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紅い約束と灰色の鎖は繋ぎとめて離さない  作者: 乃ノ木 ニトウ
序章~クレイの物語~
15/20

静かな部屋~短編~


「ただいま・・・っと」


 すっかり日が沈んだ頃、クレイを帰らせたグレイブは鍵を開け、自分の家へと入る。腰に差す大剣と荷物をそこらに放り投げ、ドカッと木製の椅子へとやけに疲れた体を下ろす。


 この家はグレイブが一人で住んでいるものだ。妻子だけでなく、両親も誰も家には・・・それどころかこの世には残っていない。暗がりの部屋の中クレイの部屋と同じく机と棚ぐらいしかないその家でグレイブはふーっと息を吐く。


「あれが、"心核者(しんかくしゃ)"。俺の成れなかったもの・・・か。まさかあんなにも厄介なものだとは」


 グレイブは今日のことを思い出して、思わずこめかみを抑える。


 ゴブリン退治を終えたその後、遅れて駆け出したグレイブが見たのは悲鳴を上げたであろう女性。そして地面を転がる見知らぬ男二人。後から聞いた話ではそこそこ名の知れた賊だったらしい。そしてその男の一人に刃を突き立てようとしているクレイの姿だった。遅れたほんの数秒の間に制圧したことにも驚きだったが、それよりも驚いたのはクレイの目。怒りを多分に含んでいた目で自分が止めていなければ、人の命も奪っていただろうことは容易に想像できた。


 気絶させて事を収めたが、あの時クレイは明らかに暴走状態に入っていた。姉が殺されたときのことを思い出したからか、とも思ったがゴブリンに対しても僅かになっていた。とすると、


「同族嫌悪・・・・か」


 グレイブは一つの仮説を立てる。同族嫌悪とは、自分に似た性質を持つものに嫌悪感を抱くこと。 そしてそれは自分自身の嫌な部分を見てしまうことが原因となる。つまり彼も自分のその生き方を悩んでいるのだろう。とはいえ、そう簡単に暴走されてはたまったものではない。簡単にいえば「キレやすい」ということなのだが、その被害は常人のもたらすものの比ではないのだから。


「まぁ、助けてやるって決めたからな」


 見捨てるという選択肢はない。たとえどんなことがあろうと。それは彼との約束なのだから。そうやって自分も救われたのだから。


「女でもできればおとなしくなるか?メアリー・・・・は、ダメか。あれが男女の関係になるとは思えねぇ。それに、そんなの進めたらあの人に怒られそうだ。・・・・・ま、気長にやってくしかねぇな」


 よっこいしょとグレイブは明日の為に休むべく体を持ち上げる。なんの返事もない家の中。もう慣れたものだが、彼はついこの前まで声が返ってくる場所にいたのだ。怒りの中に彼の中にはほんの少し、寂しさがあるのではないかとグレイブは考えていた。


 だから、"約束"という人と繋がりを、あんなにも思っているのだはないか。


「・・・・・ゆっくり休めよ」


 彼がいるであろう方を向き、静かにグレイブは呟いた。


 

1度読んだ方はすみません。まったく別のものへ変更しました

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