トワの躍進
第23章
青葉祭での戦いは、次の日から、すべての話題の中心となった」それは、貴族学校でも間違いなく、トレンドの1位を獲得していた」
周りの生徒たちは、本当は、モモガロン達に話を聞きたいと思っている雰囲気を肌で感じるが…
「ちっ! 」と舌打ちしてくる輩もいる」
流石のモモガロンも、怒りが抑えられない」
「どういう事?わたくしが何をしたと言うのでしょう」
「お嬢様・・・、どうなさいますか?」
「とにかく、要注意です。彼をチエックして下さい」
「しかし、トワ様の方は、どうしましょうか?」
モモガロンは、トワが囲まれたている方向をチラッと見て、
「ほっておきましょう」私たちには関係ない事です。
トワは、唯一、その戦いを間近で見ていた貴族学校の生徒になる。
青葉祭に参加できたのは、当然の事ながら爵位貴族と奥方で、前のトワの身分は、結講微妙な身分だったが、今回、真の精霊持ちが公になり、一気にトップ貴族への仲間入りが、約束された」
『高貴なお方』に、変身したと言っても過言ではない
そんな高貴な貴族になったトワは、国王陛下によって矯正された事をすっかり忘れ、前のように、壁側を歩き、怯える様に早足で、昼食の時間に、学生室を訪れた
「はぁ、はぁ・・、モモガロン、僕は死にそうだよ。今まで、ゴミを見る様に、僕を見ていた人達が、一斉に話しかけて、僕を追って来るーーどうしたらいいかわからないよ。
満身創痍のトワを見ながら、
「それは、そうでしょう、貴方は、もしかしたら次期公爵になるお方なのよ」わたくしが思うには、タツトヨリイ公爵が、精霊持ちだと、前国王陛下はご存知だったのでは?だから、彼は、結婚もしなくても良くて、殆んどの生活を王宮の中で過ごせた。本当に、この国と王族の為だけに生きていた。その状態に最も近い人は、現在では、あ・な・た・・ただ1人」
「きっと、前王はタツトヨリイ公爵の事を、今の国王陛下に告げる前に、亡くなってしまったのね」
「うん、僕もそう思うよ」
「大叔母様を、強く望まれたのは、エナジーを得る為で、大叔母様も、それを知りながら嫁ぐと決めた事は、尊敬に値する。素晴らしいお方です」
「うん、男性だったのに女性に転生して、それさえも受けいれ、国王陛下に尽くすつもりだったんだ」本当に凄い人だね」
二人はしみじみと、昨日の余韻に浸っていたが、トワが小さい声で、モモガロンに尋ねる。
「それよりも、国王陛下が、昨日の戦いのご褒美に、欲しい物をくれると仰ってくれて・・・」
「それで?」
「ーーー漫画を完成したい」せめて第1話だけでも、駄目だろうか?」
「絵を描いてくれる人は、見つかったの?」
「シャドウ宰相が、王宮の方で、探してくれると約束してくれました」
「それなら、やってみましょう」ずっと、考えていても仕方がない。
「協力してくれる?」
「ええ、でも、少し駄目出し・・してもいい?」
「構わない」
それから、モモガロンは、自分の手元にあった絵コンテを、探し出し、もう一度読み返し、ペンを入れ、自分なりに修正して、数日後にトワに返した。
たった30枚で出来ているトワの漫画は、王室の推薦もあり、王都の本屋で販売が開始され、爆発的に売れた。この国の人達は、トワのアンモナイトを知らない。しかし、青葉祭での戦いによってトワの精霊は世に知れ渡った。その効果は莫大だろうと予想したが、1話は、殆んどアンモナイトの説明で、最後の方に仲間が集まり、みんなでアンモナイトを探す旅を始めるという、いたってシンプルな内容になっていた。
予想以上にバカ売れしたのだ。
「お嬢様、今回のトワ様の漫画という読み物は、今後、オリナス家の産業になるらしく、お嬢様のコンサル料をコベルが契約したいと申しております」
「ーー頂きましょう」結構、手直ししました」
「はい、そのように進めます」
それから、二人は、昼食の時間に今後の出版の計画を話し合う事となった」
「モモガロンは、今年の夏は、領土に帰るの?」
「その予定です」この夏は、王宮には、トワもいますし、今年は、王都門も空いています。
「そうなんだね・・・、相談相手がいないと、少し寂しいよ」
「・・・トワ、あなたには、寂しいと言っている暇はないよ、大衆は2話を待っています」
「何年も書き溜めた物があるけど、今の王都状況に合わせて変更して行こうと思ってる。しかし、まさか1話があんなに売れるとは、思ってもいなくて・・・次を出すのが怖くて・・・」
「それな! 私も本当にびっくりです」王都の人達が全員買ったの?と思うくらい売れたよね」
「シャドウ宰相も、心底、驚いていた」
「彼もマージンを取った?」
「うん、会計報告を見て、これなら僕も頂こうかなと、言って・・、それから、モルジャも王宮の財務部に出向して、1から公爵家を支える勉強を始めて、物凄く大変みたいだ」貴族学校の勉強よりも、厳しいそうで、すべて実践だから、たまに、僕を見ながら、数字を呟いている・・」
「ふふふふ・・、それは、本当に大変そうだね」
「とにかく、この夏か、秋の初めに、2話は出版した方がいいよ!集まったパーティーが、ダンジョンの入り口に到着したままで終わる事が無いようにね」
「モモガロン・・、僕もそう思うよ・・・」トワは項垂れて小さい声で返事をした。
その後は、楽しい夏季休暇が待っている。
何とか、学期末試験を終え、当然のように首位はコベルで、モモガロンも10番以内をキープして、とりあえず納得した成績を残し、5人と、ヒロイ、ナニー3人は、ひっそりとスワルトイ領に旅立った。
モモガロンがスワルトイ領で住んでいる所は、屋敷から距離のある別宅で、高い木に囲まれてた湖の近く、冬は、死ぬほど寒く、湖が凍る程だが、夏は涼しくて、避暑地としては、最高な場所だった」
「お嬢様、先程、王都の職人たちが到着したようです」
「本当?助かるわ」あの人達に会ってから、欲しいモノが確実に再現できると、思ってしまって・・、彼らがいないと本当に不便で、ヒロイが歩くようになって、この別宅には危険がいっぱいでしょう?どうにかしなくては・・・ね?」
「公爵様も、少し遅れて、到着する予定と、彼らが言っていました」
「本当?、陛下より、休暇を頂いたのかしら?タツトヨリイ公爵が亡くなって、本当は大叔母様を偲びたいのに・・忙しいと、ブツブツ言って、王宮に出向いていらして・・、お辛そうだったから、良かったわ」
2日後にスワルトイ公爵は、自分の領土に戻り、領土内は、引き締まった空気になった。
公爵は、戻ると直ぐに、各部署からの報告を受け、問題が起こると次々に解決策を練り、この1年以上、領土に戻れなかった事務処理に追われ、モモガロンとヒロイにもゆっくり会えずにいた。
ヒロイが生まれたばかりの時は、モモガロンでもヒロイに気軽に会えなかったが、流石に1歳半を迎え、誰が親なのかもしっかりわかるようになると、離れる事はヒロイにとっても良くない事だと周りも配慮する。
その為、この別宅を改造することが必要になった」
「お嬢様、職人たちが来ました」
ある意味、トワの精霊の事が公になった利点もある。スワルトイ家の中で、本当にモモガロンの地位が向上したのだ。
職人たちは、モモガロンの事はおばあ様の遠縁で、スワルトイ公爵が、物凄く可愛がっている女性だと、認識してから、今回も、遠くの別邸のリフォームも許したと、勘違いしていた。
「モモガロン様、公爵様より、この別邸のリフォームを手伝うように、言われました」
「王都から、わざわざ、ありがとうございます」お爺様の推薦で、皆様にお願いできて、嬉しいです」
「こちらが設計図になります」