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魔王軍幹部は百合だらけっ!!  作者: 幻夢 霞
第一章 第二次侵略戦争編

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第7輪 恋は『盲目』というけれど、度が過ぎればそれは『耄碌』と同じ①

●今回の登場人物

〇魔王軍陣営

・リリィ(外見年齢:14歳くらい)

 リリィが納める魔族の住まう国、シルビオン王国の魔王。持ち前の明るさで皆を笑顔にし、シルビオン王国に住む魔族の幸せを願う心優しき少女。


・サキュア(外見年齢:22歳くらい) 

 魔王軍四天王第一席。種族はサキュバス。みんなのお姉ちゃん。


・ナイト(外見年齢:18歳くらい) 

 魔王軍四天王第二席。種族はヴァンパイア。イケメン王子様みたいな女性。現在クリスティーナとシスハとの戦闘中。


・ココナ(外見年齢:9歳くらい)

 魔王軍四天王第三席。種族はワーウルフ。ナイトのお姫様。ナイトを応援中。


・クロエ(外見年齢:20歳くらい)

 ダークエルフ隊隊長。種族はダークエルフ。暗殺・偵察・情報収集が得意。百合に敗れ、中庭で気絶中。



〇ランジア王国陣営

・花園百合 (外見年齢:13歳くらい)

 異世界から勇者として召喚された少女。感情の起伏を表情にあまり出さない、無口系の少女。ランジア王国に囚われた親友、有栖を救うためリリィ討伐を目論む。


・クリスティーナ=ランジア (外見年齢:21歳くらい)

 ランジア王国の第一王女。王女としてランジア王国の民を真に想う気高い女性。どうやら何か思惑があるようで・・・?


・シスハ (外見年齢:16歳くらい)

 ミカリユ教の修道女。不思議な力で他者の傷を癒せる。


・ゼドリク=ランジア (外見年齢:40代半ばくらい)

 ランジア王国の現国王。国民に対して圧政を敷く悪辣の王。


・アリア=ランジア (外見年齢:14歳くらい)

 ランジア王国の第二王女。聡明で民の幸せを心から願う善良な王女。ランジア王国で稀な重度の衰弱病に罹患している。百合と有栖を召喚する際の生贄になった。

 百合が中庭でクロエに苦戦しているころ、クリスティーナとシスハはナイトとの戦闘を継続していた。


「はぁ!」


「くっ!」


 クリスティーナの突きをナイトは紙一重で避ける。だが完全に避けきれずに掠った刃は、今までの勇者が辛うじて傷つけることができたナイトの皮膚を容易く切り裂いた。引きよせた槍の刃には鮮血が紅く光っている。


「へぇ。私に血を流させた人間は勇者以外では君が初めてだよ!」


 クリスティーナはナイトに息つく間も与えずに連撃を繰り出す。ナイトも精一杯マインゴーシュで受け流し、受け止め、時には反撃をするが、ナイトの切り傷の数だけが増えていく。


 百合と別れてからの戦闘はナイトの防戦一方だった。たまに通るナイトの斬撃による攻撃もクリスティーナが負傷するたびにシスハの不思議な力で癒されてしまう。ならばシスハを先に潰してしまおうとするも、クリスティーナがナイトをシスハのいる後方へ行かせることは無い。堅牢な壁のような安定感でクリスティーナはナイトの前に立ちふさがっていた。


「・・・まだここを通してくれる気にはならないか。」


「冗談じゃないね。君のみたいな危険なレディをリリィのもとへ行かせるわけがないじゃないか。君こそ諦めて国へ帰ったらどうかな?逃がしはしないけれどね。」


 その時、ナイトの後方から何か大きなものが倒れたような大きな音と地鳴りが響いた。


「この音は中庭の方かな。クロエ・・・ではないだろうね。とすると・・・」


「もしかして百合さんに何かあったのではないのですか!?」


「あの百合殿が簡単に敗れるとは思えないが、ここは魔族の本拠地だ。何があったとしてもおかしくは無いな。ナイト殿といったか。悪いがここは無理を推してでも通らせてもらう!」


 クリスティーナが勝負を急ぐように槍の穂先をナイトに向ける。シスハもクリスティーナがいつ負傷をしても治せるように、体内の魔力を集める。


「そう簡単に行かせると思っているのかい?」


(なんて言ってはみたものの、目の前のレディはまだ底を見せていないようだ。困ったね、今のままでは止めるのは骨が折れるね。)


 ナイトは後方で自分を模した人形を胸に抱き、不安そうに自分を見つめる愛らしいココナ(おひめさま)を見やる。


「・・・あんな顔をさせてしまうなんて、意地を張るのはどうやらここまでのようだ。・・・あまりこの手は使いたくなかったんだけどね。姫様、いいかな?」


 交わした視線でココナはナイトの意思を理解すると、頬を赤らめて頷く。ナイトはココナの下へ跳躍すると、ココナに向き合うように着地して屈むと目線の高さを合わせる。


「ナイト、いいよ。」


 ココナが少し服をはだけると、白く細い首と小さくてきれいな鎖骨がむき出しになる。瞳をきゅっと閉じ、頬を染めながら恥ずかしそうなココナの首筋へナイトの端正な顔がだんだん近づいていく。ナイトの吐く息がココナの首筋にかかり、柔肌に鋭い犬歯が触れるかと思われたその時、魔王城内に『ピンポンパンポーン』と、この場に不釣り合いな音が響いた。


『えぇ~と、ナイトちゃん、ココナちゃん、そして勇者と一緒に着た子達に連絡よ~。今すぐ戦いを止めて、『王の間』に来てくれないかしらぁ。ああそうだったわぁ、中庭はクロエちゃんが仕掛けた罠でいっぱいだから、別の通路を通ってくるのよ~。ナイトちゃん案内お願いするわね~。』


 何処か困ったような、それでいて焦っているようなサキュアの放送が終わると、ナイトたちの間は静寂に包まれた。こうしてナイトたちとクリスティーナたちの戦いは、お互いに状況の掴めぬまま終わりを告げたのである。




 ナイトとココナに連れられて、クリスティーナとシスハは魔王がいるという『王の間』へ続く裏道を案内されていた。クリスティーナたちが先ほどまで戦っていた部屋は、魔王城へ入って二つ目の部屋のため、魔王軍の間で『二の間』と呼ばれているらしい。その『二の間』の壁に細工がされており、壁の一部が隠し通路に繋がっていてどうやら魔王軍たちはその通路を使って移動しているようだった。


 そんな通路は魔王軍が移動しやすいようにだろうか、何人かがすれ違っても余裕のある幅があり、実際先ほどから多くの魔族の往来がある。ナイトとココナの歩く道を開けるように通路の脇に避ける魔族。クリスティーナたちへ向けられたその視線には、疑心や警戒の念が込められており、シスハは委縮して身を縮こませて歩いていた。


 シスハはナイトとココナに続いて前方を歩くクリスティーナを見る。魔族たちから向けられる視線をものともせず、堂々とした立ち振る舞いで歩いている。どうしてこの方は敵地の真ん中で臆する気配がないのだろうかとシスハは不思議だった。


「きゃっ!」


「おっと、シスハ殿大丈夫か?」


 クリスティーナの背中に隠れるようにしばらく歩いていると、クリスティーナが急に立ち止まり、シスハはつんのめるようにクリスティーナの背中にぶつかってしまう。鎧に顔面をぶつけたシスハは赤くなった鼻を押さえる。


「は、はい。私は大丈夫です。急に止まってどうかしたのですか?」


「どうやら着いたようでな。」


 シスハが隠れていたクリスティーナの背中から顔を出すと、目の前には威圧感のある扉があった。


「サキュア、レディたちを連れてきたよ。けれど、本当にリリィの下へ通してしまっていいのかい?」


『ええ、もしかしたらその子たちが解決できるかもしれないからぁ。』


 扉の前で通信魔法を繋いでサキュアに最終確認をするナイト。ナイトはいまだに二人を警戒しているようだった。そのためナイトは背を向けたまま、ここへ至るまで一瞬たりとも隙を見せていなかった。


「ふぅ、君がそういうのなら信じるとしようか。さあ、レディ。中へどうぞ。」


 ナイトが扉を開いてココナと中へと先に入り、シスハ達を入るようにと促す。


「ここからだ。ここから()()()()()()()()()()の、そして()()()()()()()()()への道が始まる。そうだろう、アリア。」


 クリスティーナはそう呟くと魔王がいるという王の間に踏み入れる。対して、シスハは短い時間逡巡しながらも覚悟を決めて王の間へと入った。そこでシスハが目にした光景は・・・。


「かわいい。好き。大好き。結婚したい。結婚しよう。」


「ん~~~~!!!」


 例のごとく無表情なのだが、何処か興奮しているような様子で、銀髪の特徴的な美少女に怒涛の勢いでありながらも淡々と告白する百合と、百合に告白されて顔を真っ赤に赤らめながら悶える少女だった。


 その近くにはプロポーション抜群の魔族が頬に手を当てて、『あらあら〜』と声に出しながら困った様子で2人を見ている。シスハが横を向くと、クリスティーナだけでなく、ナイトとココナも開いた口が塞がらないというようにポカーンと2人の様子を傍観していた。なんだかとても場違いな場所に来てしまったような錯覚がした。


「・・・これはいったいどういう状況なのか、説明してくれないかな、サキュア。」


 先に部屋に入っていたことで、誰よりも先に我に返ったナイトが頬をひきつらせながら問う。隣のココナはまだ、ぽけー、と百合たちを眺めていた。


「それがねぇ、私にもよくわからないのよ〜。」


 サキュアは困ったように微笑むと、百合が王の間に入ってきたときのことを語り始めた。




 王の間の扉が勇者の手によってゆっくりと、だが確かに少しずつ開いていくのをサキュアは息を呑んで視ていた。


(ナイトちゃんだけじゃなくて、クロエちゃんをも敗ってくるなんてすごいわねぇ。ここまで自力できた子は初めてね。)


 扉が開ききると、見慣れない服を着た黒髪の美しい小柄な少女が警戒した様子もなく王の間へと足を踏み入れる。年のころは人間でいうところの10代前半だろうか。異世界からの人間はこちらの世界の人間の人間と比べて顔立ちが幼いため、正確な年齢は掴めないがおおよその年齢はそのあたりだろう。


(この子が勇者なのね。リリィちゃんと同じくらいの年かしらぁ。狂暴そうには見えないけれど、ナイトちゃんたちを倒してくるぐらいだから、私ではきっと相手にならないのでしょうねぇ。)


 男が相手であれば最強であるサキュアだが、それ以外の相手に対しては四天王の中において特に秀でた強さを持ち合わせていない。つまり、今回の勇者を相手にリリィを守りきるなど、サキュアには荷が重い役目なのである。


(結局エルトナちゃんも間に合わなかったわね〜。エルトナちゃんならきっと止められ・・・ないわねぇ。今私にできることはナイトちゃんたちが戻ってくるだけの時間を稼ぐことだけかしらぁ。あの二人ならきっとなんとかしてくれるはずだからぁ。)


 サキュアはその身と命の使い道に覚悟を決めて、臨戦態勢をとる。勇者の一挙一足を見逃さまいと注視していたサキュアは、その時になって初めて勇者の様子がおかしいことに気が付いた。


 王の間に入ってきてから微動だにしていないのである。ぽー、と呆けたように立ち尽くしており、その視線の先にはサキュアの隣で魔王の椅子に座るリリィがいた。そしてリリィもまた、ぽー、と勇者を見つめていた。


 その空間でまるでサキュアだけが取り残され、時間さえも止まっているかのようだった。


「ええっ~と~、リリィちゃん?勇者のあなた?どうしたのかしらぁ?あらぁ?聞こえないのかしらぁ?リリィちゃ~ん。・・・困っちゃったわぁ~。」


 お互いのことしか目に入らずに、声も届かない二人に途方に暮れたサキュアは、魔王城全体への通信魔法で助けを求めるのであった。




「それでこうなったというなんだね・・・。」


 魔王を殺すために召喚された勇者が魔王に求婚し、求婚された魔王もまんざらでもなさそうに悶えている。ナイトは目の前で現在進行形で繰り広げられている、あまりに非現実な光景に頭がくらくらした。


「リリィお姉ちゃん、嬉しそう。ココナもなんだかうれしい。」


 リリィは頬を朱色に染めながらその顔を隠すように両手で覆っているが、時折指と指の間から百合を見て悶えて、また顔を隠すという奇怪な行動を繰り返している。そんなリリィを見ているココナもにこにことうれしそうだ。


「なあ、シスハ殿。百合殿が魔王と思われる少女に求婚しているように見えるのだが、私は魔族に幻でも見せられているのか。」


「クリスティーナ様、私にも同じものが見えています。きっと現実です。」


 ようやくショックから立ち直ったクリスティーナに事実を叩きつけるシスハ。クリスティーナはサキュアの話を聞いてもなお、目の前の光景が信じられないようだ。


「ん、みんないつここへ来たの?あれ、さっきの二人もいる。」


 ようやくクリスティーナたちの存在に気が付いた百合が不思議そうにクリスティーナに問う。百合にしてみれば、敵同士の両者が争うことなく同室にいるのは不自然に違いないのだが、当の本人たちはそんなことはもうどうでもよくなるような状況であり、再度争う気概など毛頭残っていなかった。


「・・・それで、リリィ。どうするつもりだい?どうやらそちらの勇者(レディ)に戦う意思は本当にないようだけれど、この二人はランジア王国の人間だ。私たちの情報を伝えさせるわけにはいかないからね、始末するかい?」


 ナイトの発言で現実に戻された一同に緊張が走る。クリスティーナはナイトに向かって再び槍を構え、シスハもまた儀仗杖を握り相対(あいたい)する。


「『リリィ』って名前なの?名前までかわいい。」


 ナイトたちの空気も全く読まずに百合はリリィに夢中になっている。


「はいはい、みんな落ち着いて~。ナイトちゃんもあんまり怖がらせるようなこと言っちゃダメよ~。それで、ええっと~、確か『百合』ちゃんでよかったわよねぇ。百合ちゃんはリリィちゃんに危害を加える様子は無いから、私たちとしてもあなたをどうこうするつもりはないのだけれど、あなたたちはどうしたいのかしらぁ?」


「そうだね。あなたたちには悪いと思うけどさっきナイトちゃんが言ったとおり、あなたたちをランジア王国に帰すわけにはいかないんだ。もしあなたたちがこの国で魔族(みんな)と仲良く暮らすなら私が全力で手伝うよ。でももし帰るというなら、みんなのためにもあなたたちを生かしておかない。」


 サキュアが手をたたいて注目を集めて、リリィは魔王モードに戻りクリスティーナたちに問う。優しいリリィが自分の感情を押し殺して魔王としての立場と責任から出した問いは、この場にいる全員の間に先ほどよりも重く濃い緊張を走らせる。一層重くなった空気の中、百合がこぼす。


「キリッとしたリリィも素敵。」


「・・・百合殿、少し黙っていてくれないか。」


 重苦しい空気もどこ吹く風、一言で場を壊した百合にクリスティーナは頭痛を覚える。百合は一体どうしてしまったのだろうか。答えの出ない問いを一先ず頭の片隅に押しやる。


 しかし、この重苦しい空気を和ませてくれた百合に感謝しながら、今こそ千載一遇チャンスだと自分に言い聞かせて、クリスティーナは力強く一歩前に出て跪いた。


「私はランジア王国第一王女クリスティーナ=ランジアだ。まず貴国への我が王国の蛮行をお詫びしたい。それにも関わらず貴国での在住を許可する魔王リリィ殿の提案をありがたく思う。だが、私、クリスティーナ=ランジアは貴国での在住も、ましてはランジア王国への帰国も望まない。」


 誰よりも毅然としていて、今まで見た中でもとりわけ真剣な表情でクリスティーナは驚きの願いを申し出た。


「私は魔王国と共に、ランジア王国への侵攻と我が父ゼドリク=ランジア政権の打倒、および殺害の助力を願いたい。」






 皆様お久しぶりです。幻夢霞です。

 いや~、本当にお久しぶりです。本当はもっと早くに投稿する予定だったのですが、納得のいく話に仕上がらなかったのと、以前言っていた転職活動のため時間をうまく作れずにいたところ、前回から一か月以上経ってしまいました。正直、読んでくれてる方が残っているのか不安な気持ちでいっぱいです。

 では小説の話をいたしますと、この度ついに第一章が始まりました!祝!これからが本当に書きたかった話が始まります。第一章ではナイトやココナの過去編、クロエとエルトナの関係性など物語がより面白くなるバックボーン的なものを書いていこうと思っています。『魔王軍幹部は百合だらけっ!!』はキャラの過去を大事にしているので、そのあたりまで早く書けるように頑張ります。

 また、タイトルにもある通り、カップリングの数も増やしていくつもりなので、誰と誰がカップリングになるのか予想してみるのも面白いかもしれません。

 それではあとがきはこの辺りで。次回は2/17,24(土)更新予定です。

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