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青葉祭②

第19章

 ここは、本当に精霊持ちにとっては、本当に心地よい聖地と言える。


 「トワくんは、ここに来てみてどう?何か感じない?」


 「感じる。アンモナイトがものすごくパワーを吸い取っていると、わかる」


 「ねぇ、君もすごく変化しているよ。本当の貴族の嫡男に見える。なんだかキラキラしている」


 「・・・実は、僕は貴族の嫡男なんだ・・本当に・・・」


 「ハハハハハ・・・」


 「国王陛下は、一番最初は、どの競技に参加されるのでしょうか?」


 「僕が聞いたのは、弓だと思うよ。弓道みたいなのかな?」


 「私もそう思っている」


 しかし、この国の弓道は射撃と一体化した競技で、動く物を時間内にどれだけ撃ち落とすかで競われる。勿論、弓で打ち抜いた場合の得点は10倍で、弓を得意とする人は少しだけ優位に立つ。


 「国王陛下が、スタンバイされました」


 陛下は、自分の身長よりも長い弓を引き、スタートが鳴り響くのを静かに待っている。その勇姿を見て、ドキドキしない女の子は、この世にはいないと、思えるほどのカッコよさだった。


 「僕がここに来るまでに聞いた話では、あの弓、実弾が内蔵されている特注の武器らしいよ。持ち替え時間のロスを省くために、重い弓を、陛下が作らせた。・・スゴイよ。精霊はあんなでも・・本当にカッコいい! 」


 「ホレちゃう?」


 「ヤメてよそういう事を言うの、でも、その噂・・モモガロンの所にも届いているの?」


 「うん、お爺様が少し気にしていた。今日の事は聞いてる?」


 「うん、その噂を流したのも、今日の為みたいなんだ」


 「え??、ワザと流したの?」


 「シャドウ宰相が、そう言っていた。今日は何があるかわからないから、気をつけるように」


 二人は真剣な顔でお互いに覚悟を決めた。



 「アッ! 始まるよ」



 国王陛下がこの5分間でたたき出した点数が、今日の目標点数になる。


 スタートの音が鳴り響き、誰もが息を飲んで一発、一発を見ている。バン! シュッ! と音が鳴り響き、5分間は、終了した。


 青葉祭、最大の見せ場は、きっとこの国王陛下の5分間だと、初参加の二人にもわかった。


 陛下が、その位置から、貴族たちに手を振ると、一斉に歓声が沸き、その場にいない遠くの人達も、声を上げ、惜しみない拍手を送る。


 「陛下は国防だけでなく、生まれ持ったスター性も、凄いね。本当に誰もが憧れる存在だね」


 「ああ、あんなスゴイ人、男女問わずに、好かれるのは、当然だよ。モモガロンも好きになった?」


 モモガロンはトワの顔をしっかり見て、

 「私には、この世界に、最愛の人がもういるの・・。どんなに素敵な男性が現れても、その人には敵わない。無敵ヒーローなの」


 トワはビックリした顔でモモガロンを見る。

 「羨ましい・・・。僕はそういう経験が、前世でもないから・・」


 「私も、こんなに人を愛した事はない。あったら、あっけなく死んでいないと思うけどね」


 「そうだね・・・」


 「だから、トワくんが、国王陛下を好きでも私は応援するよ」


 「モモガロン・・・、僕は、アンモナイトと女性が好きだ。君の応援は嬉しいけど・・・」


 二人はフフフフと笑いあい、モモガロンは、心の中で『チェッ!! 』と呟いていた。


 国王陛下は、自分の競技がおわると、今度は、競馬場に向かう、ゴルフ場のようなカートはなく、民族大移動の様に、沢山の貴族たちが歩いて移動する。所々に出店が並び、立ち寄り、飲み物やお菓子、こんな物までも売っている。一般の商会は出店できないが、貴族が持っている商会が並び、見本市のように、商品の説明をしたり、呼び込み、無料配布を行っている。


 国王陛下、お爺様、タツトヨリイ公爵は先頭を行き、シャドウ宰相が率いる大勢の護衛は、その周りを囲む、その後に、トワとモモガロンの小さな部隊は、トボトボと、続いている。


 前の集団に比べると、本当に手薄な9人だったが、マルサナによれば、トワに付いたメイドは、王宮で一緒に訓練したことがあり、なかなかの腕前らしい。それと、トワの従者のモルジャも、実は優秀な人間だと、コベルは言っていた。


 だから、心配はしていないが、それでも、競馬場の最上階の貴賓室に着くまでには、足をかけられそうになったり、ワザとぶつかって来たり、石や砂などが何処からか飛んで来たりと、なかなか護衛も大変だったようだ。


 4人が、あんなに険しい顔をしているのを、初めて見た。ーーこれは、今日は本番だ。


 「お嬢様、貴賓室に入る前に、お着換えをお願いします」と係の人が案内する。


 モモガロンは、頷き、身体検査の為の着替え室に入る。勿論、シルガー、マルサナも一緒で。二人は動じる事もなく、さっさと、身軽な使用人服に着替え、その部屋の使用人を驚かせる。


 モモガロンは、実質初めてのドレスアップ姿、ドレスはもちろん国宝級の大叔母様のドレスのリフォーム、髪はアップにしてレトロ調、首元には、お爺様から送られた控えめだけど、飛び切り高価な宝石が並ぶネックレスをつけての登場だった。


 「お嬢様、本当にお美しいです。見惚れます」


 「ええ、素晴らしい。公爵様がお喜びになります」


 「ありがとう。さぁ、行きましょう。ここからは本番です」

 

 「はい」


 ドアを開けると、トワが七五三並みに着飾って、モモガロンを迎える。そして、その後は、すべて従者は使用人に変わっていて、身が引き締まる。


 貴賓室の前で、国王陛下をお迎えして、多くの貴族たちと共に、貴賓室に入り、レースが始まるのを予想しながら待った。


 「お嬢様、今日のお飲み物は、如何なさいますか?」


 「少し、この部屋は暑いので、アイスティーをもらえる?」


 「はい、かしこまりました」


 トワがモモガロンを見て、驚いたように尋ねる。


 「アイスティーがあるの?」


 「ええ、レモンティーだけど、いる?」


 トワは頷き、嬉しそうにシルガーから、大きなグラスに氷とレモンが入っているのを受け取った。


 「美味しい、凄いね。これ、本物だ」


 「このお茶とレモンは、スワルトイ領で生産しています。主に私が飲んでいますが、氷は早朝、彼らが手配したと思われます」


 「このグラスもすごくキレイだ。レモンの絵が浮かび上がっていて、爽やかさを表している」


 「スワルトイ領では、ガラス工芸に力を入れていて、沢山のコップを王都で流通させています。このストローが出来るまでは、少し時間がかかりましたが、このコップに合うように工夫もされています。ホラ、ここがコップに引っ掛かります」


 トワは、尊敬した顔でモモガロンを見ている。



 「しかし、今日は日差しが強く、無風で、窓を全開にしても、この部屋は暑いですね」


 「アイスレモンティーが、一番美味しく飲める気温です。持参して良かったです」


 しばらくすると、スワルトイ邸の家令のボルト家令が、

 「お嬢様、国王陛下たちも、お嬢様のレモンティーに興味がおありで・・、』


 「ええ、どうぞ、今日は、沢山用意しています」


 「ありがとうございます」


 「少し暑いので、アイスクリームも添えて、差し上げて下さい」とシルガーに指示を出した。


 国王陛下のメイドたちは、シルガーに教えてもらいながら、4人分のレモンティーと白いバニラアイスを携え、少し離れた席に向かって行った。


 トワの、待ってます視線も気になり、

 「私たちも、溶ける前に、アイスを頂きましょう」と、モモガロンは、みんなに話をした。


 この世界には、冷蔵庫はある。高貴な家には、氷を作るだけの製氷機も備えられている。氷は、とても貴重で、多くは作れないが、モモガロンは、職人を使いアイスボックスを、注文した。


 氷の保存ができると、アイスも保存できて、今日の様な外でのイベントに役立つ。夏に、ヒロイの顔を冷たいタオルで拭いてあげるつもりだったが、意外な場所で役立っている。


 今年の夏は、プールサイドでヒロイにアイスクリームを食べさせてあげよう。楽しみだわ~~。



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