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席順

第3章

 シャドウ宰相との対峙から、1週間が経ち、どうにかスワルトイ領の学生室のリフォームが終わった。


 学生が使う部屋という名目で、普段、モモガロンが住んでいる超豪華なロココ調家具ではなく、シンプルを基調にし、植物も多く配置して、明るい木目調のカフェテリアにリフォームが終わった。


 窓際のソファだけは、どうしても白のフカフカソファを希望したが、入り口からはパーテーションを駆使して、奥までは気軽に覗けないように工夫もした。


 1週間前に学生寮に戻り、王都に来てから初めてお爺様に電話をかけた。


 一番の心配はヒロイの事だったが、爆破テロ、学生室のリフォーム、そして、何よりもシャドウ宰相の事を聞いた。


 「お爺様、彼は、本当にお爺様の信用に値するのですか?」

 「どうしたのだ?何かあったのか?」


 「あの場所で出会う事が、偶然すると、思います。本当に偶然なのでしょうか?」


 「きっと、モモガロンがあの場所を訪れるとわかっていたのだろう」


 「私を見張っておられるのですか?」


 「イヤ、彼は占いで全ての事を予測していると、言っていた。だから、今日はモモガロンがあの場所に出向いた事に、意味があったのではないだろうか?」


 「どのような意味でしょうか?」


 「それは、僕らのような凡人にはわからない、もしかしたら、モモガロンを助けたかっただけかも知れない」


 「ふぅ、お爺様は、本当にお優しいから・・・、私は心配です」


 「大丈夫だ。何があってもモモガロンとヒロイだけは守る」


 「私も、お爺様とヒロイだけは力尽きようとも守り抜きます」

 「モモガロン・・・」


 「この前のテロの情報はありますか?」


 「イヤ、まだ、調査中だ。結局は被害者が出なかった為に、脅しの意味だったのではないかと言う事になりそうだ」


 「犯人の目星もないのですか?本当に大丈夫でょうか?」


 「大丈夫だ。シャドウ宰相が慌てていない。大したことはないと言うことだ」


 「また、お爺様、そんなに信用して・・・何かあってからでは遅すぎます」


 「モモガロン、儂は、お前を貴族学校に入学させたのは、少しでも普通の女の子のように過ごして欲しかった為だ。ヒロイのことは心配要らない。だから、学校生活をのんびり過ごして欲しい」


 「・・・はい、ありがとうございます」


 モモガロンは、電話を切ってから同じ王都で暮らす2人のことを考えていた。


 「お嬢様、もうすぐ就寝のお時間です」


 「ええ、今日は疲れたから、早めに休みましょう」


 モモガロンはヒロイのことを考えていた、お爺様の話では、もう首が座って、笑い声が本当に可愛いって、話していた。会いたい・・・会いたくて仕方がないけど、安全が一番だと、毎晩、自分に言い聞かせた。


 4人は、モモガロンが早く寝る夜に泣いているのを知っている。だから、4人全員は夜空を見上げ、1日も早く、ご領主様、モモガロン様、ヒロイ様がご一緒に、静かに暮らせる日が来ることを祈る。


 モモガロンは、校内の領土棟の部屋が出来てからは、精神的には楽になった点が多い。


 それは、本格的なシステムキッチンを導入した為で、いつでも、暖かい飲み物や食事が摂れ、暖房設備も充実させた。そこは、まるで日本の陽当たりのよいマンションの一室に変貌していた。


 「落ち着くわ~~~」


 「お嬢様にこんな狭いお部屋で、申し訳ありません」と、シルガーは話すが、モモガロンはこの部屋で過ごす日々をとても気に入っていた。


 しかし、モモガロンが気にしている事は、狭さや快適さではなく、シャドウ宰相の登場するタイミングの良さを気にしていた。


 「大丈夫、わたくしの動向を気にしている訳が無いわよね」少しだけ自惚れていたと感じて反省する。


 入学直後に行われる予定だったオリエンテーションも行われ、スムーズに学校生活に入っていけたと思われるモモガロンだが、この世界でのカースト制の洗礼を受ける事となる。


 当然のことながら、この世界は身分制度。


 自分の親の位が高ければ、自分もその地位が約束されている。どんなにバカでも・・伯爵は伯爵だ。


 一人の伯爵のお嬢様は5人に向かって言う。

 「ねぇ、あなた達、この席じゃなくてもいいわよね?席を譲って下さらない?」


 コベルはモモガロンの前に出て、マギガル伯爵の娘のレインに聞く。


 「どうして、私たちが席を移動しなくてはならないのでしょうか?レディ・マギガル?」


 コベルは、ワザとレディをつけてレインに問いただす。


 「あなた達は、世継ぎのいないスワルトイ領から来た子爵や男爵の子供でしょう?この貴族学校で名を上げて、スワルトイ公爵から認められる目論見でしょうけど、考えが甘くてよ。そんなことはあり得ないとお父様がおしゃっていました。大体、そういう考え方は、大変、下品で、本当は同じクラスにいるのも本当は嫌なのよ。でも、学校が入学を許したので、それは仕方がないと、周りのみんなは思っています」


 「どうしたって、スワルトイ領は手に入らないのに、そのようないい席・・必要ですか?」


 4人は、目から血の涙が出そうな程悔しいが、冷静に、モモガロンがレインに尋ねる。


 「レイン様のお父様はどなたがスワルトイ領を継承なさるとおっしゃっていましたか?」


 「ふっ! そんな事ここで言えるはずないでしょう?やはり、あなた方は世間知らずのおバカなのね」


 「それなら、私たちがお席を譲る必要はないのではないでしょうか?」


 「もしも、マギガル伯爵がおしゃっている方を、この場で小さな声でも教えて下さるのでしたら、わたくし達は違う席に移動します。いかがでしょう?」


 「そして、レディ・マギガルの発言はマギガル伯爵の発言と見なし、わたくし達の領土に、お知らせしなくてはなりません」


 レインはもうすく泣き出す。


 目を真っ赤にして援軍を探すが、この学校は、小さな貴族社会だと、親から死ぬほど注意を受けている生徒たちは目を背ける。席順は学校側が決めた事で、今回の提案は、レインの間違いだと、誰が見てもわかる。


 仕方がないので、レインの応援にクロエッス伯爵のカイレキが手を差し伸べた。


 「レインを許してくれないか?」

 「許すとはどういう事でしょうか?」


 「許すとはレインの発言はマギガル伯爵の発言ではないので、スワルトイ公爵のお耳に入れないで欲しいという事です」


 清々しい程に、キッパリと説明する。


 「・・・・・・」


 「君たちは、貴族学校に入学したのは高等部からで知らないと思うが、去年まで、僕たちには必ず従者がいた。彼らの仕事は、僕たちを学校内で過ごしやすくする為に知恵を絞り、学校内でアツレキ等を生まないように調整したりもしていた。だから、特に席には気を使い同じ派閥が集まりやすくなっていた」


 「でも、今年の高等部からは、昼食以外では従者は禁止になり、席は学校側の指定で、新学期が始まって直ぐに、爆破テロもあって、なんとなく、いつも隣にいた友達がいない事に慣れない」


 「ーーー不安なのですか?」


 「僕は、そうでもないが、きっとそうだと思う。今まで、スワルトイ領からの入学者は一人もなく、突然、君たち5人が入学して来た。その事だけでも大きな話題だ」


 「では、わたくしたちはどの席に移動して欲しいのですか?」


 「できれば、僕たちが好きな席に移動した後に、残った席に一人ずつ移動するのはどうだろう?」


 「断る! 」

 「ダメです」

 「お断りします! 」


 「カイレキ様のその提案は、クロエッス家の名を背負い、発言されていますか?それでよろしいでしょうか?」



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