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魔王軍幹部は百合だらけっ!!  作者: 幻夢 霞
第一章 第二次侵略戦争編

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第8輪 魔王軍四天王集結!①

今回の登場人物


〇魔王軍陣営

・リリィ(外見年齢:14歳くらい)

 リリィが納める魔族の住まう国、シルビオン王国の魔王。持ち前の明るさで皆を笑顔にし、シルビオン王国に住む魔族の幸せを願う心優しき少女。

 自分を討伐しに来た百合に一目惚れした。


・花園百合 (外見年齢:13歳くらい)

 異世界から勇者として召喚された少女。感情の起伏を表情にあまり出さない、無口系の少女。リリィに一目惚れした。


・エルトナ (外見年齢:20歳くらい)

 魔王軍四天王第四席。種族はエルフ。魔王領をふらふらしている。


・シスハ (外見年齢:16歳くらい)

 ミカリユ教の神官。不思議な力で他者の傷を癒せる。どうやら体調が悪いようで・・・。


〇ランジア王国陣営


・マリー (外見年齢:30代前半くらい)

 ミカリユ教の聖女。ランジア王国の唯一教であるミカリユ教の全権を掌握している。


・セエビア (外見年齢:20代半ばくらい)

 聖女マリーの『聖女付き』。『聖女付き』とは秘書のようなお付きの人。

「ふぅむ、これはどういう状況なのかね。」


 百合たちが魔王城を襲撃した翌日、エルトナは長い旅路を経て、ようやくシルビオン王国の正門にたどり着いた。


 酒場で無一文になりながら、魔物討伐などで日銭と路銀を稼ぎながら魔王城を目指していたエルトナに、勇者襲来の報がクロエから来たのは昨日の早朝のことだった。通常の勇者の襲撃とは違い、今回は非常事態であるとの連絡を受けたエルトナは可能な限り急いで魔王城へと到着した。


 サキュアを筆頭とした四天王がリリィを守護している限り勇者たちにリリィに危険が及ぶとは思えないが、クロエからの連絡が途絶えたことがエルトナの頭の片隅に最悪を想像させる。


 そういった状態で息を切らせてシルビオン王国の正門にたどり着いたエルトナの眼前に広がる光景は、王国民が行き交ういつもと同じように見える光景だった。


 否、一点だけ平常時と異なっていた。


 いつ来ても正門から魔王城までの道を所狭しと続く露店が埋め尽くし、生活に必要な物品を求める王国民でにぎわっているはずのメインストリート。しかし、今日はシルビオン王国で発行されている新聞を皆一様に握りしめていた。


 ある者は無我夢中で読み漁り、ある者は新聞を片手に他の魔族と何やら言い争い、ある者は困惑の表情を隠せないようだった。正門を見張る衛兵もまた新聞を読むのに夢中になり、エルトナに気が付いていないほどだった。


 エルトナはそんな衛兵の横を通り過ぎると、新聞に目を落とす露店の店主に話しかけた。


「やあ店主、聞きたいことがあるだけどね、ちょっといいかい?」


「なんだい、こっちは今忙しいんだ・・・ってエルトナ様じゃないですかい!失礼しました!エルトナ様が王国にいるなんて珍しい。えっと・・・だいたい三年ぶりですかい?」


「はて?そんなに経っていたかね。そんなことは今はいいさ。それよりもこれはいったいどうしたというんだい?誰もかれも熱に浮かされたように新聞に夢中になって。リリィの非常事態だと聞いていたんだけどね。」


「まさにそのことでさあ!エルトナ様も読んでみてください。」


 店主に手渡された新聞の一面にでかでかと書かれた見出しに目を落とす。


「なになに・・・、『勇者、リリィ様に愛の告白と求婚!?同行者にはランジア王国の王女も?』。・・・なんだい、これは。」


 大きな見出しの下には勇者と思われる少女がリリィに迫り、リリィも頬を赤らめている絵が描かれている。


「あっしらもいったいどういうことやら。軍の兄ちゃんにも聞いたんですがね、まだ詳しいことは離せないとのことでして。エルトナ様は何かご存じではないんですかい。」


「悪いね、私も初耳でね。・・・でも、そうか・・・。」


 エルトナは新聞に描かれた絵の勇者をじっくりと見る。リリィに告白している勇者は、どう見ても少女である。そう、少女なのだ。


「へへ、えへへっっ・・・っじゅるり。・・・おっと、店主、ありがとう。これは返すよ。私は急ぎ、リリィの無事を確かめに行くとするよ。今度礼に顔を出しに来るよ。では、またね。」


 だらしない表情を引き締めると、エルトナは身を翻して足早に魔王城へと歩き出した。


「あんた、今のはエルトナ様じゃないか。お帰りになってなってたんだね。」


 近くで立ち話をしていた店主の妻が戻ってきて、夫である店主に話しかける。


「お前、やっと戻ってきたのか。エルトナ様も今回の出来事は詳しく知らないらしい。」


「あらそうかい。それにしてもあのお方もいつまで経っても変わらないねえ。()()が無ければ手放しで尊敬できるんだがねえ。」


「まったくだ。」


 夫婦の会話は街の国民の喧騒にかき消され、エルトナの耳に届くことは無かった。




「はぁ、はぁ、はぁ。」


 魔王城の一画、人気のない廊下をシスハは一人でふらふらと歩いていた。歩く足は足取りが重くまっすぐ進むこともままならず、体からは大量の汗が噴き出ている。普段の澄んだ瞳は濁り、視界も霞んでいた。


 朝起きてから発現した症状は時間が経過するにつれて酷くなり、部屋で療養していたシスハは自分一人ではどうにもならないと判断し、助けを求めて廊下を歩いていた。


 しかし、不幸なことに今の時間帯は軍は訓練を行っているため廊下に人影は無く、リリィたちも百合たちも近くにいないようだった。


 実は見張りとしてダークエルフの一人がシスハの様子を陰から伺っているのだが、誰かに知らせる様子は無かった。偵察・情報収集・暗殺などを生業とするダークエルフ隊は、シスハの演技によるものなのか、それとも新種の病気かの判断をするために観察をしていたのだ。


 そんなことなど知らず、シスハは壁に手を当てて、重い体を引きずるようにして歩く。しかし、視界がより一層ぼやけ、強烈な眩暈を感じて体の制御を失うと、シスハはそのまま前傾姿勢で倒れこむ。傾くからだと遠ざかる意識の中、シスハは最後に誰かに体を受け止められる感触と共に声を聴いたような気がした。


 酷くなった症状と誰かに会えた安心感から、シスハはその意識を誰かの腕の中で完全に手放した。


「おっと、大丈夫かい、お嬢ちゃん。お~い。・・・ふむ、これは困ったね。とにかく、医務室に運ぶとするかね。ところで医務室は何処にあったかな。久しぶりで忘れてしまうとは。やれやれ、もう少し頻繁に帰ってきた方がいいかもしれないね。」


 長い金髪を後ろでくくった、腰に日本刀を差し、どこか和を感じさせる服を纏ったエルフの女性はシスハを抱えると、陰で様子をうかがっていたダークエルフの案内に従って、医務室を目指すのであった。




 知らない人たちに手を引かれ、地面に押さえつけられる父と泣きながら自分の名前を叫ぶ母。抵抗する自分の腕を引くのは、象徴である白百合を服にあしらった衣装に身を包む男女。彼らから逃れようと必死にもがくも、その手が離れることは無い。


 その手を振り払おうと思い手の方向を見ると、その手は聖女マリーと聖女付きセエビアであった。父と母から引き離した者たちと同じ衣装を纏う彼女らから離れようとする自分もまた、同様の衣装を纏っていた。


 どっぷりとした暗い暗い闇に引きずり込もうとする腕から逃れるように、何か掴むものを探して辺りを見渡す。すると、一筋の光がシスハのところへ差し込み、シスハは一縷の望みをもってその光を掴んだ・・・。


「・・・はっ!」


 見開かれた瞳に映るのは、見慣れぬ天井だった。いや、厳密には今朝も同じ天井を見た記憶があった。ここは魔王城の一室なのだろう。どうやら眠っていたようで、シスハは先ほどまで見ていた悪夢を振り払うように、眠りに落ちる前の記憶を手繰り寄せる。


(今朝から体調が優れずに、誰かを探して彷徨っていたような・・・。記憶が途中で途切れているということは、私は気を失ってしまったと思って間違いないでしょうね。どうやらベットに横になっているみたいですから、誰かが運んでくれたのでしょうか。)


 ぼんやりする頭をなんとか働かせていると、不意にすぐ近くから声が掛けられた。


「目を覚ましたようだね、お嬢ちゃん。調子はどうだい?」


 シスハはすぐに身を起こし、声のした方向へ警戒を向ける。声の主はベットの横に置かれた椅子に座っている女性のようだ。


 金糸のような鮮やかなさらさらとした長い髪を後ろでくくり、美しい髪をかき分けるように先端に向かうにつれて細くなった耳は自らの存在をつんと主張している。


 顔立ちは人間離れした芸術品ような美しさで、全体的に細い躰を包む衣装は何処か異国を感じさせる。壁に立てかけられた武器は剣の一種なのだろうか、ランジア王国では見たことの無い形状をしていた。


「おっと、急に動かない方がいい。お嬢ちゃんは病人なのだからね。」


「・・・あなたはどなたですか?」


「私かい?ふむ、私を知らない上に人間であることを鑑みるに、お嬢ちゃんはランジアから来た勇者たちの一人なのだろうね。いいだろう、ここは正式に挨拶を交わしておくとしようか。私は魔王軍四天王第四席・エルトナ。よろしく、お嬢ちゃん。」


 丁寧な自己紹介をするエルトナに、シスハは慌てて頭を下げる。


「失礼しました!私はミカリユ教の神官のシスハです。魔王軍にお世話になることになりました。」


「ああ。お嬢ちゃんは女神ミカリユを崇めているのか。なるほどね。だとしたら・・・。いや、今はいいだろう。ところでお嬢ちゃん、そろそろ手を離してはくれないかな。」


「えっ・・・、あっ!すみません・・・・って、きゃああああぁぁぁぁぁ!」


 シスハが夢の中で手を伸ばして掴んでいたと思っていたのはエルトナの腕であり、どうやらずっと握ったままであったようだ。気恥ずかしさから手を急いで胸元に引っ込めたところで、シスハは何か違和感を感じた。


 引っ込めた手のあたりが肌色なのだ。つまり、シスハは上半身に何一つ身に纏っていなかったいなかった。


 羞恥心から熱くなる頬と同時にシスハは急いで腕で胸元を隠す。


「な、ななな何で私は裸なのですか!?」


「落ち着きたまえ。お嬢ちゃんは病人だと言ったじゃないか。施術中なのだから、おとなしく横になるんだ。」


 隠れるようにベットに横になったシスハは、自分の左胸のあたり幾何学的な模様が描かれ、その模様を通して身体から()()()()()()()()()()が出ているの気が付いた。


「これは・・・なんですか?」


「これはお嬢ちゃんの症状の原因を取り出しているところだよ。お嬢ちゃんの胸から出ているのは、水の魔素だ。使えるかはこの際置いておくとして、人間と魔族、人ならば誰しも風・火・水・土の四属性のうちの一つの属性を操ることが出来ることは知っているだろう。」


 シスハは、こくん、と頷く。ランジア王国でもその考え方が通説となっていた。


 生まれつき魔法を操ることが出来る魔族とは違い、人間は聖女マリーが築いた魔導を学ぶことで、自分の適性に合った魔導を扱うことが出来る。稀に生まれつき魔法を扱える者が現れると、邪悪な魔族の生まれ変わりだとしてその場で殺されるか、教会の管轄になることがあるのだが、これは例外的な事例だった。


「では自分の適性に合わない魔素を体内に取り込むと、何が起こるか知っているかい?・・・その身を蝕む毒になるんだよ。ただ、属性に合わなくとも魔素は魔素。取り込んだ魔素の量に応じた力を行使することが出来る。お嬢ちゃんも何か身に覚えがあるんじゃないかね。」


「・・・まさか!!」


「思い当たる節があるようだね。そう、君たちランジア王国が()()()()()()()()()から使用を始めた軍用魔導器。その性能の理論は述べた通りというわけだ。力を得るために造られたものが、果てには使用者の身体と命を蝕むとは。人間とははたまたどうしてそこまでして力を求めるのだろうね。」


 エルトナから告げられた衝撃の真実に、シスハは驚きを隠すことが出来なかった。そんな危険なものだとは露も知らずに私たちは軍用魔導器を使用していたのかと、身の毛もよだつ恐怖を覚える。


 自分の胸元を見ると先ほどと同様に碧い粒子が模様を通して排出されている。すぐそばの壁に立てかけられたマリーから下賜された儀仗杖の窪みに、拳大の()()()()()()()がはめ込まれていた。


「なあに、そう心配する必要は無いよ。出てくる魔素の量から見るに、お嬢ちゃんの中にある魔素はそれほど多くは無いようだ。あと一時間ほど治療を続ければ回復するはずだよ。()()()()()()()()()()。」


「助けていただきありがとうございます、エルトナ様。それで・・・()()()とはどういう意味ですか?」


 エルトナの視線の先、シスハの左胸から排出される碧い水の魔素比べて、注視しなくては気づかないくらい非常に微量に漏れ出す()()()()()があった。


「特に深い意味は無いさ。今の私にはもう関係の無いことだからね。それよりもお嬢ちゃん、私がいない間の昨日の出来事を聞かせてはくれないかい?」


 眼を爛々と輝かせ、涎を垂らしながら詰め寄るエルトナにシスハは若干困惑しながらも、ランジア王国から魔王城で起こったことを説明するのであった。

 皆様、ほんとぉぉぉぉぉにお久しぶりです。幻夢霞です。

 前回の投稿から2か月が経っておりました。お待たせして申し訳ありません。「こいつ蒸発したか」と思われたと思いますが、私はリリィたちがハッピーエンドを迎えるまで書き続けるつもりでありますので、安心して気長に待ってくれればと思います。半年更新が無かったら多分死んでます。

 更新の間が空いた理由としては、私事ですが、以前冗談っぽく言っていた転職を四月から本当にしました。これマジです。そうすると、新しい職場、新しい仕事でエネルギーが枯渇してしまうんですね。年は取りたくないものです。今回はゴールデンウイークに入ったので、温めていた小説に着手することが出来たのです。

 さて、久しぶりの『魔王軍幹部は百合だらけっ!!』はいかがでしょうか。楽しんでいただけましたでしょうか。時間が空きすぎて忘れてしまった方は、読み返していただけると幸いです。今回軍用魔導器の理論が少し判明しましたが、後ほどもう少し丁寧に解説いたしますので少々お待ちください。

 これからも『魔王軍幹部は百合だらけっ!!』をよろしくお願いいたします。

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