表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/54

ヒロイのおねがい

第47章

 オリナス伯爵は、ずっと床の上で泣いていて、話をしない。


 「オリナス伯爵、泣いて真実を話さないと、腕が1本、一生、動かなくなりますよ」


 脅し文句が聞いたのか、オリナス伯爵は、ピタリと泣き止み、気持ちを落ち着かせて話し出す。

 「彼が、突然、私の所に来て、屋敷の地下にある石を分けて欲しいと言いました」


 「彼とは?」


 「ーーークロモリ伯爵です」


 「北の領土の領主の屋敷の地下には、沢山のくっつく石があります。石と石がくっつくのです」


 「クロモリ伯爵が、言うには、この石は、他国に高く売れると、自分には販売ルートがあるから、このままにしていて欲しいと話しました。私は、その代わりに、薪や食料を依頼しました。彼のこの地域に住んだことがあるらしく、必要な物は、すでに準備済みで、後は、その石を運び出すだけでいいと、話していました」


 「彼は、最近、持ち出したのか?」


 「いいえ、今は、どうやっても無理でしょう。毎日、外は吹雪いていて、人間が歩けるはずはありません」


 「だから、まだ、渡していません。それに・・・」


 「??????」


 「あの石は、実は燃えるのです。残った薪が燃えてなくなりそうだったので、暖炉の中に石を入れてみました。真っ赤に燃えた石を毛布に包んで、それを抱いて眠るつもりで、暖炉に入れたら、良く燃えました」


 「だから、気にせずに、食事を作るオープンにも入れて、風呂もそれで沸かして、暖炉も真っ赤でやっと人間らしい暮らしを取り戻しました」


 「だから、すでにそんなには残っていません。生きる為です。仕方がない・・・」


 「クロモリ伯爵が、取りに来た時には、何と説明するつもりだ?」


 「彼が言うには、北の領土には、沢山あるらしい。春になったらその辺を掘り返す予定でいました」


 その部屋の人間は、この人間のだらしない思考で、王都が救われるとは、考えたくないと思っていた。


 モモガロンが、

 「それは・・・湖の向こうの森にも沢山あります。私はその石を利用して、ホワイト商会の扉の鍵を作りました」


 「え?」


 「いつ頃から、その石が目に着いたのかは不明ですが、私が洋館で暮らしている時には、存在していました」


 「・・・・・・」


 「その石は・・・、にゃあ様の能力を、下げる事ができるのかも知れないですね。だから、あの時の戦いでは、苦戦したのでしょう」


 「しかし、ホワイトの従業員たちは精霊持ちですが、特に具合が悪くなるとかはありません」


 「私が、あの森で暮らしていても、何の問題も起こっていません。ヒロイも大丈夫だと、思います。ヒロイはあの洋館で生まれました」


 「その石に対してのアレルギーは、にゃあ様とコウモリだけ?」


 「森の中の全体にある訳ではなく、木が・・・少ない所にありました。空から見ると、きっとわかります。その場所ににゃあ様を誘導して戦えば、コウモリの精霊は、勝つことが出来ると罠をしかけていたのでしょう」


 「自分は、その石のある場所を避けて戦えばいい。互いの弱点だったが、一方には、罠が見えている状況での戦いです。とっさに、水の中に国王陛下を閉じ込めたのは、シャドウ宰相の判断が素晴らしいとしか言えません」


 「しかし、それを準備するには、ゼミクは絶対的に不利です。他国の厳しい領土から自分が苦手な石を盗み、警備が厳しいスワルトイ領まで運ぶ。何のために?・・・水以外を望んでいないのに?」


 「それでは、あの時の麒麟は・・クロモリ伯爵だったのでしょうか?」


 「爵位だけの貴族でも、お爺様の誕生日に入り込む事は簡単です。しかし、大量の石はいつ持ち込まれたのでしょう?」


 モモガロンは、思い立ち、シルガーに、瓶詰めに入っているブルーベリーをオリナス伯爵に見せた。


 「これを知っていますか?」


 「これは、北の領土では、子供が食べています。私が出かけた時に、子供たちは、道端で、この紫の実を美味しそうにたべてました。鳥が食べる餌なのに・・・。あの領土の人間は、なんでも食べるのだと思った事があります」


 「コベル、ブルーベリーの木がある場所は、造成工事が行われたと聞きましたが・・?それは何時ですか?」


 コベルは即答する。

 「8年前です。一度、大きな土砂崩れが起こり、スワルトイ領の人だけでは、どうにもならなくて、他の領土からも応援を入れて、工事をしました。その時、石なども他の領土から運ばれています」


 「ブルーベリーを植えたのは、あの森に続く道しるべだったのでしょうか?スワルトイ領の人間には、わかりませんでした」


 「クロモリ伯爵は、スワルトイ領をバカにしています。許せません!! 」


 「でも、クロモリ伯爵は、あの石で、何かを作る予定だと言っていましたよ」


 「ええ、子供が入るくらいの籠を作ると言って、始めて来た時に、石を詰め込めるだけ詰め込んでかえりました」


 「どうして、それを早く言わない!! 」


 「ヒロイが・・」

 「ヒロイ様が・・」

 「ヒロイが・・・狙われている」


 別宅のモモガロンの窓の外に、鷹が下りて来た。

 「お嬢様、公爵様の鷹です」


 電話でのやり取りは、確実だが、この世界では、どこから情報が洩れるかわからないので、スワルトイ家は、秘密にしたい事は、鷹が運んでくる。


 「ヒロイが、王位継承の式典にどうしても出席したいと、お爺様にお願いしたようです」


 「そんな・・、ヒロイに危険が迫っているのは事実です。絶対に駄目です」


 「しかし、ヒロイの意志は固く、出席を懇願しているらしいです」


 「陛下へのお手紙は何が書かれていますか?」


 「う、うん、『おねがい』と、書かれている・・・。ヒロイの初めてのおねだりが、危険を伴う任務とは・・・、どうしたものか?」


 その時、シャドウ宰相が、コーヒーを淹れ、手にしながら話す。

 「皆様は、多分気づかれていないと、思いますが、麗水源での戦いの時に、コウモリの後ろ脚は、消滅していました。マギガル伯爵の赤龍が、焼き尽くしていたとお考えでしょうが、私はもう一人、密かに、後方部隊が存在していたと、考えています」


 「あの時、モモガロン様には、沢山のコウモリが迫っていました。コウモリを赤龍が燃やせば、モモガロン様も、大やけどを負います。だから、マギガル伯爵は、決して、不安定な火炎を吹き出しませんでした。誰もが敵と戦っていて、集中している時に、ヒロイ様は、母上を助けたのではないでしょうか?」


 「そして、ヒロイ様、お一人では、あの場所にはたどり着けません。スワルトイ公爵の部隊もご一緒だと考えられます」


 「今回のこのお手紙は、部隊長が許可し、公爵が承諾して、国王陛下に届けられたと推測します」


 「うん、スワルトイ邸に、その石の籠の件を伝え、同時に、その石の籠は、燃えると言う事も伝えてくれ。私は、ヒロイのおねがいを、許可しようと思う。どうだろうか?モモガロン?」


 「どんなに反対しても、今は、ヒロイに頼るしかありません。わたくし達は、王都にいないのですから、ヒロイの考えを尊重しましょう」


 「すまない。君と息子に助けてもらう」

 「陛下、わたくし達は、家族です。・・・ヒロイを信じましょう。しかし、わたくし達に失敗は、許されません」


 その場にいた全員は、モモガロンが震えながら話す決心を心に留めた。


 「所で、シャドウ宰相、そのコーヒーはどうなさったのですか?」


 「うん、オリナス伯爵の家にコーヒーセットがあったので拝借して来た」


 オリナス伯爵が、

 「それは、クロモリ伯爵がくれたものだが、苦いくて苦手だが、チョコとビスケットを砕いて入れると、どうにか飲めたので、取って置きました」


 「贅沢だ・・・・・」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ