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学生・育児・仕事

第30章

 ホワイトは、結局一日だけの営業でそのまま閉店した。


 次の日曜日に緊急会議を開き、場所は、王都内にあるスワルトイ邸の学生寮で行う事とします。


 26人は、悪の精霊持ちの為、王宮内で暮らしている。それは、国王陛下も望み、彼らも望んだ事だった。一部の貴族たちには顔を知られている人間もいたので、王宮が一番、安全な場所だった。


 だから、夜のうちに移動が必要になり、その手配は、シャドウ宰相が手を貸してくれた。


 「シュネールは、こちらに来れそうですか?」


 「はい、2日前に、学生寮に入り、制作に取り掛かっています」


 「彼が、みんなの代表でいいのかも、話し合いましょう。それと、暫くは、のんびり動く予定だったのですが、各部門に責任者を設けて、生産しなくては行けなくなりました」


 「はい、僕も、そう思います」

 「王都だけでの生産には無理があり、スワルトイ領で工場を作り、運送してもらう事にしたいと考えます」


 「はい、スワルトイ領との調整は僕が行います」とコベルが承諾してくれた。


 日曜日当日。


 「皆さん、ご苦労様です。ホワイトの商品が完売してしまったので、今後の事について話し合いを行います。今まだ、私は、皆さんの事を履歴書上でしか知りません。今後は、一人一人と面接等を行いアイデア、不満などを聞きたいと考えています。それまでは、真っ白な状態からのスタートだと理解して欲しいと思います」


 「このような大掛かりな会議は、年に何回も行う事が出来ません。それは、あなた方の安全の為と、いい方向に考えて、生産で、忙しくなると予想しています。ですので、大変、申し訳ありませんが、皆さんで、代表を決めて下さい。その代表の下に、各部の代表も必要です。立候補、推薦、話し合い、どれでも構いませんので、決まりましたら、次の段階に入ります」


 みんなが話し合っている時間で、大雑把に事業計画を5人で考える。


 やはり26人の代表は、シュネールに決まり、部門別の代表もすんなりと決まった。


 「王都だけで、この26人だけでお店を回転させる事は、難しいと皆さんにもお分かりだと思います。そこで、スワルトイ領内に生産を少し動かそうと考えています。スワルトイ領からは、子供車と天幕、その他の製品もこれから搬入されますので、そこに一緒に乗せて運んでもらいます」


 皆で話し合い、小物は、スワルトイ領での生産にして、王都では、ポスター、フィギアやぬいぐるみ関係を行う事となった。皆が、快く承諾してくれたのには訳があって、順番でスワルトイ領に出かける事が、できるからだった。


 王宮では、自分の精霊たちはくつろげるが、自分自身がシンドイらしく、制作に集中していれば、気にならないが、屋外のホワイトのシフトが、入っていたのを楽しみしていた人もいた。


 「わかる・・・。自分も、あの部屋以外の王宮の雰囲気は、ちょっと嫌かも・・・」

 他の4人も、うんうんと頷いた。


 「それなら、ポスターや、イラスト、絵、関係はこの学生寮で行う事はどうでしょうか?」


 「幸い、今は使っていません。誰かが運転して、この寮に通勤することをシャドウ宰相に相談してみます」


 「この国では、印刷物はまだモノクロで、カラーは出来ません。自分たちで色を加える作業場にしたらどうでしょう?」


 この提案の時は、拍手喝采となった。


 その後、モモガロンは、屋敷に戻り、シャドウ宰相やスワルトイ公爵と話し合い、色々な事を詰めて、後は、ヒロイとのんびり遊び、貴族学校の課題等もこなしぐっすりと眠った。

 「忙しすぎる・・・ヒロイも動きすぎだ。体力が持たない・・。むにゅ・・・・」


 王宮からの通勤が認められ、車も気軽に運転できて、悪の精霊持ちは、生きがいを持って暮らすようになった。一方で、スワルトイ領での産業も始まり、ホワイトは再び開店した。


 学校が終わり、ヒロイとの貴重な時間だったが、モモガロンは、ホワイトで、シュネールと会った。


 「お忙しのに、ありがとうございます」


 「いいえ、何かありましたか?」


 「はい・・・、僕の前の雇い主が・・・・」


 「まさか、ーーー引き抜き?」


 「しかし、あなたの身分は、今は国の管理下に置かれていて、他の貴族たちとの接触はできないのでは?」


 「・・・方法は、いくらでも存在します。私が外に出るのを待っている様で・・・・」


 「あなたの前の雇い主の名前は、何と言いますか?」


 「マギガル伯爵です」


 「・・・どっかで聞いたような・・・」


 「お嬢様、ーーレディ・レインのお父様です」


 「同じクラスだった?」


 「・・彼女、どうしているの?学校は辞めたのでしょうか?」


 「・・・・・・」


 「それで?」


 「伯爵家は、あれから、没落していきました。それまでマギガル家は、裕福だったと言えます。今でも、爵位は保たれ、伯爵家としては、残っていますが、いつも共にしていたクロエッス伯爵が、悪の精霊持ちだった為に、一斉に周りの人間が手を引いたのです」


 「でも、マギガル伯爵は、あなたを使って国王陛下の暗殺を企てていたのでしょう?」


 「そこは、わかりません。直接、そのような命令を下された事はありません。今、思えば保身の為だったようにも思えました」


 「それで?」


 「僕に会いたいと・・・、その理由は、マギガル家の産業が、印刷と製本だからです。今は、王宮内で、印刷と製本を行っていますが、やはり、我々だけで沢山の部数を生産するには、限界が見えています」


 「・・・・・・」


 「ーー僕たちが裏道で会って、話した時に、彼は、自分なら単行本まで発行できると、言ってました」


 「??????」


 「その一言で、多分、彼も悪の精霊持ちだと、確信しました」


 「どうする?」


 「どうしましょう?」


 「この世界の悪の精霊持ちが、あなた達26人だけだとは、国王陛下も、誰も思っていないでしょうけど、まさかこんな近くに、それに、精霊持ちが、精霊持ちを雇うなどと、考えられません」


 「だけど、そんな立派な製本する機械があるのに、なぜ?没落しているの?」


 「マギガル家のお得意様は、国です。教科書などの印刷を主に受け寄っていた」


 「あの事件は、クロエッス家が起こした事だけど、国王陛下やシャドウ宰相は、そうは思わなかったのでしょう。君を、見下し、恥をかかせ、笑いものにしたマギガル家を、当然の事ながら、スワルトイ家は、見逃さない」


 「きっと、国王陛下に、印刷工場の変更を提案した」


 「お爺様なら、絶対にそうするでしょう。私は、あの時、このまま貴族社会から消える事ができると、喜んだのだけど、私の後ろには、常にスワルトイ家がいるので、それは仕方がない事なのよ」


 「それに、私の事業は、スワルトイ領のホワイト商会の物で、認定されているは私だけで、どうにもならない・・・、国王陛下には、マギガル伯爵は、精霊持ちだと、報告する義務もあなたにはあるでしょう?ーー一応、公務員みたいだし・・・」


 「そのことは、すでに、シャドウ宰相には報告しました。印刷の事は、王宮内でもっと大きな機械を導入してくれるとも、おっしゃってくれました」


 「あなたは、どうしたいの?マギガル伯爵を助けたいの?」


 シュネールは、震えながら、頷いた。


 「要らなくなったあなたを捨てたのに?」


 「それでも、僕が、この世界で生きて来れたのは、マギガル伯爵のおかげだ。あの時も、一斉捜索前に、僕にお金をくれて、逃がしてくれた。と、ーーーそう思える・・・」


 「いいわ、わたくしも、丁度、頼みたい事があったので、マギガル伯爵に、他の印刷の仕事をお願いします」


 「お嬢様・・・」




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