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マギガル伯爵

第32章

 モモガロンは、泥を1滴も浴びることなく、素早く、瞬間移動している。


 周りの生徒たちは、その女の子の挙動に驚くだけではなく、サルポートやコベル、シルガー、マルサナの素早さに圧倒されていた。


 彼ら5人の身分は、明かされた事はないが、頭のいい人間は、絶対に、底辺の貴族では無いと確信している。


 そのレインに騙されれ、鉄砲玉にされた女の子は、叫ぶ。

 「モモガロン、あなた、下級貴族のくせに、人の恋人を奪っていいとお思いですか?そんな破廉恥な人は、この貴族学校に通う事は許されません」


 コベルが、モモガロンの前で、その女の子に向かって話す。


 「あなたが聞かされた話は一方的な話です。そして、あなたに嘘を吹き込んで、高みの見物をしている人は、この後、決してあなたを助けません。そして、助ける力も無いでしょう」


 「レディ・サーチン、あなたが、本当に泥水をかけたいのは、ご自分の御父上の愛人たちでしょう?モモガロン様ではありません。あなたのその気持ちを、利用されたのです。あなたの御父上は、沢山を愛人をお持ちの様ですが、どの愛人にもお子様は、お生まれではありません。不思議な事ですね」


 サーチン嬢は、その場で立ちすくみ、冷静にコベルの話を思い出し、大勢の野次馬から差し伸べられる手を待っていた。ずっと、そのままで、涙を流しながら・・レインを待っている。


 5人は、何事もなかったように、学生室に向かい、昼食をとる。


 「お嬢様、国王陛下とシャドウ宰相がいらっしゃいました」


 「今日は、研究の為ですか?」


 「いや、シャドウ宰相が、今日、貴族学校で騒動が起きると占いで出たと言うので、来てみたら、やはり、モモガロンが騒動の真ン中にいた」


 「わたくしも、好きであの中にいた訳ではありません。不本意です」


 「それで、どうするつもりだ?」


 「別にどうもしません。このまま収まるのを待ちます。基本、静かに学生生活を終えるのが、わたくしの希望です」


 「私達は、朝からマギガル伯爵を、私の研究棟に呼んである」


 「え???どうして・・・、ご自分の娘が、騒動を起こすことがわかっていたのですか?」


 シャドウ宰相は話を続ける

 「彼女は、クロエッスの息子の事が、本当に好きだったらしく、あの騒動の後、酷い振られ方をして、少し精神が歪んだらしい・・・心の病だ。だから、本日、伯爵はモモガロン嬢との話し合いを希望している」


 そして、国王陛下が、モモガロンに真剣に話す。

 「モモガロン嬢、どうだろう?もう、自分の身分を公表しないか?タツトヨリイ公爵も亡くなり、悪の精霊持ちは、君と仕事をしている。僕は、最近、シャドウ宰相に提案されて、近衛兵たちの指導を強化している。僕は、王都を、一番安全な場所にしたいと考えている。だから、安心してモモガロン嬢にも身分を公表して欲しい。どうだろうか?」


 モモガロンは、国王陛下の顔を真剣に見て考えている。


 その時、シルガーが、学生室に、マギガル伯爵が訪ねて来たことを告げる。


 国王以外の全員は立ち上がり、モモガロンは、大きく息をして、落ち着いき、話し始める。

 

 「初めまして、モモガロン・スワルトイです」


 モモガロンは、自分の名前を初めて、人の前で告げる。国王陛下の助言もあるが、自分の意志だった。


 そして、右側の目から涙が頬を伝わって流れた。自分でも可笑しいと思うが、潜在意識の中で、見知らぬ人に、自分の名前を告げたかったのかも知れない。


 「私はモモガロン・スワルトイです。父はガーデニュー・スワルトイ、母はシューマン・スワルトイで、わたくしが、スワルトイ家の次期当主で、そして、マザー出版はわたしが主宰しています」


 あまりにも突然に、モモガロンが、自分の身分をはっきりと伝えた為に、その場の物音は消えてなくなった。


 最初に、口を開いたのは、マギガル伯爵だった。


 「知らなかったとは言え、娘があなたを侮辱したことは事実で、お友達を使って、襲撃させたのも、真実です。誠に申し訳ありませんでした」と、頭を下げた。


 モモガロンは、考えて、一つ質問をした。


 「この場で、一つ答えて下さいますか?」


 「はい」


 「あなたは、精霊持ちでしょうか?」



 その鋭い質問に、全員は、その場で静かに答えを待つ。


 「はい、そうです」


 「ここで、クロエッス伯爵のように、精霊を完成させ、戦いを挑みますか?」


 「まさか・・、そんなことをしても、無駄だとわかっています。国王陛下のにゃあ様には敵いません。私は、常々、クロエッスにも言っていました。・・勝てないと、それなのに、彼は・・自業自得です。そして、彼の息子も、僕から見たら自業自得でした」


 「しかし、何度、説明しても、娘は、聞いてくれません。どんどん深い闇に飲み込まれて行くようでした。1年間の療養を終えて、落ち着いて来て、そして、貴族学校に行きたいと話し始めました」


 「その時、窓から日が差し、穏やかな顔をしていたので、良くなったのかと思い承諾しました。まさか、少しも改善されていないとは・・。当時から自分の為に働く駒を、見つけるそれが彼女の生きがいだったのでしょう。その事実を、はっきりとカイレキから告げられて、逃げ場を無くし、次のターゲットを探す為に、留年しても、学校に復学したのです。すいませんでした」


 「敵は、多分、誰でも良かったのです。自分の道を塞ぐ人間が、ターゲットになるだけです。モモガロン様の事は、たまたま、気に入らないだけだったのでしょう・・・」


 貴族学校のベルが鳴り響き、ランチタイムが終わりを告げる。


 国王陛下とシャドウ宰相は、王宮での仕事に戻る事となり、モモガロンは、午後は欠席しにして、マギガル伯爵と二人で話をすることにした。


 「お嬢様・・・」4人は、心配するが、


 「マギガル伯爵、私はこの世界で死ぬことが出来ません。あなたは、私を殺しますか?」


 「あなたが死んでも、私に、何の特がありますか?」


 「ええ、まったくありません。それなら、私は貴方を信じます。二人で少し話しましょう」


 広いサロンの端に、ダーツバーの様な、風合いの椅子とテーブルと、ダーツの的がある。

 「あちらの場所に移動して下さい。あそこなら、彼らから目が届きます」


 モモガロンは、細長いグラスに、学生寮に沢山あったワインをこの部屋にも持ち込んでいたので、それを手にして、マギガル伯爵に注いだ。


 「美味しいワインです。どうそ、日頃は国王陛下とシャドウ宰相が、飲んでいる高級品です」


 そして、尋ねる。

 「あなたは、いつこの世界に来たのですか?」


 マギガル伯爵は驚いたように、モモガロンを見る。


 「だって、あなたが育てた娘さんがあのような子になるとは思えません。もしかして、マギガル伯爵は、誰かに殺されたのですか?」


 「モモガロン様、あなたは凄い人だ。家のバカ娘や、クロエッスの息子が返り討ちにあうはずだ」


 「そうです。僕は、自殺をしたマギガル伯爵の中に存在しています。そして、レインは、首を吊った自分の父親を見てしまい。おかしくなったのでしょう。父親が自分のせいで死を選んだ事実が、彼女には受け入れられませんでした。例え、その後、息を吹き返して、肉体が残っても、あのショックからは、立ち直れなかった」


 「彼女の母親は・・・?」

 「いません。子供の頃に亡くしたようです。しかし、彼の自殺には理由があります」


 「マギガル伯爵が、不正に賄賂を受け取っていた為です。その事実は、前々から王宮では掴んでいました。その事が、あの晩さん会の事件後、明るみになる事は、明白でした。実際、私も、何度も取り調べられ、素直に、調査に協力する形で、爵位の継続を認めてもらった位です」


 「あの頃は、この世界に来たばかりで、何もわからなかったが、マギガル伯爵の記憶が残っていたので、正直にすべてを話して、駄目なら、又、死ぬだけだと、思っていました」


 「でも、その時は、精霊の話は、聞かれませんでした。私も誰を信じていいのかわかりませんでし、すべてを、自分で判断するしかありませんでした」


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