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紅い約束と灰色の鎖は繋ぎとめて離さない  作者: 乃ノ木 ニトウ
序章~クレイの物語~
7/20

砂漠歩行

1日目

キャラバンを去って一日目、地図通りに歩き続ける。水筒の水を飲み、少なくなったらオアシスを中継して手に入れるのを繰り返す。桃色の水筒にはまだ手をつけていない。念のためだ。晴れていたため日差しが強かったが、ローブのおかげで最初よりはきつくなかった。このままいけば4日ほどで着くことが出来るはずだ。



2日目

睡眠をとった。幸い、襲われはしなかったが、眠りの質が良くない。眠るとあの日のことが悪夢として蘇る。木箱の中、ただ見ていることしかできない自分。後悔が自分への怒りになる。恨みが奴らへの怒りになる。忘れられない、忘れることのできない記憶。それでも姉さんに生きろと言われたからまだ歩ける。食料も水分もまだ余裕がある。

歩いている途中で数匹のサンドワームに襲われたが、難なく撃退した。死骸は金になるらしいが今荷物を増やす余裕はないのでそのままにした。



3日目

さすがに三日目となると疲れが見え始める。視界がかすむ。汗が止まらない。オアシスに着いた時に頭から水を被った。道を外れてはいないがペースが落ちている。メトリア王国に着くまでに5、6日はかかるかもしれない。

保存食も減ってきた。もう少し食事の間隔を減らした方がいいかもしれない。睡眠もまともにとれていない。安全に寝れる場所がないし、何より一度でも意識が途切れれば、あの悪夢が現れる。俺の怒りを助長させるために。慣れることはない。いや、慣れてはいけないのかもしれない。あの時動けなかった罪悪感から。

そうやって溜まった怒りはサンドワームやらそこらの岩やらで発散させる。だがダメだ。俺が本当にぶつけたいのはこいつらじゃないから。

だから立ち止まりそうになったら首元の水晶を握りしめる。手帳を開いて姉さんのことを思い出す。そうやった後にあの日のことを思い出すのを繰り返す。そうしたらまた歩けるようになる。歩いた先にこの恨みを晴らせる何かがあると思って。



4日目

眠るのをやめた。寝なければあの悪夢を見なくて済む。ひどい寝起きで支障をきたすよりは眠らない方が効率がいいはずだ。眠りそうになったら血流を操作して脳に多く酸素を送る。そうすれば少しはましになる。

ひどい砂嵐だ。強風で巻き上げられた砂が視界の邪魔をする。足元の砂を飛ばされてぐらつくから何度も砂の上で転んだ。倒れたままだと動けなくなる気がするからすぐに立ち上がり、もう一度歩き出す。僅かに道を逸れているが、方向は合っているから問題ないはずだ。

風で水筒を落としたから桃色の水筒に手をつける。すぐ近くにオアシスがあってよかった。あいつには感謝しなければならないだろう。それも姉さんとの約束だ。


 一度、砂嵐を歩いていると足元から急に現れたサンドワームに飲み込まれかけた。何とか消化器に行く前に腹を切り裂いて外に出た。腹が鳴って保存食も少なくなっていたからその傷口から肉にかぶりついた。ブニブニとした食感であまり味は気にならなかった。自分の血の足しになるかと思って、緑色の血液も啜った。


たまたま洞窟に入って砂嵐がやむのを待つ。その間に荷物の確認をする。水は水筒半分、保存食は後1日分といったところ。地図通りならギリギリ足りるはず。

できることがないので手帳を読んで、一つ一つ約束を刻み込む。眠りはしない。眠りは、



5日目

外は快晴。そして寝起きは最悪。体は休めたが脳はずっとあのことを思い出している。


先の見えない砂漠を一人で歩く。寂しくはない。苦しくもない。ただ時々姉さんのことを思い出す。姉さんの怒った顔、笑った顔、泣いた顔、死に顔。幸せだった時のことを思い出して、失った時を思い出す。 そして奪われた恨みを憎しみを怒りにして足を動かす。


途中に出会う邪魔者どもは相手にならない。サンドワームもスケルトンも殺したところで意味はない。もう少しだ。もう少しで着く。そしたら奴らの仲間がいるはずだ。好きなように生きろと言われたがもう生きる理由はこれしか残っていない。

食料は尽きた。水は桃色の水筒の分が最後。ローブも靴もボロボロ。

構わない。もう食欲も睡眠欲も、汗だらけの体の不快感もない。奴らを殺すため、あの日の復讐を遂げるため今はまだ死なない。



6日目

今日も己の苦しみを何かのせいにして歩く。


神を、聖騎士を殺すために。姉さんを殺した恨みを果たすために。俺達の未来を奪ったけじめをつけさせに。この俺の心の中の煮えたぎるように熱い怒りを消すために。


まだ、倒れるわけにはいかない。

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