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レイン復活

第31章

 モモガロンの考えている新しい出版は、幼児教育書だった。


 自分でも驚いているが、自分は意外に教育ママで、ヒロイには沢山の可能性があるように思えて仕方がなかった。


 実際、この世界でも普通に絵本はある。


 殆どが、モノクロに、赤や黄色、緑が多少加えているような絵本で、それは、それで、いい味をだしていて、好きだったが、もっと面白くて、頭を使う本が欲しいと思った。


 玩具は、職人たちに頼めばすぐに出来上がる。パズルは手作りでき、子供は好きだと、ヒロイを見ていてわかったが、暫くすると飽きて見向きもしない。


 そこで、簡単な物語の中で、一文字を〇にして、そこを埋めていく、埋めた文字で、新しい文字が出来る子供用の本を考えている。しかも、それは、結構、難しいモノにする予定。


 難しいモノにするのは、読み聞かせ側の大人も考える為で、そうすると、何度も読む必要がある。そして、次の絵本が欲しくなる。


 6歳までの教育内容だが、この国の歴史、文化、計算なども取り入れて、12、13歳までも使える様にしようと思っている。


 それは初級から上級へ、永遠に続くクロスワードパズルのようになる。


 正解は、最終章が解けた段階で、郵送してもらい、こちらからは、正解の読者のみ、素敵なカードを送り返す。と、コベルに構想を話すと、コベルは真剣な顔になり、身動きしなくなった。


 「コベル?・・・コベル?」

 「はい、お嬢様・・・・」


 「特に急いでないので、ゆっくり考えて下さい。本の内容は、わたくしがヒロイに伝えたい事にしますので・・・・」


 「はい、わかりました。しかし、私達が、その本に、罠を仕掛けるのですよね。ーー考えただけでも、ワクワクして、楽しみ過ぎます」


 「罠?・・・謎解き?そんな感じだけど・・」


 「この本の出版に当たり、お爺様の承諾を得て、新しい商会を立ち上げるつもりです。そちらの手続きは出来ますか?」


 「はい、一度、経験していますので、容易いです。しかし、マギガル伯爵の事は大丈夫でしょうか?」


 「お爺様は、きっと、嫌がるでしょう。でも、わたくしは、少し良心が痛むので、発注したいです」


 モモガロンは、マギガル伯爵は、同じ転生人で、悪か白かは不明だが、それでも一度は手を差し伸べたいと思った。勿論、窓口はコベルで、モモガロンが表に顔を出すことは一生ない予定だ。


 それに、学校へ来なくなったレインの事も気になっている。



 貴族学校は、相変わらずで、今度の冬を越えると、トワは卒業して、モモガロンは、最終学年になる。


 「サルポート、トワくんは卒業できそうですか?」


 「はい、無理だと思います。最近では、シャドウ宰相の所に泣きついて、来年はお嬢様と同じクラスにして欲しいと、懇願している様です」


 「・・・、マルサナは大丈夫?わたくしたちは、3年で卒業することを目標にして入学していますが・・、一人だけ、王都に居残りになりますよ」


 「お嬢さま・・・、そんな・・・、頑張ります」


 貴族学校は、単位制の学校の様で、入学は貴族の身分があるだけで出来るが、卒業は、ある程度の成績を収めないとできない。意外にしっかりした制度であった。


 それでも、優秀な生徒は少なく、反面、身分の低い生徒は、成績を残し、官僚への道へ進む。



 そして、トワは、同級生になり、当然の事ながら、同じクラスになった。


 「へへへ・・・、同級生になったトワです。これからもよろしくお願いします」


 コベルは、また、問題児を抱え、少し複雑な顔をしながら、トワを見ていた。


 マルサナは、嬉しそうに、トワを見て、大きく握手して歓迎を表す。


 「トワ様、おはようございます。これから、みんなで頑張りましょう」


 シルガーが、モモガロンにそっと話す。


 「お嬢様、一つ下の2学年に、レイン様が復学されました」


 「・・そうなの?それは良かったです」


 「お嬢様も本当にお人よしです。彼女は、お嬢様の悪口を散々言っていた人ですよ」


 「それでも、一人の女の子の人生を、狂わせたくないの、学業は大切で、学校生活は今だけだから・・」


 その後、モモガロンは、スワルトイ公爵の許可を得て、『マザー出版』を立ち上げた。


 最初の試作品は、ヒロイの誕生日に出来上がり、ヒロイの反応を見てからの出版になった。


 ヒロイの為の本は、たった3ページのパズル内臓で、暗号を探すものにした。答えはアヒル。

これは、流石に大人には簡単に解けて、最後は子供がアヒルの絵を指すと正解。


 しかし、2歳くらいの子供は、乱暴に扱うので、一歩、歩くと、バラバラになり、その場で座って、またパズルを入れる。その繰り返し、そして、もう少し大きくなると、バラバラにならない方法を模索して行くまでが、モモガロンの最終目的になっていた。


 だから、最終の答えは、創意工夫。


 子供たちが、どんな工夫を考え出してくれるかが、楽しみだった。


 私書箱は、王宮内に設けられ、この本を購入して、答えを送る。正解者は、カードが送られ、最終出版まで、そのカードが集まると、最後は、金貨を贈呈する予定にした。


 その後、少し手直しが行われ、めでたくマザー出版は、幼児教育書の出版商会に至った。


 大した宣伝もしないが、その本に付いているハガキで、王宮私書箱に送ると言う発想が、国民の心を揺さぶったのか、当初の予想以上の収益を上げ、初版は完売となった。


 その売り上げは、新学期前に、マギガル伯爵に渡って、レインの復学に繋がった。



 「でも、お嬢様、彼女、絶対に、お嬢様がマザー出版の創業者だとは知りませんよ。だから、これからも気をつけて行かないと、なりません」


 「ええ、そうね。後、たった1年、後1年で、王都での生活も終わり、早く、ヒロイと一緒に、スワルトイ領に戻りたいわ・・・・。私の本当の願いはそれだけです」


 しかし、レインは、変わることなくレインで、一つ下の学年になっても、モモガロンの悪口、評判落としは、変わることなく、下の学年でも始まっていた。


 「新学期が始まり、みんなが学期末のテストに向かって勉強を始めた頃、お嬢様、彼女・・この1年は反省の一年ではなかったようですね。噂によりますと、カイレキ様とは、恋愛関係だったみたいで、お嬢様が嫉妬に狂って、彼を罠にはめた事にしています」


 「ふ~~ん、面白い、その発想、どうしたらそう思えるの?・・彼は、あの後どうしたのでしょう?」


 「父親が、あの時、消滅して、彼は親戚に引き取られたみたいで、その時、思いっきり、レインを振ったらしいです。逆恨み?なのか、二人とも自業自得だと思いますが、あれから、彼女はしばらく引きこもっていたみたいですが、復活すると、お嬢様を攻撃するなんて・・・」


 「その噂を信じる生徒はいるのかしら?」


 「私たちの学年では、皆無でしょうが、下の学年は、わかりません。それにこの学年で、気軽にモモガロン様の噂をする生徒はいないでしょうが・・・・」


 「本当に、わたくしやスワルトイ領の皆さんを攻撃するのは、やめて頂きたいですね」


 「お嬢様のそのお優しいお言葉が、彼女に伝わるといいですね」


 その言葉は、レインに伝わる事がなく、事件が起きた。


 一人の少女が、モモガロンのもとに駆け寄り、泥水をかけようとしたのた。


 結果は、返り討ちにあい、自分が泥だらけになり、両腕を脱臼させられ、大騒ぎになった。


 丁度、その日は、国王陛下が、貴族学校の研究棟に来ている時の騒ぎで、学校中の人間の顔が青くなった。


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