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魔王軍幹部は百合だらけっ!!  作者: 幻夢 霞
序章 運命の出会い編

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12/31

第4輪 平和な世界②

 今回も新キャラが多いので、今回は役職と共にあげておきます。

2話後にまた新キャラが登場しますが、それ以降は落ち着く予定です。


・聖女マリー

・聖女付きセエビア

・ゼドリク=ランジア国王

・ヌグリフ近衛隊隊長

・ブラド=ランジア第二王子


 子供を熱心に治療するシスハを聖女マリーは冷めた眼差しで見下ろしていた。その瞳の中には激しい憎悪と嫉妬の炎が燃えていることをセエビアは知っている。


 ここは教会の中でも司教以上の役職の人間のみが踏み入ることのできる領域だ。大聖堂の大広間全体を見下ろせるこの場所は、教会内の地位の高さと身分の違いを表す象徴でもある。大広間からは見上げても、こちらを見ることは困難になるよう設計されている。


 そんな場所の自室に繋がる廊下の途中でシスハを見かけると、マリーは無表情で見下ろしながらぽつりと呟く。


「あれもいい加減目障りですね。」


 マリーの呟きをセエビアは聞こえなかったかのように黙ったまま後ろに控える。14年間の『聖女付き』の生活の中で、マリーの逆鱗はわきまえている。


 マリーはしばらくするとシスハを見下ろすのをやめ、自室に続く道を歩き出す。マリーは歩きながら振り向くことなくセエビアに話しかける。


「あれから進展はありましたか?」


「いえ、まだ目ぼしい成果はありません。前回、勇者討伐に向かわせた神官に与えたものが最も出力が出たものかと。」


 マリーの意図を瞬時に察して返事をするのは、マリーの機嫌を損なわないための大事な技術(すべ)であることをセエビアは心得ている。


「神官?あぁ、あの自分こそが司教にふさわしいなどと主張する、身の程をわきまえない下賤な男でしたか。それにしても、あの男に渡した()()()が最良品とは・・・。まあ、魔石はいくらでも手に入ります。私も後で研究に加わるとしましょう。」


 哀れな男だとセエビアは思う。あの神官は確かに自らの器のわからない愚物であったが、数少ない魔導使いであり、何より心からマリー様を崇拝していた。当のマリー様は名前も覚えていないだろう。


 そんなことを考えながら歩いていると後ろから、顔を真っ赤に赤らめ、息を切らせて修道女が走ってくる。身に纏う真新しい司教服は、全力で走ってきたであろうことがうかがい知れるようにあちこち乱れていた。


「聖女様!あれはいったいどういうことですか!?」


 鬼の形相でマリー様に詰め寄る彼女は、記憶が正しければ今日付で新しく司教になったシスターのはずだ。名前は何と言っただろうか。短い期間で入れ替わる司教の名を思い出せない。いや、あの様子なら()()()()()()()()()()()()だろう。


「何か言ったらどうです!」


「・・・はぁ、面倒ですね。」


 シスターに背を向けあからさまに面倒くさそうな表情をしていたマリーは、振り向くとともに作り笑顔を作る。


「どうかされましたか?」


「どうかしているのはあなたです!あんなおぞましいことを教会で行っているなど、どういったおつもりですか!人の命を何だと思っているのですか!?人の命の尊さを説く教会の理念に反しているではありませんか!?」


「ええ、人の命は尊いものです。ですから、()()()()()()()()()()()()()()()()?」


「っ!ふざけないでください!聖女、いえ、あなたに聖女としての資格はありません!外道マリー!」


 シスターは()()()()()()()()()()()()儀仗杖を取り出すと、体中の魔力を練り上げる。日々の研鑽の成果であろう、先日魔王城で魔導を使用したトーマスよりもずっと早く魔力を練り上げる。


「あなたの罪をここで清算します!」


 詠唱をするシスターの周りには複数の極限まで圧縮された小さな水球が浮かび上がる。彼女が詠唱しているのは水弾ウォーターバレッドだ。水弾ウォーターバレッドは上級魔導の中でも詠唱が短いにも関わらず、殺傷能力に長けた水の魔導だ。通常一つでも維持することが困難な水球を複数操っているのは、彼女の才覚と研鑽の所以であることは、魔導が得意ではないセエビアでもよく分かった。


「大いなる水よ、我が呼び声に応え集い(たまえ)え。其の清純を()ち弾丸に為りて、我に仇なす敵を討て!水弾(ウォーターバレッド)!」


 詠唱が終わると、水弾はシスターが振るう杖に呼応して推進力を得ると、勢いよくマリーに討つべく加速する。障害物もない二人の間を飛ぶ水弾は、突然マリーの手前で霧散する。


「なっ!」


 驚愕に目を見開くシスターを無表情で見据えていたマリーは、スッと人差し指をシスターに向けると一言だけ詠唱する。


水弾(ウォーターバレッド)


 マリーが告げると、十数個はあろう水弾が浮かび上がりシスターの全身を貫く。


「何故・・・あなたが・・・()()を・・・。」


 地に伏し、空いた穴から血を流すシスターに再度指を向けると、()()()()()指先に浮かべた水弾(ウォーターバレッド)を展開し、シスターの眉間を貫く。マリーはこと切れたシスターに背を向けると再び自室へ歩き出す。


「セエビア、あれを片付けておきなさい。それと、ふふっ、それも大切に使いなさい。()()()()()()()()ですからね。」


「かしこまりました。」


 マリーがセエビアを置いて廊下の奥に消えると、シスターの死体に呟く。


「マリー様に逆らうなんて馬鹿ですね。黙って従っていれば、教会(ここ)では不自由なく暮らせるというのに。ああ、どうしましょう。また新しい司教候補を探さないといけないですね。本当に面倒なことです。」


 その呟きを拾うものは、もう誰もいなかった。






 ランジア王家が住まうランジア城は、ランジア王国の中心に位置する。長い歴史を持つランジア城はその歴史を感じさせる荘厳たる佇まいで城下町を見守っていた。城の最上階には、代々ランジア王国の王族の居住スペースが存在する。


 ただし、今代ではクリスティーナとアリアは住むことを許されず、ランジア国王と第一王子、第二王子のみが住んでいる。その下の階には、入り口から玉座まで真っ赤で良質な絨毯が敷かれた謁見の間があった。


 ランジア城全体と比べて真新しい謁見の間は、部屋全体が最新型の火の魔導器で明るく照らされ、壁の模様は煌びやかな装飾が施され、入り口から玉座へ続く道に並ぶ近衛隊はそれぞれ形状の異なる最新型の軍用魔導器を装備していた。


 謁見の間の最奥、豪勢な玉座にランジア王国国王、ゼドリク=ランジアが鎮座していた。


 40代半ばとは思えない歴戦の戦士のような筋肉質な肉体と顔に深く刻まれた皺は、王の威厳と威圧感を与えるには充分であった。


「おい、召喚の準備はできているのか。」


「はっ!定例通り明日にはすべての準備が終えるかと。」


 セドリクの問いに先ほどまで、玉座に続く階段のセドリクより一段低い段に立っていた近衛兵が頭を垂れて答える。


 彼の名はヌグリフ。セドリクに忠誠を誓い、セドリクの命令ならばどんな非道な行いでも必ず完遂する近衛隊の隊長だ。


「ならいい。明日は予定通り()()を使う。そうすれば確実に()()が邪魔をしに来る。儀式には騎士団長(あいつ)も呼んでおけ。」


「陛下、お言葉ですが、(わたくし)がおります。あのような忠義無き者はご不要かと。もしくはご要望ならば事前に私が処分いたしますが。」


「おい、貴様はいつ余に命令できる立場になったのだ?」


「失礼いたしました!出過ぎた真似をいたしました。」


「ふん、まあ良い。とにかく騎士団長(あいつ)は連れて来い。貴様であれに勝てぬであろう。それにあれはあれなりに使い道はある。」


「・・・かしこまりました。」


 歯をぎりっ、と噛みしめ、できるだけ感情を殺して答える。


(確かに私は騎士団長ほど腕は立たない。だが、あの女に劣るなど・・・!)


 明らかに不服そうなヌグリフを視界の端に、セドリクはかつて手に入れた曖昧ではあるが大部分が記された魔族領の地図を手に取る。勇者召喚を始めてから3年が経つが、まだこの領土のたった一部分さえも手に入れるには到っていない。


(まあよい。容易に手に入ってはつまらぬ。苦労して奪ってこそ、価値あるものになるというものだ。)


 その時、何の予兆もなく謁見の間の扉が開きだす。入り口の近衛兵の制止を無視して玉座へと歩くのは、ランジア王国第二王子のブラド=ランジアだ。


「これはこれは父上、今日もご機嫌麗しゅう。」


「・・・貴様を呼んだ覚えはないぞ、ブラド。」


「それは失礼いたしました。ですが、明日の勇者召喚の儀にて、()()を使うと耳にいたしまして。是非、わたくしも見学させていただこうかと。」


 常に顔をにやつかせ、まるで役者の主演になったような態度で玉座前の階段を上る。その進行を阻むように、ヌグリフは間に立つ。


「なんだ貴様は。このわたくしの前に立つなど、無礼だとは思わんのかね。」


「陛下の許可無き者を、御前に行かせるわけにいきません。ブラド様、お下がりください。」


「なんだと、この薄汚れた犬風情が。・・・そういえば、貴様は生まれからして穢れているのであったな。だからこんなに匂うのだな。」


 下卑た笑みを浮かべるブラドと、ブラドを睨みつけるヌグリフ。一触即発の空気の中、セドリクは地図に目を落としたまま問う。


「何故今になって儀式に来る。貴様は勇者など関心がないと思っていたのだがな。召喚の儀を学び、次の王位でも狙っているのか。」


「そんな滅相もありません、父上。わたくしはただ、()()が最後にどんな顔をするのか、それが見たいのです。絶望に泣きじゃくるのか、全てを諦めた表情で無気力にうなだれるのか、はぁはぁ、想像するだけでわたくしは興奮が収まらないのです。」


 恍惚とした表情で息を荒くするブラドを、セドリクは汚物を見るような目で見下ろす。


「・・・許可しよう。用が済んだのならとっとと失せろ。余は貴様と違って暇ではない。」


「ありがとうございます、父上。それではわたくしはこれで。」


 仰々しく礼をして、最後にブラドを鼻で嗤うと、来た時同様に鼻にかかる態度で謁見の間から出ていく。扉が閉まり、謁見の間には静寂が戻る。


「余は出る。後のことは貴様に任せる。」


「はっ!」


 セドリクは立ち上がると、マントを翻し大股で謁見の間を後にした。





 さて、『魔王軍幹部は百合だらけっ!!』を書き始めてから早くも2か月がたっておりました。

皆様お楽しみいただけてますでしょうか。

 今回で12話目となりましたが、早くも心の底から後悔していることがございます。

 それは、『魔導の詠唱』です。

 私は『魔王軍幹部は百合だらけっ!!』を書くに当たって、結末を含めた先の先まで決めてから書いております。

 しかし、大筋は決めていてもその細かいところまではその付近になって決めております。

 その一つとして、魔導と魔法の違いを考えていたどこかの愚か者は、「そうだ~、魔導って詠唱あった方が、設定的にも世界観的にもすっごくいいかも~」と実際に書く時のことを微塵も考えずに、メモ帳の設定欄に書き連ねました。

 この愚かな行いによって、今私は多大なる苦労と「今後の詠唱どうしよう、何にも思い浮かばない!」という絶望に苛まれているのです。

 この経験を経て一つ賢くなった私は、賢くなった頭で、「あっ、この設定の方がおもしろいかも~」と新しい詳細な設定をメモ帳に書き込んでいくのです。


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