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クロモリ伯爵③

第49章

 式典が終わり、モモガロンとヒロイは、いち早くスワルトイ邸に戻って行った。


 モモガロンは、今回の事で、スワルトイ公爵が倒れた事に、責任を感じていた。

 「お爺様・・・・」


 モモガロンは、急いでスワルトイ公爵の部屋のドアを開け、公爵の無事を確かめる。


 「あああ・・、良かったです。顔色もとても良くて、ボルト家令に感謝します。いつも、お爺様の為にありがとうございます」


 ボルト家令は、

 「モモガロン様もご無事で何よりです。ケガもなく戻られた事が、一番のお薬です。そして、今日は本当にお二人ともご立派でした」


 スワルトイ公爵が、「さぁ、二人ともこっちに来て、私の近くに・・・」


 モモガロンとヒロイは、ベットの近くまで大急ぎで駆け寄った。


 「無事で何よりだ。儂は、ずっと考えていた事は、二人の幸せだ。身分の公表や国王陛下に出会うことは、二人にとって、素晴らしい事であって欲しいと・・、それが一番の心配だった」


 「ーーーお爺様は、ヒロイの父親が、国王陛下だと、いつ気づかれたのですか?」


 「ヒロイが、生まれてすぐに気づいた。今の国王陛下の誕生した時に、王宮で前国王陛下の側にいて、お顔を拝見していた。ヒロイが成長すると、ボルト家令も、そうだろうと思っていたみたいだ」


 「では、どうして話して下されなかったのですか?」


 「それは・・、前国王陛下の健康状態を常に知っていたからだ。この国の国王陛下は、特別な精霊を持ち、常に、国を守る事を強いられている。その役目は、皇子に受け継がれ、すでに何代もそうしてこの国を守って来た。ーーーそれは、非常に大変な事だ」


 「前国王陛下は、最初に精霊の力が落ちて、その後、ご自分もご病気になられ、お子様は今の陛下だけしか恵まれなかった。しかし、例え、ご兄弟がお生まれになっても、精霊持ちとは限らない」


 「それは、国王となる身の宿命だ」


 「ヒロイが生まれて、精霊持ちだと知らされた時に、酷く悩んだ。これは儂一人の問題ではなくなったと・・・。しかし、モモガロンは一貫して、スワルトイ領に留まる事を願い。表舞台に立つ事を嫌がった。だから、その大きな問題を、陛下と、モモガロンとヒロイに、委ねる事とした」


 「お爺様・・」


 「ありがとう。モモガロン、ありがとう、ヒロイ。君たちは立派なこの国の王室の人間だ。スワルトイ領の事は気にしなくていい。きっと、国王陛下が代わりの領主を見つけてくれる」


 「お爺様・・、わたくしはスワルトイ領の領主になります」


 「モモガロン、国母は、大変な仕事だ。常に国王陛下を支える。これからの仕事になる。今日のように、どんなに強い相手でも、3人なら勝てる。この国を守る事が出来る。国が無くなって、スワルトイ領が存在する理由がない」


 「前国王は、ギリギリの状態で、どうにかエビクール皇子にタスキを渡すことができた。その辛さを傍で見て来た人間が言う。どうか、この国をお守りください。お願いします」


 「お爺様・・・・」


 「お爺様、確かに今回のコウモリは、途轍もなく強かったです。その理由は、今、国王陛下が解明しています」



 国王陛下の御前、重い鎖につながれたクロモリ伯爵は、床に座らされ尋問を待っている。


 「国王陛下は、何がお聞きになりたいですか?」


 「色々、聞きたくて、考えている。前クロモリ伯爵は、人格者で、この国を思ってくれていたと、聞いている。昔の事を調べても、父上も亡くなり、彼が、なぜ隣国に加担した理由がわからない」


 「では、わたくしから話をさせて下さい。私がまだ子供の頃に、モグクライ国の皇子だったゼミクライブ皇子が、尋ねて来ました。父は、ずっと、ゼミクライブ皇子にこちらの国の素晴らしい所を教えていました。ーーそれは、モグクライ国が、我がヴィッセルス国に、戦争を仕掛けても絶対に勝てないと、説いていました。私から見た父は、博愛主義者だと感じています。それでも、この国を愛し、この国の繁栄の為に、尽くしていた人間です」


 「ゼミクライブ皇子も父を尊敬して、ご自分が国王に成った時は、ヴィッセルス国と対等に成れる国を目指したいと、小さな私にも目を輝かせて話していました」


 「しかし、精霊持ちが存在しないモグクライ国に、9皇子が生まれました。モグクライ国の王室に激震が走ったのでしょう。9皇子が生まれる前までは、後継者問題は、起きていませんでした。9皇子誕生の後に、国王が、病に倒れ、その時の判断を、ミスったとしか言えません。国を9つの領土にして、皇子達に争う事を止めるように遺言を残し、この世を去りました。世継ぎの名は、それまでと同じゼミクライブ様でした」


 「その時にゼミク皇子を指名していれば・・、多くの国民は、もっと豊かに、暮らせていたはずです」


 「その後、父は、他国への情報漏洩の罪で、北の領土に流され、私達3人は、死を覚悟しながら毎日を暮らしていました。そんな時に、父があの石を発見しました。珍しい石で、何もない土地で、その石を探し出す事をライフワークにして、生きられるだけ生きようと決めていました。そんな時に、国王となったなったゼミクライブ国王が訪ねて来たのです。義理堅く、沢山の食料と燃料を持って来ました。父は、お礼に渡す品物がなく、手元にあったあの珍しい石を渡しました」


 「それから、4年間、その石はモグクライ国に送られ、私たちは支援を受けました。その後、父と母は亡くなり、私は王都に戻り、爵位がそのままだった為に、生きる事が出来ました」


 「王都に戻ってからは、その石が、何に使われたのかを調べる事が私の仕事で、調べれば調べる程に、色々な事がわかりました。ーーーあの石は陛下の弱点になる事、その事がわかって、両親は私を残し、この世を去ったのです。一番大切にしている国を、自分の手で破滅に導く事に、耐えきれなかったのでしょう。ーーーーしかし、私も、今日まで・・・燃える事はわからなかったですが・・」


 「今のモグクライ国の宮殿や道路、色々な所にあの石ははめ込まれています。ゼミク皇子を封じていると言っても、いいでしょう。ゼミクライブ国王は、ゼミク皇子を恐れ、自分の王都にあの石を使って、入れないようにしたのです。そして、ゼミロク皇子は、あの籠を作り、コウモリを流出させて、私腹を肥やしていました」

 

 「私の手元には、ゼミクライブ国王が支払っていた資金があり、ゼミロクからコウモリを買い、スワルトイ領に出かけた時、国王陛下に戦いを挑みました。しかし、やはり、陛下は強かったです」


 「何が最終目的だ?」


 「わかりません。私はどちらの国も嫌いです。国を守る事は、人間たちが行う事で、戦う事も人間の手で行う事が私の理想で、精霊は要らない。・・・それが最終目的だったのかも知れません。それと、父上の失敗を隠したかったのかも知れません」


 「私もそう思う事がある。しかし、私がこの国に軍隊を作っても、どこからともなくやって来る悪の精霊に勝てるのだろうか?王室の歴代の国王は、どうしてこの仕事を引き受けていると思う?」


 「不可能だからだ! 人間だけの力で、彼らを倒すことは出来ない。だから、私達王室が存在する」


 「もし、私の子孫に精霊持ちが生まれなかったら、その時は、どうか人々で戦って欲しいと、私も思っている。その時が来たら、是非、そうしてくれ! 」


 クロモリ伯爵は、国王陛下のその発言に、ゾッとする程、驚き、恐怖を覚えた。


 (ーーーこの人は、国王陛下で、真の精霊持ちだ。強い信念を持ち、国民を守っている。負けてよかった。・・父上、あなたは正しい。)


 「さて、ゼミロクの話をしようか?ゼミロクは、どうしてこの国で暮らして行けたのか?」


 「そして、彼を仲買人にして、コウモリを購入していた貴族や商人を知っているか?」


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