表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/16

あるワームの生活 その7

 遡ること少し前、




「ふむ、なかなか手ごたえのある人間だったな。」


 ワームは目の前で倒れている男を眺めながらぽつりとつぶやいた。

 そしておもむろに口を開くとワームは先ほどまでグリードという名の男だったものを自らの体の中に取り込んだ。ごりっ、ばきっ、ぐしゃっ、と異様な音を洞窟内に響かせながら男だったものを捕食し終えると、逃げた2体の人間を追うべく住処から出ようとした。


 「・・・?」


 すると突然、奇妙な感覚に襲われた。人間で例えるなら、体の中の臓器が意思を持ち皮膚を食い破って外に出ようとしている、そんな感覚だ。このまま無理やり押さえつけてもよいのだが、のちにどんな影響を及ぼすかわからないと考えたワームはその奇妙な感覚に身体をゆだねることにした。


 「・・・お?、おお?」


 しばらくするとワームの全身から人間の腕ほどの太さの触手が十数本生えてきた。

 そして、特出すべきはその触手の先端には小さな口があることだ。その口はワーム同様、鋭い牙を持っており、かまれでもしたらただでは済まないだろう。要するに、大きなワームからたくさんの小さなワームが出てきたというわけだ。

 小さいワームたちはようやく窮屈な場所から抜け出せたと言わんばかりにgya---!!gya----!!と鳴いていたが、しばらくすると騎士たちの死体があるほうに勝手に伸びていき、むしゃむしゃと死体を食べ始めた。


 「・・・・何なのだこいつらは?あの人間を食べたことによって私の体に何か変化が起きたのか?、あ!コラ!!お前、私の体を食べようとするな!お前の体でもあるんだぞ!?」


 突如、体の真ん中あたりに痛みを覚えたので見てみると、小さいワームがワームの体をガジガジとかじっていた。慌ててぺしっとはたくと、小さいワームは gyuwa!! と小さく鳴き、そのまま身体を伸ばし死体があるほうへ向かっていった。


 「・・・本当に何なのだ?」




 恐らく、生まれて初めてワームは困惑した。









 「よし、お前ら、きちんと食べ終えたな?また私の体を噛むなよ?」


 「「「 GYUWA!! 」」」


 「・・・・本当にわかってるのか?」


 しばらく小さいワームと戯れていくつか分かった点があった。

 まず、こいつらはある程度なら意思の疎通が可能だという点、あまりにも細かい指示はできないが「噛むな」や、「あっちに行け」などといった命令や指示なら素直に聞いてくれるようだ。そして一応、体の中に入れたり出したりすることが可能という点、ただ体に入れるときは何か踏ん張るような感じが常に続いてしまうのでこれは訓練をして慣れておきたい。最後にこいつらが食べたものは私が食べたものになっている。これは説明が難しいが、感覚が多少なりとも共有されているようでこいつらが食べたものが私の体の一部になっていくのを感じることができるのだ。


 私はこの小さいワームたちが、無意識に抑えていた食欲という欲求が形となって表れた存在なのかもしれないと思った。今回あの男を捕食したことでそれなりの魔力を手に入れた私は今まで無意識に抑えていた魔力のリミッターを解放した結果、私の分身のようなものが生れてしまったのかもしれないなと、ぼんやり考えていた。


 「・・・と、いかんいかん。あんまり長居するとあの人間どもの場所がわからなくなってしまう。」


 ワームはすぐさま外に出ると微量な魔力の流れをとらえた。

 実はワームは二人の居場所がわかるように住処から逃げ出す直前にそれぞれの鎧に自身の魔力を濃縮した触手をへばりつかせておいたのだ。


 「・・・こっちだな」


 そうつぶやくとワームは壁に触手をへばりつかせ、目にもとまらぬ速さで移動し始めた。










 「魔力が濃くなってきている。近いな。」

 移動してわずか数分、ワームは二人のすぐ近くまで迫っていた。


 「GUWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!!」


 すると道の奥の先で巨大な咆吼が響き渡った。


 「・・・まずいな」


 そうつぶやくとワームはすぐさま咆吼が響いた場所へ向かった。

 道の先は開けた空洞となっており巨大な魔物・・・人間はダンジョンベアーと呼ぶらしい生き物が逃げた2人に襲い掛かっているところであった。1人がダンジョンベアーの斬撃をうけ弾き飛ばされ、すぐに二人目が狙われる。さすがにこの洞窟の出口を知っている人間を殺されるのはまずいと思ったワームはダンジョンベアーに向けて数本の鋭い触手を伸ばす。

 ワームが生命から吸収できるのはあくまで知識と死ぬ前のわずかな記憶のみでありその生命が今までどのような行動をとったなど具体的なことはわからないのだ。


 鋭い触手たちがダンジョンベアーの体に突き刺さっていく。

 あっけなくダンジョンベアーはその場に倒れた。・・・しかし、人間とはここまで個体差がある生物なのか?先ほど戦ったグリードとかいう人間はすくなくとも私が今まで戦った中では最も強かったのだがな・・。

 そんなことを考えながらワームはダンジョンベアーから触手を抜き、2人のいる所へ移動し始めた。


 「・・・おい、人間とはこの程度の魔物も満足に倒せないほどにか弱いのか??」


 






 


 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ