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ワン様登場

第20章

 モモガロン達の席は、末端の末端で、階段式に一番上の中央は、当然、国王たちの席、しかし、そこからは、この席が、良く見えるようで、ボルト家令はレモンティーのおかわりに、陛下のメイドと共にやって来た。


 「お嬢様、ーー先程のアイスクリームは、とても好評でした」


 「ええ、良かったです」


 「しかし、お嬢様たちが召し上がっていたクッキーの混ざったアイスは、食べたことがないとおしゃられて・・・」


 「ーーーはい、シルガー、まだありますか?」


 「では、頂いて参ります。旦那様が、競馬の掛け金は気にせずに、使って欲しいと申されていました」


 「はい、ありがとうございます」


 モモガロンは、ボルト家令を見送って、このアイスクリームは、大金で売れたように思えた。


 レース前は、休憩と予想の時間がたっぷりあり、レースは6レース、この時間内にすべてを予想して、軽食や会話を楽しみ、パドックを見学したりする。


 「お嬢様も、お近くでパドックをご覧になりますか?」

 

 「・・コベル、私が馬を見て、わかると思う?ここは、別に、勝たなくてもお爺様は責めたりしないと思うわ。トワは見に行く?」


 「・・僕がこの場を離れたら、殺されるのではないだろうか・・?」


 「ええ、それは、多分正解です。安全の為にここで過ごしましょう」


 「お嬢様、では、馬券を買ってきます。どの馬になさいますか?」


 「コベルの予想表を見せて」


 そこで、その場の9人は真剣にその表を覗き込んだ。レースの収益が寄付される事もあり、使用人でも青葉祭の時は馬券を買える。


 この9人が円陣を組んで一枚の紙を覗き込む様子は、周りの優雅な貴族たちには異様に思えたに違いない。

 

 そして、・・・気になって仕方がいないと、言ったところだろう・・・


 モモガロンは、一言、

 「私の資金は、コベルの6レースすべての一等に均等にかけて下さい。良くわからないから・・」


 トワは、


 「それって、単勝一点買いという事?2位と3位はいいの?倍率が随分と違うけど・・・?」


 「じゃあ、2位も3位も買いますか?」


 その円陣は、1時間近くも他を寄せ付けない程の熱を放ち、結局はコベルとモルジャが代表して、締め切り直前に、購入に向かった。


 二人は、購入に向かう長い廊下で、ボルト家令に呼び止められ、モモガロン達の予想を聞かれた。


 「ーーお嬢様・・、随分と大金を注ぎこみましたね。はい、大丈夫です。旦那様には伝えておきます」と、言いながら、一緒に同行して、購入した。


 レースは、どんどん、始まる。


 1レースが終了すると、少しだけコースは、整えられるが、優雅さは、失われつつ、次々と馬は走らせられる。


 「この世界の馬は、タフね」


 「競走馬ではなく、日常でも走っている馬みたいだ。あの馬・・僕の家にいたと思う」


 「はい、我がスワルトイ領からも、出走しています」


 「そうなんだね。だから、貴族たちは、当然のように自分の領土の馬の馬券を買うよね」


 「しかし、トワ様のように、馬を見てご自分の馬だと気づく方は少ないでしょう」


 「ーーートワは、動物が好きなの?」


 「うん、化石はもちろん好きだけど、動物を見るのが好きだ。心が和むから、あの馬は良く窓から見ていた。生きて、こうして走ってくれるだけでも嬉しいよ」


 モモガロンは、トワのそう言う所が、にゃあ様には、通じているのかと、思っていた。


 「お嬢様・・・」


 「怖いくらい順調ね」


 「第3レースまでは、すべてコベルの予想通り、この後は、どうしたの?」


 「はい、この後は、指示通り、1着と2着の両方を購入してあります」


 「じゃあ、どちらが勝っても儲かるの?」


 「はい、どうでしょう。倍率が違いますから・・・」


 すべてのレースが終わった時には、全員で立ち上がり、大いに喜んだ。みんなが、大損しなくて良かった。


 「モモガロン、ありがとう。これで、僕の漫画が世に出るよ」


 「う、うん、そうだね」

 (諦めていなかったんだ・・・・。あのネーム、どうしたかしら・・?)


 

 次の会場は、同じ施設内にある広いグランド。


 ゴルフ?嫌、グランドゴルフのような運動になる。結局は、誰が何ストロークで、ゴールに入れるかの様なスポーツ。しかし、本当の目的は、談笑だ。


 ここは、本当に社交の場で、誰もが好きに広い芝生の上を自由に歩く。


 誰もが談笑して、散歩する。その中でも、一番の集まりは、当然のように国王陛下のグループだ。しかし、あまりにも無防備で、襲撃されるのなら、ここであるはず。誰もがものすごく緊張していた。


 その時、国王陛下は、トワを呼んだ。

 「トワ様、陛下がお呼びです」陛下の側近が、トワに告げた。


 トワが、国王陛下の近くに行き、タツトヨリイ公爵とスワルトイ公爵を紹介された。


 周りの貴族たちは、一瞬、静かになり、その様子を見ている。


 誰もが、ウワサは本当だったと、思ったに違いない。


 それから、しばらくトワは、国王の直ぐ隣で、引きつった笑顔を保ったままその一行と共に歩いていた。


 トワが、緊張のあまり、転びそうになった時に、陛下はとっさにトワを右腕で支え、トワは真っ赤になって、「ありがとうございます」と告げた。ほわほわした、いい雰囲気・・。


 その時、その精霊は現れた。


 精霊慣れしている貴族たちは、逃げ足も速く、その精霊が現れた場所も、場所を選んだのか?ひと気のない森林近く。


 「アレ・・、アレ・・あれ?」


 「お嬢様、逃げましょう」


 「でも、国王陛下の一行は、あの場所で、対峙している。その中にお爺様も含まれます」


 「公爵様は、公爵様の護衛が必ず守ります。信じて下さい」


 貴族たちは、一目散に逃げて、振り返るとすでに、砂埃しかなかったが、モモガロンは、この戦いを必ず見届けると思った。


 「いいえ、見届けましょう。わたくしは、お爺様が護衛を信じるように、わたくしもあなた達を信じます。見て、お爺様は勇敢です。一歩も引いていません。わたくしは彼の孫ですよ」


 「でも・・(犬?)あの精霊は、誰が出したのでしょう?」


 「ーー精霊の周りには邪悪な影が見えません。もしかしたら・・・悪の精霊ではないのでは?」


 しかし、しばらくすると、その犬の精霊はトワに向かって攻撃を始めようとしている。


 ビビったトワは、初めて、アンモナイトの精霊を完成型にして、攻撃を免れた。


 本来なら、一撃で、壊れていただろうが、毎日、にゃあ様に餌を与えていた効果で、小さくなったが、超合金のように固くなり、その一撃だけは、耐えきれた。


 「まさか!やはり、精霊持ち・・・信じられない。こんな弱々しい人間が精霊持ちなんて・・・」



 その時、国王陛下も、にゅあ様を完成させていた。


 「陛下、おやめ下さい。陛下はこの者に惑わされています。ここは、わたくしが陛下に変わって、退治いたします」


 「タツトヨリイ公爵、お前は、なぜ、今まで精霊持ちだと私に言わなかったのだ?」


 「あなたが必ず勝つとわかっていました。しかし、あなたのにゅあ様は、所詮、猫、私の敵ではありません」


 「悪の精霊たちは、架空の物で、実態がありません。本当の精霊は、実体があります。まぐれで、彼の精霊のように、私の攻撃も受けられます。しかし、例え、本物の精霊でも、私のワン様には、かないません。あなたをお守りできる精霊は、この世では、私一人です」


 「では、どうして、彼を殺そうと企む?彼が私に何をした?この世で、たった一人の真の精霊持ちにであったのに、なぜ、彼を狙う?」


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