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あるワームの生活 その2

 生まれてからいったいどのくらいたったのだろうか・・・3,40cmだった体は成長をとどまることを知らず今では4,5mほどだろうか、そのワームでさえ自らが一体どの程度まで大きくなるかわかってはいなかった。あまりにも体が大きくなるので今まで入ることのできた洞窟内の道が次に来た時にはつっかえて移動できないなんということがざらにあった。このままでは満足に移動できずろくな餌にありつけないと思ったそのワームは自らの体を小さくすることはできないものかと自身の住処で有り余る魔力を使って試行錯誤していた。

 黒い魔力を体全体に行き届かせ、自身の体を構成するすべての物質を抑制し抑え込ませ、縮小させる。始めた当初は調節がうまくいかず体の一部の魔力が暴走し体内で爆発、生死の境をさまよったこともあったが今では高い割合で体の縮小に成功、生まれた当初の3,40cm程度まで小さくなることができるようになった。

 ただ、この縮小魔法には欠点があり黒い魔力を常に使用し続けないと体が元の大きさに戻ってしまうため持続的に魔力を消費しなければいけなく、さらに、小さい状態での戦闘は本来の力の体感3割程度でしか戦えないことがあげられる。魔力消費に関しては微々たるものでほとんど影響はないのだが、小さくなると戦闘力が落ちてしまうという点に関しては、そのワームの頭を大いに悩ませた。

 完全体の状態ではこの洞窟内で向かうところ敵なしだったがしかし、小さい体のままだとまだ仕留めることができない敵や返り討ちに会ってしまう敵が複数体存在していた。


 (・・・やはりこの黒い力を使うのは難しい、まだまだ使いこなせるように練習しないと・・)


 そんな日々を送っていたある日、そのワームに転機が訪れる。










 この洞窟に侵入者がやってきたのだ。






 「グリード様!もうやめましょう!これ以上捜索しても何も出てこないですよ!」


 フルプレートアーマーに身を包み片手にたいまつをもった40代くらいの壮年の男が50~60代の大柄な男と言い争っていた。大柄の男はところどころに白髪が生え、しかし、甲冑越しでもわかるほどに鍛え上げられた肉体とそれに準ずるかのごとき力強い闘気は歴戦の猛者であることを物語っていた。


 「ええい、くどいぞ!アリード王国騎士団団長兼ダイヤモンド級冒険者であるこの儂が国王直々の王命でのダンジョン探索でなんの成果もあげられずに帰れると思っているのか!!」


 しかし、今は闘気とは別に焦りや苛立ちがその男の声からはにじみ出ていた。


 「しかし、、もうすでにダンジョンに入り5日は経過しています・・・食料の備蓄も残りわずかですし、団員も半数以上失っています!このままいくと全滅の可能性もあり得ます!!」


 「・・・くそ、これだけ広いダンジョンなのになぜ希少鉱石はおろか、魔石すらないのだ??出てくるのは強力な個体のモンスターばかりで・・・このダンジョンは異常だぞ・・」


 彼らはアリード王国の国王から新たに開拓された森林の最奥で発見されたダンジョンの内部を調査するように命じられていた。入った当初は、ダンジョンの規模の大きさに驚き、どのような資源が発見されるのかと意気揚々としていたが、探索から5日過ぎてもめぼしい資源はなく、さらに、ダンジョン内にはびこる強力なモンスターとの戦闘で30人いた人員は12人にまで減ってしまい、隊の士気は底につきそうであった。


 「グリード様、やはりここは一度態勢を立て直しましょう。十分な物資と人員を確保したうえで今度は大規模な捜索を行うほうが得策かと思います。」


 「・・・・ふぅ・・そうだな、貴様の言う通りだ。この年になると変な意地やプライドが多くなっていかん。適切な助言、感謝する。」


 「なっ!?そ、そのような感謝を述べられるようなことは申しておりません・・!私も今回の遠征で何の成果もあげれなかったのは悔しい限りです・・・。」


 「ガハハハハハッ!!!!口ではそんなことを言っても顔はやけにうれしそうじゃないか?・・・だが今回の遠征はここまで被害が大きくなると想定できなかった儂にすべての非がある。皆には本当に迷惑をかけた。・・・おい、アルナス、次回の遠征では貴様が捜索隊の隊長として潜れ。儂がやるとどうにも若い兵士を死なせてしまう。」


 「わ、私がですか!?、そ、そのような身に余ること、とてもお受けできません!!」


 アルナスと呼ばれた壮年の男は慌てて首を横に振った。


 「ふん、ずいぶんと自分を過小評価しているな。確かに個の戦闘に関して言えば儂には及ばないだろう、だが、貴様は部下から厚い信頼が厚い上に臨機応変な作戦を立てることができる。今回の遠征も儂ではなく貴様が隊長であれば被害をもっと抑えられたはずだ。なんだ?それとも、何十年も共に戦場で命を預けた儂の言葉が信用できんか?」


 「・・・はぁ、わかりました。ですが、グリード様、次回の遠征にもあなた様にはついてきてもらいますよ?」


 「ガハハハハハハッ!!!今まで散々こき使ってきた貴様に今度はこき使わされるとはなっっ!!人生何があるか分かったものではないわい!!」


 「手の付けられない駒になるのだけは勘弁してくださいねほんとに・・・・よし、そろそろ野営地に戻って皆に撤退の指示をしましょう。」


 「皆、さぞ残念がるだろうなぁ・・儂にはわかるぞ」


 「残念がるのはあなただけですよ、グリード様」


 お互いに冗談を言いつつ少し距離が離れた野営地へ向かう二人、しかし、そこに広がる恐ろしい悪夢を二人は知る由もなかった。

 

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