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【二章完】トライあんどエラーを拳で!?  作者:
第一章 でこぼこチーム編
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第1話 ガチャで青天井ぶち抜くとショックで異世界に飛ばされるらしい

新作始めました。

よろしくお願いします!

 

 目が覚めると、頬にひんやりとした感触が伝わった。


「ここは、一体……」


 あれ?


 おかしい。


 俺は自室で★3タゴメちゃん(水着)のガチャを引き、青天井をぶち抜いて見事に爆死。


 PICKUPという表示に呪いをかけながらむせび泣いていたはず……。


 周りを見渡せば一人の美しい女性が目に入った。


 膝を抱えて床に座っている。


 明度の高い紫色の艶のある髪は肩の下辺りまで伸びていた。


 その髪が流れる豊かな胸は抱える膝と胸部に挟まれ、ハンバーガーを掴んだときに漏れ出るチーズのようだ。


 おっと、無意識に視線を誘導されてしまった。


 どう考えても一般人じゃない。


 その見目麗しい、いや、なにかイケナイ情欲を誘う美貌はまるで悪魔だ。


 聞くべきか、一体俺はどうしてこんなところにいるのか、聞くべきか?


「ふっ、よく来たわね。新人さん」


 迷っていると目の前にいる女性から切り出してくれた。


 高圧的でありながら慈愛に満ちた目で俺を見つめる。


 よかった。


 女性と話すのは久しぶりで緊張してたんだ。


「まずは自己紹介をお願いしてもいいかしら?」


「はい。俺の名前は我無(がむ)です。今は17歳で絶賛登校拒否中の高校生です。趣味はネトゲ全般、というか家で一人でできること全般ですね。あ、ちなみにちゃんと童貞です」


 俺は嘘偽ることなく正直に告げた。


 素直であれ、ママの言いつけだ。


 え、マザコンなのかって?


 おいおい、家族愛ってのは何よりも大事だぞ。


 まあ、そのママはとあるアプリゲームのキャラクターなんですけど……。


「ちゃんと童貞ってのはよくわからないけど、自己紹介感謝するわ。私は高位悪魔、フォルナ・ゴア・アイゼンファルツよ。長いからフォルナでいいわ。よろしく、我無」


 先程までの体育の授業を見学している病弱女子小学生のような姿勢から一転、すっと立ち上がったフォルナは胸に手を当てそう言った。


 キリッとした雰囲気からは、できるお姉さん味を感じる。


 なにかやる気スイッチが入ったかのようだった。


 それにしても流石悪魔。


 最初から下の名前で呼んでくれるとは、距離の詰め方がプロだ。


 プロの詰め方なんてしらんけど。


 まあでも美人のお姉さんに下の名前で呼んでもらえるなんてうれしい。


「ところで我無、あなた、ここが一体どこなのか気になっているところでしょう? 端的に言うなら、そうね……この高位悪魔フォルナの目利きによると———」


 正直ここがどこなのかは全然気にはなってはいなかった。


 だって見ればわかるし。


 しかしフォルナはそうではないようだ。


 背筋を伸ばし優雅に考えるポーズをとって歩き回る。


 あっちに行ったりこっちに行ったり、


 その場で360度あたりを見渡してみたり、


「つまり、この石質からすると……いやそうじゃないわね」


 と言ってみたり。


「あなたが来たことを考慮するならば……なるほど、つながってきたわ」


 って言ってみたり。


「ふーん。実に興味深いわね」


 とか言ってみたり。


 俺だってド畜生じゃない。


 それに相手が悪魔だって言うからちょっと下手に出てたとこもある。


 もっと早く言い出そうかな、とも思った。


 でも考えてみてくれ。


 目の前でいかにも仕事できそうなお姉さんが、あーでもない、こーでもないと言いながら歩き回ってるんだぞ?


 もしかしたら自分が間違ってるのかもと、一瞬思いそうになるだろ?


「ちょっと情報不足ね。我無、あなたの知恵を貸してもらってもいいかしら? いや、これは別に私がわからないってわけじゃないの。頭の中に仮定はあるのよ。ただ、その仮定を真にするための最後のピースが足りないのよ」


 なるほど。


 その真とやらにたどり着くまでの最後のピースをこの引きこもり登校拒否が持っているとそう言いたいのか、この悪魔さんは。


 足りないのはこの悪魔さんのおつむじゃないだろうか。


 そう思いつつも、俺は猿芝居を演じることにした。


「フォルナ。まずこの床を触ってみてくれ」


「なるほど。この床がどうかしたの?」


「なんだかひんやりして気持ちいいだろ?」


「確かにそうね。ひんやりしてるわ」


「フォルナ。次にこの壁を触ってみてくれ」


「ザラザラしてるわね。床と同じ石……こっちもひんやりしてるわ」


 俺は頷きながら、次にフォルナの後ろの壁の少し上あたりを指さした。


「フォルナ。この部屋にある唯一の窓。そこから何が見える?」


「きれいなお月さまね。こんな夜は悪魔心が疼くわ……。いえ、失礼。これはあなたには関係ないことね。続けて頂戴」


 なにが『悪魔心が疼くわ』だ。


 ここまでやってまだ気づかないのか?


「それじゃあ最後に、この部屋の一番風通しの良さそうな壁を見てくれ」


 その壁は映画とかで人の腕がニョキニョキ出たり入ったりするのをよく見かける壁だった。


 筋肉ムキムキのマッチョマンな男たちが外の世界を夢見る映画だ。


「確かに風通しがいいわね。外から丸見えだわ」


「鉄格子……」


 ぼそっと呟く。


「我無? なにかわかったのかしら?」


 まだすっとぼけたこと言っている悪魔フォルナに俺は叫んだ。


「ここまできてまだわかんないのかこの悪魔さんは!! 牢屋だよ牢屋! ここは牢屋なんだよ! プ リ ズ ン!!」


「い、いえ、そんなはずないわ。お、おかしい。おかしいわよ!? 我無。最後のピースが、さ、最後のピースがまだどこかに……」


「いつまでこの悪魔さんはパズル遊びするつもりですか? どっからどうみたって牢屋でしょうが!! そのうちその風通しのいい壁から、棍棒持った看守がやってくるんだよ!! 鉄格子に棍棒をコンコンカンカン滑らせながらなぁ!」


「だって! だって私は高位の悪魔なのよ! なのにどうしてこんな牢屋に? そんなはずないわ。これはなにかの間違い、いいえ、きっと悪夢よ。天使の陰謀よ!」


 悪夢を見せる側の存在が何言ってるんだか。


 余裕な笑みはどこへやら、オロオロとしだしたフォルナに俺は言う。


「受け入れろ。フォルナ」


「え?」


「俺が童貞で、不登校で、引きこもりで、二次元の女の子に恋してしまうのを受け入れているように。お前もこの状況を受け止めるんだ」


「い、いやよ! 私は高位の悪魔としてこの状況を受け止めることはできないわ。悪魔としてのプライドがそれを許さない! 許しちゃいけないのよ!!」


「現実から逃げても仕方がない。嫌な現実から目をそらして逃避したって解決策は生まれない。まずは受け入れる。それが問題解決への第一歩なんだ」


 フォルナの目を真っ直ぐ見て言った。


 俺はいたって真剣だ。


「あ、あなた……。受け入れる。現実を?」


「そう。そのとおりだよフォルナ」


 深く頷く。


「ねえ我無? もう一回自己紹介してくれる?」


「引きこもり、不登校、ちゃんと童貞の17歳ですっ!」


 そんな、ある意味現実逃避とも思えるやりとりをしていると地面が揺れた。


 その揺れはドスッドスッと近づいてくる。


 重い足音だ。


「セエレサマガオヨビ。アクマソトニデロ! ムダナテイコウスルナ!」


 俺はそのカタコトな声の主を見て、あまりにも予想の斜め上いく展開に、逆に安心感を覚えてしまった。


 よかったー。


 棍棒持った悪い顔の看守じゃなくてよかったー。


 体長三メートルはあるピチピチの執事服を着た今にも目がキュピーンと光り出しそうなムキムキ殺人ゴーレムでよかったー。


「な! どうして私だけなのよ!? 我無は……一緒にこないの?」


 高位悪魔フォルナ様はそれはそれは愛らしい顔で振り返りあそばせました。


 初めて幼稚園に行く娘のような顔でした。


 記念写真を取れないことが悔やまれる。


「ムダナテイコウ、スルナ!!」


「ま、まちなさい! ちょっ、我無っ! 助けてっ! がむうぅ!!」


 バタバタしながら抱えられるフォルナ。


 俺はそんな彼女を見て、


「受け入れろ。受け入れるんだ。フォルナ……」


 と伝えた。


「いや、いや!! なんで! なんでなのよおおお!!」


 こうして白目むいたフォルナは連れて行かれ、俺は牢屋に一人になってしまった。


 ぽつり。


 なんかちょっと雨漏れしてる……。


 することもないし、とりあえず状況確認をしようと思う。


 風通しのいい壁(鉄格子)から頭を出すと、ゴーレムに抱えられて連れて行かれるフォルナの豊かなヒップが見えた。


『私は高位悪魔なのよ! こんなことしてただで済むとは思わないことね!』という声が去り際に聞こえた。


 そのなんとも悪役らしい捨て台詞に敬礼ッ。


 そして、あたりを見渡した。


 どうやらここは本格的に収監所のような場所らしい。


 ゴーレムが通ってきた通路を中心にその脇には俺がいる場所も含め、たくさんの檻が並んでいる。


「あの、すいませーん」


 俺は声をかける。


 目の前にある鉄格子。


 そのなかにぼんやりと人影が見えたのだ。


「もう終わり。もう、だめだ。もう……」


 目を凝らして見ると、女性のようだ。


 この収監所にいる人は全員デフォルトで膝を抱えているのだろうか。


 彼女も膝を抱え悲壮感を漂わせている。


「あの、もしもーし」


「ははは、やっぱり私には無理だった……もう家に帰りたい」


 暗闇に慣れた俺の目に彼女の姿が写った。


 蒼色の瞳に銀白色の長髪を腰まで垂らす。


 白を基調としたシンプルなデザインのコートを着ているようだ。


 影の指す美貌はまるで月を反射する湖のようだ。


「あのー」


 何度声をかけても返事がない。


 まあ無理もないか。


 なにか取り返しの付かないことをしてしまったのだろう。


 大罪人……なのかも。


 ここで不躾に声をかけるのはいささかマナー違反か。


 大罪……そういえば俺も学校に行かず、家でダラダラゲームしてこれが俺の人生なんだ! と胸を張っていたが、もしかしたらそれが()()だったのかもしれないな……。


 まあ、もう一度やり直せると言われても同じことを胸張ってやるんですけど。


 そんなことを考えていると、隣からコンコンと硬いものがぶつかる音がした。


「あの! すいません。ちょっといいですか?」


 隣人のようだ。


 ちょこっと柵から顔を出すその姿に俺は驚く。


 黒いブーツに赤を基調とした軍服のような服を崩してきている。


 軍服ロリータファッションだろうか。


 赤髪に薄桃色の瞳、特徴的なのはその頭部にある角だ。


 後頭部から生えたそれは、ゆるく湾曲しながらちょこっと天に伸びる。


 そして、腰からは申し訳程度に羽が生えていた。


(なるほど、美少女魔族っ子か)


 身長は小学生くらいだった。


「どうかしましたか?」


 俺は聞いた。


 この状況で会話できるなら相手が誰であろうと関係ない。


「私にこの柵を壊して、この檻から出るように命令してくれませんか?」


(ん?)


「あの、すいません。もう一回お願いします?」


「はい。私にこの柵を壊して、この檻から出るように命令してくれませんか?」


 俺はそれを聞いて一旦首を引っ込めた。


 どーしよう。


 一番対処に困るタイプだ。


 その顔は至って真面目そのもの。


 どうやら本気で言っているらしい。


 でも言ってることがまったく意味わからん。


 そもそもどうして檻から出る能力があるのにその中にいるんだ?


 しかもなんで俺に命令してって要求するんだ?


 ……は!


 まさか万が一脱走したとして、その原因を俺に擦りつけるつもりなのか。


 なるほどね。


 美少女魔族っ子恐るべし。


 その見た目に騙されるところだった。


「それはできませんね」


「どうしてですか?」


「どうしてもなにも……」


 いや、待て。


 もう一度よく考えろ我無。


 これは脱走のチャンスじゃないのか?


 この魔族っ子が脱出できるなら一緒に俺も出してもらえばいいじゃないか!


「いえ、わかりました。じゃあ、お願いしますよ? その柵を破壊して……」


 いーやいやまったまった!!


 そもそも俺は根本的な問題を見逃しているじゃないか。


 そうだよ!


 そもそもなーんで俺は牢屋に入ってるの?


 意味わからないでしょ?


 っていうか何気にこれ異世界転生してるでしょ?


 目の前にいる少女、頭から角生えてるもん。


 ってことはなに?


 俺ってばもしかして、ガチャで爆死した精神的苦痛でショック死でもしたってことか!?


 それともあまりにも非生産的な生活を送り続け過ぎて、とうとう実家から追放されたのか? 異世界に?


 (情けないにもほどがあるだろ……)


 あー、頭の中がぐちゃぐちゃになってきた。


 と、とりあえず状況を整理しないと。


「やっぱり、ちょっと考える時間を———」


 と言った瞬間だった。


 また、あの重い足音が聞こえて来る。


 殺人ゴーレムだ。


(まずい。タイムリミットが……決断の時だ。しっかりしろ我無! いまここで逃げるか、それともあのゴーレムに連れられてどうにかされるのか。決めるんだ。自分の意志で! 勇気を持て我無! 俺は異世界転生して生まれ変わったんだ!)


 目の前にきたゴーレムの赤い点の目を見つめる。


 そこには、感情が無かった。


「———お手柔らかに……お願いし……ぶふぇっ!?」


 そして、俺の口から出た言葉はこれだった。


 両腕を突き出した俺は、抵抗の意志がこれっぽっちもないことを殺人ゴーレムさんに表明、したにもかかわらず殴られて。


 そのまま連行されるのだった。

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