


 それが気になった俺は聞いてみる。


「なんだかね。口の中がひりひりするのよね。多分、あの牧師が作った料理のせいだわ。っていうか、教会の中じゃないのに高位悪魔な私でも身体がゾクゾクしたわ。なぜかしら? 今日一日そんな感じだったのよね」


 フォルナは両手で身体をさすり、小刻みに震えながらそう言った。


「そりゃ、あのミナが聖女だからじゃないか?」


「でも、ミナは弱小聖女だって言ってたぞ」


 クノスが付け加える。


 弱小聖女ってことは普通の聖女よりは力が弱いってことだよな。


 それなのに高位悪魔なフォルナがダメージを受ける?


「単にしょうわる悪魔の力が弱いだけではないですか?」


 まのっぺが言った。


「そんあことなひわよ……多分」


 フォルナの舌はまだヒリヒリしていた。


 そんな会話をして屋敷に戻った俺たちは各自部屋に戻り、明日に備えまた眠りにつくのだった。




 ———ミナ視点———




『第一印象は最悪だった』、と。


 我無たちとの夕飯を食べ終わり部屋に戻ると、私は学園が始まってからつけ始めていた日記を書いていた。


 ローおじいちゃんは、私が学園まで一人で登校することを心配していた。


 なぜなら、最近大聖女が行方不明になったり殺される事件が起きているからだ。


 でも、私は大聖女じゃない。


 ただの弱小聖女だ。


 それなのに命を狙われるわけなんてない! とおじいちゃんに怒鳴った。


 その翌日、私の護衛クエストを冒険者組合に提出したと聞いた時は、驚きよりも恥ずかしさのほうが大きかった。


 しかも提出したというクエスト表を確認してみれば、クエストを始める際に必要になる契約金のほうがクエスト達成時の報酬よりも多かった。


 もうこの時点で恥ずかしい。


 契約金はクエストが達成されれば戻ってくるが、報酬よりも契約金のほうが多いクエストなんて誰も受けるはずがない。


 私は距離の詰め方が相変わらずおかしい、ローおじいちゃんの奇行に半ば呆れつつも、


 でも内心こう思った。


『こんなクエストなら誰も受けるはずがない』


 クエスト掲載期限を過ぎればそのクエストは掲示板から剝がされる。


 そうなれば、この恥ずかしいクエストも無かったことになるのだ。


 私は神に祈るまでもないと思いつつ、それでも念のため寝る前に教会で祈りを捧げていた。


『変に物好きなパーティーに目を付けられませんように』


 と。


 しかし、神は私を裏切った。


 私一応聖女なのに。


 その日教会にやってきた三人を私はいつも通り聖女の服装で迎えた。


 私には聖属性の魔法が使える特別な力が生まれつき備わっている。


 基本の四大属性から外れた聖の属性。


 スキルよりも聖属性の使い手は稀な存在。


 そんな力を持って生まれてしまったものだから、私は弱小教会で弱小聖女をやっているのだ。


 肉親に教会の前に捨てられたのもかなりの不運だったが、


 その上こんな力を持って生まれ、


 教会で散々知らない人間の罪やら世間の愚痴やらを聞かされることになるなんて、


 私は本当に神に見放されている。


 その日、教会の長椅子の一番前の席で楽しそうに会話していた三人に私は声をかけた。


 腰に剣を携えた女性がいたので、私はもしやこの人たちがおじいちゃんのクエストを受注した冒険者パーティーなのではとも思った。


 が、そうであってほしくなかった。


 だから、いつも通り罪の告白を彼らにせがんだ。


 私が一番嫌いな仕事だ。


 そもそもなんで私が見ず知らずの人たちの罪を聞かされなければならないのかと常々思う。


 でもその時は彼らが私の護衛をするために来た冒険者であるという現実のほうがいやだった。


 最初に答えたのはクノスだった。


 彼女はやましいこと? とかなんとか言っていたが彼女ほどの美人冒険者になれば冒険中のロマンスやえっ……なこともたくさんあったのだろうな、と今になってみればそう思う。


 さっきの夕飯でその話をたくさん聞きたかったけど、明日話してくれるっていうし、我慢することにした。


 次にまのっぺ。


 彼女は神を信じてないと言っていた。


 別に私はそれでいいと思うし、正直私も信じていない。


 だって信じなくても聖女の力使えるんだもん。


 いつからかお祈り中も違うことを考えるようになっていた。


 それでも、まのっぺのすごいところは私と違って彼女には信じている何かがあるってことだ。それは立派な事だと思う。


 問題は最後のこの男。


 我無だ。


 しばらく真面目な顔で考えたかと思うと、彼は風の魔法で私のスカートをめくった。


 唐突に、本当に唐突にだ。


 その事実に私は頭が一瞬真っ白になった。


 よくこの表現が小説とかで使われているけど、まさか本当に真っ白になるとは思わなかった。


 今までもセクハラまがいのことをする気持ち悪いやつらは何人もいたけど、その度におじいちゃんが撃退してくれた。


 でも、今回はあまりにストレート過ぎたのか、おじいちゃんですら一瞬反応が遅れていた。


 だって、初対面の人のスカートめくるなんて普通しないでしょ。


 私もその瞬間はうまく言語化できなくて『は?』という言葉しかでなかったけど、少し熱が冷めて思い出してみると……。


 あーもう!


 今思い返すだけでもあの男をぶっ殺したくなる。


 しかもその後のセリフが『俺の罪を数えろ』って。


 切実に、本当に死んでほしい。


 とにかく第一印象は最悪だった。


 そして今朝、学校までの行きの護衛も本当に何それ?って感じだった。


 制服に着替え終えてカバンを持って教会の外に出ると、そこで待っていたのは手を身体の後ろで組んだサングラスをかけた変な集団だった。


『ホントに最悪』


 その時の私は神に呪いをかけながらそう思った。


 ほんとに私はつくづく神から見放されてる。


 私が教会の敷地から出ると、彼らはいきなりシュバババッと私の周りを取り囲んだ。


 私の頭はその時点でまた真っ白になった。


 しかも、あの変態が、


『ゴウッ』


 とかふざけて言って、なんか手で合図を出すとみんな息ぴったりに移動を始めるから、私もそれについて行かざるを得なかった。


 その後もあの男は何事もなかったかのように敬語なんて使って私に話しかけてきた。


 そんなことしたって私は許さないのに。


 イライラした私は、本来人を癒すのが領分だけどその時に初めて人を殴って蹴った。


 でも、私は後悔してない。


 初めての相手がこの男でよかったと思っている。


 それほどにこの変態は罪深い。


 この男になら何をしたとしても、神も許してくれるだろうと思った。


 一方で、学園が終わってからの帰り道は楽しかった。


 なぜなら、あの男がほとんど口を開かなかったからだ。


 フォルナの冗談には思わず笑ってしまった。


 自分のことを悪魔だって言うそんな馬鹿な高位悪魔なんているはずがないのに、私の聖女という特徴を活かした上手い冗談だった。


 クノスはあの白滅流の剣士、しかも珍しい魔剣士だという。魔剣士は静の状態維持がとても上手いと聞くし今度教えてもらいたい。


 そして、まのっぺは可愛い。頭に生える角も可愛いし、そのちょっとした仏頂面もまたいい味を出していると思う。


 でも、彼女はあの変態の従順な下僕だと急にカミングアウトした。


 言わされているのか、もしくは本当にそうなのかはわからない。


 でもとにかくまのっぺが、今にも爆発してその性欲をぶつけ出しそうな男の近くにいて、


 それがとても危険な状況であるというのは間違いないとその時の私は思った。


 そんな風に会話をしていて、私は不思議だった。


 どうしてこんなにも魅力的な人たちがあの変態と同じパーティーにいるのか。


 そして、夕飯の時にまた不思議なことが起こったのだ。


 最初にローおじいちゃんが、『仕返しに我無の席を用意するのはやめよう』と言ってきたので、私は喜んでそれに賛成した。


 実際は席が本当に5つしかなかっただけだけど。


 我無が一体どんな顔であたふたと困るのか見てやろうと思った。


 でも、


 そんな我無のことを、クノスもまのっぺもフォルナもみんな何とか席につかせようとしていた。


 一体なぜ?


 わからない。


 あの男は女の敵。


 それなのにどうしてみんなはあんなにも慕っているのか。


 私にはわからなかった。


 私が見た我無は一面的なものだった? 長く付き合えばその良さがわかるとか?


 私は第一印象とか見た目で人を判断するタイプじゃないけど、それにしてもあのファーストコンタクトは最悪過ぎた。


 それでも、聖女として明日はもう少しこの謎を解明するために努力しようと思う。


『明日はあの変態の謎を解明する』、と。


 私は日記を書き終えると、頭のなかでグルグルと回るあの変態の顔を掻き消すようにベッドに潜った。



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