フーゴとリヤ(10)大団円
「フーゴお帰り」「おかえり」「フーゴ」「フーゴだ」
精霊達がどんどん際限なく集まってくる。
その中心はフーゴとリヤだ。
「ただいま、リヤ」
「フーゴ!フーゴ!!」
両手を広げて笑っているフーゴの胸にリヤは飛び込んだ。
間違いない。喜びで心が震える、喜びで涙が止まらない。
フーゴの顔を見たいと顔を上げるとフーゴも泣いていた。そしてあの頃と同じようにギューッと抱きしめてくれる。
「リヤ、会いたかった。戻って来たよ。これからは永遠に一緒にいられるから」
「フーゴ、私もずっとずっと会いたかった、嬉しい。フーゴがいる私のフーゴが」
「僕も精霊になったんだよ。皆んなが助けてくれたんだ」
「じゃあ本当にずっと一緒にいられるのね、永遠に」
「うん」
フーゴは14歳の頃の姿だった。一番リヤ受けが良さそうだったからと笑う。
その笑顔に見惚れてしまう。
うれしい、幸せだ。
沢山の精霊達が集まったのだ。
さっそくトゥリアイネンの湧き出る泉のある広場に皆で移動し、わいわいとフーゴの帰還を祝う会を催すことになった。
皆がフーゴがどうしてここにいるのか聞きたがった。
フーゴが人間としての生命を終えた時、枕元に集まっていた大精霊達は力を合わせ天に昇る霊体を引き止め水の大精霊の力を借りて聖なる水を張ったカップにその小さな霊体を閉じ込めた。
それから、かわるがわる霊体に力を注ぎ続け精霊に育てた。
先に行われた精霊会議で人間に永遠の命を与えるのは超常現象だが、死んだ命を精霊に鍛え直すのは問題ないのではないか、世界の理の更に外のことだと結論づけたのだ。
フーゴを失いたくない一心で。
精霊は皆、名をくれて気軽に声をかけてくれる優しいフーゴが大好きだったから。
以前、リヤが言っていた氷の山を活火山にして噴火させる話はやろうとして止めた風に語られていたが、実は噴火させていて、噴火を長期間に及ぼすことを精霊王に怒られてやめていたのだった。
噴火で出来た大穴に土の大精霊の精霊王がさらに地盤沈下を起こして整え、水の大精霊が氷の山の雪解け水を引き入れて大きな湖を作った。
その湖を宿る器に貰い、フーゴは精霊として強い力を蓄えるのを今か今かと待った。
3000年の時を経て遂に姿を取れるようになった。
ようやく大精霊達は安心した。あの頃のフーゴのまんまのフーゴが戻ってきたのだから!
これらのことは過去に例がなかったので一か八かで行われていた為、失敗が怖くてリヤにバレないよう秘密裏に行われていた。見た目は同じでも中身が違うとか・・・そんなもしもの時は氷の女神がどれほど怒ることか、もう天変地異どころでは済まされないだろう。
だから皆でフーゴの気配を消し続けた。火の大精霊や風の大精霊はフーゴの姿を秘匿するために認識阻害の加護を何重にもかけてリヤの目の前にフーゴが現れたときに解けるようにしていた。
が、ラポムが大精霊達の苦労を知らず歓喜の声を上げたので、ちょっと早めに見つかったという訳だ。
「ねえ、どうして湖の精霊が村にいたの?」
「まだ姿をとるのに慣れてなくて、すぐ霧散してしまって不安定なんだ。それでリヤの元に行くのにゆっくり歩きながら慣らしていた。
僕が人間だった時に生まれ育ちリヤと過ごしたあの村が今もあるなんて歩いていて懐かしかったよ。
神殿はなくなっていたけど、川も温泉もあったし、僕の詩を掘った石が風化しながらもあそこにあるのはびっくりした、百合の花も。僕とリヤが暮らした証が3000年経っても村に残ってるなんて凄いね。
・・・うん、なんだかリヤの隣にいるとラクだね、今はこの体が安定してるよ」
「ねえフーゴ、私たちはあの村で伝説になっているのよ。誰もが私たちのことを知ってるわ」
「それは光栄だね」
「だけど、私たちの本当の物語は誰も知らないのよね。
随分後になって神殿で山の神から百合の女神に宗旨替えをした時に、当時の司祭がまことしやかな伝説を作ったのよ。氷の山の神もその百合の女神もどちらも同じ私で実際は氷の女神なんだけどね。
だいたい、私たちの事は私たちしか分からないことだもの勝手にあることないこと言われてるわ。最低限の羊飼いと女神ってところだけ合ってるから黙っておいたけど」
「それはそうだ。いつも覗き見していたヴィーリヤミだって誤解があるだろうし、全部は知らないだろう。僕たち2人に何があって、どれだけ愛し合っていて、どれほど幸せかなんて僕たちだけが知ってることなんだからそれでいいんだ」
「ね?」とフーゴはヴィーリヤミに向かって笑いかけた。
ヴィーリヤミはその言われた内容よりも今再びフーゴに名を呼ばれたことが嬉しくて、ウンウンと激しく同意している。
ススィはリヤとフーゴの後ろを陣取って2人の背もたれ兼、肘掛け代わりを買って出て幸せを満喫中だ。
まるでフーゴがこの場の王のようだが、当の精霊王ウペアマーは気にしない。自分たちが一世一代の大仕事、フーゴの復活を完璧に成し遂げたことに大満足中だ。
酔ってもないのに火の大精霊と水の大精霊に何かフーゴに宴会芸を見せてやれと無茶振りをしている。
フーゴは止めようかとも思ったがまあ、火の曲芸で落ち葉に火がついても水で消して風で乾かせるからなんとかなるだろう。せっかくだから、その宴会芸とやらを見せて貰おうかと見ていたら・・・。
水が龍のように動き回り、えらく派手な火炎が天高く渦を巻いて何度も上がってドン引きなんだがみんなヤンヤヤンヤの大喝采だ。うーん、やっぱり止めるべきだったか、リヤが笑ってるからいいか。
「ねえ、これからは僕も氷の山の湖の精霊だから、リヤの傘下だね」
「傘下だなんて言わないで、フーゴは私の夫でしょう」
「そうだ。僕たちは精霊同士の夫婦だね。もう一度結婚式をする?精霊様式の神殿で」
「私たち別れてないもの、重婚になっちゃわない?」
「重婚って別の相手のときでは?というか人間の法律とかもう関係ないけどね。
じゃあ、僕を精霊にしてくれた皆にお礼と、僕たち精霊夫婦のお披露目を兼ねて集まってくれた皆とここで披露宴をしよう。どうしても君ともう一度永遠を誓いたいんだ本当の永遠を。もう離れ離れは嫌だから」
「うん、素敵だわ。そうしましょう!皆んな聞いたでしょう、これから大披露宴を始めるわよ」
精霊達の宴会はお祝いを述べる声や笑い声が絶えず、いつまでもいつまでも続いた。
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