第10輪 第一王女と四天王第一席②
・サキュア(外見年齢:22歳くらい 実年齢:??歳くらい)
魔王軍四天王第一席。種族はサキュバス。みんなのお姉ちゃん。
完全完璧超絶パーフェクトボディの持ち主。みんなのお姉さんで目じりの泣き黒子が魅力的。
・クリスティーナ=ランジア (外見年齢:21歳くらい 実年齢:??歳くらい)
ランジア王国の第二王女。王女としてランジア王国の民を真に想う気高い女性。
真の王族たる姿勢はランジア王国では実に異端で、不都合な存在。不遇な扱いを受けながらも目的のために研鑽する姿勢を忘れない。
「・・・みっともない姿を見せた。忘れて欲しい。」
「あらあらぁ、恥ずかしがり屋さんね。普段堂々としてるクリスティーナちゃんが照れてる顔はいつも違って可愛らしいわねぇ。」
「あまりからかわないでくれ。もう子供ではないんだ。」
ひとしきり泣いた後、頬は赤く染まって目元は腫れてしまったのを見られまいとクリスティーナha
顔を背けた。そんなクリスティーナをサキュアは頬に手を当てて微笑む。
「ごめんなさいねぇ。ついつい癖でリリィちゃんたちと接する時みたいにしちゃったみたい。」
「いや、サキュア殿には感謝している。おかげで胸につかえていたものが少しだけ軽くなった気がするんだ。」
「それならよかったわぁ。」
微笑むサキュアになんだか気恥ずかしくなり、照れ隠しにクリスティーナは話題を逸らすことにした。
「そもそもリリィ殿は外見通りの年齢なのだろうか。魔族は人間とは違い見た目で私たち人間では年が判断できなくてな。」
「そうねぇ。リリィちゃんは見た目通り14歳の女の子よぉ。ナイトちゃんとココナちゃんは・・・ごめんなさい、私が簡単にしゃべっちゃいけないと思うの。あの娘たちは少しだけ事情があるから。いつかあの娘たちから直接話してくれるまで待って欲しいわぁ。エルトナちゃんは確か70歳を超えたあたりから面倒くさくて数えていないって言っていたから、今いくつかわからないわねぇ。クロエちゃんなら知っているんじゃないかしらぁ?」
「なん・・・だと・・・。」
魔王軍幹部たちの実年齢に衝撃を受ける。自分と同じくらいの外見のエルトナがずっと年上であったこともそうだが、それ以上にリリィが齢14という若さで魔王という重責に耐えていることが何よりの驚きだった。
実権は父であるセドリクが握っているにせよ、クリスティーナも王女なのである。国民の人生を、国の行く末を担うプレッシャーを誰よりも知っている。
「リリィ殿は凄いのだな。私など、王女でありながら未だに何もなせず燻っているというのに、リリィ殿はあの出来事を乗り越えて幼き頃から魔王として国をまとめ上げてきたのだな。」
「そうなの~、リリィちゃんはとっても頑張り屋さんなんだからぁ。でもねぇ、リリィちゃん1人ではきっといつか壊れちゃう。それに乗り越えられたとは限らないわぁ。だから、リリィちゃんを大切に想う四天王とみんなで支えてきたし、これからも支えていくの。」
「なるほど、リリィ殿はサキュア殿のような良き仲間たちに恵まれたのだな。・・・サキュア殿、私にもできることがあるのなら何でも言ってくれ。それが償いになるとは思ってはいない。自己満足でしかないのはわかっている。それでも・・・頼む。」
頭を深く下げるクリスティーナ。クリスティーナが頭を下げる理由をよく理解しているサキュアは、悲痛な面持ちをしているクリスティーナに優しくなだめるように語りかけた。
「頭を上げて、クリスティーナちゃんのせいではないでしょ?」
「ランジア王国の罪は王女たる私の罪だ。あの時の私には抗うことも止めることだけの力も無かった。・・・いや、無力なのは今も昔も変わりはないか。」
自嘲気味に笑うクリスティーナにサキュアは小さく息を吐くと、頭の後ろと腰に手を当ててポーズを取った。
「ねぇねぇクリスティーナちゃん、私は何歳に見えるかしらぁ?」
「サキュア殿、私は今真剣な話を・・・」
「いいからっ、ねっ?」
ポーズを取りながらウインクを投げかけられて、自分を気遣っての行動だと気づく。
(こういう女性を世の中では『いい女』と呼ぶのだろうな。)
自分には縁のないことだと内心苦笑いしながら、サキュアの心遣いに応じるためにサキュアを改めて観察する。そして、重大なことに気が付いて戦慄する。
(―――これは俗にいう、『私いくつ見える?』で実年齢より低い年齢を言わなくてはならないやつではないか!?)
誰しも一度は体験したことがあるであろう地獄の問いに、クリスティーナは何と答えればいいのか頭を悩ませる。もちろんサキュアの問いはクリスティーナをおもんばかっての行為であり、試すような意図はないのだが、初めての経験にクリスティーナは思考をフル回転させて正解を探す。
(年齢は肌に現れると聞いた覚えがあるが、きめ細やか過ぎてまるで成人したての10代半ばにしか見えないぞ。それどころかシミ1つ見当たらないではないか。それでいてスタイルは世の女性が羨む出るところは出ているのに、それ以外は一切無駄が無い理想的な体型。少なくとも10代後半は確実なはずだ。・・・だが、改めて考えるとサキュア殿が醸し出す色香は20年そこらで会得できるものではないだろう。そもそも魔族なのだから外見など判断材料にならないではないか!・・・くっ、何と答えるのが正解なんだ!?)
(あらぁ~、私、何かまちがちゃったかしらぁ~。)
ちょっとした茶目っ気だったのだが、想定とは違って苦悩するクリスティーナを見て額に一筋の汗が垂れる。
「クリスティーナちゃん?そんなに思い悩まなくていいのよ?ちょっとしたお遊びなんだからぁ。」
「・・・。」
どうすればサキュアを傷付けてしまわないか、長い沈黙の末、考え抜いて出した答えはクリスティーナらしからぬ答えだった。
「・・・19歳だ。」
実のところ魔族である以上、外見で判断すること自体無駄なことは理解しているが、それでも他に頼るものがほとんどないが故に、予想の範囲内で自分より低い年齢を提示して保身に走った。王女として堂々たる振る舞いを日頃から努め、従来の性格もありまり忖度なく思いの丈を伝えるクリスティーナには珍しくサキュアを傷つけるかもしれないことを恐れた。
魔族の仇である自分を受け入れてくれるだけでなく、励ましてくれたサキュアを万が一にも傷つけたくないと思ったのだ。
サキュアの反応が怖くて目を逸らす。そんなクリスティーナの様子を、クスッと笑うとすべて見透かしたようにいたずらな笑みを浮かべた。
「あらあらぁ、クリスティーナちゃんは気遣いのできる娘ねぇ。正解は・・・22よ~。」
「なん・・・だと・・・!?」
クリスティーナは驚きのあまり目を見開く。本日2度目の「なん・・・だと・・・!?」である。
本音を言うと振る舞いから漂う色香、常に持ち合わせている余裕、母親のような包容力、それらのすべてが豊富な人生経験から培っているものだと思っていたクリスティーナはサキュアは見た目以上にずっと年上だとばかり思っていた。
「えっと、そんなに意外だったかしらぁ?」
「いやっ、そんなことは!・・・すまない。正直驚いた。シルビオン王国に来て日は浅いが、貴殿の人となりを一欠けらくらいはわかったつもりだ。貴殿が他の者たちから慕われ、魔王軍内部の精神的支柱であろうことは私でも想像に難くない。そんな貴殿が私と変わらないさして変わらない年だと信じがたくてな。」
「そんな風に言ってもらえるとうれしいわねぇ。でも、クリスティーナちゃんは一つだけ勘違いを貸しているわぁ。」
「勘違い?」
「私たちの絶対的支柱はいつだってリリィちゃんなんだからぁ。」
そう微笑むサキュアの瞳には怪しい炎が揺らめいているように見えた。
皆さんこんにちは、幻夢霞です。
突然ですが、皆さんは「私いくつに見える?」という質問をされたことがありますか?私はあります。その時は実年齢マイナス3歳の年齢を答えることで事なきを得ましたが、冷や汗ものの体験だったのを覚えています。そんな経験でも生かす場面は来るものなのだと思う今日この頃です。
さて、百合とリリィが出会って2日が経ちました。世界が動き出す変換点を経て、世界はどんな結末へ向かって歩き出すのか。もうしばらく物語の種まきにお付き合いください。




