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スワルトイ領

第24章

 モモガロンは、大きな机に設計図を広げた。


 その設計図は、職人たちが来る前に、5人で測量を完成させ、コベルに手伝ってもらって、完成させた。


 この設計図を完成させる為に、最近、5人は余り眠っていない。


 モモガロンの前世は、建築関係の仕事をしていて、リフォームは得意部門だったが、前世と、この世界では、すべてが全く違う。一からの測量だった。


 「一番の目的は、部屋から外のテラス迄をすべてのバリアフリー化です。つまり、段差をなくして下さい。後は、棚を前面にお願いします。すべて扉をつけて下さい。その後は、家具を揃えて行きます。」


 「部屋の中は明るい木目調で統一して、床は、なるべく柔らかい木材をお願いします。」


 「それでは、冬はどうしますか?テラスをオープンにしますと、冬は耐えられません。」


 「今回、テラスのガラスは2重にする予定です。真冬は、外に扉をつけます。」


 「窓の外に扉をつけるのですか?」


 「はい、夜は、暗いです。カーテンでも大丈夫ですが、安全の為でもあり、折りたためる扉をつける予定です。」


 「今回は、どうしますか?」


 「この部屋と、隠し部屋の細工だけしか、設計出来ていないのですが、時間があれば、お願いしたいです。無理はしないで下さい。」


 「お嬢様の考えている家具は、どこかに発注するのですか?」


 「はい、領土内に腕のいい家具屋がいましたら、教えてください。」


 その時、職人たちは、目を輝かせて、モモガロンを見る。


 「実は、お嬢様が注文される品物は、屋敷内では、特に評判がよろしくて・・・・。」


 「出来上がりを楽しみにしている使用人もいました。」


 「スワルトイ領は木材は豊富に産出できます。安くていい材木が多いです・・。」


 「・・・・・・」


 コベルが、話し出す。


 「お嬢様のアイデアを使用したという事ですか?」


 「こんな話をして、公爵様に知れたら、きっと、叱られます。しかし、お嬢様が、どこかのお子様にプレゼント用にご用意した子供車だけでもいいです。私たちに作る許可を頂けないでしょうか?」


 大きな体の男衆は、一斉に頭を下げた。


 モモガロンは、

 「別にいいですよ。スワルトイ領の産業になるのであれば、どうそお作り下さい。お爺様には、わたくしから伝えておきます。その他の事は、このコベルに聞いて下さい。」


 「ありがとうございます。」と、また、一斉に頭を下げた。


 モモガロンの別宅のリフォームが終わるまで、ヒロイは他の別宅にいる。そして、ヒロイと会う事が出来るのは、本宅の隠し部屋だった。


 「お嬢様、貴族学校での生活も、半分終わりました。残りの1年半を終えると、お嬢様とヒロイ様は、この領土の次期領主様になります。彼らが、その時、どれくらい驚くのでしょう?」


 「うん、・・その時、彼らが、もっと私のアイデアで仕事がしたいと、考えてくれたらいいわね。」


 「さぁ、ヒロイに会いに行きましょう。」


 ヒロイは、厳戒態勢の中、すくすくと育っている。後1年半経つと3歳を超えて、友達と遊べた方が、彼の為でもある。貴族学校が終わり、モモガロンがスワルトイ領の継承者として、社交界に知れ渡り、その後、ヒロイの存在が明らかになり、ヒロイも領土内の幼稚園に、通える事となる。


 その後は、きっと、つまらない貴族学校に入学するだろうが、モモガロンは、ヒロイには、前世の役立つ知識を独自に教えたいとも考えていた。


 「でも・・・、ヒロイの方がもっと進んだ国からの転出者だったら・・、それも必要ないかな?」


 自分の産んだ子供を、疑うのは良くないが、モモガロンには、ヒロイの周りに存在している精霊たちが見える。きっと、国王陛下、シャドウ宰相、トワにも見えるに違いない。


 「先の事を、考えると頭が痛いが、今は、この可愛いヒロイと一緒に遊ぶことを考えよう!!


 最近のお遊びは、サッカー。


 サッカーと言っても柔らかい綿の入った大きなボールを、みんなでヒロイにパスしながら、ゴールに入れて行く遊び。ゴールもスポンジ加工で、柔らかい。


 ヒロイのキャッキャする笑い声が、聞けるだけで、周りの人達全員が、笑顔になるから子供は不思議だ。


 「ヒロイ、さぁ、お母様がスローインで投げますよ。それ! 」


 周りは一斉に、ヒロイを見て、笑い、拍手して、ゴールを目指す。その姿をみて、サポールトは、いつも、羨ましそうにしている。


 みんなで、わいわいしていると、久しぶりにお爺様が訪ねて来た。

 「お爺様! 」


 モモガロンは飛びつき、甘え、周りは一斉に頭を下げる、


 「うん、ヒロイは元気そうだな。外まで、笑い声が聞こえた。ヒロイ、こっちにお出で。」


 スワルトイ公爵は、ヒロイを嬉しそうに抱き上げ、用意された椅子に腰かける。


 「お仕事は、いかがですか?」


 「ああ、今回、コベルやサルポートにも手伝ってもらって、どうにか目途がたった。それから、職人たちからも、リフォームが完成したと連絡があった。」


 「本当ですか?良かった~~~。これで、昼も夜も、ヒロイと一緒に過ごせます。」


 「ああ、いい話はここまで、あと一つ、国王陛下が、視察にいらっしゃる。」


 「え??」


 「うん、陛下がおっしゃるには、モモガロンから大きな湖がスワルトイ領には存在すると、聞いて、その湖の視察をしたいという事だ。それは、ーー陛下の研究には必要な事らしい・・・」


 「・・・・・・」


 「お爺様・・、お仕事が一段落して、やっと、ヒロイとゆっくり休暇を楽しむ時間が出来たのに、また、お忙しくなりますね。」


 「・・・モモガロン、それは、私ひとりで、国王陛下のお相手をするように、聞こえるが。」


 「お爺様、仮病は駄目でしょうか?」


 「ーーーーーー」


 次の日、モモガロンが住む別宅のリフォームが終わり、職人たちと一つ一つ、点検を始める。


 モモガロン別宅の一番の目玉は、この風を感じる広いサロン。このサロンは、全面に湖が見えて、その手前には、低木を並べ、季節によって、ツツジなどの花が咲く、そして、別宅との間は、全面芝生が植えられて、ヒロイが大きくなったら、サッカーやバスケットが出来る様にした。


 サロンからは、段差のないバルコニーが続き、そのバルコニーには、サロンと同じ板を張り、材木をふんだんに使ったウッドデッキにした。


 そして、そのバルコニーには、炊事場もあり、ヒロイのプールも備え付けた。


 「いいですね。素敵です。」

 「ありがとうございました。想像していた以上の物です。皆さんを誇りに思います。」


 その後に、仕掛け部屋の説明があり、そこでスワルトイ公爵は、少し聞こえる様に話す。


 「この部屋や仕掛けがあれは、国王陛下が滞在しても大丈夫だな。」


 「お爺様・・・、わたくしは、ご遠慮したいです。」


 「しかし、貴族学校のお友達のトワ様もご一緒に来るらしいぞ。」


 「え?どうして?」


 折角、モモガロン自慢の別宅が完成しても、ヒロイがこの別宅で過ごす事は出来なかった。


 それは、お爺様と別宅で話している事に、お爺様を呼びにボルト家令が急いで駆け付け、


 「国王陛下がお着きになりました。」と、・・告げた。


 その場にいた職人たちは、クモの子を散らすように、荷物を片付けだして、挨拶もなく、帰って行った。


 「お爺様・・・きっと、この中に国王陛下のスパイがいます。完成すると、到着って・・・」


 モモガロンは周りを見回したが、全員が首を横に振り、違うと表現していた。


 「もう!! トワ!! 」


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