王位継承第2位と言われても・・
第9章
モモガロンの膝の三毛猫は、顔を洗った後、そのまま居眠りを始めた。
それを見た、国王は、
「こんな事、始めてだ・・・僕の精霊が人に懐くなんて・・・、いつも一緒にいるシャドウさえ素通りしていたのに・・・」
「それはそうですよ。モモガロン様には王室の血が流れています。その血はどんなに薄くても、私とは格が違います。モモガロン様は、精霊が宿る王位継承第2位のお方です」
一瞬、室内は静かになる。
「この小さいにゃあ様は、私達3人以外には見えないのですか?」
「はい、完全型になると他の人々にも見えますが、ふわふわしている状態ですと、見えません。もしも、小さいにゃあ様が見える人間は、精霊持ちです」
「・・・こんなに、気を許しているにゃあ様を見たのは、私も初めてだ」
「この国には、今の所、聖なる精霊が宿っているのは私達3人だけです。そして、王室の関係者では、モモガロン様が二人目という事になります」
「どんなに高貴な貴族でも、聖なる精霊が宿っていません。しかし、悪の精霊持ちは貴族の中に存在します。そして、ーークロエッス伯爵の様に、私利私欲の為に、国王に反旗を掲げます」
「国王のにゃあ様が、モモガロン様に懐いたのは、モモガロン様が国王の失脚を望まない人間だと、確信したのでしょう。心から国王に忠誠を誓っていると、感じたのではないでしょうか?」
モモガロンは、意を決して、ここで、はっきりと宣言する。
「わたくしは、確かに、国王の失脚は絶対にのぞみませんが、だからと言って、忠誠を誓うとは少し違うと思います」
一同、唖然!
「もしも、わたくしが王位継承第2位で、国王が、わたくしに敵を倒すために精霊を完全型にして、出陣を要請させても、わたくしは、スワルトイ領、あるいはスワルトイ邸から離れる事は出来ません」
「わたくしが守るべき人は、わたくしの身内です。わたくしの大切な人達です。・・・」
「だから、国王陛下は、ずっと勝ち続けて下さい。その為でしたら、わたくしは、いくらでもお力をお貸しします」
「ハハハハ・・、大丈夫だ。私は、一生、一人で勝ち続けるつもりで、今まで生きて来た。それでも、国一番の領土を、モモガロンが守ってくれると思うと、少しだけ楽にはなったがね」
国王は温かい眼差しを、モモガロンに向ける。
「国王・・・、わがままですいません」
「いや、スワルトイ領の悲劇は有名だ。私も、大叔母様が亡くなれたことには納得がいかない。真相究明もされていない現状では、当然の事だと理解するよ。ただ、僕のにゃあ様が、たまにこの部屋に遊びに来てもいいかな?なんだか、気に入ったらしい」
「はい、国王陛下が学校にいらした時に、お会いできるのを楽しみにしております」
午後の授業が始まり、昼食会はお開きになった。
教室に戻ると、またまた、怪しい雰囲気で、今度はチラチラ見ている行為はなくなり、全く、視線をこちらに向けることもなくなった。
どうやら、私たち5人はこのクラスでは、特大の地雷になってしまったようだ。
その後は、普通に学生生活が流れ。年末になる頃には、ヒロイは人生で初めての1歩を踏み出した。
王都門が通れない年末、スワルトイ邸では、何度かパーティーが開催され、多くの貴族が屋敷に訪れた。
その頃には、モモガロンは、完全に別宅で、過ごすことが多くなり、学期末の試験勉強も、ヒロイの近くで行っていた。
「お嬢様、今日も、公爵様は貴族とのお付き合いで、本当に大変ですね」
「本来なら、この時期は、領土に戻り、ゆっくりと領土で過ごすことが慣例でしたが、年内は、王都門を開く事がないと、発表されたので、暇な貴族たちはパーティー三昧で、お爺様に負担をかけています。彼らが、本当に憎らしいワ!」
「本来なら、私が、お爺様をサポートするのがいいのでしょうけど、後2年、お爺様が、お一人で多くのお客様を相手にしてもらうしかありません。申し訳なくて、心が痛いです」
「お嬢様・・・」
「そうだ、シルガー、マルサナ! ヒロイも遊び疲れて眠ったので、少し様子を見に行ってみましょうか?」
「大丈夫でしょうか?」
「大丈夫よ、一応、遠縁の娘の身分ですから、見学くらいは許されるはずです」
モモガロンは、2人のメイドと共に、2階のパーティー会場が一望できる踊り場の植木の影から、下を覗いた。
そこは、さすがスワルトイ家と言うしか形容できない程の煌びやかな場所で、下で踊っている人たちはクルクル優雅に舞い、踊らない人々はお酒を片手に、美食を楽しむ。
「物凄く、着飾っていて、出席者たちの意気込みが、遠くからでも感じる事ができるね」
「ええ、まるで違う世界にいるみたいです」
3人は普通の女の子の様に、キラキラしている世界に酔いしれていた。すると・・足音が聞こえ、
「・・お嬢様、誰かこちらに来ます」
3人は、急いで近くの部屋に入り、その人たちが過ぎ去るのを待った。
しかし、男性二人は、モモガロン達が入った部屋のドアの向こうで、小さな声で話し出した。
「今日は、どうやら国王は出席しないらしい」
「スワルトイ邸でもダメか・・どうする?」
「明日のパーティーはどの屋敷だ。国王が出席しなくてはどうにもならない。あの猫、戦いではどうにもならない最強猫だ。だから、今度は、猫が好きな物で、興味を引いて、毒殺してやる」
「貴殿は、本当に国王の精霊が普段でも見えているのか?」
「勿論だよ、国王は精霊の数が多くて、たまに収納できていない。その中の1匹を誘い出して、始末すれば、確実に戦闘能力が下がるはずだ」
「その後、僕の精霊で戦い、あなたは国王陛下の椅子に座ればいい。僕の精霊が最強となれば、軍隊を持たないこの国は、他国からの侵略に僕を頼るしかなくなる」
「しかし、国王の側に近づけなければ、どうにもならない作戦だ。どうする?」
「今日は、ここにいても仕方がない、このまま帰るか?」
「ああ、明日、また、どこかの屋敷に、国王が出席するまで待とう。王都門が閉じているのは、後、少しの期間だと予測している」
「時間がないな・・・」
「ああ、門が開けば、他の精霊持ちがまた王都にやって来るに違いない。誰もが、一度はあの化け猫に挑みたいはずだ」
「明日の情報が入ったら、連絡をくれ。僕は、僕の精霊を完成させて、戦いたいだけだ。貴方の連絡を待つよ。じゃあ・・」
その日、王都の夜は物凄く寒かった。
さっきの悪の精霊持ちは、汚い宿屋に泊まり、明日の為に、浴槽にお湯を張り、鼻歌を歌い、シャワーを浴びている、下を向いて頭を洗い、上を向いた瞬間に、シャドウの竜に飲み込まれ、国王の前に突き出された。
次の日には、バルガガ伯爵の突然の死亡が発表された。
モモガロンは、その記事が掲載されている新聞をじっくり読んでいると、スワルトイ公爵が話しかける。
「モモガロン、どうした?」
「ええ、バルガガ家は、この前は襲撃されて、今度は、ご当主がお亡くなりになって、随分と不幸が続いているように思います」
「ああ、一体、どうした事だろう?」
「それよりも、今日から学期末テストだろ?小さい事は気にせずに、無理をしないで、臨む事だ」
「はい、お爺様。ありがとうございます」
「お嬢様、今日のテストは午前中ですが、昼食はお持ちしますか?」
「はい、少し、学校で居残り勉強をする予定ですので、普段より多めにお願いします。後、頭を使った後には、やはり、お菓子は欠かせませんね」
その時、スワルトイ公爵が、
「国王陛下はエッグタルトが好物だ」
一瞬、すべての人達の動作が止まったが、何事もないように、微笑み、多くに使用人に見送られ、5人は登校して行った。




