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にゃあ様登場

第6章

 モモガロンが、初めてこの国で、悪の精霊の完成型を見た瞬間だった。

 「お嬢様、こちらに・・・!! 」


 「お爺様は大丈夫?」


 「スワルトイ家の護衛は、私達以上に優秀です。急いで避難しましょう」


 「あの魔物たちは、どうして突然出現することが出来たの?」


 「この会場内に悪の精霊の持ち主がいるのでしょう。大丈夫です。国王が退治できます」



 国王はご自分の周りの精霊を集め、襲って来た悪の精霊を迎え撃つ。その姿を見たモモガロンは、


 (でも、アレ! 絶対に、無理じゃない?)と心から思った。


 悪の精霊の化け物は、見るからに国悪非道な飛行恐竜型で、その姿を目にしただけでも、洩れそうな程の恐怖を与えるのに対して、国王の完成型精霊は・・・・白い体で、目の周りがだけが黒い・・猫! 猫型!


 発情期を迎えて、いきり立っているような猫、鳴き声も、全然可愛くない凶暴な猫だ。・・・。モモガロンは呆気に取られて、口を開けたまま、その場で、戦いを見ていた。


 「猫って・・・・」


 精霊の対決を静かに見守っていると、いつの間にか、お爺様がそばにやって来た。

 「モモガロン、大丈夫か?」


 「お爺様、お爺様こそ大丈夫でしょうか?わたくしは死ぬほど心配しました」


 「ああ、大丈夫だ。初めて精霊たちの戦いを見て、どうだ?」


 「国王陛下の精霊は・・・?」


 「ああ、にゃあ様か、にゃあ様は、本当にお強い」


 「アレ、にゃあ様っておっしゃるの?」


 「この国を狙っている者は、内外問わずに、悪の精霊を使う人間だろう、この前のテロ爆破はただの余興に過ぎない」


 「どうして、この国は、狙われるのですか?」


 「この国では、精霊を操る人間は、国王お一人しか、確認が取れていないからだ。1人を倒せばこの国は手に入る。もしも、自分が精霊を持っていたら、その誘惑に惑わせられるのではないだろうか?」


 スワルトイ公爵は、モモガロンの顔を見てしっかりと話す。

 

 「わかるかい?大叔母は、どういう訳か精霊使いだと結婚前に情報が洩れてしまったのだ」


 「えっ!! 」


 「悪の精霊使いは、新しい精霊使いを、ことごとく殺して行く。だから、モモガロンには、どんなことがあっても、君の精霊を出現させて欲しくない。退治は、にゃあ様に任せる事が一番いい。にゃあ様は無敵だ! 」

 「お爺様、ご心配なさらなくても、わたくしは家族を守る事以外では、精霊を完成型にするつもりは、ございません。大丈夫です。悪の精霊退治は、にゃあ様にお任せしましょう」


 (モモガロンは、戦うにゃあ様を見て、猫じゃらしとかプレセントしたらどうなるのかしら?)と、思っている。


 圧倒的な強さで、にゃあ様が勝ち、戦いは終わりを告げるが、会場は滅茶苦茶で、人々は茫然と立ちすくんでいた。


 その後、直ぐに、シャドウ宰相からは、この会場内に留まる事が通達され、身体検査が始まった。


 悪の精霊が倒れたので、必ず、王宮内では1人が欠けているはずだった。


 精霊が消滅すれば、その精霊使いも、必ず消滅する。そして、この会場内で、姿が見えなくなったのは、なんと、クロエッス伯爵だった。


 ーーーカイレキの父親だった。


 息子が企んだ事で、すでに、自分の地位が危ないと察して、ヤケになって、にゃあ様に挑んだのか?それとも、すでに、計画を立てていたのかは、わからないが、モモガロンは、その場で立ちすくむ、カイレキの姿に少しだけ同情した。


 「彼に同情しますか?」


 いつの間にか4人を知り退け、シャドウ宰相はモモガロンの隣に立っていた。びっくりしたが、その後は冷静に返答する。


 「いいえ、わたくしには関係ない事です」


 少しの沈黙の後にモモガロンは質問する。


 「シャドウ宰相・・・国王陛下の精霊は猫なのですか?」


 シャドウ宰相はモモガロンの顔を見て、フッと、笑い、答える。


 「モモガロン、この国で、猫を見た事はありますか?」


 モモガロンはしばらく考えて、


 「そう言えば、どこにもいません」


 「ええ、この国には猫は存在しないのです。にゃあ様以外・・・猫と言う単語もありません」


 「・・・・・・」


 「あなたがいらした世界では、猫はきっと存在して、そして、弱い生き物だったのですね。だから、国王陛下の精霊を見た時は、驚いたでしょう。実際、私もそうでした。せめて犬であって欲しかったです。ふふ・・」


 「あなた・・・・」


 「モモガロン、君が、一つ秘密を教えてくれたので、僕も一つ、君に秘密を打ち明けます」

 「君の精霊は、陸の龍で空も飛べるはずです」

 「僕の精霊は、水の龍で自由に水の中で活動ができます」


 モモガロンは、震え、一瞬、空気がなくなった様に感じられた。

 「あなた・・・もしかして・・・・??」


 「何か?」


 シャドウ宰相は気にせずに続ける。

 「私の精霊と君の精霊が手を結べば、国王陛下のにゃあ様にも勝つことができるとしたら、君ならどうしますか?」


 「そんな、戯言、キッパリお断りします。わたくしの精霊は完全型になることはありません。例え、私が再び死んでもです。わたくしは、この国の為には役立たないと思っていて下さい」


 「シャドウ宰相、貴方は、いかがですか?猫と龍なら龍の方が力があるのではないですか?」


 「それは、思い込みです。君には理解しがたいでしょうが、龍が猫並みなのです」


 モモガロンは脳内処理に時間がかかり、少しぼんやりして、シャドウ宰相を見た。


 「???ーーその感覚を身につけるには時間がかかりそうですね」


 「ハハハハハハ、その通りだ。私も随分と時間がかかったよ」

 「それより、朗報だ。今日の事があり、これから新入生全員の調査が開始される」


 「勿論、君たち5人以外だ。君たちの事は、何度も調べた」


 「このまま夏休みになる。王都のスワルトイ邸にこのまま向かうといい。寮生活はしばらくは国が許さない。全ての領土の生徒は領主の屋敷で、軟禁状態となる」


 「お爺様の屋敷で暮らせるのですか?』

 シャドウ宰相は頷く、

 「ああ、そうだ。ゆっくり甘えるといい」


 モモガロンは天にも昇る程に、嬉しくて仕方がなかった。満面の笑みを浮かべて、鼻歌を歌いたいのを抑えながら、4人に囲まれて、スワルトイ公爵の車に乗り込んだ。


 モモガロンは王都に来たのは、貴族学校入学の時が初めてで、勿論、王都のスワルトイ邸を見たのも初めてだった。


 モモガロンと二人のメイドは、

 「大きいですね・・・、流石、我がスワルトイ様のお屋敷です」


 厳重な門が開き、車は中に入り、使用人一同が並び、モモガロン達を迎える。


 モモガロンの事を誰もが知っている訳でもない。到着した時は、一般の学生の様に周りに挨拶をして、指定された特別な部屋に入り、やっと、落ち着く。直ぐにでもヒロイに会いたいが、先ずはお風呂に入り、清潔にして、静かにその時を待つ。


 シルガーが、部屋に戻り、スワルトイ様が戻られ、使用人達との顔見せが行われる。


 当然の事ながら、4人は、一般の学生と紹介されたが、モモガロンだけはおばあ様の遠縁にあたると紹介された。それによって、一般の使用人たちはモモガロンがこの屋敷内では2番目の立場だと、理解でき、モモガロンがスワルトイ公爵をお爺様とお呼びしても、不自然ではなくなる。


 その後、スワルトイ邸の家令より、シルガー、マルサナ、サポールト、コベルはモモガロンの従者として、貴族学校に入学していることが話された。


 本体なら従者は高等部への立ち入りは出来ないが、彼らは、貴族の出身で、貴族学校に通う事ができる身分だとも説明がなされた。


 この説明で、身内のいないスワルトイ公爵にとって、モモガロンは特別な存在だと肝に銘じた。


「モモガロン、食事前に、少し話をしようか?」


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