砂場生活
初の短編小説です。下手な部分もあると思いますが、暖かい目で見守ってください。また、修正等あればコメントで教えてください。
砂場生活
世界には貧富の差がある。
その貧富の差というもののゴールという名の平等が無くなる道が見えないこの世界で、貧しい人はどうすれば豊かで平穏な生活を送れるのか。
どうすれば差を無くせるか。
それは、実は自分の手が届くところにある。
東京都 千代田区 〇〇-〇
ビルが立ち並ぶ煌びやかな街。しかしそのビルとビルの間には人によって捉え方が違う闇がある。
そんな場所に住む僕の寝床はゴミ捨て場の横に放り捨ててある汚れたダンボールの上だ。
いつもここに来ると懐かしい気持ちになる。決して幸せな生活ではないのに…
ある夜の事だった。
その夜はいつものようにダンボールの上で寝ようとしていた。
コツコツコツコツ…
どんどんとハイヒールを履いた誰かの足音が近づいてくる。
しかし僕はハイヒールの音が怖くて目を閉じたままにして静かに通り過ぎるのを待った。
そう、いつもココを通る若者達は僕を見てクスクスと笑う。だから怖いのだ。
チャリン
何かを落とす音だ。どうやら誰かさんは僕の目の前にいるようだ。
チャリン
まただ…お金の音かと疑ったが、そんな汚いことは出来ない。
チャリン チャリン チャリン
僕で遊んでいるのか?ふざけやがって…
パサ………
次は紙の音だった。一体何をしているのだろう。
コツコツコツコツ
ハイヒールの音がどんどん離れていく。行ったことを確認して重いまぶたを開く。
「なっ!?」
目の前には6枚の100円玉と付箋が落ちていた。一瞬、神が舞い降りたのかと思った。
普段、1日1個隣のマンションの管理人さんから貰うおにぎりを食っているような存在の僕にお金をくれるとは…
生きていることを確認してその百円玉に触れた。
「ほ、本物だ…」
嬉しさのあまり声を漏らしてしまった。
1:使い道はいかに…
翌日、僕は朝早くから近くのデパートの出向いた。
昼ご飯は管理人さんから貰うから良いとして、なるべく残るもの、価値のあるものを探そうとした。
「ねぇ、あの人ホームレスじゃない?」
「あの茶色のボロい服きたなぁーい。クスクス」
「なんでここにいるんだろう」
そんな僕に対する愚痴を僕に聞こえる声で横を通りかかった人が言う。
これだからデパートは嫌いだ....
早く物色するだけして、買うなら買おう。そう決意した僕の足はますます早くなっていき、周りの通行人を避けて蛇行しながら歩いた。
「いらっしゃっせぇー」
結局来たのは雑貨屋さんだった。少しチャラい匂いに誘われて入ったこの雑貨屋さんには見たことないものも沢山売っていた。
まず、目に付いたのは税込582円の値引きされた新品のダメージジャケットだった。
そこで、さっきの愚痴を思い出す。
「あの茶色い服.....」
服を変えれば少しは楽になるかな....
そう思って、そのジャケットをカゴに入れて、レジに持っていった。
「一点、582円でーす。」
モジャモジャヘアーの若い店員さんが会計をしてくれた。ボロボロのポケットの中から6枚の百円玉を取り出し、トレーにボロボロと出した。
「600円のお預かりです。……18円のお返しでーす。」
そうやって早速貰った貴重な600円が1着の布になった。しかし、自分のした判断に後悔はなかった。これで、今度買い物をする時、愚痴を気にせずに歩けるからだ。
2:アンラッキーな犯罪者とラッキーな僕
買い物帰り、紙袋を片手に持った僕は大きな商店街を通った。何も買わないのに。
「くさぁーい」
また、愚痴が聞こえた。
しかし、僕の片手にはLevel10のダメージジャケットがある。今着れば僕は1Levelから10Levelへ進化することができる。
僕は何かを決意したかのように商店街の路地裏に入っていった。
2分後....
服の着方もあまり身に付いていない僕は1着に異様なほどの着替える時間を費やして、商店街の通りに戻ろうとした。
「きゃぁーー!ドロボー!!!」
なんだか商店街が騒がしい。路地裏から出るまであと少しだった僕は少し駆け足気味になった。
路地裏から出た次の瞬間....
ゴチッ!!!!!!!!!!!!
頭がぶつかった。
我を失いかけた僕は咄嗟にぶつかった相手の方を見た。
そこには、タイガーマスクを付けて、ピンク色のカバンを持ったゴツイ男の人が頭をさすっていた。
そして、その後ろを追いかけるようにピンク色の帽子を被ったピンクのおばさんがこちらに来た。
「ドロボー!!!」
おばさんは叫びながらこっちに向かってきた。
ドロボーという声が気になり、タイガーマスクの男を2度見した。
「ドロボー....?」
一瞬、場を疑った。どうやら、このタイガーマスクが泥棒で、おばさんが被害者らしい。
そう考えると僕の腹から怒りが爆発した。
残念ながら少し筋骨隆々の僕の右足を後ろに思いっきり引いてタイガーマスクの男の股間に渾身の一蹴りを入れた。
「オウッッッ!!!!!!!!!!!!」
急所に当たった。
タイガーマスクの男は股間を抑えてジタバタしながら醜い姿を周りの通行人に晒した。
「観念しろ!悪党め!!!」
僕は拳を構えて必要にもがいているタイガーマスクの男に向かってキメの一言を決めた。
何故か分からないけど周りからは正義を称える歓声が上がった。
少し気まずい気分になった。
3:本名は 有馬 金欠 ですよね?合ってますか?
その後、警察が駆けつけ事態を話した。
「いやー、それにしてもよくやってくれた。」
僕は警察に肩をポンポンと優しく叩かれ、温かい気持ちになった。普段警察を見かけると少し緊張気味になるけど、こうやって褒め称えられると、少し警察という職業が誇らしく見える。
だからといって、この金すらないホームレスの僕が警察につきたいということではない。
「えーと、君の名前は....」
警察はバインダーに挟まれた1枚の紙を指でなぞりながら必死に見る。
少し合間が空いた。
「有馬 金欠 さんですよね?」
僕は驚いた。
「え?僕に名前なんてあるんですね。初耳です。」
警察は困ったような、驚いたような、よく分からない形相で僕を睨みつけた。
「え?」
警察がわざとらしく言うと、僕もノリに乗ろうとして、え?、と言った。
「え?」
「え?」
「え?!」
「え?!」
「えぇ、」
「えぇ、」
「ゑ」
「ゑ」
謎の会話らしいものが続いた。次の「え?」を受け止めようとしていると、額から汗がにじみ出る感じがした。
警察ってこんなもんなのか?と疑いの目をする僕も心の中にいた。
ポンポン
「うぇ□□〇×!!?**ℵ;"!、びっくりしたぁー。」
肩を叩かれたみたいだ。咄嗟に後ろを振り返ると、さっき僕が助けたおばあさんがそこにはいた。
「はい、お礼にこれあげるよ」
おばあさんは、カバンの中をガサゴソと漁ると、中から日本でも屈指の有名さを誇るアニメのフィギュアが出てきた。それを渡された僕はぎこちなくフィギュアを貰い、ポケットにしまった。正直なところ、フィギュアは要らない。
「これ、なんだかよく分からないけどあげるよ。」
「あ、ありがとうございます。」
警察は僕たちのどこかに温かみを感じずにはいられない会話にニッコリとしてこちらを見た。
僕はなんだか、不思議な気分になったので帰ることにした。
堂々と歩き出し、商店街の真ん中を胸を張って帰ってった。これの方がヒーローらしいからだ。
「それじゃあ、気を付けてくださいね」
警察が僕に向けて手を振ると周りで見ていた通行人たちも僕に向けて手を振ってくれた。
もし、服が汚かったらこんなに称えられてはないだろう。でも、人が幸せになればそれでいい。だから僕はこれからの人生を胸を張って生きようと思った。
僕は通行人たちに手の甲を見せて手を振った。よくある、西部劇みたいに。
砂場生活 完!!!
で、いいんですよね?
もしかしたら、続き作るかもしれません。