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ああぁぁぁ・・似ている。

第35章

 あれから、使用人たちは、誰に言われたのでもなく、こっそりと、ブルーベリーを摘みに行き、ジャムにして、モモガロンの朝食などに添えてくれる。ジャムを、作り過ぎると、乾燥をさせて、保存し、お菓子に入れてくれた。


 そんな落ち着いた毎日の中にいて、モモガロンは、すっかり王都の事を忘れていた。


 「モモガロン様、明日、公爵様がこちらにお戻りになります」


 「本当?嬉しい。すでに8月になっています。わたくしの誕生日にも出席できなくて、何か大変な事でもあるのでしょうか?」


 コベルは、それは、突然、現れたスワルトイ領の後継者、そして、忽然と消えたその後継者。


 その後、ホワイトとマザー出版の主催者は、消えた後継者だったと、ビックニュースに対応する為に、お忙しかったのでは・・・とは、絶対に言えないと、思っていた。


 「王都は、今は強化された近衛兵によって、守られていますが、その運用についての意見が多く上がっていると、ボルト家令からは、聞いております」


 「そう?利権争いが、起こっているの?」


 「明確に言うと、そのようです。国王陛下の周りは、スワルトイ公爵ただおひとりが、大きな権力を持つことを嫌がります。今までは、後継者がいない為、タツトヨリイ公爵が、居なくなっても、誰一人、意義を申し立てすることは有りませんでした。しかし、スワルトイ公爵には、お嬢様がいらっしゃいます」


 「そして、お嬢様は、特別、優秀です。貴族学校の成績もよく、社会では、実績を伸ばしています」


 「・・・そして、国王陛下と親しいです」


 「でも、私が領主の仕事はしっかり務めるつもりだけど、公爵の特別な仕事を引き受けるつもりはないのよ。ヒロイが成人した後は、ヒロイに任せる予定だし・・・」


 「・・・・・・」


 「だれも、ヒロイ様の事を口にしないのは、この領土内では、ヒロイ様はモモガロン様の叔父上と、思っていると考えられます」


 「え?うそ〜〜?なんで・・・そうなるの?」


 「お爺様の子供だという事?」


 「そんな・・・あり得ない」


 「もしも、ヒロイ様が、お爺様のお子様となると、お嬢様は、国王陛下のもとに嫁ぐ事ができます」


 「イヤイヤ、絶対にないから、ヒロイがいます。彼と離れる事は考えられませんし、それにすでに子持ち、対象外でしょう」


 コベルとそのような話をした後、モモガロンは、「全く、王都は伏魔殿のようだ」と、思いながら、ヒロイとプールで、呑気に遊んでいると、


 「お嬢様、国王陛下とシャドウ宰相がお見えです」


 「え?お爺様がお戻りになる前に?ーーお爺様に何かあったのですか?」


 「いいえ、スワルトイ公爵は、王都での仕事が延びて、2日後に、こちらに戻るようです」


 「そう、それならいいけど・・。お二人は、わたくしに、何かご用事でしょうか?」


 「・・・・・・」


 「・・仮病は駄目なの?」


 「ダメです! 」


 「ふぁ~~~。悪の精霊が減って、安全になったとしても、陛下は、スワルトイ領に来すぎです。だから、変な噂が立つ・・、まったく!! 」


 シルガーと、他のメイドたちは、大急ぎで、ぷりぷり、怒っているモモガロンの支度をして、スワルトイ邸の物凄く立派な満面会の間で、二人を迎えた。


 「お久しぶりです。国王陛下、シャドウ宰相。お二人を心より歓迎いたします」

と、初めて迎える貴賓は、国王陛下とシャドウ宰相で、さすがのモモガロンもドキドキしながら、会談に望んだ。


 「モモガロン嬢、突然で、申し訳ない。実は、君と小さいお子様の真相を知りたいと、議会から申し出があった」


 「お爺様は、なんとお答えになったのですか?」


 「君に聞いてくれと申された。それなら、僕たちが、君から聞きたいと思い、急いで、スワルトイ領を訪ねる事にした」


 国王陛下が、あまりにも真剣な顔をして、真っ直ぐモモガロンを見て、真剣に聞くので、モモガロンも正直に答える。


 「ヒロイは、わたくしが産んだ息子です。将来のスワルトイ領の後継者として、育てていくつもりです」


 モモガロンは、二人にヒロイの事を、話し終わった瞬間に、心臓の音がものすごく頭の中に、響いた。


 ドキドキドキドキ・・・


 「モモガロン、・・父親は誰だ?」


 「わかりません」


          ーーーーー沈黙が続くーーーーー


 「でも、処女のまま妊娠することは、できないので、そのような行為をしたことは、確かでしょう」


 「ヒロイの出身に、問題があって、スワルトイ領の為にならないのであれば、わたくしは次期領主を諦めます。今後のご判断は、国王陛下に委ねます」


          ーーーーー沈黙が続くーーーーー


 「モモガロン、・・私は、スワルトイ公爵の60歳の誕生日、スワルトイ領に来ていた」


 「え?」


 「その時、見知らぬ誰かから攻撃をうけて、あの湖の向こうの森で戦っていた。ーーその時の精霊は、驚くほど強く、どうにか倒したが、ひどく負傷していた。今は、にゃあ様へのエナジーは、トワや君が送ってくれるが、その頃は、シャドウ宰相に助けてもらっていた」


 「あの時、シャドウ宰相の白龍が、水の中に連れて行ってくれる事で、にゃあ様の傷をいやしてくれていると、思っていた。だから、ずっと、にゃあ様をお風呂に入れて、回復を促したいと考えていた。水の中よりも、暖かい湯船の中の方が、リラックスできて、回復も早いと考えての事だ」


 「当時のスワルトイ領の戦いは、今まで戦ったことの無い相手で、自分も、にゃあも負傷した。にゃあが消えれば、自分の消滅する。ギリギリだった」


 「モモガロン嬢、あの時、あの水の空間で、私とにゃあを助けてくれたのは、君ではないか?」


          ーーーーしばらく沈黙する。ーーーー


 モモガロンは、国王陛下の顔をしみじみと見る。あぁぁぁ、・・・ヒロイに少し似ている・・・。


 しかし、ここで、国王陛下の話を認めてしまうと、私は、どうしたら良いのだろう?折角、訪れた平穏で、愛しい日常が、音をたてて崩れて行くのでは無いだろうか?


 「それは、わかりかねます。とにかく、おぼえていません。でも、国王陛下は、シャドウ宰相の作った水の空間の中に、私がいる事をおかしいと思わなかったのですか?」


          ーーーーー少し、沈黙する。ーーーー


 「それに、シャドウ宰相が、意識がもうろうとしている私を、貴方のベットに送ったとしたら、それは、犯罪です」


 「まさか占いでそう判断したのですか?」


 シャドウ宰相は、ふっと、笑い、仕方がないので、話を始める。


 「あの時、戦った相手は、他国の精霊持ちで、キリンだった」


 「私も、国王陛下も、初めて見た精霊で、スワルトイ領には、聖地がなく、広い場所は、あの森しかなかった。戦っていると、森の端に、見た事もない洋館が建っていた。そこは、君の隠れ家だった。森に囲まれた、ただ1軒だけの屋敷。小舟に乗り、その場所に、帰ろうとしている君が見えた」


 「あの夜、スワルトイ公爵邸でのパーティーは、それは、それは、盛大で、多くの貴族たちが、何日も前から敷地内には、滞在していた。国王陛下も、数日前に、お祝いの品を送り、その夜、ひっそりと王都に戻る予定だったが、滞在していた数日間、私たちは、一度も、君を見かけていない。どうして、あの森の中で、ひっそりと暮らしているのかも知らなかった。でも、にゃあ様のケガは、孤独な少女に、頼らなけらばならない程の大けがだった」


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