麗水源②
第44章
モモガロンは、シルキーに飛びかかり、5人はいつものフォーメーションで、一斉に臨戦態勢に入る。
「コウモリを倒しましょう。1匹も残さず消滅させることが、わたくしたちの使命です」
「しかし、赤龍の火炎には注意するように! ああ・・にゃあ様・・・お髭が焦げている・・・・」
4人は、地味に小さいコウモリ達を、1匹ずつ、剣や、素手、足などで、始末して行った。
「モモガロン様、見て下さい、コウモリが、合体して行きます」
5人が目にしたものは、巨大な、猫、龍2匹、そして、コウモリが合体した姿は・・・・なんと! 麒麟だった。
「え?麒麟って、国王陛下が倒したって、言っていた麒麟?・・・・でも、後ろ脚がないワ・・それでもこんなに強いの?いつものにゃあ様ではないように感じる」
麒麟の姿は、半分くらいで、それでも、分散と合体を繰り返す麒麟に、精霊の力は奪われ、にゃあ様は、弱って行く・・。シャドウ宰相は、傷ついたにゃあ様を、麗水源に沈め、合体した麒麟を、白龍の作り出す水柱の中に、閉じ込め、赤龍に燃やすように指示をだした。
「マギガル伯爵! 頼みます」
赤龍の渾身の一撃は、真っ赤な炎と共に、麒麟を焼きつくした。
そして、シャドウ宰相と、マギガル伯爵は、その場で倒れた。
すでに、スワルトイ領からは救護隊や、スワルトイ領の警備隊が、麗水源に到着していたので、一斉に捜索が始まり、シャドウ宰相とマギガル伯爵は、探し出され救護された。
4人とモモガロンは、シャドウ宰相に、近づき、心配そうに聞く、
「国王陛下は、どこですか?どこに・・いますか?」
その時、シャドウ宰相は、モモガロンを見て、
「モモガロン、国王陛下の元へ行ってくれるか?」
モモガロンは、それが何を意味しているか、わかっていた。
「はい、国王陛下の元に嫁ぐつもりでいます。陛下を助ける事が出来るのであれば、わたくしは、出向こうと思います」
「陛下は、麗水源の中にいる。モモガロン・・・、後は、頼んだ」
そして、モモガロンは、蛙が大きな口を開けているような麗水源に飛び込んで行った。
「お嬢様~~~~!!! 」4人は、叫びながらモモガロンを止めたが、
シャドウ宰相が、みんなに、
「大丈夫だ。麗水源には、陛下がいらっしゃる。スワルトイ邸で、待とう」
モモガロンは、前世では、泳ぐことは得意だったが、こんなに高い位置から飛び込んだ事はなく、全身打撲のように痛かった。
「イタ~~イ、イタタタタ・・・、それに冷たすぎる、国王陛下・・国王陛下!! どこですか?」
にゃあ様は、水が嫌いで、すっかり隠れていて姿を見せないが、深く深く潜って行くと、あの時と同じように、ベットに寝かされているエビクール国王を発見した」
「エビクール・・・・」
温かい空気が存在するその部屋は、きっと、モモガロンのイメージが作り上げているのかもしれないが、安心できる部屋になっている。
「覚えている・・・。この部屋、水の音だけがして、ベットが沈むように暖かくて・・・」
モモガロンは、国王陛下のオデコに手を乗せて、熱を測り、どこかケガをしていないかと、布団をめくると、ーーー何も身に着けていないエビクール・・・ゴクリ・・美しい・・。
「ううん(咳)シャドウ宰相・・・これは、あなたのイメージでしょう!・・私のでは、無いはずです。・ええ・きっと・・・そうです」
それでも、躊躇いは全くなく、ベットに入り、国王陛下を抱きしめ、そのまま身を任せる事にした。
モモガロンも昨晩は、寝ていなかったので、そのまま眠り、その後は、国王陛下に任せた。
夢の中での陛下は優しく、思っていた通りで、ただ、避妊はして欲しいと心から思った。
「陛下、・・避妊、避妊して下さい。ーーーしかし、この国の避妊って、どうするのかしら?」
次の日、ヒロイは、すでに王都の屋敷で、スワルトイ公爵に付き添い、ベットの側で、じっと、公爵が目覚めるのを待っている。その姿は、誰が見ても、立派な跡継ぎが、公爵様の為に、寄り添い、心配しているように見えた。
スワルトイ公爵は、目を覚まし、側のヒロイを見る。
「ヒロイ・・・・」
「お爺様、お母様は、スワルトイ領に戻られました。大丈夫です。父上がお母様を連れてこちらに戻って来ます。それまで、ごゆっくり体調を整えて下さい」
スワルトイ公爵は、涙を流し、
「本当か?」
「本当です。ゆっくりお休みなって、お爺様の元気なお姿で、お母様を迎えて下さい」
スワルトイ公爵は手を伸ばし、ヒロイは、しっかりとその手を握った。公爵はそのまま眠りについたが、ボルト家令は、深くヒロイに頭を下げて、感謝を表した。
「坊ちゃん、ありがとうございます」
その後、医者やって来て、診察を受け、このまま安静にしていれば回復に向かうと診断が下った。
スワルトイ邸の誰もが喜び、抱き合い、公爵の回復を祈った。
一方、モモガロンが、むかし住んでいた洋館に、国王陛下とモモガロン、沢山のにゃあ様は、ぐっすりと眠っていた。モモガロンの頬を舐めるにゃあに気づき、目が醒める。
「あ、あ~~~、猫に埋まっている。助けて~。むにゅ・・眠い」
「にゃあ~~」と鳴くいつもの三毛君の髭は、悲惨な状態だが、もう少しこの状態を楽しもうとした時、国王陛下が目覚めた。
「モモガロン・・・、又、君に助けられた。すまない・・・」
裸の陛下は目覚めも爽やかで、頬を赤くしたモモガロンは、恥ずかしそうに話す。
「いいえ、わたくしは決して助けません。わたくしは、いつも逃げます。でも、国王陛下は、わたくしの事も、すべての国民の事もお守りになっている素敵な方です。その為に、陛下のお力に成れる事は、名誉なことで、嬉しいです。ーーー例え、このような朝でも・・気にしません」
「モモガロン、今回は、僕一人では、この国を守り切れなかった。君も見ただろう?昨日の麒麟という精霊を・・、マギガル伯爵やシャドウ宰相、君がいないと、駄目だった」
「それは、わたくしを、助ける為・・・で、マギガル伯爵、シャドウ宰相、にゃあ様のお髭も犠牲になってしまいました。皆さんには感謝しても、しきれません」
それから、二人で全部のにゃあ様全部を確かめたが、すべてのにゃあ様の髭は右側は全滅に近い状態だった。
「どうします?」
「どうしたらいいか、わからない。とにかく、トワに来てもらおう」
「ええ、そうしましょう」
「ーーモモガロン、今度、私も青龍に乗せてくれるか?」
「妬けました?」
「ああ、ものすごく妬けたよ。僕が、一番最初に乗りたかった」
「はい、すいません。でも、これから、一生、いつでも、乗れますよ」
「ーーーーーー」
「モモガロン、それは、私の元に嫁いでくれるのか?そう思っていいのか?」
「陛下・・、わたくし達、今、二人とも裸です。この状態で、結婚しないのは、いかがなものでしょう?目覚めると、陛下とにゃあ様がいる生活は、私にとって、本当に素晴らしいと心から思います」
エビクール国王陛下は、突然、起き上がり、(大事な所はにゃあ様が隠して)真っ白なシーツにくるまれたモモガロンに、レースのクロスを掛け、プロポーズする。
「レディ・モモガロン・スワルトイ、僕と結婚して、ヴィッセルス国の王妃になって頂けますか?」
「はい、エビクール・ヴィッセルス国王様、謹んでお受けいたします」
「では、誓いのキスを・・・!」
「陛下、その前に、わたくしの事はお好きですか?」
「はい、とても好きで、愛おしいく思っています。誰にも渡したくないと、実感もできた」
「はい、私も、陛下が好きです。この先も変わらぬ愛を誓います」
それから二人はキスをして、又、眠った。




